先の事を考えると気が滅入るが、仕方ない。
俺達はささっとギルドカードを作って、カレーリナの街の外に出た。
ギルドを出る時に哀れむような視線を向けられたが、勘付かれていないのは在り難い。ただ、フェンリルが目を付けたとかって噂になるだろうな……。
「リ、リムルさん大丈夫なんですか……?」
耳をぺたんと寝かせてカタカタ震えながらフラメアが声を掛けてきた。
実を言えば、勝てる見込みはそれほど薄くない。覚醒魔王級という事は、単純に考えれば互角という事だ。
もちろん持っている能力の相性もあるだろうが、俺の場合は色々使えるからよほどの事がない限りは何とかなる気がする。
それにこっちにはヴェルドラもいるのだ。最悪追い詰められたら竜形態に戻ってもらおう。
町の外に出ると、門から一キロ程度離れた所で待っていた。
「すまんすまん、待たせちまった」
「どうも……。はあ……すみませんね、いきなりこんなことしちゃって……」
『おい主よ、こんな輩に気を遣う必要などないぞ』
「そんな事言ったってさあ、もしこの人達が無実だったらどうするんだよ」
男の人はフェンリルを止めようとしているけど、やっぱり人の手に負えるタイプではないよなあ……。
よし、さっさと終わらせてしまおう。
俺は人への擬態を解いて、スライムの姿に戻った。
そしてすかさず某ゲームの名セリフを放つ!
『ほれみろ、やはりスライムではないか。こんな危ない輩はさっさと滅ぼすに限るぞ』
「ぷるぷる、ボクわるいスライムじゃないよ!」
「ブホッ!?」
うおっ!? 思ったよりも反応がデカい。
フェンリルと
「ははははっ、まさかここでそのネタを聞くとは思わなかったよ……ふふっ」
『お、おい主よ、今のは何なのだ』
「俺が元いた世界で人気のゲームのセリフだよ」
『……主殿の故郷とは、どういうことだ?』
『爺よ、その話は後だ』
んん……? まさか、あの男の人日本人か……?
いや、今の反応を見る限りそうとしか思えないが、正直にわかには信じられん。
っていうか、どうでもいい事だけど
「多分、いや絶対このスライムは安全だよ。俺が断言する」
『な、早まるな主よ!』
「だいじょーぶだいじょーぶ。何とかなるって。……君、日本人でしょ?」
俺が思考に耽っていると、フェンリルを止めて話しかけてきた。
って、その質問! やっぱりか。
「ああ、そうだ。正真正銘、元日本人だよ」
「やっぱり! そうだよなーさっきのネタは日本人位しか分からないからな!」
『あ、主よ……何を言っているのか分からぬのだが……』
「ああ、簡単に言えば、このスライムは俺と同郷だよ」
『『……は?』』
俺が男の人と同郷だと知って、フェンリルも
そりゃそうだよな、魔物がいない世界から来た人間がスライムと同郷だなんて、冗談としか思えないもん。
*
あの後、男の人の従魔や俺の連れも全員交えて色々話し合った。
どうやらこの男の人――ムコーダさんは、勇者召喚に巻き込まれてこの世界に来たらしい。
勇者よろしくチートがあるのかと聞いたら、『ネットスーパー』なる固有スキルがあるなんて言い出した。
気になって見せてもらったら、本当に某通販サイトまんまだった。しかも日本流通の品が日本の価格で買えるっていうんだからこりゃチートだ。あっという間に大金持ちだよこんなの。
フェンリル達従魔との馴れ初めも中々にふざけ……ゲフンゲフン、突拍子もないものだった。
日本の調味料を大盤振る舞いして料理チートしてたら匂いにつられてきたなんて、フェンリルを神聖視している輩がもしいたら卒倒しかねないぞ。スライムやピクシードラゴン、
さらに気に食わな……すごいのが、この世界に来て速攻安全が確保されたってとこだ。俺なんかは
俺の『ポテチを食べながらゲームをする』という最終目標に近い環境にある訳だ、羨まずにはいられないさ。
今はカレーリナに一軒家を持っているらしい。今日はそこに泊めてくれると言ってくれた。
ああ、そうそう。従魔の名前だが、フェンリルがフェル、スライムがスイ、ピクシードラゴンがドラちゃん、そして
フェルやスイは分かるけど、ドラちゃんって、ゴン爺って……。ちょっとかわいそうに思えた。
一通りムコーダさんの話を聞いて、今度は俺の番だと天魔大戦直後辺りまでの事と、この世界に来た経緯を話したんだが……。
「リムルさん……お疲れ様です……」
『う、うむ……なんだ、その、すまなかった』
すごく慰められて、すごく謝られた。そこまで気にしなくてもいいんだけど……。
一応ランガも陰から呼び出して会わせておいた。フェルさんに対抗して普段の大きさになって、ムコーダさんがちょっと怯えさせちゃったけどね……っていうか、フェルさんの強固な結界があるんだからそんなに怯えなくてもって思うんだけどな。
ヴェルドラやラミリス、フラメアはすぐに打ち解けた。何だかんだであいつらコミュニケーションスキル高いからなあ。
「クアーーーッハッハッハ! 我は世界に五体しかおらぬ竜種が一柱、“暴風竜”ヴェルドラであるぞ! さあ、あがめるが良い! ひれ伏すが良い! クアーーーーーーーーッハッハッハッハッハ!!」
……聞かなかったことにしよう。
ムコーダの警戒心が低すぎる件について