無限の剣製……?   作:流れ水

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天空闘技場編、開始。


第9話

 ツェリードニヒは2週間という驚異的な速度で、基礎から応用までの念を修得。

 それからサクラはツェリードニヒに一通り刀剣武具を見せて貰った後、一言別れを告げてツェリードニヒの下から去った。

 

 ツェリードニヒの趣味、人を使った芸術がサクラには合わなかったからである。

 それに……稀に変わるツェリードニヒの視線がサクラは苦手だった。

 

 そんなサクラの内心を知ってか知らずか、念能力という力に夢中になっていたツェリードニヒは、おー、じゃあな、という簡素な別れの言葉しか告げなかった。その言葉を最後に、それ以上のことは何もなし。

 サクラとしては少し拍子抜けであったが、下手に親しくなり、厄介事に巻き込まれる事を考えれば、ベストな結果なのかもしれなかった。

 

 

 無事ジャポンの家に帰りホッと息をついたサクラを襲ったのは、金欠である。

 

 ……金欠である。 

 

 刀剣展覧会のチケットを手に入れる為、惜しまず金を使った結果である。

 

 一般的に言えば、サクラの貯金額はまだまだ余裕がある金額なのだろう。

 

 だが、美味しい食事や稀少な展覧会などのチケットを手に入れる為に金を惜しまないサクラからすれば、はした金でしかない。

 

 故にサクラはお金を稼ぐ為、家を飛び出すように、天空闘技場へ向かった。

 

 

 

 天空闘技場の闘技者登録を行わない。いや、正確には、行えない。

 

 サクラの闘技者登録は、既に二度抹消され、永久追放となっており、二度と闘技場に挑むことはできないからである。

 

 だが、それは、闘技場に挑めないだけ。

 

 天空闘技場のギャンブルの参戦権まで抹消された訳ではない。

 確かに、昔のように、190階層付近で互角の戦闘を演じ、ギリギリ勝ったように見せかける事で、大量の金銭を稼ぐことは出来なくなった。  

 

 しかし、サクラの先人達の経験により鍛え上げられた観察眼を利用すれば、闘技者の時ほどがっぽりとは行かないが、十分ギャンブルでも稼ぐ事は可能なのである。

 

 

 ——190階層。

 

 サクラは、闘技者の過去の映像を一通り閲覧する事で、その肉体能力や技量、天空闘技場という戦闘環境、今日の戦闘における体調を考慮。

 それらの情報から試合の動きを予測し、今日の試合の中でも比較的勝算が高いもののチケットを購入。

 どれほど試合内容がサクラの予測通りに進んでいくのかという確認と暇潰しを兼ね、サクラは試合の観戦に来ていた。

 

 闘技場に立つ二人。

 顔のバイザーが特徴的な、いかにも拳法家という服装を身につけた痩身の男性と、顔を威圧的なマスクで隠し、その筋肉を誇示するようにパンツとブーツのみを身につけた、プロレスラー風の男性の二人は互いを睨むように見つめ合っていた。

 

 言葉はない。

 二人は幾度となく、この階層、この闘技場で闘いあった仲故に。

 ただ、怨敵を睨むような瞳で互いを見つめ合うのみ。

 観客席で興奮のボルテージが上がっていく中、ジャッジの男性の合図を機に、両者、一気に距離を詰めんと闘技場の地を駆けだした。

 

「オラッ」

「シィィィッ‼」

 

 プロレスラー風の男性が、駆けだした勢いをそのまま腕に乗せ、バイザーの男性の腹をぶん殴らんと拳を突き出すが、バイザーの男性はしなやかな動きでくねるように踏み込むことで、その攻撃を避け、足を杭のように地に固定し、一種の意趣返しのように抜き手をプロレスラー風の男性の腹の急所にめり込ませた。 

 

「ぐっ⁉」

 

 プロレスラー風の男性の呼吸が止まり、全身の力が緩み、その筋肉の鎧に隙が生まれる。

 その隙をつき、バイザーの男性の素早い抜き手が、幾度もプロレスラー風の男性の腹の急所に突き刺さる。

 

「いい、加減に……しろ!」

 

 その腕を力任せに振り抜くプロレスラー風の男性。

 幾ら全身の力が抜けているとはいえ、その力は本物。

 一度捕まれば、敗北は必至。

 しかし、この隙を逃す事も惜しいバイザーの男性は足を大きく広げ、踏み込む際に身体を落とす事で、頭上ギリギリを通り過ぎるプロレスラー風の男性の腕を避け、睾丸にその抜き手を叩き込み、そのまま親指と4指で握り潰さんが勢いでその急所を握り込んだ。

 

「~~~~ッッ‼」

 

 プロレスラー風の男性の脳天を貫く激痛に悶絶。叫ぶように手足をがむしゃらに動かす。

 

 暴風のように繰り出される拳と蹴り。

 それらが来ることは予想していたバイザーの男性は身を低くしたまま、がむしゃらに放たれた蹴りの軌道を手刀で受け止め、その衝撃を利用し、自分から吹き飛ばされる事で背後に一度下がろうとするが、プロレスラー風の男性はバイザーの男性の手刀のガードごと腹を蹴り飛ばした。 

 派手に地に転がるバイザーの男性。

 だが、蹴り飛ばされた衝撃は器用に地面に受け流し、5メートルほど転がったところで何のダメージも受けていないという平然とした様子で立ち上がった。

 

 そこでようやくジャッジの男性が2人に判定を叫び、試合を再開しようとするが、プロレスラー風の男性がうずくまったまま動かない事に気付き、暫くプロレスラー風の男性に視線を向ける。 

 その場で立ったままジャッジの男性は暫く静観するが、いつまでも動けないプロレスラー風の男性の姿に、やがて仕方ないとばかり、バイザーの男性に勝利判定を下した。

 

 まだプロレスラー風の男性は闘える。

 しかし、彼はこの後の試合を考え、この試合の勝利を自ら捨てた。

 自身の身体を商売道具にしているのだ。

 妥当な判断であり、予想通りの結果となったことにサクラは微笑みを浮かべた。

 

 観客席に響き渡るブーイングの嵐の中、試合結果を確認し終えたサクラは購入した券を金に引き換えてもらうために、受付に持っていく。

 その道中、天井に吊り下げられるように設置されたテレビに映る天空闘技場の試合の中で、見覚えのある銀髪の少年と黒髪の少年が試合を行っているのを見つけ——サクラの思考は停止した。

 

 ゴンとキルア。

 その名前と連動するように、サクラはキメラアントとその王の情報をネテロ会長に伝えなければならなかった事を今頃思い出した。

 どうして、忘れていたのだろうか。

 ネテロ会長の攻撃によるショックの影響か、前世の記憶の摩耗か、自身の壁を突破出来た事で浮かれていたのか。

 それとも、純粋にサクラがうっかりしていただけ…?

 

 様々な言い訳染みた言葉が浮かびあがるが、最後に残ったのは、どうしよう、というたった一つの想いである。

 

 一介のハンターがネテロ会長と会うには、どうすればいいのか。

 まず、ハンター試験の試験官として起用されれば、試験官の権限の一つとしてネテロ会長と話せる手段を与えられる。

 だが、サクラは、一度、一方的なものとはいえ、ネテロ会長と敵対している身である。

 ハンター試験の試験官を申し込んだとしても、ネテロ会長に断られる可能性が高い。

 

 では、ハンター協会に影響力を持つ誰かと接触出来ないだろうか。

 確か、主人公達に関わる誰かがそうだったはず……。

 思考に沈むが、名前と顔が出て来ない。

 少女みたいな、でも、本当は少女ではなくて……?

 普段は普通少女で……本当の姿は漢女(オトメ)……?

 ……よく分からないが、ハンター協会にある程度影響力を持っている人だということは何となく覚えている。

 

 当面の目標はキルアとゴンとの間に繋がりを得、その人物と接触、キメラアントの情報を伝えるという感じだろう。

 

 ああ、でも、——キルアとゴンにどう接触すれば良いのだろう?

 

 取り敢えずキルアとゴンの試合の席を購入し、その闘いを観戦するが、これまで余り自身から誰かと繋がりを持とうとしなかったサクラには、その辺をどうすればいいのかよく分からなかった。

 

 

 天空闘技場からホテルへの帰り道。

 街道を歩くサクラはこちらを追ってくる2つの気配をはっきりと感じ取っていた。

 ゴンとキルアだ。

 視線を辿らなくとも気配だけでサクラは分かる。

 

 オーラには人それぞれの特徴がある。

 そして、個人のオーラの特徴がおぞましければおぞましく、禍々しければ禍々しく感じられるように、オーラの特徴は気配となって人に現れる。

 また、ゴンとキルアは念能力者ではなく、その身から特徴的なオーラの気配が垂れ流しにされている。

 

 つまり、そのオーラの特徴から生じる気配さえ覚えていれば、サクラにはその気配だけでそれが誰なのか分かるのである。

 サクラの気配察知を真っ向から防ぐには、絶によって気配を消すか、何らかの念能力で気配をどうにかするかしかないのであった。 

 

 キルアとゴンの存在に気付いていない風を装い、サクラは2人の目的を探りつつ、自然体で足を進める。

 さり気なく通路の角を曲がり、ゴンとキルアからサクラの姿が見えなくなったところで瞬時に絶を行い、単純な身体能力と技量のみで家の壁を駆け上がり、その後を追って通路を曲がってきたゴンとキルアを屋根の上から眺める。

 

「…消えた」

「あれ?どこに行ったんだろ」

 

 キルアとゴンがほとんど人のいない道に視線を巡らせ、お互いのどこにサクラが行ったのかを話しあう中、サクラは音もなく家の屋根から飛び降り、2人の背後に着地する。

 

「誰だ——ッ‼」

「……サクラ‼」

 

 キルアは僅かな人の呼吸、音から漏れ出る気配を察知、険しい表情で飛び上がるように距離を取るが、ほのかに漂った香りですぐに背後に着地した人物がサクラであると特定したゴンは無邪気な笑みを浮かべ、無防備なまま振り返った。

 

「なんだサクラかよ、ビックリさせんなよな」

 

 文句を言うキルアにゴンが、まあまあとなだめる。

 

「どうして二人は私を追って来ていたの?」 

 

 そんな二人の様子、雰囲気にノブナガに似たものを感じ、毒気を抜かれそうになるも、サクラは自身の疑問を尋ねた。

 

「やっぱ、気付かれてたのか。けっこう本気で隠れてたつもりだったんだけどな」

「バレバレだった」

 

 不遜な物言いをするキルアにサクラが呟くように言う。

 少しキルアが不機嫌そうな感情を漏らすが、一歩前に踏み出してきたゴンを目にした途端、キルアの中で渦巻いていた負の感情がフッと消え去った。  

 

「俺たち、サクラに聞きたいことがあって…それで、後を追っていたんだ」

 

 聞きたいこと……?

 二人が……?

 

「…何?」

「……念って言葉、知ってる?」

「知ってる」  

 

 そのサクラの返答に、ゴンがキルアの顔をニッコリ笑いながら見つめるが、キルアは怪訝そうにサクラを見つめた。

 

「それってハッタリとかに使う、そういう陳腐な技術じゃねえよな」

「違うよ…?念は人の生命オーラを操る技術のはず、だけど……?」

 

 キルアの尖った言葉にサクラは首を傾げつつ答える。

 その答えが満足のいくものだったのか、キルアは小さく良しと呟き、拳を握り締める。

 

「知っているなら、その技術、俺たちに教えてくれない?」

「……良いけど」

 

 詰め寄るキルアに、腹に一思い隠し持ちながらサクラは言葉を返す。

 やった!!と手を叩き、喜ぶゴンとキルア。

 

 その二人の肉体、オーラをサクラは観察した。

 

 ……大丈夫かな。才能はありそう。

 直感によって何となく感じただけだが、サクラの直感は様々な修羅共との経験によって構築されたもの。

 十中八九当たっているだろう。

 その程度には、サクラは自身の直感を信じていた。

 

「…行こ」

「何処に?」

 

 一言呟き、何の説明もなく歩き出すサクラにキルアが聞く。

 

「私の泊まってるホテルの部屋。ここでは教えられないから」

「…罠、じゃないよな」

「それは、サクラに失礼だよ」

 

 暗にお前を信用していないと告げるキルアに、ゴンは非難の視線を向ける。

 

「だってよ~」

 

 唇をツンと尖らせるキルア。

 

「罠……ね」

「あ、いや、キルアも悪気があった訳じゃなくて」

 

 慌ただしげに言うゴンにサクラは黙って首を振る。

 そして、殺意をオーラに乗せ、ゴンとキルアを冷たく睨んだ。

 

「「——ッ!」」

 

 驚いた猫のように飛び上がり後方に下がるキルア。

 ゴンは何とかその場で耐えているが、みるみるうちに二人の顔色は死人のような蒼白に変わり、溢れる冷汗で服をびっしょり濡らしていく。

 

「二人をどうにかするのに、罠は必要ない。……分かった?」

 

 サクラとしては優しく微笑み、言い聞かせたつもりだったが、ゴンとキルアには閻魔の笑いにしか見えなかった。 

 コクリと頷く二人を見て、サクラはオーラを鎮め、歩き始める。

 しかし、二人が後を追って来ない。

 少し、脅かせ過ぎただろうか?

 

「ついて来ないの?」

 

 その言葉に二人は我に返ったように瞼を瞬かせる。

 

「あ、ああ……」

「うん……」

 

 そして、緊張を隠せない様子で身体を強張らせながらサクラの後ろを歩き始めた。

 

 ルッケーゼ一家が管轄下のホテル、その最上階のワンルーム。

 大理石の床で構成されたリビングで、サクラはゴンとキルアに念の四大行の説明を行った。

 

「何をするにも、まずは、俺たちが纏を覚えない限り、それ以上先のステップには進めないという事か」

「それが出来るようにならないと、何も教えられない」

 

 ゴンは一気に渡された様々な念の情報に混乱し、真剣に話を聞き、理解したキルアはゴンにも分かるように話をまとめた。

 

 座禅をする二人。

 意識を体内に集中させ、必死にオーラを感じ取ろうとしている。

 

 そんな彼らの様子を見て、サクラは昔の自分を思い返し、小さく微笑んだ。

 だが、他人ばかり見てはいられない。

 

 サクラも座禅を行い、自身の精神にある念空間の中に意識を沈め、刀剣に刻まれた記憶や経験を読み取り始めた。

 

 数時間経った頃だろうか、集中力が途切れたのか、苛立った様子でキルアが目を見開く。

 

「あー、畜生、何か裏ワザとかないのかよ」

「…ある」

「そんな方法あるの⁉」

 

 キルアの横でジッと座禅をしていたゴンが瞳を見開き、サクラに身を乗り出した。

 

「うん。でも、私がやれば二人は死ぬと思う」

「あー。やっぱ、そう上手い話は無いか」

「私がということは、他の人ならその裏ワザが出来るかもしれないってこと?」

 

 予想通りとばかりキルアは溜息をつくが、ゴンはその言葉にどこか引っかかるところがあったのかサクラに尋ねてくる。

 

「うん。…たぶん。それでも、その人に少しでも悪意があれば二人とも死ぬと思う」

「そっかー」

「仮の話だけど、もし、サクラが俺たちにその裏ワザを行った場合、俺たちはどうなるんだ?」

 

 精孔を開く為とはいえ、念能力者ではない一般人に死者の凶悪な念を大量に叩き込むのだ。

 おそらく——

 

「良くてミンチ、悪くて赤いシミになると思う」

「シミか…」

「うん、シミ」

 

 思った以上のデメリットに、ひいた様子で言うキルアに、サクラは無自覚に追撃の言葉を吐く。

 

「…ま、自分でオーラを感じられるようになるしかないってことか」

「だね」

 

 気怠げな表情を繕うキルアに、ゴンは苦笑交じりに同意し、座禅によるオーラを感じ取る修行に戻る。

 何か出来る事は無いだろうか?

 じっくり考えるサクラの下に一つのアイディアが頭に思い浮かんだ。

 

 無我の剣に到達してから、以前よりスムーズかつ精神消耗も少なく具現化出来るようになった無限の剣製を用い、一本のアンテナ、【万能のアンテナ(パーフェクト)】を具現化するが、やはりと言うべきか、具現化した【万能のアンテナ(パーフェクト)】はサクラの死者の念を纏っていた。

 

 安全面を考慮するなら、最低限他者を念から身を守れるようになって実行すべき、か。

 サクラは具現化したアンテナをポケットの中にしまい込み、リビングで座禅する二人に背を向け、寝室へ足を進めた。

 

 

 

 夢を見る。

 自分のものではない。

 どこかの誰かの記憶の残滓。

 そんな夢をサクラはぼんやりと見ていた。

 

 

 ある普通の家庭に一人の男が産まれた。

 両親が居て、弟が居て、男が居る暖かい家庭に。

 生まれた家庭は裕福であり、何も不足する事無く男は両親の愛情を受けてすくすくと成長していった。

 大人になった男は友人や恋人にも恵まれ、一般で言う幸せな生活を送っていた。

 だが、男が成長するにつれて男の中のある想いもまた成長していく。

 

 愛する家族や恋人、友人が自分がこんな事を考えているなんて夢にも思っていないだろう。

 

 その血を見たい、その肉を斬りたい、その悲鳴を聞きたい、という残酷な欲望を抱いているなんて。

 

 始まりは、血が見たい、ただそれだけの衝動であり、釣った魚や捕まえた鳥を解体すれば満足出来ていた。

 だけど、ある日、鳥を解体している時に気が付いてしまったのだ。

 

 鳥の上げる悲鳴が堪らなく愉しいことに。

 

 一度そのことに気が付いてしまえば魚では満足出来なくなった。

 

 獲物は鳥や野良犬、猫に変わって行った。

 殺せば殺す程、彼は様々な殺し方を学び、愉しんだ。

 悲鳴を、刃で切り開く肉の感触と温もりを、刃が当たりゴリゴリと削れていく骨の音を………生命が終わっていく様子全てを愉しんだ。

 

 ああ、愉しい。

 

 それで、男は満足出来ていた。

 出来ていたのだ。

 

 人間なら——人間を殺したなら…一体どれほどの快楽を得られるのだろうか。

 そう考えてしまうまでは……。

 

 ああ、でも、それは駄目だろう。

 優しい両親が男に植え付けた倫理が、殺意を縛りつけた。

 

 それでも、男の中で、殺したいという欲望は膨れ上がり続けた。

 

 そんな男の思考は、ある日、弾けた。

 風船が爆発するように男の思考は弾け、真っ白に染まった。 

 

 そして、目覚めた男の視界を染めたのは、赤、その一色だった。

 家の中に散乱した、血や内臓を見て、男は自分がやったことを思い出した。

 

 そう、楽しそうに両親を殺す自分を、彼は思い出したのだ。 

 突然、ナイフが虚空に生まれて……それで…彼は……我慢出来なくなったのだ。 

 

 どうして……?

 何でこんな事に……?

 

 彼は両親を愛していた。

 憎んでいる部分もあったが、愛していたのだ。

 

 殺したいと思ったことなんて、1000回もない位だ。

 

 それなのに、その筈なのに……鏡に映った男の口端は吊り上がり、愉しそうな笑みを浮かべていた。

 矛盾に満ちた相反する想いが胸の中をかき混ぜ、男の思考を悩ませる。

 

 ——ピンポーン

 誰かが来たことを告げるインターホンの音に、男はゆっくり玄関の方を振り返った。

 際限なく膨れ上がる殺人衝動が、四肢の神経を支配し、体内に流れる血潮を爆発的に加速させる。

 

 これでは、駄目だ。

 取り繕わないと。

 すぐに自分が殺人鬼だという事がばれてしまう。

 

 そう思考した彼は、殺人衝動に蓋をする。

 今にも外れそうな蓋だが、外面を取り繕う位のことは出来るだろう。

 男は小さく微笑み、身体についた血を洗い流す為、バスルームへ向かった。

 

 

 ——そこで夢は途切れ……臓物に塗れた一室で、サクラは黒い霧に包まれ、輪郭しか分からない誰かと対面するように椅子に座っていた。

 一刻一刻輪郭がぶれ、印象が変わり、オーラが変貌し、雰囲気はあらゆるものへと変転していく。

 何なんだろ……?

 

「■■■■■■■■■」

 

 何十にも重なったノイズのような言葉を発する黒い人影がサクラに手を伸ばし……ドロリと泥のようにその形を崩した。

 そして、黒い霧のような形となり、サクラの周囲をクルクルと舞い、虚空に消えた。

 

 

 

 ベッドの上で目覚めたサクラは、明るい太陽の光に目を萎ませながら、夢の中で見た誰かの記憶と黒いナニカをぼんやり思い返した。

 

 ……もう少し良い夢を見たかったな。

  

 ポツリと心の中で不満を呟き、サクラはゴンとキルアの修行の進捗状況を見る為、リビングに向かった。

 

 ……出来てる。

 まだ、ぎこちなさを残すが、一日で形だけでも纏が出来るようになったゴンとキルアを見て、サクラは瞳を瞬かせた。

 

「おはよう、サクラ」

「どう俺たち、しっかり纏出来てる?」

 

 驚愕を隠せないサクラの様子に、ゴンが元気な声で挨拶を行い、キルアがいたずらっ子のような笑みを見せる。

 

「形は出来てる。だけど、練度はまだまだ」

「そうなの?」

「そう」

 

 不思議そうな顔をするゴンにサクラは、はっきり告げた。

 その声音には僅かな嫉妬のような感情が混じっていたのだが、ゴンとキルアが気付くことは無かった。 

 

「でも、その様子なら裏ワザを使っても問題なさそう」

「本当かよ⁉」

 

 興奮した様子で言うキルアにサクラは頷く。

 

「昨日私が思い付いた裏ワザだけど」

「え……それって大丈夫なんだよな……?」

 

 ぼそりと付け足すように言うサクラに、キルアの表情は一気に不安気なものへ変わった。

 

「たぶん…だけど…」

 

 纏を習得したばかりのツェリードニヒに【血濡れた花嫁の束縛】を突き刺しても問題なかった事から大丈夫だとは思うが、なにぶんサクラにとってその裏ワザは初の試み、自信満々に言うことは出来なかった。

 沈黙が場を飲み込み、キルアはじっくりサクラの言葉を吟味し、悩み抜く。

 

「死ぬ可能性はほとんどないんだよな」 

「ん…」

 

 確認するように言うキルアにサクラは頷く。

 

「なら、やってやるよ。それで普通の奴よりも何倍も早く強くなれるんだろ」

「それは勿論」

 

 真っ直ぐ見つめてくるキルアの瞳をサクラは黙って見返す。

 しばらくして、キルアの中で何らかの決心が付いたのか、信用するからな、と言い、緊張を孕んだ視線をサクラに向けた。

 

「キルアがやるなら俺もやるよ。余りサクラの事は知らないけど、信用出来るとは思うから」

「何か根拠はあるのかよ」

「ないよ、直感‼」

 

 間を置かずに言うゴンに、キルアはため息をつき、小さく苦笑を浮かべた。

 その二人の雰囲気に、先ほどまでの緊張感はなかった。

 

 瞳を閉じ、纏に集中する二人を前に、サクラは精神を集中させ、【万能のアンテナ(パーフェクト)】をもう一本具現化。

 その具現化したばかりの【万能のアンテナ(パーフェクト)】を無防備に立ち尽くすゴンの額に突き刺し。ポケットから取り出した【万能のアンテナ(パーフェクト)】をキルアの額に突き刺す。

  

『どこか痛いところとか、違和感を感じるところ、ある?』 

「特に問題ないよ」

「何か変わった気はしないけど、これで強くなれたのか?……いや、ちょっと待て…今ッ⁉」 

 

 言葉もなく、直接頭に語りかけるように、通じたサクラの言葉にキルアは目を見開いた。

 

『凄いや。喋らなくても話が出来るようになってる‼』

『こんな超能力染みた事も念は可能なのか……』

 

 お互いに筒抜けの思考に、キルアとゴンは顔を見合わせた。

 

「これで強くなれたのか?」

「それはこれから」 

 

 はやる気持ちを抑えきれないとばかり聞いてくるキルアをサクラはなだめるように告げる。

 

『そのアンテナの能力のお陰で、今、私は貴方たちに頭の中の言葉やイメージを送信することが出来る。その効果を使って今から私は貴方たちの前で四大行を実演すると共に、頭に私の四大行のイメージ、言葉に出来ない身体の感覚を叩き込む。

 

 一回しか行わないから集中して臨むこと。……準備は良い?』

『大丈夫、準備出来てるよ』

『何時でも構わないぜ』

 

 サクラは常に行っている、もはや当たり前となって言語化出来ない纏のイメージを直接ゴンとキルアの頭に伝え、寝ている間もずっと纏が出来るようにならなければならない事などを説明していく。

 そうして、念の四大行のうち、纏、絶、練の順番にそのイメージと説明を終えたサクラは床に汗だくで倒れ伏した二人の額からアンテナを抜き取り、解除、虚空に消失させた。

 

「当面は纏を滑らかかつ自然に出来るようになる事と、練を最低でも数時間は持続出来るようになる事を目標にしたら良い。伝えたイメージを自分の身体に合うように適用させるだけだから、すぐに出来るようになると思う」

「ということは、後は俺たちの努力次第って事か」

「頑張らないと」

 

 キルアは自信満々の笑みを浮かべ、ゴンは自身鼓舞するように拳を握り締める。

 疲労が抜け、起き上がれるようになったゴンがサクラに笑顔で口を開いた。

 

「しばらくここで修行しても良い?」

「…ん、構わない。でも、私には私の修行がある。付きっきりで見ることは出来ない」

 

 ほんの少し悩むがサクラはゴンのお願いを了承した。

 

「別にそれで構わない。こっちとしては見てもらえるだけでもありがたいからな」

「そう」

   

 本心からそう言うキルアを、サクラは不思議そうに見つめる。

 …意外。

 一言二言の文句を予測していたサクラとしては、内心キルアの意外な素直さに驚きを抱きつつ、部屋の隅で座禅を行い、意識を切り替える。

 そして、心の中にある念空間に自身の意識を沈めた。   

 

 

 天空闘技場。

 賭けた試合を観戦しに行く道中。

 

「やあ、久しぶりだね♠ まさか、こんなところで会えるなんて、やっぱり僕ら運命の赤い糸で結ばれてるんじゃないかな♥」

「…それはない」

 

 ジッと待ち伏せていた癖して空々しい言葉を吐くヒソカに、サクラのテンションは一気に下向した。

 

「そう言えば、僕、君がハンター試験で仲良くしていたポドロとホームコードを交換しあう仲になったんだ♦ 君にも番号、教えておこうか?」

 

 意味ありげな笑みを浮かべたヒソカはわざわざ首を斬るような動作を行い、一枚のトランプを掲げる。

 

「ポドロ…?誰……?」

「…えっ…?」

 

 驚愕に顔を染めるヒソカに、サクラはこてんと首を傾げた。

 

「君がハンター試験で仲良く話していた初老の男なんだけど……本当に覚えてないみたいだね♪」

 

 ヒソカはサクラのリアクションから本当にポドロが誰なのか分かっていない事を理解したか、自嘲するようにクツクツと笑い始めた。

 

 ハンター試験、最終審査。

 ヒソカはポドロを殺害しようとするキルアを止めた。

 勿論、善意からの行動ではない。

 折角見つけた素晴らしい果実たちが自分のあずかり知らぬところで殺し合う可能性を潰す為であり、命の恩人としてポドロとの間に伝手を作る事でサクラとの交渉カードに用いる事のできる可能性を考慮したからでもある。

 

 ああ、だけど、サクラが余り周囲の人間に興味を持っていない事は理解出来た♥

 どうすればサクラを戦闘に持ち込めるのか、ヒソカは考えるが……情報不足としか言いようが無かった。

 

「ヒソカは強い人と闘いたいの?」

「ああ、勿論♠」

 

 期待を込め、ヒソカはサクラに熱い視線を向けた。

 

「それが絶望的なほど強い相手でも…?」

「当然さ♦ むしろ。強い相手ほど興奮するね♥」

「なら、NGLとキメラアント、その2つの言葉を覚えておくべき。数年以内に貴方にとって良いことが起こると思うから」

 

 妙な方向に転がり始めた話にヒソカは訝しげにサクラに探りを入れる。

 

「……それは、僕に対する予言かい?」

「ん……予言みたいなもの」

 

 …予言、予言ね♠  

 ……念…かな?

 予言が現実に存在すると仮定し、一番あり得そうな可能性を考えるが、予言の念なんてあり得るのだろうか?

 ……可能性だけでも、その存在を考えておくべきかな♥

 

 意味ありげな言葉を残すだけ残し、去っていくサクラ。

 ヒソカは不敵な笑みを浮かべ、その後ろ姿を見送った。

 

 

 天空闘技場でヒソカvsカストロ戦が行われ、カストロがヒソカの凶刃に破れたその日の夜、サクラはその戦闘の内容、駆け引きが全く分からなかったから教えて欲しいと言うゴンとキルアに、四大行の応用技であるオーラを見えにくくする技——隠とオーラを目に集中させる事で隠を見抜く技——凝を教えた。

 それから半日とかからずに凝を習得した二人と共に、ヒソカvsカストロの映像を観戦し、その戦闘内容や能力を分析した。

 そのついでにサクラはゴンとキルアに水見式を用いた発の修行法と念の系統図の存在を、【万能のアンテナ(パーフェクト)】を使用せずに教えた。

 

 発とは性格、性質、素養、才能、能力などの個人の影響が一番色濃く出る能力。

 幾らサクラが教えようと思っても教えようがないのである。

 

 故に、サクラは水見式の修行までは見るが、その修行が終われば発の修行は自分で行わなければならない事を二人に説明した。

 

 発の修行を終えて、一ヵ月。

 その間、纏、練、凝の修行を重点的に行ったゴンとキルアは、200階層フロアの住人を相手に快進撃を成し遂げ、幾つもの勝利を重ねた。

 

 その二人の闘いぶりにサクラがそろそろ念の応用を一通り教える事を考え始めた頃、ゴンがヒソカに挑戦し、ヒソカがそれを受け入れたという情報が天空闘技場で流れた。

 この情報にサクラは驚きながらも、すぐにゴンとキルアを呼び出し、その情報の真偽を確認し、真という事を把握した。

 もはや、念の応用を修得させる時間はない事を悟ったサクラは、念の応用技を見せるだけ見せ、口頭で技の効果を説明。

 後は自分たちで修行を進めていくように、と二人に言った。

 キルアはアンテナみたいな裏ワザで修得出来ないのか聞いてきたが、もう既に自分なりのオーラ操作技術を確立しているゴンとキルアに、サクラのイメージや感覚を教えても、成長の妨げにしかならない事を教え、その代わりにこれから試合当日まで実践形式での模擬戦を行うことを告げた。

 

 

 

 誰にも見られず、誰にも邪魔されない、森の奥深く。

 両腰に2本ずつ差した4本の刀とは別に、左手に鞘に納められた刃渡り150㎝ほどの大太刀、【正宗】を握り締めたサクラは、疲労で息切れを起こし、地面に座り込んだゴンとキルアの前の木に腰をかけ、彼らが回復するのを待っていた。

 

「…休憩終わり」

 

 その一言をサクラが言い切る前に、地面に座り込んでいたゴンとキルアは跳ね上がるように立ち上がると同時に流れるように練を行い、構え、臨戦態勢に入る。

 ここに来たばかりの数時間前とは、まるで別人のような二人の対応、動き、オーラ操作技術に、サクラはゆっくり立ち上がり、寒気を感じさせるような薄い微笑みを浮かべた。

 

「——ッ!」

 

 キルアが不意打ちとばかり、休憩している間に拾いあげていた小石を親指でマシンガンのように弾き飛ばしてくるが、サクラは鞘に納められた大太刀を一振りする事で蠅を払うように粉砕した。

 

 粉砕された小石が飛び散る中、ゴンは真っ直ぐサクラとの距離を詰め、キルアは全身の筋肉をバネのように用いる事で地を爆発的な速度で跳躍、木を蹴り上げ立体的に移動する事でサクラの背後に移動。

 前と後ろから挟み撃ちでもするように攻撃しようとするが、サクラはキルアとゴンから見ても、緩慢に感じる速度ですり抜けるように避け、【正宗】の能力を発動。

 柄に触れた右手の指先でバトンでも操るように刀を一回転させ——鞘と地面をすり抜けて下回転した刀身の刃がゴンの股から脳天までを一刀両断した。

  

「がっ……はッッ⁉」

 

 訳が分からない方向からの攻撃。

 切り傷はない。

 しかし、その代わりに、切断された身体の部位に激痛と熱が駆け抜ける。

 混乱する頭、痛みに頭が白く染まり、ゴンは、一度サクラから距離を取るが、戦闘態勢は決して崩さない。

 

 実際に身体を真っ二つに割られた感覚に襲われているはずだというのに、戦闘の構えを取れるゴンの強靭な精神力にサクラは驚嘆した。 

 

「ゴンッ‼——ッ!」

 

 悲鳴をあげるようにゴンの名前を呼ぶ、無防備なキルアの腹にサクラの左手の鞘先が突き刺さり、凄まじい衝撃が背中を突き抜けた。

 

 吹き飛び、背後の木に勢い良くぶつかるキルア。

 ぶつかった衝撃で木がミシミシと音を立ててへし折れるが、キルアの筋肉に致命的な損傷はなく、骨は一つも折れていない。

 

 それは、キルアがサクラの一撃を受け流した事の証明。

 手加減しているとはいえ、サクラの一撃を受け流せるその技量と才能、そして、その動きからこれまで積んできた鍛錬を思い描き、サクラは呻き声一つ漏らさずに起き上がるキルアにゴンに向けるものとは少し違う驚嘆を抱いていた。 

 

 だが、容赦するつもりは無かった。

 

 

 サクラが、軽くトンと地に足を踏んだ地面が爆砕。

 飛び散る小石と土砂に、ゴンとキルアは瞳を腕で庇い、砂埃が視界を覆う中、サクラは隠を行い、自身の気配を四方八方に飛ばす。

 そして、その気配に混じるように軽く足先で地を蹴り、あらぬ方向に視線を向けるキルアに刃を振るった。

 

 何かを感じたのだろう。

 全力で振り向いた、キルアはサクラの姿を視認。

 自身に振るわれた刃を必死で避けようと後ろに跳躍するが、もう遅い。

 サクラの刃がキルアの首をすり抜け、その精神を切断した。

 

「ッ……⁉」

 

 首を押さえ、脂汗を大量に流すキルアを前に、瞬時に隠から堅に切り替え、刀を構えるサクラは、背後の怒りの気配に一歩下がり、半身をずらす。1秒前までサクラの頭があった場所をゴンの渾身のダブルスレッジハンマーがすり抜けていく。キルアに奇襲をかけたサクラを見つけたゴンは、湧き上がる怒りに身を任せ、サクラの背後目掛けて飛び上がり、サクラの脳天目掛けてハンマーのように組んだ両手を全力で振り下ろしたのである。

 

「……不意討ちするなら気配は隠す」

 

 サクラはくるりと身体を回転させ、空中に身を泳がせ、躱しようがないゴンの頭を蹴りあげる。

 

「がっ――」

 

 吹き飛び、勢いそのまま身体を木の幹に打ち付けそうになるが、その直前でゴンは飛んだ意識を覚醒させ、獣の如くクルリと回転し、体勢を立て直す事で木の幹に足から着地。木の幹に足跡がくっきり残るほどの脚力で蹴り上げ、さながら人間魚雷の如く、気を付けの姿勢のまま、頭からサクラに突撃する。が、鞘を手放し無手になったサクラの左手にそっと頭を触れられたその瞬間、力のベクトルを下に捻じ曲げられたゴンは、頭が地面にすっぽり埋まるほどの勢いで顔から地へと叩きつけられ、その意識を闇に落とした。

 その隙を罠であると分かっていながら、自身の技能の全力を用いて狙いをすまし、サクラの背中に貫手を放とうとするキルアの心臓に刃物で刺されたかのような激痛が駆け抜け——キルアの思考は混乱した。

 

「凝」

 

 ぼそりと吐かれたサクラの言葉に従い、反射的に凝を行ったキルアの視界に映ったのは、サクラの背中から突き出し、自身の心臓に突き刺さった大太刀の刃。

 これまでの戦闘からサクラの大太刀が斬りたいものだけを斬る能力を持つことは何となく予測していただけに、こんな運用をされる可能性を思いつけなかった自分に歯がみしつつ、キルアは背後に飛びずさった。

 

 ゴンの首根っこを掴み、地面から頭を引っこ抜いたサクラは地を滑るような足運びでキルアとの距離を詰め、ゆっくりした動作で大太刀を横薙ぎに振るった。

 

 

 ゴンとヒソカの試合、二日前、夜。

 地面に倒れ伏し、ボロボロになったゴンとキルアを前に、サクラは【正宗】を鞘に納めた。

「今日で修行は、お終い」

「「えっ!?」」

 

 上体を上げ、驚くゴンとキルアにサクラは優しい視線を向けた。

 

「明日は明後日のヒソカとの試合に向けて休憩すべき。

 

それに、私はこれ以上教えられない。だから、もし……念の修行をつけてくれるという人が現れたら、私に一言連絡して欲しい」

「うん、分かった」

「連絡すれば良いんだな」

 

 何も疑わずに頷くゴンと素直にサクラの言葉を受け入れるキルア。

 そんな二人にサクラはほんの少し罪悪感を抱くが――その口元は自然と小さく微笑んでいた。

 

 それから二日後、ヒソカに大敗したゴンは、一度キルアと一緒に故郷に帰ることになった。

 

 飛行船に乗り込む二人を見送った後、ジャポンの家に帰宅したサクラは天空闘技場で稼いだ資金を用い、これまで権限不足で見れなかった刀剣を見るための旅を始めるが、すぐにヴィットーリオ・ルッケーゼにヨークシンへ呼ばれる事になった。

 どうやら、ヨークシンで行われるオークションの護衛依頼のようだ。

 これまで、何も依頼をしてこなかったヴィットーリオがどうして今になって依頼してきたのか、サクラは不思議に思いつつ、ヨークシンへ向かった。

 

 

 




天空闘技場編、終了。

一話に一編分詰め込みました。

【正宗】 具現化系
 刀身150㎝ほどの大太刀。
 能力は斬る対象の取捨選択。
 
 斬りたいものを斬り、斬りたくないものは透過する能力であり、その性能は凶悪そのもの。
 相手の防御を無視することや外傷なしに臓器のみを斬り裂く芸当が可能になる。
 また、大気を透過する事でその刃から風を斬る音、大気と刀身の間で生じる摩擦力を消失させる事が可能。
隠と併用すれば、暗殺にもってこいの刀となる。
また、鞘に力を貯め、鞘を透過する事で、デコピンの原理を使った少し変わった抜刀術を放つ事ができる。
 応用次第では幾らでも化ける刀である。 

 【万能のアンテナ】(パーフェクト) 具現化系
 針ほどの大きさのアンテナ。
 能力は受信と送信。
 人に刺せばその人間の様々な情報を受信し、その人間に自身の持つ情報を送信出来るようになる。
 また、物に刺せば、その物から様々な情報を受信する事が可能であり、アンテナを刺した人間からアンテナを刺したパソコンに情報を伝えるなどアンテナとアンテナの間に情報をやり取りする事も可能。
 有効範囲は10m。
 その範囲からアンテナが離れると、所有者の念が届かなくなり、機能を失う。

 情報屋、古時計が使用していた念能力。
 パソコンにアンテナを刺す事でネットから自由に情報を受信していた。
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