あの後皆で焚火を囲みながら夕飯を食べた。
魚は塩を振っていない割には美味しかった。皆に不評だったらどうしようって思ってたけど、美味しそうに食べてくれたのでよかった。
夕飯を食べた後は、ヴェルドラが張ってくれたテントで固まって寝た。ランガは俺の影の中に入って、それ以外の四人でだ。
フラメアがちょっと恥ずかしそうにしてたけど、最終的には折れてくれた。
頬を赤らめて悶えられると、こっちも意識しちゃって大変なんだよな……。シュナやシオンにバレたら殺される。怖い。
……睡眠は必要ないだなんて、そんな野暮なことは言わないでくれよ。俺は眠くなくても寝たいんだ。
*
朝、隣でもぞもぞと動く感覚で目が覚めた。とても爽やかな朝だ。テントに入ってくる風が心地よい。
上体を起こして周りを確認する。起きたのは俺とフラメアだけのようで、ヴェルドラとラミリスはいまだ夢の中だ。
二人とも意外と寝相がいい。いつもバカ騒ぎしてるから、とは言わないが、ちょっと意外だ。
そしてラミリスは寝相はいいがいびきがうるさい。自分のことを可憐だとか何だとか言ってたけど、妙におっさんくさい。
俺はうつらうつらしている二人を起こして、テントを片付けた。
「うう……あと五時間……」
なんてふざけたことをラミリスが言っていたが、ヴェルドラにつまみあげられていた。
いつも思うんだが、魔王という感じが全然ない。
そんなこんなで俺達は支度を整えて、再び森の中を歩きだした。
*
それから六日後。特にハプニングが起きることなく、俺達はようやく森を抜けた。
瞳孔が開いた目に眩しい光が差し込み、思わず目を細める。
少しして目が慣れたころ、眼前には広大な草原が広がっており、その先に点の様に街があるのが窺えた。
「ふう……やっと抜けられましたね……」
そう言ってフラメアが思い切り伸びをした。
やはり
ヴェルドラも、日の光を浴びて心地よさそうにしている。ちなみにラミリスはヴェルドラの肩の上で居眠りしている。
遠くにある街を見つけて、期待に満ちた表情を浮かべた。
と、ふいにヴェルドラが興奮した様な声で話しかけてきた。
「おお、あそこが目指している街か! 早く行くぞリムルよ!!」
「あっ、おいちょっと待て……おーい!」
言うが早いか、ヴェルドラはその身体能力を余すところなく発揮して、草原を駆けていった。あっラミリスが落ちた。
「痛っ! 何かあったのさ師匠……って師匠!? どこにいるのさ!」
「大丈夫かラミリス、思い切り頭ぶつけてたけど……」
「大丈夫なわけないでしょ! どうなってるの!?」
「実は、街を見つけて興奮したのか暴走しだしてな……」
そういってヴェルドラが走って行った方向を指さす。
その背は既にかなり小さくなってる。
こっちにはフラメアとかラミリスがいるってのに、勝手な奴だな……仲間が頑張ってるのに呑気に旅行している俺が言えた義理じゃないが。
とにかくあいつを追わないととんでもないことになりそうだ。そう思ってランガにフラメアの事を頼んだのだが……
「ランガ」
「はっ」
「ちょっとフラメアを乗せてやってくれないか? 早くあいつを止めないと。ヴェルドラだけ先に行かせる訳にはいかないしさ」
「それは構いませんが……その、彼女は問題ないので?」
「あっ……」
そうだよな、ランガの全速力じゃないとヴェルドラに追いつかないが、ランガの全速力はフラメアには耐えられないだろう。今のやり取りを聞いていたフラメアも顔を青ざめさせている。
仕方ない、俺だけ先に行って止めてくるか。『
《個体名:ヴェルドラから、
え? そんなことできんの?
《問題ありません。してみせます》
おお、頼もしいことこの上ない。それじゃあ、お願いしますシエル先生!
ヴェルドラの相手をシエル先生に頼んだ直後、ヴェルドラの動きが止まった。暫くその場に立っていたが、やがて体を大きく震わせて、直後その姿が掻き消えた。
分身体に回していた魔素が体内に戻ってくるのを感じる。
それと同時に、ヴェルドラから恐怖に震える様な声で念話が届いた。
(リ、リムルよもう暴走しないからデザート一か月抜きだけはやめてくれ頼むそんな事されたら我死んじゃうから)
(……は?)
(ひいいいぃぃぃぃ……デザート抜きは嫌だぞ……我本当に死んじゃうから……)
一体どんな恐ろしい事を言ったのかと思って身構えていたら、しょうもない事で脱力してしまった。
とはいえ、流石はシエル先生だ。全員の弱点を完全に把握している。
(……デザート抜きは無かった事にしてやるから、とりあえず俺の中で大人しくしてろ)
(うう……)
ヴェルドラを抑え込んで問題もなくなったし、ゆっくり街へと向かうとしよう。
*
結局一晩を草原の真っただ中で過ごし、次の日の昼頃に到着した。
日がちょうど真上に来ている。
出発した時は後三日位かかるかもと思ってたが、ランガがフラメアを乗せて軽く走ってくれたおかげで、結構早く到着できた。
ランガ様様である。
「カレーリナへようこそ!」
門番が爽やかな笑顔で挨拶してくれた。これは中々過ごしやすそうだ。