【月光の神】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか   作:クックダッセ

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書きたいものが多すぎて、辛いとはこのこと。
モンスターフィリアを長くするわけにはいかないので前編後半で締めさせていただきます。ベルとアルテミスとレフィーヤのイチャイチャは外伝として出します。いつかはわかりませんが。

とりあえず前編です!どうぞ!


僕の初めての怪物祭(モンスターフィリア)

レフィーヤさんの過去を聞いた。僕は泣いていた。きっとレフィーヤさんは悩んで、足掻いて、そして決断した。僕なんかよりもずっと大人でなによりも残酷な世界をこの目で、いや体でわかっていると思う。

 

「レフィーヤさん.........」

 

「すいません、なんか辛気臭い話しちゃって......」

 

レフィーヤさんが宝石のように光っていた瞳を指でぬぐい、元気に振る舞う。多分レフィーヤさんは炎龍を倒すまで、いやこの過去をずっと忘れることはできない。けれど........

 

「レフィーヤさん!」

 

「はい?なんでしょう?」

 

「僕はレフィーヤさんが炎龍を倒すところをこの目で見てみたいです」

 

レフィーヤさんは驚いた顔で僕を見つめる。僕はこの言葉だけを伝えればよかったのに、僕の口は止まらなかった。

 

「だから.........僕と一緒に強くなりませんか?............って何言ってるんだ僕!当たり前のことですよね!?ごめんなさい!変なこと言って!」

 

レフィーヤさんは僕の慌てる姿を見て、一呼吸おいて笑い出した。僕はその姿を見て呆気に取られて慌てるのをやめていた。

 

「ンンッ!...........そんなこと言ってくれる人がいて嬉しいです。ラキアにもそんな人いなかったので」

 

「そ、そうなんですか」

 

ラキアという国では結構大きいとさっきレフィーヤさんの話で察したが、そのくらい大きい国ならば強くなろうとする人がいるのでは?と疑問に思ってしまった。

 

「だからあなたみたいな人と出会えてよかったです」

 

眩しいくらいの笑顔で呟いた。目が腐っていたと言っていたレフィーヤさんがいたらしいが、そのレフィーヤさんがどこに行ったのか教えて欲しいくらいだ。レフィーヤさんの目標は炎龍を倒すこと、倒したあとはどうするんだろうか、ラキアに帰ってしまうのかな。なんて僕は考えてしまう。

レフィーヤさんは「それと」と付け加え、口を開く。

 

「同じファミリアなんですから、レフィーヤでいいですよ、私もこれからベルって呼びますから敬語もいらないですからね」

 

レフィーヤさんに笑顔でそう言われた、ギュッと自分のズボンを握って、僕は勇気を持って言葉を口にする。

 

「わかったよ、レフィーヤ」

 

「はい、よろしくおねがいします。ベル」

 

******

 

ダンジョン探索もある程度進んできた。レフィーヤがいることで少し手こずるモンスターも軽々倒せるようになってきたし、何よりレフィーヤの戦い方は見ていて勉強になることがわかった。

 

「剣の振り方はこういう動きの方がいいです。ああ、違いますベル!こうですもっと脇を閉めて、そうそうそんな感じです」

 

僕が『黒幻』を抜いてウォーシャドウと戦っている時、レフィーヤは後ろから指導をしてくれていた。

レフィーヤは魔法も使えるのに主に戦っているのは、魔法ではなく剣術。僕はそれを見ていてすごいと思っていた。レフィーヤは魔法が二つある。よく使ってくれる、援護魔法。そしてもう一つが。

 

「『アルクス・レイ』!」

 

眩い光と共にウォーシャドウを焼き消した。彼女の唯一有してる攻撃魔法がこの魔法だった。モンスターが多少いる時や僕が前線を張ってくれてる時に使ってくれる魔法。並行詠唱は今練習中らしい。

 

「ふう、そろそろ切り上げてアルテミス様のところに戻りましょうか。お腹も空きましたし」

 

「うん、そうしようか」

 

地上では日も落ち始めているので、僕たちはダンジョン7階層をから地上へ向かう。地上へと抜け出す道はいつもこの時間は人は混んでいて、多くの人がダンジョン探索をやめ地上へと帰還する。

 

そして僕とレフィーヤが見たのは檻に入れられたモンスターだった。それも何体もモンスターの入った檻達があり、それがガタガタと動いていた。レフィーヤは「ヒッ!?」と声に出して驚き、僕は少しギョッとしてしまった。

 

「レフィーヤあれ何かわかる?」

 

「し、知りませんよ。ベルの方が長くオラリオにいるんですから私が聞く会話(セリフ)でしょう!」

 

「うっ、それを言われると....」

 

僕とレフィーヤは檻に入ったモンスターを気味がりながら地上へと帰還する。僕は帰ったら神様に何が起きるのか聞いてみることにした。

 

******

 

神様はシフト終わったので、お風呂に入り、その間僕たちはホームで夕飯を済ませていた。それで僕はシフト終わる寸前に僕は神様に先ほど見たものを聞いていた。

 

「あれは、怪物祭(モンスターフィリア)というものだ」

 

「「怪物祭(モンスターフィリア)?」」

 

神様は頭をタオルで髪が痛まないように優しく拭いていた。神様は寝巻きに着替えていて、いつもの神様の服やバイトの服よりも肌の露出が増えていて、やっぱり何度見ても慣れない。しかもお風呂入ったばっかりだから少し色っぽく......って!神様に何考えてるんだ僕は!?

 

「【ガネーシャ・ファミリア】主催のお祭りだ。モンスターを調教する姿を見せる催しだ」

 

「モンスターを調教......なるほど。そのためにモンスター檻の中に入れて地上まで運んでたんですね?」

 

レフィーヤが顎に手をやり少し考えた後、レフィーヤはポンと手を打って納得のいった顔をしていた。

 

「私も下界に降りたばかりの身でな、あまり詳しくは知らない。けれど屋台とかを出したりするそうだぞ」

 

「屋台ですか!僕オラリオに来てからお祭りって初めてなので楽しみです!」

 

「もういく気満々なんですかベルは......まあ私も楽しみにしてないと言ったら嘘になります」

 

レフィーヤはそのあとモジモジしだし頬を赤く染めていた。僕に言いたそうな顔で視線を下にして、恥ずかしそうにしていた。そんな姿を見ると僕も恥ずかしくなるからやめて!?

 

「ベルが誘ってくれるなら、ベルと一緒に回るのもやぶさかではないというかなんというか........」

 

こ、これは正式なお誘いなのだろうか!エルフの女の子と二人きりで回るなんてこれはお祖父ちゃんがいう『でーと』というやつなんだろうか。いけ、ベル・クラネル!勇気を持つんだ!

 

「え、えっと.......なら僕と一緒に回ってくれませんか?」

 

多分僕の顔は真っ赤になってることだろう。その顔を隠すために、僕は下を向いて返事を待つ。こんな誘い方でいいんだろうか......

 

「しょ、しょうがないですね。断る理由もないですし!」

 

レフィーヤは軽く唇をとんがらせながら、僕の誘いに乗ってくれた。すると神様は僕たちが座っている食卓に座り僕と神様は向かい合うように座った。しかもドカリと効果音付きで。

 

「あー私もその日は暇でなー、うむ、暇だな。バイトも休みだし暇で死んでしまうかもしれない。どうするかな。暇だしな!」

 

チラッチラッと僕の方を気にしながら大きな声で独り言をしていた。多分独り言だよね?僕にほうたまに見てるのは僕に話しかけてるわけじゃないよね?

 

「えーっと、なら神様も一緒に行きますか?」

 

「なら?ならだと」

 

「うわ、めんどくさ、この人」

 

僕と問いに不満があったそうで、神様は僕にちゃんと誘えと言ってるようで、最後にレフィーヤの本音が神様に届いた。神様の隣にいるレフィーヤの頬を、横に大きくつねっていた。

 

「レフィーヤが言うな!大体いつ名前で呼ぶようになったんだ!」

 

「おふあびふあひりあなんふぇふからほうふぇんふぁふぇふは」

(同じファミリアなんですから、当然じゃないですか)

 

レフィーヤは神様に手をあげるわけにはいかないので、神様の手を掴んでこれ以上引っ張れないように抵抗していた。なんとかこの場を収めようと僕は神様に手を出して、正式に誘いを出すことにした。

 

「神様、僕と一緒にお祭り回ってくれませんか?」

 

神様はレフィーヤの頬を引っ張るのをやめ、その間にレフィーヤが逃げ出し、赤くなった頬をさすっていた。神様はクスッと笑ったあと僕の手を取ってくれた。

 

「ああ、一緒に回ろう」

 

神様は太陽のような笑顔で僕に微笑みかけてくれた。そのとき僕はドキッとしてしまった。やっぱり神様はやっぱり魅力的な人だ。怒ると怖いけど、こんなに可愛らしい笑顔ができるんだ。

 

「だがな、ベル」

 

僕の手を離し、ダンッと食卓を叩き食器が跳ねた。ピキリと空気が変わる。

 

「まず主神である私を誘うのが当然ではないのか?なぜ二人だけで回ろうとしていた」

 

「ヒッ!?ごめんなさいぃ!?」

 

目も顔も笑顔ではなかった。単純に怒っていた。た、確かに僕が悪いけどそんなに怒ることですか!?

そのあとすぐに落ち込んだ表情で唇をとんがらされた。

 

「私が勝手に除外されているのは、寂しいぞベル」

 

「か、神様」

 

そういえばまだ住んで1ヶ月も経ってないけど、少しは神様のことをわかった気がする。いつもカッコいい神様の反面、女の子の反面もある神様だった。神様は甘いものも好きだし、可愛いものも好きだったりする。今もこうやって拗ねたりしているのだから。

 

「ごめんなさい神様。決して誘いたくないから言わなかったわけじゃないんです。神様いつも忙しそうだから、何か予定がまだ詰まってるのかなって思ってしまって、それで少し誘いずらかったんです」

 

「それでも強引に誘ってくれたらすごく嬉しいと私は思う........特にベルにならな」

 

「か、神様......」

 

「ベル.........」

 

「ちょっと!二人だけの世界に入らないでください!!私も怪物祭(モンスターフィリア)行くんですからね!?」

 

レフィーヤが食卓を先ほどの神様みたいに叩く。僕は無意識のうちに神様と見つめ合っていたみたいで神様の顔が近かったので慌てて退く。神様も「すまない!」なんて慌てて後ろは引いて行ってしまった。少し僕と神様は気まずい雰囲気になり、この空間に沈黙が訪れ、無理やり僕が会話を繋げてなんとか気まずさから脱出した。

 

******

 

都市が騒いでいた。比喩ではない。実際に大通り(メインストリート)には出店がたくさん並び、この祭りの時はダンジョンに行く人すらほぼほぼいなく、祭りを楽しむ。出店に並ぶ美味しいものを買ったり、今が売り時だといってジャガ丸くんを売り出す武神。などなどこの怪物祭(モンスターフィリア)に乗じて皆が皆祭りを楽しむ。ガネーシャが保有する、闘技場ではモンスターの調教などを行なっている。それがこの祭りの主食(メイン)。やはり毎年満席恒例。このオラリオの一つの大きな行事だ。

 

そしてベルはこの祭りの温度に圧倒されていた。ベルは山奥の田舎で住んでいたためこんなに人が集まってるため圧倒され、アルテミスはむしろ圧倒というか興奮の方が近い、天界に降りてきた愛する下界の最初の祭り、アルテミスは現在「あれはなんだ!!この料理はなんだ!!」と騒ぎ立てながら出店を見ている。レフィーヤはというとラキアの祭りを何度も経験してきたので、それほど驚いてはいなかった。きっと故郷で暮らしていれば、ベルのように圧倒されたに違いないが。

 

「ベル!!レフィーヤ!!早く回ろう!せっかく私が休みをもらったのにお店の前で立ちすくんでいたらもったいない!早く行こう!」

 

「うわわわわっっ!?か、神様引っ張らないでくださいぃ!?」

 

「あ、待ってください二人とも!!」

 

興奮気味のアルテミスに手を引かれて、慌てるベルと置いてかれるレフィーヤを豊穣の女主人から眺めている人物がいた。手を腰におき、苦笑いしながら見つめている。ミアと羨ましそうに指を加えるシルとなんの表情もしないリューが見つめていた。

 

「あの神は働いている時はすごい威厳が高いんだけど、こういう祭り行事には弱いのかね、この先もオラリオには祭り行事あるから働いてもらわないと困るんだが」

 

「ミア母さん。あれはきっと興奮してるんですよ、ベルさんと一緒にいるから多分とっても興奮してるんです。私も同じ立場ならはしゃいじゃいますよ」

 

「ならばシルも休みをとっていけばよかったではないですか。クラネルさんなら歓迎してくれるでしょう」

 

「バカ言ってんじゃないよ!これ以上あんたらが減ったらだれが料理を届けるっていうんだい!あの神のかわりにお前たちには倍働いてもらうよ!いいね!!」

 

それだけ言うとミアは厨房の中へと戻って行った。シルさんは「はあっ」とため息をつき皿洗いに戻る。リューもシルと一緒に皿洗いの手伝いをしに行く。そして猫二人は「横暴ニャ!?絶対あのポンコツ神帰ってきたら、指弾き(デコピン)してやるニャ!!」「やることがしょぼいニャ、なんだったらあのリュー2号が皿を割った枚数を客に教えてやるニャ」「「ニャハハハハハ!!」」

と笑っているとそのあとすぐミアが現れて、タンコブをつけて接客することになる。

 

******

 

「神様、食べ過ぎじゃないですか?」

 

「祭りなんだ、別にいいだろう。それに神は不変の存在だどれだけ食べても太ることはない。構わないだろう?」

 

「ほんと、神様って羨ましいです.......」

 

ベルたちは屋台でたくさん食べ物を買ったので、(主にアルテミス)人がいない場所で座りながらご飯を食べていた。

ベルが食べ過ぎのアルテミスを少し心配そうに注意し、アルテミスはイカ焼きとかクレープとかジャガ丸くんなどなどを食べ、レフィーヤはアルテミスからもらったクレープをハマっと頬張りぼやいた。

次の瞬間アルテミスは短剣を構える。その方向はダイダロス通りにつながる細路地。ベルとレフィーヤはギョッとし細路地を見つめる。しかし何もいなく暗がりの路地が続いてるだけだった。

 

「ベル、レフィーヤ。この先にモンスターがいるぞ」

 

「「ッ!?」」

 

アルテミスは短剣を収めると、ベルとレフィーヤの顔を見る。ベルとレフィーヤはアルテミスの口から思いもよらない言葉が出てきてギョッとしている。

 

「ほ、本当にモンスターだったんですか?」

 

レフィーヤが恐る恐る尋ねると、アルテミスはコクンとうなずきベルとレフィーヤはゾッとする。この先にはダイダロス通りといわれる民家が広がっている。けれどダイダロス通りは広大な上に道が入り組みすぎている。まるでダンジョンを彷彿とさせるような場所であった。

 

「この先は民家がある。大通り(メインストリート)の人は相変わらず祭りを楽しんでいる。つまり混乱(パニック)に陥ってないそれが幸いではあるが、冒険者をギルドが秘密裏に動かしているか、それともギルドさえも気付いてないのか。全くガネーシャは何をしている」

 

アルテミスは今見たものの考察を落としていく、アルテミスの言うとうり混乱(パニック)に陥ってないのは幸いだろう。もし混乱(パニック)に陥っていれば人は入り乱れ、良きもしないところで怪我をするかもしれない。

 

「ベル、レフィーヤ。お前たちは戦える者たちだ。ならばお前たちは市民を守ることができる。ならばお前たちはどうする?」

 

「「当然やります!」」

 

「それでこそ私の眷属だ」

 

ベルとレフィーヤの強い意志を聞いて、アルテミスはにっこりと笑い細路地に向き合う。アルテミスが先頭で先は進んでいく。

 

******

 

「随分と進みましたね」

 

「モンスターと合わないってすごく不思議じゃないですか?」

 

ベルたちは先へと進み、ダイダロス通りにもう入っていた。アルテミスが先頭で歩きその後ろを護衛としてベル、レフィーヤが守っている。いまだモンスターの気配はない。

だが広場にでるとそれはいた。

 

『アァァーーーーーーーーーーー!!」

 

「..............」

 

「モンスターが共食い!?」

 

「ウッ..........!」

 

緑の木のようにレンガでできている地面を突き破り、下から上まで大きさ(サイズ)はざっと7メートル。黄緑色の長軀の食人花がそこにはいた。そして食人花は白い体毛をしたモンスター【シルバー・バック】を食していた。モンスターがモンスターを食べる共食いはベルたちには聞いたことも見たこともなかった。

 

「ベル!レフィーヤ!来るぞ!!」

 

「神様!?」

「アルテミス様!?」

 

新たな獲物を発見した食人花は左右から出ている触手を繰り出す。アルテミスはその行動をベル達に知らせると短剣を抜いて構えた。全知全能の神だが下界では(アルカナム)を封印されてるため身体能力はただの一般人となんら変わらない。その神が戦おうとしているのだベルとレフィーヤが声を荒げるのも不思議でもない。

 

「こんのおおおおおおおおおおおッッ!!」

 

「「ベル!!」」

 

ベルは黒幻を構え、アルテミスを狙う触手を横からステイタスを込めて全力で斬りつける。だが硬すぎた故に、傷さえも負わせることも出来なかった。なんとかアルテミスにぶつけないように触手の攻撃を横に晒すことができたが、反動がデカい。手が痺れ後ろへ戻される。

だがベルはそのままおかまないなしに、食人花に突っ込んでいく。

 

「【我は望む 汝らが燃え尽きぬことを 約束しよう 我の魔法をもって全てを守ろう】」

 

『!!』

 

レフィーヤはこのままだとまずいと思い、詠唱する。ベルを狙っていた触手がレフィーヤに反応をしめした。まるで魔法に釣られるように。

 

「レフィーヤ!!魔法を解け!!」

 

「!?」

 

レフィーヤは言われるがまま、魔法を解く。すると触手は反応を示していたレフィーヤよりも接近してくるベルに触手を戻す。ベルはなんとか後ろに後退して、なんとか難を逃れる。

 

「あいつは魔法に反応を示す!!前衛職(ウォール)がいない今では、魔法は禁止だ!」

 

「そ、そんな!?こんなモンスター相手私たちじゃどうすることも!..........ッッ!!弱音を吐くなレフィーヤ・ウィリディス!!ベルは諦めてないんです!私も!」

 

レフィーヤは自分の頬を叩いて気合を入れたあと、レフィーヤはベルについていくように、前へかけていく。だが戦力は歴然。Lv.1のベル、Lv.2のレフィーヤ。しかもベルに至っては神に恩恵をもらったばっかりの半人前。レフィーヤでさえも、モンスターとの経験不足。そのため懐に入ることすら許されない。触手の攻撃も見切ることも出来ない。ベルは攻撃がかすっただけで吹っ飛び、足に力を入れないと立つことさえも出来ない。勝てない、このままでは蹂躙される。

 

アルテミスは焦った。いざとなれば(アルカナム)を使うことも考えているがそれは最後の最後の手段。細路地でアルテミスが見たのはシルバー・バックだった。それならば彼、彼女らで難なく仕留めることができた。しかし待ち構えていたのは推定Lv.4。彼らが協力したところで勝ち目がない。

 

だからこそ今アルテミスは決断を迫られている。アルテミスが(アルカナム)を使ったとしても天界に戻るだけ、上からベル達のことを見守ることはできる。けれどそれでいいのか?と心が訴えかけている。愛すべき眷属を見つけこれから面白おかしく暮らせるかもしれない環境が整った今。アルテミスは顔を顰めて決断を迫られていた。

 

さあ、今こそ決断を、さあ!決断を!

 

ーーーーー私は.........私は!!ーーーーーー

 

「どりあああああああッッ!!」

 

「「「!?」」」

 

瞬間食人花が吹き飛んだ。横から咆哮に似た声と共に横にしなる。その正体が【ロキ・ファミリア】所属。【大切断(アマゾン)】ティオナ・ヒリュテが拳で吹き飛ばした。なんの装備もしていない拳で吹き飛ばしたのだ。

 

「かっったああああああッ!?何これ!?」

 

ティオナは瞳に涙を浮かべて、手をぶらぶらさせていた。アルテミスたちは呆然として、言葉を失っていた。

 

「ティオナ!先に突っ込むんじゃないわよ!!」

 

「.........でも無事でよかった」

 

そのあと家を超えて、天高く着地したのは【怒蛇(ヨルムガンド)】ティオネ・ヒリュテ。そして【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。【ロキ・ファミリア】幹部三人が彼らの前に集結した。

 


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