真・恋姫†夢想 天に対する地の救世主   作:シバヤ

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今回はお姉ちゃんの強さを少しだけお見せします


其ノ参

 

今日もまた勉強し、これから鍛錬だがその間に休憩ということで森の中で寝ている

今日は行きたくないという訳ではなく本当に休憩のつもりで来ている

 

「総雅くん、また怠けてる」

「怠けてない。この後の鍛錬に向けて体力を回復させてるんだ」

「本当かな?」

「本当だ。俺が優奈に嘘をつくわけないだろ」

「はぁ……けどそこは本当だし、信じてあげましょう」

 

ため息をついたと思えば急に笑顔になる

コロコロ表情変わって面白いな

 

「十分休憩したし、そろそろ戻るか」

「うん」

 

起き上がり、屋敷に向かって歩こうとした時、少しだけ森の様子がおかしいことに気がついた

 

「……やけに静かじゃないか?」

「そう?動物たちの鳴き声がしてないからじゃないかな?」

「────」

「待てっ、今何か音……いや、声が聞こえなかったか?」

「わたしは別に──」

「────ぞ」

「今のは?」

「うん、わたしも聞こえた」

 

ということは俺の空耳じゃないってことだ

……誰かがこの森にいる?

一応この森には木の実やらいろいろと使える草が生えてたりするからそれを取りにはいる人はいる

もしかしたらそういう人かもしれないが……

 

「俺は確認しに行く。優奈はどうする?」

「こんなこんな怖い時に一人にしないでよぉ!わたしも行く!」

「わかった。ならなるべく静かにな」

 

まだ誰かが喋っているのが聞こえる

それを頼りに、少しづつ近づいて行った

近づくにつれて、会話が聞こえ始めてきた

 

「あの──司馬──だろ」

「殺せ──金──」

 

司馬って言ったよな……

それに殺せ、金……誰かに雇われたとかか?

木に隠れ、遠目から姿を確認する

いかにも賊という存在で、数もそこまで多い程ではないが俺一人に対してだと少ないわけでもない

 

「めんどくせぇな……優奈、父上を呼んできてくれ」

「総雅くんはどうするの?」

「ここで足止めする。あんな凡愚共には負けるつもりはねぇよ」

「一人じゃ危ないよ!」

「けど俺が足止めしなきゃもしかしたらあいつらが街に先に入っちまう可能性もある。なら俺が足止めして、優奈が父上を呼べば街に被害がなく済む」

 

司馬の名前を出したってことは母上が目的かもしれないし、街の人にも危害を加えない保証だってない

 

「頼む。お前にしか出来ないんだ」

「……わかった。でも危なくなったら逃げてよね?」

「わかってるって」

 

優奈は走り出し、俺は気配を消しつつあいつらに近づいていく

駆け出して一気に近づける距離まできたら、先手を撃つ!

 

「せぇやぁ!」

 

一気に駆け出し、持っている木刀で頭に一撃畳み込む

上手い具合に当たり、そいつはその場に倒れる

 

「な、なんだ!?」

「餓鬼がなんでこんな所に!」

「凡愚共め……消えれば見逃すけど……」

「たかが餓鬼一人だ!痛い目見せてやれ!」

「そうなることは予測済みだ」

 

相手は単純に突っ込んでくるだけ

こんなもの、父上との鍛錬と比べたら全然だ

相手の動き、速さ、隙を確認したら、簡単に打ち込めるやつから倒していく

 

「こんな奴らに父上を呼ぶなんて必要なかったか……俺一人でも十分だ」

「調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

「単調な攻撃は見飽きた……って!」

「ぎゃぁ!」

 

行動に隙がありすぎる

鍛錬中の父上から見た俺はこんな感じだったのか?

だとすると自分の弱さがわかっちまう

どんなに手を伸ばしても姉上には届かないんだ……!

 

「うおぉぉぉぉっ!」

「それ以上動くんじゃねぇ!」

「なっ……!」

 

違うところから声が聞こえたと思ったら、その賊共は予想もしていない最悪なことをしていた

 

「優奈ぁ!てめぇ!」

「やっぱり知り合いだったか」

「優奈に触れてんじゃねぇ!」

「そんな口聞いてていいのか?あ?」

 

気絶している優奈の首元に、短剣を突きつけてきやがった……

下手なことをしたら、優奈が……!

 

「この女に傷つかせたくなかったら、わかるよな?」

「……チッ」

 

手に持っている木刀を投げ捨て、完全な無抵抗になる

それに少しの時間が経ったから、最初に気絶したやつからだんだん目を覚ましやがった

 

「じゃあ次はお前に痛い目にあって貰うぜ?」

「簡単には殺さねぇからなぁ!」

「──がっ!」

 

顔面を殴られ、腹を蹴られ、殴られ、蹴られ、ずっとその繰り返し

痛いなんてどうだっていい、ただ俺は、優奈を守れないのが……

 

「久々に楽しめたぜ。なぁっ!」

「がはっ!──げほっげほっ……」

「そろそろ飽きてきたな──殺すか」

「ゆう……な……」

 

たかが賊……凡愚共に俺は殺されるのか?

こいつらに優奈を渡したまま死ぬのか?

嫌だ、そんなのは嫌だ。だけどどうすることも……

 

「二人ともやっと見つけた。お姉ちゃん探したよ?」

「あね……うえ……?」

「あまりにもボロボロになっちゃって、帰ったら治療しないとね」

 

姉上はこいつらの事見えてないのか?

あまりにも無反応すぎるし、俺と優奈しか眼中に無いというか

 

「おっ?結構上玉じゃねぇか」

「ちょうどいい、この娘の前に楽しめそうだな!」

「…………」

「おい、何か反応したらどうだぁ!?」

「…………」

「女だからって痛めつけないと思う──」

「うるさいわね、静かにしてくれないかしら?ああ、死んでるのに何言っても意味無いわね」

「は?」

 

姉上に襲いかかろうとした賊は、姉上の発言の後、急に倒れた

そして倒れたと同時に、首が転がった

 

「あえて見ないようにしてたのに。私のかわいい優ちゃんに汚らしい手で触り、私の大好きな総くんを傷つけた」

「ひ、ひぃ!」

「その代償は死。しかないわね」

 

姉上の言葉の終わりに、姉上の腰に下げてる剣から音が聞こえた

だがその剣は抜かれたようには見えなかった

そして賊が全員倒れ、同じように全員死んでいた

この人は……どこまで……強くなっている……んだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛ぅっ!……ここは……」

 

見覚えのある天井に部屋、ここは俺と優奈の部屋

あの後姉上に助けられたってことか

右手に感触がある……見ると優奈と手を繋いでいた

優奈はまだ寝ていたが、捕まってたよりも安らいでいる表情だ

 

「良かった……傷一つなさそうだ」

 

俺は彼女を守れなかった、何一つ出来なかった

愚か者は……俺の事じゃないか!

 

「もう起きて大丈夫なの?」

「姉上……申し訳ございません、俺は何もできませんでした……」

「そんなに自分を責めないで。あの凡愚共が優ちゃんを人質にするなんて姑息な手を使ったのが悪いのよ」

「ですが姉上はそんな状況でもいつものように対処なさった」

 

それにあの剣の速さ……目で捉えることすら出来ず、わかった時には相手は死んでいた

 

「総くん……」

「俺はもう、優奈を危険にしたくない……けどその力が──」

「その力ならすぐに手に入るわ」

「ほ、本当ですか!?」

「ええ。私たちの父上と母上はどれだけ凄いかわかってるでしょ?そして私たちはその二人の血を受け継いでいるの」

 

この大陸で最も強い父上に、天才的な知能を持つ母上

俺はその二人の血を受け継いでいる……

 

「私は一回でできちゃうけど、総くんは違う。むしろあなたは私とは逆で努力すればするほど、その才能が出てくるの」

「努力……確かに俺はそんなものをしてきませんでした」

「気がついたなら変われるわ。そしてあなたは優ちゃんを守れる力を、それ以上の力を手に入れられるの」

「……姉上、頼みがあるんですが」

「今から行くんでしょ?わかってる、一緒に行くわ」

 

体がボロボロだったから、姉上の肩を借りて父上たちのところへ行こうとしたら、後ろから服を掴まれた

 

「優奈!目が覚めたのか…!」

「ごめんね、わたしが捕まっちゃったりしたから総雅くんを傷つけちゃって……」

「馬鹿、そんなことはいいんだ。俺は優奈が無事ならそれでいい」

「でもそれじゃあわたしが嫌だよ。総雅くんが傷つくのは見たくないの」

「優奈……」

 

俺が鍛錬をちゃんとやっていればこうなることはなかったんだ

もう優奈に辛いことや悲しいことなんて起きさせたくない……!

 

「優奈、約束する。俺は父上や姉上のように強くなってみせる。そしてお前のことは絶対に守る」

「そろそろ行きましょう。優ちゃんはもう少し寝てなさい」

「待ってください!……わたしも行きます。わたしも今と同じままなんて嫌なんです!」

「やっぱり二人とも似てるわね。とりあえず二人とも行くってことでいいわね?」

 

俺と優奈は首を縦にふり、父上と母上がいる部屋まで行く

部屋にはもう父上と母上が居て、話し合う準備はできているようだった

 

「総雅、少しだけ聞きたいのだけれど相手のことは何かわかるかい?彩歌は一人も生き残りを出さなかったようだし」

「身なりはその通りに賊のようなものでした。しかし連中は司馬の姓に殺す、金という単語も口にしておりました」

「わたしも聞きました」

「そうか、総雅だけじゃなく優奈くんも聞いたとなると確実だな」

「はぁ……あの愚かな連中は未だに愚かだったということですか。凡愚の極まりないですね」

 

母上はため息を吐いて愚痴を言った

どうやらこの件について何か知ってるんだ

 

「母上は何を知っているのですか?総くんを傷つけた者共は皆殺しにしなければ」

「落ち着きなさい、彩歌。このことはわたくしが洛陽で空丹さまと白湯さまのお世話をなさってた時から始まったものですね」

 

俺と姉上、優奈が本当にまだ幼い頃で洛陽にいた時期だ

母上は空丹と白湯のお世話をしていた

位はどこまで高いかは覚えてないが、もう少しで相国になれたとか聞いたことはあった

それでその母上をよく思っていない連中がいた

そいつらは十常侍と呼ばれ、なにか事あるごとに全て母上の責任になるように仕組まれた

母上は持ち前の知識で回避しきれたけど、その事に疲れ、腐敗しきった国に絶望し引退した。そうして今この街にいる

つまり母上の推測によれば賊は十常侍が雇った者で母上、もしくは司馬一族全員の抹殺だったかもしれないと

 

「都から少ししか離れていないとはいえ、故郷で表舞台に立たなければ何もしてこまいと思っていましたが……このようなくだらないことに巻き込んでしまい、皆さんには申し訳ないと思っています」

「私は構いません。誰が来ようが歯向かうなら殺せばいいだけですしね」

「次は捕らえて欲しいんだけどね。少しでも情報が必要なんだから」

「わかってます。けれど家族に何かしようなら生かす価値もありませんけど」

 

姉上も父上も、もう次のことを考えてる

俺なんかは今のことを引きづってる……いや、今からでいい!今からでも変わるんだ!

 

「父上!母上!」

「総雅?」

「あなたが荒声を上げるなんて珍しいですね。どうしましたか?」

「俺にまた一から学問と剣術を教えてください!もう俺は、何も出来ずに見てるだけなんて嫌なんです。だから優奈を、いや、全てを守る力が欲しいんです!」

「全てをですか。あなたはこの国の救世主にでもなるつもりですか?」

「望むのならそうにでもなります。ですが何かを変える、救うのならその分だけの力が必要です」

 

強者が弱者を虐げるのと同じように、強者しか弱者を守ることはできない

俺はもう弱者ではいたくない

 

「父上、母上。お願いします」

「わ、わたしにも教えてください!武術は無理でも勉強すれば総雅くんを支えられるはずです!」

「僕は構わないよ、むしろ嬉しいくらいだ。苺歌もそうだろう?」

「はい。あの総雅から言ってくださるなんて。不謹慎ですがこの状況に感謝せねばなりませんね」

『ありがとうございます!』

 

俺と優奈は同時に礼を言う

もう前のようにはしない。今から頂点を目指してやる

 

「母上が学問で父上が剣術なら、私からは氣の扱い方を教えてあげる」

「氣……ですか?」

「うん。氣を扱えるかどうかでより強くなれるわ。これは優ちゃんにも教えてあげる。もしかしたら私が知らない使い方もできるかもしれないからね」

「は、はい!」

「わかりました。ご教授よろしくお願いします」

「でもまずは怪我を治してからですよ。万全な時に始めましょう」

 

こうして俺は一から全てを学ぶことになった

司馬一族の一人として世界を変えるために

そしてたった一人の大切な人を守るために

 





今回で少年時代は終わり、次からは青年に成長しています
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