【月光の神】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか   作:クックダッセ

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そして、ベル・クラネルは理想を目指す。

「ぐぅぅッッ!!」

 

僕はどうしたら.....!?黒い影は強いわけではない、力も敏捷も高いわけではない。だけど僕が押されてる。相手に技があるわけでもない、なんなら僕の方が神様やレフィーヤに教われてる分僕の方が高い、なのに押される。

 

******

 

相手の腕を斬る、再生し止まらない。

なら足を斬る、転倒するが再生し止まらない。

腕や足を斬るだけでも、精神力が削られる。人ではない、わかっている。頭では理解していてもこれは人だと(・・・・・・)認識させられる。精霊の力だろうか、理不尽もここまでくると笑えてくる。

 

『どうした、ベル。英雄になるんだろ?悪を斬るんだ。簡単なことじゃないか』

 

簡単なわけがないだろ!?人を斬るんだぞ!?

この先なにがあるのかわからない。冒険者になった僕は悪と対峙する可能性のほうが高い。いや、きっとする。その時僕は斬れるのか。それを考えないといけない。

 

悪は僕に抱く感情は殺意しかない。

圧される!!

大きく振りかぶられた、剣で僕の頭を狙って振り下ろされる。黒幻でなんとか防ぐが、重い、重い!こんなに重いのか!!

 

『ベル。お前が思うほど英雄の道は軽くない。酷く茨の道だ。何かを犠牲にして進むこともある。100を助けるために1を切り捨てる選択もある』

 

「ッッッ!!!」

 

鍔迫り合いをしながら、僕は精霊に言われた言葉が頭の中で木霊する。

それが英雄なのか、1を切り捨てる?冗談じゃない!!みんなを守るのが英雄だろ!!これが偽善者と知っていても、僕は偽善を現実にできる英雄になりたい。

 

 

「そんな選択!僕が目指してる英雄じゃない!!」

 

鍔迫り合いで負けていた僕の手に力が入る。膝を曲げ、押されていた体が起き上がる。黒幻に力を入れ、悪をはじきとばす。

 

僕は彼の言葉を聞いた途端、言葉が出ていた。そうだ僕の中で答えは出てた。神様やレフィーヤと過ごしてるうちに、いや、その前から祖父からもお義母さんにも言われていた

 

 

 

 

『これはお前の物語だ』

 

『何を言われようと、ベルはベルだ。何者でもない』

 

 

 

「グッッ....!!!」

 

『...どうして武器を捨てた』

 

僕は武器を捨て、手を広げて彼を止めた。彼は、躊躇なく僕の腹を刺す。

喀血したのがわかる。当然だ、僕の体の中には剣が刺さっているのだから。

 

きっと僕を刺している悪は戸惑っている。殺意も、敵意すらもない。刺した剣を手放し、膝をついた。この悪に顔というものがあるなら、理解ができない様で呆然としているのだろう。

 

「….さっきあなたが言っていた、喋れる怪物(モンスター)がいるならどうするという問いと同じです」

 

『…..』

 

「僕は諦めない。悪人すら仲間にしてしまうような、理想を僕は追い続ける」

 

まだ僕は英雄じゃない、だからこそどんな英雄になるのか僕自身で決めることができる。英雄に憧れた人は可能性は無限大なんだ。

 

悪人は僕が斬ったわけでもなく、精霊が何かしたわけでもなく、光の粒となって空に消えていく。一瞬、表情が見えないはずの悪が笑ったように見えた。

 

僕に刺さっていた剣も光の粒となって消える、傷口は消えず残り僕は腰に刺さっているポーションで緊急処置をとる。

 

『お前は何を目指してる?』

 

「英雄。僕は英雄になりたい」

 

精霊もまた黒い顔で表情が見えないが、ゆっくりと笑った気がした。

精霊は僕と向き合い僕の目を見る。

 

『では最後の問いだ、ベル』

 

先ほどまで戦場だった暗闇世界に静寂が訪れる。

僕は悪い気分ではなかった。僕のやりたいこと、これから目指すもの、やらなくてはいけないこと、それが明確だったから。

 

『英雄とは?』

 

青年(・・)は問いを投げかける。

僕はもう迷わない。

 

「理想家」

 

『ふむ...その心は?』

 

「理想を追い続けることが僕が求め続ける英雄だからです。何かに妥協して、納得して誰かを切り捨てるような僕にはなりたくない。まだ弱くて、何もできないくらいだけど」

 

『「僕は英雄になりたい」』

 

声が重なる。

黒く塗りつぶされていた顔が剥がれていく。

精霊、いや青年、いや英雄が僕の目の前にいた。

いろんな人に騙されて、お姫様が拐われ、なし崩しに助けてしまうそんなおかしな話。そんな英雄が僕の目の前に。

 

「アルゴノゥトさん...」

 

「今はベル・クラネル。だろ?私?」

 

途中から気づいていた。彼が精霊でもなんでもないことを、僕自身なんだって。神様が言っていた。死んでしまった時、100年後か1000年後か、はたまた1万年後に生まれ変わると記憶も一切忘れて、生まれ変わると。

 

だからきっとこの話は忘れるのだろう。けど彼が紡いできた軌跡を僕は忘れない。

おじいちゃんはアルゴノゥトのファンだった。出回っている本の話ではなく、そこにある裏のアルゴノゥトの苦悩を教えてくれた。

 

「私は英雄になる才能(センス)がなかった。喜劇に終わらすくらいでしか私はできなかった。悔しかった、英雄になりたかった。でもねベル。君は英雄になれるよ」

 

「アルゴノゥトさん...」

 

黒い世界が崩れ始める。そして同様にアルゴノゥトさんの体も光の粒のように消えていく。アルゴノゥトさんは僕が捨てた『アルテミスの剣』を拾う。

 

「話は終わりだ。ベル、英雄が理想家と名乗るなら。理想を追い続けろ、挫けてもいい倒れてもいい、けど諦めるな」

 

拾った『アルテミスの剣』を僕に渡してくれる。それをゆっくり手放さないように力を込めて握りしめる。

 

「アルゴノゥトさん、あなたと話せてよかった」

 

「ああ、僕もだよ」

 

黒い世界が壊れると同時に彼もまた消えた。眼前には精霊ルナさんがいた。神様もルナさんもいて僕のことを見守っていてくれた。

あれ?....僕はいったい誰と喋っていたのだろうか。何か大切な話をしていた。

けど心は覚えている。僕がやるべきことも覚えている。

英雄になろう。

理想の英雄に。

 

******

 

アルテミスとルナは想定してなかった。確かに英雄と問う試練だった。けど内容はこんなものではなかった、舞台はダンジョンだったはずだ。けど何者かに介入された。一度は侵入者を追い出そうともしたが、彼の生まれ変われの英雄と分かった時点で、見守ることにした。きっとベルは彼の方が成長できると思ったからだ。

 

だからルナは認めている。ベル・クラネルは英雄に憧れる少年から目指す少年になったと、彼の力になりたいとルナは心の底から思っている。

 

だからアルテミスは恋をしている。真っ直ぐ白き魂を携え、何者にも優しい彼が大好きだと。

 

「ベル、試練突破おめでとう。本当にこの試練で成長したと思うわ」

 

「そうですか?...そうかもしれません。もう迷いません。やることは単純でした」

 

「単純だからこそ、難しい。そうでしょう?」

 

「はい」

 

ルナはベルの胸に手を当て、発光しだす。ベルの眼前には幻想的な光景が映っていた。やがて、精霊は光に包まれ、真っ白な人魂に変化する。ベルの中に入っていく。最後に彼女は、『頑張ってね、ずっとみてるから。またね』と呟いた気がした。

 

「ベル!!」

 

「か、神しゃま!?」

 

「なっ、なっ!何してるんですか!!アルテミス様!はしたないですよ!!」

 

アルテミスは試練が終わると同時に、ベルに抱きつく。ベルの顔はアルテミスの胸に埋まり、ベルの顔は真っ赤になっていた。レフィーヤはベルからアルテミス離そうとして、二人の間に入り込もうとする。

アルテミスはレフィーヤに剥がされてしまい。若干膨れっ面だったが、ベルとレフィーヤのステイタスを刻む。

 

レフィーヤ・ウィリディス

Lv.2

力 : B 800→B 823 耐久 : D 694→C 712 器用 : C 782→B 804 敏捷 : B 801→B 834 魔力 : B 832→B 854

《魔法》

【アルクス・レイ】

・単射魔法。

・標準対象を自動追尾。

 

【トニトルス】

付与魔法(エンチャント)

・雷魔法

・詠唱式【雷よ(トゥルエノ)

 

《スキル》

妖精追奏(フェアリー・カノン)

 

魔法効果超上昇

 

「これまた随分と…」

 

彼女もまた成長したな。とアルテミスはふっと微笑む。やはり追い詰められ、乗り越えた先は、成長を促す。子供達の成長は本当に早い。

 

「よし、次はベルだ!」

 

ベル・クラネル

Lv.1

力 : B 724→S 902 耐久 : C 648→A 878 器用 : C 697→S 900 敏捷 : A 809→S 976 魔力 : G 290→ F 344

 

《魔法》

【オリオン・ヴェロス】

・破邪の一撃。

・誓いによって威力上昇。

・誓いによって消費魔力上昇。

 

【フォティノス】

付与魔法(エンチャント)

・光魔法。

・詠唱式【光よ(セラス)】。

 

《スキル》

英雄憧憬(ヒーロー・フレーゼ)

・早熟する。

夢見(おもい)がが続く限り効果持続。

・夢見の丈により効果向上。

 

「うわっ」

 

アルテミスからの第一声である。

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