【月光の神】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか   作:クックダッセ

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これで怪物祭終わりです!


僕と神様の秘策

「君たち大丈夫?」

 

ティオナ・ヒリュテさんが僕に手を伸ばす。僕の体はすごくガタガタで、身体中は傷だらけなのだが、僕の体だけではなく、レフィーヤの体は僕よりは流石にひどくないが、生々しい傷が現れていた。

 

「あ、すみません。あ、ありがとうございます」

 

「いいよ!でも君すごいね!」

 

「へ?」

 

僕はこんなにボロボロになっている僕をすごいと言ってくれるのはなぜなのだろうと思考を巡らせていると、ティオナさんが僕の顔を見てにっこりと笑った。

 

「だって君冒険者になってまだ全然時間経ってないでしょ?あんなモンスター私見たことないけど、あれ相当強いと思うよ」

 

ティオナさんは僕の肩をポンポンと叩いて、ティオナさんは僕の前に立ちモンスターと接敵した。

 

「だから、生き残ってるのがすごく、すごいってこと!」

 

ティオナさんはアイズさんとティオネさんの元へ駆けて行き、モンスターを屠りに行った。僕は少し顔を赤くしながら、動けずにいると神様とレフィーヤが僕のことを介抱するように、近寄ってきてくれた。ティオナさんが駆けに行ったあと、食人花は魔石だけ残し屠られた。

 

「まあ、こんなもんかしらね」

 

「うん、みんな無事でよかった....」

 

ティオネさんがゆっくり落下しながらやれやれと呟いた。アイズさんは剣を一振りしてから鞘に収める。そして僕たちの方を見ながらゆっくりと近づいてくる。

 

「あの、私君に謝りたいことがあって」

 

アイズさんは僕たちの方に近寄ってきて、レフィーヤでも神様の方でもなく、僕の方へと目を向けた。

 

「私あの時ひどい.......「アイズ!!」......え?」

 

「うげぇ!嘘でしょ!?」

 

アイズさんを叫んで呼んだのはティオネ・ヒリュテさんだった。ティオナさんもティオネさんの叫んだ理由がわかったようで、ティオナさんは驚いていた。

僕もアイズさんも神様もレフィーヤも釣られるようにティオネさん達が見てる方を見ると先ほどの食人花が10匹ほど存在していた。

 

「あんたら!神を連れて逃げなさい!この数は流石にあんたらを守りながら戦えない!死ぬわよ!」

 

ティオネさんの叫び声を聞いたあと僕は自分の弱さに痛感した。もし僕もあの人たちのように強ければきっと一緒に戦うことができたはずだ。けれど言われた。またあの時のように弱いと。

決してティオネさんはそんなつもりは一切ないのは知っているけど........けど、やっぱり悔しい!!

レフィーヤも下唇を噛み、悔しそうにモンスターを見つめていた。やっぱりレフィーヤも同じ気持ちなんだ。けど神様を死なせるわけにはいかない何がなんでも守り抜くと、神様と家族(ファミリア)になった時そう誓ったから!!

 

僕はボロボロの体の足に力を込めて立ち上がる。神様の手を引き、逃げるように戦場から駆け出す。ギルドに行けばエイナさんがいる!ダイダロス通りに凶悪なモンスターがいると言えば対応してくれるはずだ!

僕は広場から離れて、通路に抜け出せるところで見たことない緑色の壁が広がっていた。まるで僕たちを逃さないように。

 

「レフィーヤ!!他の通路は!?」

 

「ダメです!ベル!アルテミス様!上を見てください!」

 

「「ッッ!?」

 

広がっていたのは円型(ドーム)のような形で広場を丸々覆っていた。緑壁が僕たちを逃さないように。確かにこのモンスターが出てからおかしいところは思い返せばあった。みんなの顔が暗くなったり、影がなかったりなど、思い返せば確かにあった。あれは日が落ちたんじゃなく、日が隠れた。確かに日は傾きじめている時間帯だけど、まだ日没ではない。僕達はこのモンスターに捕まったのだった。

僕とレフィーヤは弱い冒険者。やることもなく、むしろこの空間にいれば邪魔をすることは歴然だった。【ロキ・ファミリア】の方達は多分僕たちを送り出したあと気づいたと思う。けれど余裕がないの現れではないのだろうかと僕は思った。今も食人花の猛攻になす術なく、受け流すだけ。きっと僕たちがいるから攻めきれない。

 

「ロキの子供達!時間を稼げるか!」

 

僕が考えあぐねていた時に神様は声を荒げた。【ロキ・ファミリア】の面々も答える余裕がないのか、答えはなかった。それを察したのか神様は一呼吸おいた。

 

「5分だ、5分稼げばどうにかできるかもしれない。だから私たちを守ってくれ」

 

「「「了解」」」

 

【ロキ・ファミリア】の方達は神様の言うことを信じて、僕たちの方へと絶対に攻撃をこさせないように攻撃を受け始める。

 

「ベル、今ここでステイタス更新する」

 

神様の言ってることが理解できなかった。

 

******

 

「ベル、お前ならやれる。あのモンスターは今いる冒険者の中ではベルしか倒せない」

 

言われるがままに、ベルとアルテミスはしゃがみ、ベルのステイタス更新をしていた。

アルテミスはベルにしか倒せないとそう断言した。アルテミスはステイタス更新する時、確信していたのだ。ある魔法が発言することを。その理由はただ直感したから。強いて言うならある魔法はアルテミスの半身でもあるからだ。

 

「で、でも僕はまだ弱くて!あの【ロキ・ファミリア】の皆さんでもでも攻めあぐねてるのに僕なんかじゃ!」

 

ベルはそのアルテミス発言を否定した。ただの冒険者のなりたての子どもがどうにかできる相手ではない。ベルのスキルを活用して、短期間で強くなったとしても、半年ほど経ってから通用する相手だ。

今現状では、アルテミスの発言のおかげかベルの方角には一撃の攻撃も来ていなかった。理由としては、アイズが魔法をたまに使いながら、ベルのステイタス更新を邪魔させないようにし、ティオネやティオナはベルに飛んでくる攻撃を防いだりしていた。

 

「これを見ろ、ベル」

 

「これは!?」

 

ベルが受け取ったステイタスの紙におどろきを隠せなかった。

 

ベル・クラネル

Lv.1

力 : F 347→E 417 耐久 : G 284→F 352 器用 : F 315→F 396 敏捷 : E 473→D 532 魔力 : I 0

《魔法》

【ガウス・オリオン】

・破邪の一撃。

・誓いによって威力上昇。

・誓いによって消費魔力上昇。

詠唱式

【悠久の空 恵みの大地 大いなる森 純潔の月 いかなる権能をも弾く聖なる領域 聖なる貞潔 あらゆる権能をも貫く至高の矢 至高の鏃 我が名はオリオン 天上の射手 月は弓 星は弦 誓いは矢 来たれ破邪の一撃】

《スキル》

一途憧憬(リアリスフレーゼ)

・早熟する。

・懸想おもいが続く限り効果持続。

・懸想おもいの丈により効果向上。

 

「これが初めての僕の魔法.......」

 

「私はこの魔法を知っている、私はこの矢を知っている」

 

アルテミスはベルの背中に体を預けて呟く。ベルの背中には女の子独特の柔らかさと、暖かさを感じているだろう。ベルはその感触を感じると顔が熱くなった。

 

「この矢は全てを貫く。ベルの誓いが強ければ強いほど、どんな敵でも打ち滅ぼすことができる」

 

「か....み...さま?」

 

ベルは戸惑っていた。この魔法を知っていることに、本来魔法は神でさえも子供達に発現した魔法はおおよその見解はできる、だが全てわかるわけじゃない。けれどアルテミスはそれを見たことあるかのようにベルに話しかけていた。

 

「ベル。誓いはなんでもいいんだ。誰かを守りたいとか勝ちたい人がいるとかどんな誓いでもいい」

 

「ベル。お前はあのモンスターを倒したいか?」

 

「倒したいです!こんな弱い僕でもあのモンスターを倒したい!」

 

この言葉をベルはすぐ口にすることができた。ベルは立ち上がり、アルテミスの方を見て叫ぶ。勝ちたいとそう叫んだ。

 

「なら、なぜ倒したいと思ったんだ」

 

「..........助けたい人がいるからです」

 

ベルはアルテミス様の顔を直視しながら、答えた。アルテミスも真剣な眼差しでベルのことを見る。自分の子どもの答えを聞かなくてはいけない。

 

「レフィーヤも必死で戦ってる。それに【ロキ・ファミリア】のみんなだって戦ってくれてる。......助けたい。僕はあの人たちを助けたいんです!」

 

ベルは誓いをアルテミスに向けてぶつける。高揚して息が荒くなる。息を少し整えてからベルはまだ助けたい人がいると呟いた。

 

「そして、何より......神様を助けたいんです!!」

 

ベルは顔を赤くしながら最も助けたい人をアルテミスに告げた。今の今までベルと一緒にいた女の子を。ベルが困ったときは時に厳しく、時に優しく導いてくれた神様を。ベルはなによりも助けたいとそう告げた。

 

「ああ、嬉しい。これほど幸せなことはない。ベルが私を想ってくれていることを知って、こんなにも嬉しくなるものなんだな」

 

アルテミスは破顔した笑顔で、立ち上がりベルの両肩に手を置き、顔を近づけて微笑みながらベルに告げる。

 

「その誓いをわすれるな。さあその誓いを叫べ!ベル!」

 

「はいっ!!」

 

ベルはモンスター達と向き直して、決意に満ちた表情をしている。そして目を閉じ、右手を前に突き出し、今の今まで出来なかったことをする。

 

「【悠久の空 恵みの大地 大いなる森 純潔の月】」

 

詠唱だ。ベルは今の今まで詠唱なんて縁がないもので、みるだけのものだった。けれど今のベルならできる。

 

「【いかなる権能をも弾く聖なる領域 聖なる貞潔】」

 

突き出した右手に光が宿る。キラキラと光る蒼い星の粒のようなものが何かを作ろうと無象無象に動く。

モンスター達は魔法を使ってる彼女(アイズ)以外の一人の存在に気付いた。モンスター達はベルの方へと標的を変えようとする。

 

「ッッ!?ロキファミリアの皆さん!あのモンスターをベルの方へ近づけさせないでください!!」

 

レフィーヤがモンスター達を見て、ロキファミリアに叫ぶ。モンスターがベルの方へと向かおうとした時、二つの同時衝撃によって押し戻される。

 

「言われなくてもッ!」

 

「わかってるんだよそんなことッッッ!!!」

 

ティオナが詠唱を聞いて笑顔で、ティオネはモンスターに激情しながら行動した。

レフィーヤに言われる前に、足が動いたのはベルを守る以外にも一つあった。この魔法が全てを変えることができるかもしれないという第一級冒険者の直感だった。

 

「【あらゆる権能をも貫く至高の矢 至高の鏃】」

 

(ロキファミリアの皆さんが僕を守ってくれている。これほど安心するものなんだ)

 

ベルは魔法が初めてのため、集中するため目を瞑って詠唱しているが、きっと眼前ではロキファミリアのみんなが守ってくれていると確信していた。

 

「【我が名はオリオン】」

 

ベルは目を開ける。そこには醜悪なモンスター達と戦う冒険者の姿がそこにあった。殴りすぎて、拳が潰れてきてるアマゾネス姉妹。剣で押し返すが触手により傷だらけになりながらも戦う剣姫。三人の補助を魔法でしながら、冒険者の端くれとして少しでも役に立とうとするエルフ。

 

今ベルの右手にはみんなを守るための誓いが宿っていた。

 

(あれは鉄槍?けどなんか神聖なものの感じがする。ただの鉄槍じゃない!)

 

レフィーヤがベルの魔法の姿を見た。その姿はただの鉄でできたような鉄槍だった。しかしその鉄槍は眩い蒼い光の(ライン)が刻まれていた。正体は

神聖文字(ヒエログリフ)

けれど一つレフィーヤの思うところに間違っているところがある。あれは槍ではない。正確には矢。あれはオリオンの矢であり、誓いの矢。

 

ベルがアルテミスを想う心があり、アルテミスもベルを想っているから発言した魔法。そしてアルテミス眷属であるからこそ発現した魔法。断言できる。この魔法は、この世の中で一番神秘的な魔法。アルテミスとベルだからこそなせる魔法。

 

「【天上の射手 月は弓 星は弦 誓いは矢 来たれ破邪の一撃】」

 

ベルは光の粒から具現したオリオンの矢をしっかり握りしめる。

 

そして疾走する。

 

「いけ、ベル。いつになるかはわからないが私のベル・クラネルはきっと誰にも負けないすごい冒険者になり、みんなが羨む英雄にだってなる」

 

アルテミスが自分の眷属が英雄へ一歩近づいた瞬間を忘れないように目に焼き付ける。

ベルが疾走する道を【ロキ・ファミリア】が道を作る。横からベルを狙う触手達をティオナが拳で弾き、頭上から迫る触手達を蹴りで弾き返すティオネ、そして目の前から迫る触手達を自前の剣で斬り伏せる。ベルは一切足を止めずに、疾走した。

 

「やっちゃえ!冒険者君ッッ!!」

 

「これで倒せなかったら恨むからね!」

 

「......頑張って!」

 

「ベル!お願い!!」

 

傷だらけで拳を突き上げて叫ぶアマゾネスの妹と、ヘタリと座り込むアマゾネスの姉と、はにかみながら応援する憧憬がいた。そしてこれまでベルを支えてきた同じ眷属の仲間が叫んでいた。

 

ベルは槍を持ち替え、槍を投げる態勢に入った。そしてアルテミスから授かったステイタスの全力を持って、誓いの矢を放つ。

アルテミスはこの光景を目に焼き付けながら、さっきの言葉の続きを呟いた。

 

「だから、これが初めてベルが胸を張って自慢できる英雄譚(おはなし)だ」

 

「【ガウス・オリオン】ッッッッ!!!」

 

ベルの叫びと同時に矢が放たれる。矢は眩い蒼い光に包まれる。放った矢は風を切り裂き、周辺に凄まじい風圧を起こす。その矢は吸い込まれるようにモンスター達に直撃した。

 

『ーーーーーーーー』

 

一瞬だった。凄まじい威力と共にモンスター達が断末魔を吐く前に消滅した。緑壁はモンスターが消滅したと同時に消滅した。あたり周辺はその矢の被害のため、大きな砂煙と周辺にあった家などは吹き飛ばし、地面は矢が放った放物線上にクレーターが続いていた。これを見る限りLv.1の冒険者から放たれた威力ではない。

 

砂煙が終わると、矢は消えていて残っているのは矢が放った被害だけだった。あれだけの数だ。このまま戦闘が続けば応援は来ただろうが、ベル達は、いやもしかしたら【ロキ・ファミリア】のアイズ達もモンスター達に蹂躙されていたかもしれない。

新種のモンスターが大量に出てきて、下級冒険者がいる中でこうして生きているのは奇跡に等しい。

 

「すまない!遅くなった!.......って何が起こった!?」

 

遅れて到着したのは、【ロキ・ファミリア】の副団長リヴェリア・リヨス・アールヴだった。戦闘態勢に入っていたリヴェリアだがあたり周辺の被害やモンスター達がいないことがわかって、リヴェリアは戦闘がすでに終わったことを察した。

 

「うーんとね。新種の気持ち悪いモンスターがたくさん出てきて、私たちが引きつけて〜、この子が全部倒しちゃった!」

 

「は?」

 

ティオナの漠然とした説明にリヴェリアは懸念そうな顔をした。ティオナが指を刺した方を見ると、力を使い果たし主神に膝枕をされている白髪の少年がいた。

 

「あれはどう見ても、冒険者になってまもない少年じゃないか、その子が新種のモンスターを全部倒せるわけないだろ。お前達でも攻めあぐねていただろう」

 

リヴェリアはティオナのバレバレの嘘に突っ込む。並大抵のモンスターの集団が襲ってこようと、アイズ、ティオナ、ティオネならば無傷で切り抜けられるはずだが、この三人がボロボロになっているのだから相当強かった新種のモンスター達なのだろうとわかった。

 

なのに、あの日から悔しさのあまり酒場から飛び出してから、2週間も経っていない少年が第一級冒険者の助けになるわけないとそう思っているリヴェリアだった。

 

「あー.......リヴェリア。そこにいるバカの言う通りよ」

 

「は?」

 

「うん、あの子のおかげで全部倒せた」

 

「は?......................本当か?」

 

「「「本気(マジ)」」」

 

リヴェリアは度肝を抜かれ言葉を失う。頭が痛いのか頭に右手を添えながら。

 

「で、あのすごい魔法何!?冒険者くん...........って!?いない!?」

 

「ほんと、いつの間にかいないわね」

 

「え?.......本当だ。あのエルフの子....ウィリディスさんもいない」

 

ティオナが興味津々の顔で、さっきまでいたはずの冒険者に話しかけようとしたがいなくなっていることに気づくと驚いていて、ティオネはいなくなってることを知ったが疲れでそれどころではなく、アイズはレフィーヤまでもいないと報告した。

 

「私たちが会話してる隙にいなくなったんだろう。少し話を聞きたかったところだが.....疲れてるようだし仕方ない。とりあえず回復薬(ポーション)を体にかけとけ、ギルドに報告した後、フィンに報告に行くぞ」

 

リヴェリアは白いマントを翻し、颯爽と歩いていく。そしてベルの勇姿を見ていた第一級冒険者の三人はまたあの子に会いたいと願うのだった。




ヘスティアはどう登場させるかは決めたんですけど、あることが決まらないと出せない状態です。もうちょい先になりそうです........。
リリは次出そうかなと、いろいろオリジナル展開決めてるのでリリもどんな状態で会おうかとか、どうやってベルくんを好きにさせようかといろいろ悩んでる所存です。ナイフじゃないから奪えないし。どうすっかなぁ〜

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