俺は慌てて街に戻り、フラメア達を探す。
幸いにして、フラメアは街の中、門の近くで待ってくれていた。だが
「なあ、あいつらどこ行った?」
「そ、それが『屋台を見に行く』って走り出しちゃって……」
「……うわあ……ヤバいぞ……」
ああもう、金がないってのに何やってんだよ! 絶対もめる奴だよ!
ヴェルドラだけなら前と同じ方法で対処できるけど、今回はラミリスが一緒だ。ラミリスを一人置き去りにしたらそれこそまずい。
俺が頭を抱えて道端に座り込んでいると、追ってきたムコーダさんが俺の隣に来た。
「あ、あの……やっぱりまずい状況ですか?」
「……まずいなんてもんじゃない。あいつら絶対何かやらかすぞ……!」
「探すの手伝いましょうか?」
なんと! これは在り難い申し出だ。
在り難く頼らせてもらおう。
「頼んでもいいか!?」
「お任せください! 俺にはフェルがいるんで!」
『……おい、我を便利屋扱いするな』
「いいだろフェル、そもそもリムルさんに喧嘩売ったのはどっちだよ」
『うぐ……』
……ムコーダさん、意外と大物かもしれない。
そんなこんなで、俺・ランガ・ムコーダさんとフェルの三手に分かれて探すことになった。
*
幸い、ヴェルドラはすぐに見つかった。見つかったのだが……
「ぐぬぬ……物々交換でもよかろう! その位の価値はあるのだぞ!」
「そんな事言ってもよ、俺は専門家でもねえんだからここで偽物掴まされても分んねえんだよ。そういうのを防ぐためでもあるんだから、ちゃんと通貨で払ってくれ」
「明日払う、明日払うから我にくれ!」
「そんなのが許されるわけないだろバカヤロウ!」
……頭が痛い。どうしてこいつらはこうも俺を苦しめるのだろう。
俺は暴走するヴェルドラの首根っこを掴んで地面にたたきつけた。
「ブベゥ!? な、何をするのだリムルよ!!」
「お前……本当に抜きにするぞ」
「ッ!? や、やめてくれえぇぇぇぇぇぇ……それだけは……」
「黙れ」
「……」
「……はあ、ウチのバカがご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありません」
「ああ、いや、実害はなかったからいいんだけどよ……大変だなお前さん……」
「ははは、ずっとこんな調子ですからねコイツ。もう慣れましたよ、ええ」
「そうか……まあ、がんばれよ」
穏便に話が進んで助かった。屋台の店主さんの寛大な心に感謝。
ヴェルドラを叩きつけた時に結構大きい音がなっちゃったせいで周りの視線を集めてたんだけど、それが同情するような哀れむような視線でちょっと居心地が悪かったから、すぐ解放されたのは僥倖だった。
「じゃあ、俺の家に向かいましょうか」
「そうだな……ん?」
俺はヴェルドラを引き摺ってムコーダさんの後を追う。
そして数歩歩いたところで、気が付いた。
「ん、どうかしました?」
「……ラミリスが、いない……」
「……え?」
「ん? ラミリスなら『子供と遊んでくる』と言っておったが……」
……もうやだこいつら。
*
あれから三十分ほど探し回ってようやく見つけた。
あの
この街は道が入り組んでいるから、路地裏はちょっとした迷路になっている。そこに誘い込んで、迷わせて、怯えているのを見てニタニタ笑っていた。
あいつサディスト気質なのか? ちょっと怖い。
「あはは、抜け出せるかな? 抜け出せるかな? あははははははブゲェ!」
「……お前なあ、いい加減にしろよ」
「何するのよリムル! 結構いい感じに怯えてくれてたのに!」
「子供にトラウマ植え付けて何が楽しいんだか……。それに、親が『息子が帰ってこない』って慌ててんだよ。もしやるにしても明日の昼間とかにしろ」
俺は未だ暴れるラミリスの体を掴んで、ムコーダさん達の元へ向かった。
ちなみに子供たちは、ラミリスが仕掛けた罠がなくなって道が分かるようになったので、大声で泣きながら走って帰っていった。
「だ、大丈夫でしたか……? 子供達の泣き声が聞こえてきたんですけど……」
「全責任はこいつの主のヴェルドラにある。フラメアが気にする必要はないさ」
「あ、主……? どういうことよそれ!? アタシは師匠の部下になった覚えはないわ!」
「やめるのだリムル、その事を話してはいけない」
戻ってからも一悶着あったが、なんとか大事にならずにすんだ。
事情を聞かれたら全部ヴェルドラに擦り付けるとしよう。
今日は精神的にどっと疲れた。さっさとふかふかのベッドにでもダイブして寝たい。
*
「……こりゃすごいな……」
無事にムコーダさんの家に着いたのだが、これがまたすごい。
二メートル以上ある石塀に囲まれた空間へ、巨大で立派な門を潜って入る。広大な芝生の緑に囲まれた石畳の上をしばらく歩くと、目の前に白亜の豪邸。
観音開きの巨大な扉を開けば、礼拝堂の様な広さのエントランス。壁のあちらこちらに意匠を凝らした絵画や壺が飾ってあり、上流貴族が住んでいるのかと思わせる様な贅沢さにあふれていた。
「いくらするんだよこれ……」
そんな呟きが漏れるのも仕方がないだろう。俺はどちらかというと質素な方が落ち着くから、なんとも過ごしにくい空間だ。
もし傷つけてしまったら、なんて考えてしまうのは、俺の中の小市民気質が抜けていないからなのだろうか。
「すごいです……文句なしで星三つですよこれは……」
フラメアも息をのんで 辺りを見回している。
俺達がこの豪邸の空気に飲まれかけていると、奥の方から小走りにこちらへ向かってくる足音が聞こえた。