無限の剣製……?   作:流れ水

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第2話

「ふっ‼」

 

 刃渡り80㎝の一振り刀を振るう。

 流星街のゴミ山に捨てられていた刀剣の破片達。

 その中で、サクラが最も技量が高い記憶が蓄積されていると思った刃を【無限の剣製】で復元し、具現化。

 

 刀の記憶を読み込みながら、刀を振るい、骨の随まで技を刻み込んでいく。 

 けれど、特質系であるサクラは強化系と一番相性が悪い。幾ら先人達の経験や記憶があるとはいえ、他の系統よりも身体能力面では一際劣るのだ。

 

 ……能力開発に失敗したかもしれない。そんな思いが脳裏によぎるが、今更どうしようもない。

 大丈夫、まだ能力の真価が発揮されていないだけ。そう自分に言い聞かせることでサクラは心を落ち着け、鍛錬に意識を集中した。

 

 最近、ゴミ山の奥からサクラを覗いている細身のサラサラヘアーな青年が居るのだが、毎日、毎日本当にうっとおしい。

 いい加減殺してしまうおうか。

 

「――ッッ!」

 

 サクラが殺意を視線に乗せて、青年を見ると、青年は息を吞んだ。

 けれど、逃げない。

 もしかして、同じ念使いだろうか。

 近づいてくる青年に鋭い視線を向け、サクラは臨戦態勢を取る。

 

「毎日毎日、一体何の用?」

「あ、いやな、あんたの振るう技がとんでもなく綺麗なもんだから、つい毎日ここまで見に来ちまったんだ。見惚れてたってやつだな」

 

 冷たいサクラの問いに、あっけからんと笑いながら答える青年に、サクラは毒気が抜かれた。 

 

「此処で見学してても良いか?」

「別に良いけど……」

 

 全く悪気の無い青年の言葉に、何故かサクラは続けて言おうとした『何か怪しい行動をしたら殺すからね』という言葉を呑み込んでしまった。

 しかし、これ以上調子を狂わされる訳にはいかないと会話を打ち切り、ただ刃を振るう事に意識を傾けた。

 

 あれから毎日見学に来るこの青年は馬鹿なのだろうか。

 いや、馬鹿なのだろう。

 こちらが反応するまでひたすら自分の名前を連呼して自己紹介を行ってきた為か、ノブナガという名前をしっかりと覚えてしまった。

 更には、私の名前まで無理矢理聞き出したのだから。 

 死にたがり……?と怒り混じりに聞いた時、ノブナガは『え、なんでそうなるんだ?』と本当に不思議そうに言うもんだから……もう、怒りを通り越して呆れてしまった。

 

 まあ、毎日此処にノブナガが来て何も、聞いてもいないのにペラペラ喋るから、これまで知らなかった色々な知識は増えたが。

 例えば、サクラの住む地域は流星街でも政治的空白地域で、流星街でも一際治安が悪いらしい。

 ここら一帯は外から来た凶悪犯罪者がそこら中で殺し合っている地域であり、流星街の中でも明らかに異様である修羅の世界のようだ。

 サクラは、そんな事知らずに暮らしていたが、流星街の大半は長老たちによる議会制によって統治されている為、ほとんどの場所では治安が良いのだとか。

 既にここの空気に適応してしまったサクラにそんな事言われても今更である。

 そういう事はもう少し早く知りたかった。 苦労に苦労を重ねた過去を思い返すと、

 サクラはそう思わずにはいられなかった。

 

 荒れた息が整うと、気を取り直して、修行を再開。

 練で体内から放出されたエネルギーを纏で纏う事で、練よりも遥かに肉体機能を強化。

 放出するイメージと身体に留めるイメージという相反するイメージを脳裏に描きながら、4大行の応用技、堅を維持し増ける。

 練とは比べものにならない速度で減っていく体力と集中力。

 堅を維持し続ける事20分。

 複雑なオーラ操作に肉体と精神に疲労が蓄積。

 集中力が持たず、堅の状態が崩れ、肉体に押しかかる疲労感にサクラは倒れるようにゴミ山に座り込んで、絶で荒れた息と疲れ切った肉体を回復させていく。

 

「ずっと気になってたんだが、それ、どうやるんだ?」

「……それ?」

「いや、さっき身体からブワーって出ていたそれだよ」

「……⁉……見えるの?」

 

 その言葉に驚愕したサクラは、ゴミ山から顔をあげて、初めてノブナガの顔を真正面から見る。

 

「ああ、で、それって俺にも出来るのか?」

 

 特に気負いもせずノブナガは自分の疑問を質問する。

 

「まあ……見えるなら、出来ると思う」

「そうか」

 

 サクラは適当に答えてノブナガが問いを撒いて終わらせようとするが、一つのアイデアが思い浮かび、考え直す。

 

「これの使い方、3つだけ教えてあげる」 

「本当か⁉」

「3つだけ。後は勝手に見て勝手に覚えると良い」

 

 目を輝かせて言うノブナガに水をかけるようにサクラは告げるが、それでも嬉しそうノブナガは笑っていた。

 

 教えるのは練、凝、そして、流。

 何の利益にもならなければ、たぶんサクラはノブナガに念を教えなかった。

 サクラはノブナガが流の修行台になると思ったからこそ念を教えたのだ。

 そんなサクラの考えも知らず、ノブナガは無邪気にサクラの言葉に耳を傾けていた。  

 

 

 2日で練と凝を覚えてしまったノブナガのセンスに感服しつつ、サクラは流を教える。

 

「左手に30%、右足に40%。次、頭に70%、左足に20%……」

 

 まだノブナガの流はぎこちなさが残るが、まあ、これなら組手をしても大丈夫だろう。

 死んでしまったら、その時はその時。

 運が悪かったということで成仏して貰おう。

 

「まあ、出来てると思う」

「よし!」

 

 サクラの合格判定に喜ぶノブナガ。

 

「なら、次の修行に移行する。ここからが本番だから」

「はい」

「今から私が右腕にオーラを込めて殴るから。きっちり私のオーラを見て、身体の何処にオーラを集中させれば無傷でしのげるのか考えて防御すること。ここからは下手な失敗をしたら、死ぬから」

「はい!」

 

 力強く返事をするノブナガに腕に80%のオーラを込めて、亀のような歩みでゆっくり殴り、ノブナガの掲げる手に接触。

 衝撃で風が巻き起こり、土埃が舞い上がるが、ノブナガは無事。

 少し、衝撃で足が下がっては居るが、大丈夫そうだ。

 

「次はノブナガの番。私の真似をして、攻撃してきて」

「はいッ!」

 

 ノブナガが足にオーラを込めてゆっくりと蹴ってくる。

 サクラはノブナガの足に込められているオーラを目分量で推測。

 ゆっくり膝で受け止める。

 膝にオーラの込める量が甘かったのか衝撃がサクラの膝から全身を駆け抜けるが、この程度なら問題無い。

 修行を続行。

 のろのろとした蹴りでサクラはノブナガに反撃した。

 

 1週間も手合わせをすれば、流をしながら通常通りの速度で殴り合えるまでサクラの技量は成長した。

 やはり、相手が居るのと、居ないのでは成長速度も段違いのようだ。

 最初の頃のノブナガは練の維持さえ心もとなかったが、一回サクラが殴る途中で練が解けてあともう少しで殺しそうになってから、念の練度が格段に成長した。

 これならノブナガも念能力者と戦闘しても一方的に負けることは無いだろう。

 結果的にだが、Win—Winの関係になった訳だ。

 まあ、そんな自身の成長にテンションが上がり過ぎたのか、うっかりサクラの刀の鍛錬まで真似するようになったノブナガに、幾つか指導してしまったのは今でも本当に後悔している。

 そのままずるずると刀の指導までする関係にまでなってしまったのだから、その点では失敗したという他無いだろう。

 

 そろそろ流星街を出ても良いかもしれない。

 ノブナガには、刀術の基本を一通り身体に叩き込んでいる。

 あの才能なら後は勝手に自分で応用技を編み出すだろう。

 念能力もある程度使えるようになったし、流星街に心残りは無い。

 

 外から来た連中から適当に金と情報を巻き上げて、この街からおさらばするか。

 

 サクラはゴミ山の上から飛び降りると、適当な新人を探しに流星街の廃虚へ姿を消した。

 

 

 

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