スライム魔王の異世界旅行記   作: 22世紀の精神異常者

14 / 19
14.決闘(前半)

 ムコーダ宅の前に広がる大きな庭、その中央辺りに来たところで、フェルが立ち止まった。

 そしてこちらに鋭い視線を向け、威嚇するような低い声で話し出した。

 

「……我とて主の判断を疑おうなどという気はないが、どうしても貴様らが無害であると思えん。貴様らが持つ力は些か大きすぎるのだ。我らもその気になれば国一つ滅ぼすなど容易い。だが、貴様らの力は我と同等か、下手をすればそれ以上だ。そんな貴様らが、わざわざ人の輪に入って生活している。それがどうにも納得いかん。何故人の姿に化け、人の輪に混ざる必要があるのだ」

「えー……そりゃ、俺が元人間だからとか、そういう事しか言えないけどな……」

「我としては国が一つ滅びようが構わん。だがな、主の飯が食えなくなるのだけはゴメンだ」

「いや答えたんだから聞けよ……ってか、やっぱそこ飯なのね……」

「スライム、貴様らの事を試させてもらう。」

 

 なーんかピリピリしてるなあ。質問に答えたのにさらっとスルーされたし。

 まあ、要するに俺達が危険人物(人ではないが)に見えて仕方がないから手合せしろってことだよなこれ。

 別に俺は構わないし、ヴェルドラも問題ないだろう。

 ただ、周りに迷惑になるんじゃないか? 当り前だろうがフェルさん達は本気で向かってくる。俺達も全力で向かう必要がある。そうすればこの辺り一帯が下手をすれば焦土と化す。

 うーん、結構まずい状況では?

 そんな俺の懸念を知ってか知らずか、フェルが話を続けた。

 

「もちろんこの街の中で、というわけではない。街の外に平原が広がっているだろう。そこでやる」

「いや、今門しまってるぞ」

「飛び越えればよかろう」

 

 なんという強行突破。割とフェルさんも危険因子なのでは。

 そんなことを考えている間にもフェルさん達は街の外へ飛び出していった。

 ここでばっくれて寝てもいいけど、後々大変なことになるのが目に見えていたので俺達もすぐに後を追った。

 

     *

 

 街から数百メートルほど離れた平原にて。

 俺はフェルさんと、ヴェルドラはゴン爺さんと向き合っていた。

 辺りは静まり返っており、耳に入るのは風と、そしてそれに揺られる草の音だけだ。

 俺たちの間を、冷たい風が吹き抜ける。

 しばらく静止して向き合っていたが、やがてフェルさんが、戦闘開始の合図をした。

 

「貴様らの本性、我が見極めてやる。全力で来い」

 

 フェルさんのその言葉で、俺はフェルさんに向かって飛び出した。

 瞬間、景色が加速し、目まぐるしく変化していく。

 暗闇に幾重にも重なる光の線が迸る。

 俺の太刀とフェルさんの爪がぶつかり、火花が剣先を照らす。

 金属が打ち合うような、鋭く甲高い音が一秒にも満たない時間で何度も響き渡る。

 一言も発さず、ただ無心にお互いの技をぶつけ合う。

 あらゆる位置から切りかかるが、その悉くを爪で受け止められる。力は互角なので押し切られることはないが、受け流さなければかなりの衝撃を受ける。

 度々魔法も織り交ぜるが、それも風魔法で相殺されてしまう。炎は巻き上げられて熱を失い、氷は風の刃で切り刻まれる。その他いかなる魔法であっても、適切に処理していくのだ。

 長年戦い続けてきた経験の賜物だろう。その動きは美しく、洗練されていた。

 一瞬でも気を抜けば、いくら力があるとはいえ即座に敗北してしまうだろう。

 ここまで苦戦を強いられるのは久々だ。

 正直、もうこれ以上戦いたくはない。天魔大戦が終わるまで色々あったので、もうお腹一杯なのだ。

 だが、ここで負けるのも癪だ。

 ――ふと、フェルさんの爪攻撃に太刀が弾かれる。それでバランスを崩しかけたが、反動を利用して一度飛びのき、間合いを広げた。

 しばらく睨み合っていると、不意にフェルさんが口を開いた。

 

「……貴様は、あまり力を使いこなせていないようだ。我の心配は杞憂だったかもしれぬな」

「言うねえ君。……絶対に、勝ってみせるからな」

 

 俺は自分に言い聞かせるようにつぶやいて、再びフェルへ突っ込んでいった。

 

     ●

 

 リムルの奴と向き合っている魔狼――確かフェルと言ったか――が、随分と深刻な表情で開戦を告げる。

 それと同時にリムルとフェル、そして我の眼前に佇む古竜(エンシェントドラゴン)が動き出す。

 まあ、いくら攻撃しようとこの我に敵うはずがないがな! クアーーーッハッハッハ!

 ……そう思っていた時期が、我にもありました。

 

「ヘブウッ!?」

「お主……よそ見とは随分余裕じゃの」

 

 うん。我暴力嫌い。

 鳩尾に思い切りタックルされたおかげで、腰が鋭角に曲がって情けない声が出てしまった。……決して漫画の真似ではないぞ。

 それにしても、想像以上に強い。我がある程度力を出しても問題なさそうだ。

 リムルに言われて迷宮の外では妖気(オーラ)を抑えておるが、正直つらいのだ。何というか、出かかっているものを無理矢理せき止めている様な違和感があって気分が悪い。

 我は妖気(オーラ)を全開の四分の一位だけ放出した。ふう、ちょっとスッキリした。

 

「――ッ! やはりお主、実力を隠しておったか」

「クワハハハハハ! “能ある鷹は爪を隠す”だ!」

 

 リムルの受け売りで、なんかカッコいい事言っておく。

 我の強大な妖気(オーラ)とカッコいいセリフに気圧されたのか、古竜(エンシェントドラゴン)は目を見開いて、タックルに続けて振るおうとしていた腕を引っ込めて、軽く間合いを取った。

 うーん、やっぱり我最強なのでは。

 

「グハハッ、面白い奴じゃ、儂を相手取るに申し分ない!」

 

 え? 面白い? カッコいいじゃなくて?

 ……ひどい。

 まあただ、こやつとの戦いも楽しめそうだ。久しぶりに暴れるとしよう。

 我は抉れるほどに強く地を蹴り、好敵手(エンシェントドラゴン)に肉薄した。




そこの優しい御方、どうか私に上手な戦闘描写を御教示下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。