街を出てそれなりの時間が過ぎている
確かもう宛州には入っているからもう時期陳留に着くだろう
「そろそろ村とか見えないと野宿することになるな……」
「宛州に入ってから賊は減ったけど、夜は危ないからね。この子たち少し早く進ませる?」
「その方がいいかもしれないな」
少しだけ進行速度を速め、道を進む
日が沈み始めて来たから人通りも無さそうだ
これはもう諦めるしかないか?
「総雅くん。あそこに人がいない?」
「あれ?」
優奈が指さす方を見てみる
確かに誰か歩いているな……
「もしかしたら村人かもしれないな。近づいて話してみよう」
「うん。村が近くにあるだけでも安心できるしね」
なるべく驚かせないように、馬は早足のままで進みその人影に近づく
なんか小さい子のような気が?
「すまない、少しいいか?」
「…………?」
本当に子供だった
背中にまで届く長い白い髪の毛が特徴だな
「この辺りで村とか街はないか?」
「…………」
「私たち旅をしてるの。それで今日休めれる所を探してるんだけど……」
「一晩だけでいい、もちろん礼はする。寝所を貸してくれないか?」
「………うん」
言葉を話すのが苦手なのか?
ただこれで少しばかりの希望は持てそうだな
俺は野宿は別にいいんだが、優奈に悪いと思う
だからなるべく安全な所で休めれるようにしないとな
「いい……だって……」
「ありがとう、助かったよ。ええっと……」
「……文鴦……」
「文鴦か、ありがとうな俺は司馬昭だ」
「わたしは王元姫。よろしくね」
「……よろしく、ね」
そういやまだ夕飯は食べてなかったな
今更になって空腹感も出てきた
「ご飯……食べよ?」
「いいのか?何から何まですまないな。優奈、手伝ってあげられるか?俺は少し村長と話したいことがある」
「家事はできるから大丈夫だよ。お手伝いするね」
ご飯については優奈に任せて、俺は情報収集をする
それに優奈は誰にでも優しいからな、この子も懐くだろう
村人に聞き、村長の所に案内してもらい、話を始める
「急に尋ねてしまい、申し訳ございません」
「いえ、それにしてもまさか司馬懿さまのご子息さまとは」
「母上をご存知で?」
「それはもう。あの方が都で務めていた頃はこの村ですら暮らすのが楽でした」
母上はどれだけの善政を行ってたんだろう
当時子供だった俺にはわからなかったけど、今の俺ならその凄さがわかる
「しかし、仲達さまがご隠居なされては税が重くなり、暮らしていくのがやっとでございます……」
「そのような中で来てしまったとは……申し訳ない」
「司馬昭さまに謝罪してもらうなど!そのお心だけで十分です。それに今の州牧さまのおかげでだいぶ暮らしやすくなりました」
曹操殿は俺とは違い、少しでも自分が治めている人の暮らしを良くしていってる
俺には何ができるんだ?
母上が治めていた国がここまで腐りかかっている
そんな世を俺が正すことができるのか?
「おじーちゃん」
「
「ご飯できた、よ?」
「そうかい、教えてくれてありがとう。すぐ向かうから向こうで待ってておくれ」
「……わかった」
「文鴦はお孫さんですか?」
「いいえ、あの子は引き取っておるのです」
引き取って……か
だから血の繋がりのようなものを感じなかったんだろう
「あの子の母は早くに亡くなり、父は武芸者で食客として雇われておるのです」
「荒事が起きる危険性があるから村に置いてったと?」
「我々もそう捉えております。だからわしがあの子を引き取りました。しかしあの子も父の血を受け継いでか、武芸に長けておりまして……」
まだ幼い子供にしか見えないが……
きっと才能に恵まれていたんだ
「さっ、わしらもそろそろ向かいましょうぞ」
「そうですね。いろいろお聞きできて助かりました」
ご飯も食べ、あとは寝るだけになったら地図を広げこの先を確認する
「この村がここだから、朝早く出れば日が沈み始める頃か一日置いての朝に陳留に着きそうだな」
「じゃあもうちょっとで最初の目的地だね」
「ああ。曹操殿が治めている街だ、他のところとは違いそうだな」
姉上に近い気配を持った人だ
そんな人が治めてるからきっと良い街なんだろう
「あれ?文鴦ちゃん?」
「ん?」
優奈が文鴦の名前を呼んだから振り返ってみたら、部屋の入口に文鴦が立っていた
「旅の……話?」
「うん、そうだよ」
「何で旅してる……の?」
「この国がどうなっているか、少しでも自分の目で確かめてみたいと思ったんだ」
「昭さまは……すごい、ね」
「凄くなんかないさ。まだ何も変えれてないんだから」
「でも……やろうとしてる……」
普通なら国を変えるなんて馬鹿げてると思われるかもしれないことを、この子は凄いって褒めてくれるのか
いつもは司馬一族だからなんでも出来る、優秀な姉上の弟とかって認識されることが多かったけど、俺のことを褒めてくれたのって家族以外だとこの子が初めてかもな
「ありがとな、文鴦。ちょっとだけ気が楽になった」
「私もね、褒められたんだよ?お料理上手って」
「確かに優奈は料理上手だからな」
「ありがと。これからも美味しいものたくさん作ったげる」
「楽しみにしてる」
こんな荒れた時代での唯一の楽しみでもあるからな
好きな子の手料理をずっと食べられてるなんて贅沢なんだろう
「……ふぁ〜……」
「眠いのか?」
「……ん」
「もしかしてここに来たのって、一緒に寝たいんじゃないのかな?」
「……うん」
「そうか、じゃあ三人で寝るか」
もう限界なのか目を擦りながらとぼとぼ歩き、俺と優奈の間に文鴦が入ってくる
そしたらあっという間に眠ってしまった
才能に恵まれてると言うが、こう見れば幼い子供にしか見えないな
「じゃあわたしたちも寝よっか」
「そうだな。陳留まであと少し、そこに着けば少しはゆっくりできるから頑張ってくれ」
「わたしは大丈夫。総雅くんが隣にいるならずっと頑張れるよ」
「そうだな。俺もお前がいれば何とかなる。だから……ずっと隣にいてくれよな」
「うん」
次の日の朝、身支度を整え出発の時刻となった
「一晩泊めていただき、ありがとうございました」
「いえ、我らも司馬昭さまのお役に立てて嬉しゅうございます」
「ではこれで。俺も母上が成したようにこの世を正してみせます」
優奈と一礼し、馬にまたがろうとしたとき服を掴まれた
「ん?文鴦?」
「もう……行っちゃう……?」
「ああ。俺たちにはやらなきゃいけない事があるからな」
「……(ふるふる)」
行くのを止めようとしてるのか?
一歩歩こうとすると力いっぱい握られる
もちろん相手はまだ小さい女の子だから振り切れるが、そんな荒い行動はしたくない
さて、どうしたものか
「あの、司馬昭さま」
「すみません、どうにかするから少しだけ……」
「その子のことなのですが、もし司馬昭さまたちが良ければその子を連れて行ってくださいませんか?お二人に懐いているようですし、それに何よりその子にはこの村にいるよりもこの大陸を旅させた方がよろしいと思うのです」
「俺たちは構わないが……文鴦、君はどうしたい?」
「お二人と行く……行ってみたい」
その時のこの子の眼はさっきまでの女の子のような可憐な眼じゃなく、決意に満ちた眼をしていた
この子がここまでして一緒に行きたいと決めたんだ、断るなんてことは出来ない
「この旅は決して安全なものじゃなく常に危険が伴っている。俺が守ってやるけどそれでも無理な時だってある。それだけはわかってくれ」
「わたし、強いから……大丈夫」
「そうか、なら心配いらないな。……村長、この子は責任もって俺たちが預かります」
「司馬昭さまならきっとその子を成長させてくれるでしょう。すみませぬがもう少々お待ちいただけますか?」
そう言うと、村長は村人に何か言って走らせた
先程走った村人が戻ってきたらその手には槍が握られていた
「これはお前の父親がいずれと置いていったものだ。これを使いなさい」
「うん……ありがと、おじーちゃん」
「そろそろ行くが、もう別れはすませたか?」
「……大丈夫」
「それじゃ出発しよっか。文鴦ちゃんはわたしの馬に乗ろっ」
「……光」
「確か文鴦の真名だったよな。呼んでもいいのか?」
「昭さまと……元姫さまになら、いいよ」
「わかった。なら俺の真名は総雅だ。これからよろしくな、光」
「わたしは優奈。よろしくね、光ちゃん」
「総さまに、優さま……よろしく、ね」
俺たちの旅に、光が加わった。これから賑やかになりそうだな
次はいよいよ陳留だ。あの曹操殿が治めてる街、きっと今まで見てきた街よりも平和だろうな
新キャラ、文鴦を出してみました
これより先は3人での旅になります
正直言うとこちらは書くのが難しく続くかどうかわかりません…
ですがそれまで付き合ってくださったらと思います