リムル一行が一週間程の旅を経て、無事にカレーリナに到着する少し前、ブリクスト付近の平原にて――。
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ブリクストダンジョンから解放されて、やっとカレーリナに戻ることになった。
なんだかゴン爺の件で騒ぎをおこして、トリスタンさんやバルトロメオさんに迷惑をかけちゃって、なんだか申し訳ない。
考えなしでいた俺が全面的に悪いから、何も言えないんだよな。
今はブリクストから少し離れた平原で、ゴン爺の背中に乗ろうとしているところだ。
『わぁ~、高ーい!』
『さすがに眺めがいいな!』
いつの間にか背中に乗っていたスイとドラちゃんがはしゃいでいる。
俺達も早く乗らないとな。
「ほら、俺たちも行こう」
『フンッ』
フェルは嫌々ながらも、一飛びでゴン爺の背中へ。
俺はと言うと……。
「グッ……。はぁ、やっと登れた」
ひーこら言いながらようやっと背中にたどり着きましたよ。
そんなこんなで出発の準備も整い、俺達はカレーリナへと向かっていった。
*
「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ヤバい。ゴン爺の背中の上ヤバい。
フェルの全力疾走ですらキツいのに、これは拷問に等しい。
結界である程度和らいでいるとはいえ、吹き付けてくる風が肌を刺すように冷たいし、なにより圧力がエグい。
しかも遊園地のアトラクションみたいな落下防止の安全装置がないから、それもメチャクチャ怖い。
まさかこんな恐怖体験をするとは微塵も考えていなかった。くそう。
『この程度でへたるでないぞ主殿』
なんていうけどさ、俺は神様ズにいろんな加護貰ったり『ネットスーパー』なんてとんでもないスキル持ってたりするだけで中身は一般成人男性なんだよ。こんな素でとびぬけたステータス持ってる君達とは違うんだよ。
『みてみてあるじ~! すごくたかいよ~!』
ああ、この状況でこんなのんびりしてられるスイがうらやましいよ。
と、急にゴン爺のスピードが遅くなった。
「どうしたんだゴン爺?」
『……あのグリフォン、こちらに向かっておるのか?』
「ん? グリフォン?」
『ああ、左の方から飛んできておるだろ』
言われてそちらをみる。すると確かに、グリフォンがこっちを見据えて飛んできている。
っていうかあのグリフォンって……
「もしかして前にフェルと戦った奴か?」
『ああ、恐らくそうであろうな』
『ん? お主、グリフォンなぞ矮小な輩と戦っておったのか。それで、どうだったのだ?』
「その話はカレーリナに帰ってからにしようか。それより、なんであのグリフォンがこんなところに?」
見たところ、グリフォンはかなり焦っているように見える。何か問題でもあったのかな?
グリフォンは、ゴン爺には劣るもののかなりの速さでこちらに来て、必死の表情(表情というには変化が乏しかったが)でまくしたてた。
「フェンリルサマ、キケン、スライム、フェンリルサマ、ネラッテル」
「スライム? どういうことだ?」
『それだけでは状況が分からぬ。もっと詳しく説明しろ』
最初の言葉ではよくわからなかったが、なんだか面倒事のにおいがプンプンするな……。
*
「……ちょっと待って、それ結構ヤバくないか……?」
「うむ、確かに我に傷を付けたグリフォンが手も足も出ぬ輩が二人、これはかなり危険だな……」
「フェンリルサマ、キヲツケテ、クダサイ。アイツラ、ニンゲンノ、ナワバリ、イッタ」
やっぱりヤバい案件だった。
あのグリフォンが傷一つ負わせられない奴が二人ってどういうことだよ!?
しかも片方はスライムって……。いや、スイがいるからほかに強いスライムがいるのは納得できるけどさ。
人の姿になれて、しかもグリフォンを圧倒する戦闘能力ってどういう事よ。話を聞くにはオークキングみたいな姿にもなったっていうし、フェルを追い込む位はしてしまいそうだ。
もう片方の長身の男も、顔を蹴られて傷一つつかないのは明らかにおかしい。絶対に人間じゃないと、確信できる。
『して、主殿よ……。もしそやつらが襲ってきた場合はどうするのだ?』
『どうするも何も、戦って勝つしかないでしょ……。人間を滅ぼすのが目的なら止めなきゃならないし、フェルとかゴン爺が目当てだとしても倒すしかないもん』
『フンッ、我がそんな輩に負けるわけがなかろう!』
『ほんとかよ……自信があるのは良いけど、無茶するなよ?』
『ねぇねぇあるじー、なにがあったのー?』
問題が起きなければいいんだけどな……。話を聞いた感じだとそこまで敵意があるとは思えないけど、それを隠してる可能性もあるからな。油断は禁物だ。
皆が若干緊張している中、スイはのんびりしていた。
『ちょっと危険な人がいるから気を付けてってことだよ』
『それじゃー、スイがビュッビュッてして倒せばいいのー?』
『うーんそれはやめておいた方がいいかな……はは……』
やっぱり戦闘狂だった。流石にあの盗賊の時みたいなスプラッターは見たくないよ。
ちなみにその危険人物の容姿は、スライムの方が水色の紙をした金色の瞳、そして白い肌をした少女、そして男の方が金髪で金色の瞳、褐色肌だそうだ。
フェルもスイもドラちゃんもゴン爺も、血の気が多いから何だか心配だ。
俺は不安を抱きつつ、再びカレーリナに向かっていった。
*
グリフォンに警告されてから程なくして、俺達一行は無事にカレーリナに着いた。
ゴン爺の背中の上で地獄を見た俺は、立ち上がる気力も出ずにそのまま草の上に大の字で倒れ込んだ。
「あ~、ひどい目にあった……」
『あれくらいでへたるとは、主殿はひ弱だの~』
「あれくらいってねぇ、ゴン爺は飛ばしすぎなんだよ! もうちょっとゆっくり飛んでくれたらいいのに」
『何を言うか。儂が速度を出したからこそこんなに早く目的の地に到着したのではないか』
「それはそうだけどさぁ」
全く、少しは主を気遣ってくれてもいいんじゃないかな。食事を用意するのは俺なんだから。……食材はフェル達か、なら何も言えないな……。
『だから今まで通り我に乗ればよかったのだ』
「まぁまぁ、それはそれというかさ」
『おーい、早く家に帰ろうぜ』
そんなやり取りをしながら、今度はフェルの背に乗ってカレーリナの門へ向かった。
事前に連絡が入っていたのだろう、門番達はゴン爺を見ても割と落ち着いていた。
まあ、ちょっとぎこちなかったけど、仕方ないね。
町に入ると、とんでもない大騒ぎになってしまった。
「俺の従魔ですから! 大丈夫ですから!」
声を張り上げながら通りを進む。こうでもしないと皆怖がって動けないみたいだ。
こんな騒ぎを起こして、もしあの危険人物(片方はスライムだけどね)が俺を狙っていたらすぐ見つかっちゃうな。
そんな事を考えながらギルドへ入る。
そして――出会ってしまった。
グリフォンが言っていた、青い髪と金色の瞳を持つ白い肌の少女と、金髪と金色の目を持つ褐色肌の男に。