ロリっ子神綺様は幻想郷が気になるようです。 作:リヴィ(Live)
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──薄暗い。赤紫の空に、天に昇る禍々しい月。
数ある世界の中で、ここはどの世界よりも危険度が高く、数多くの魔族や悪魔が住まうとされているこの世界の名は『魔界』。
魔境中の魔境、一人一人が並の妖怪を上回る力を持つ魔界の民たちは、たった一人の神によって統括されているという。
その神はその身一つで今も尚無限に広がる魔界を創造し、民を創り、文明を創り上げた魔界における最高神であり、唯一神。
名を『神綺』。魔界全てを創造した偉大なる魔界神───
「ねぇ~夢子ちゃん、何かやることなぁ~い?」
「特にありませんが、床に寝転がないでください神綺様」
───が、この様である。
白銀髪で、頭上の左にはサイドテールで結んだ髪に、赤を基調とした黒と白の衣を身にまとった、幼女。もう一度言う。幼女である。
そう、今こうして床に寝転がってやることが無くてつまらないとワガママをいうこの幼女が、魔界の最高神である。
そしてそれを母親のように注意する赤を基調としたメイド服を着ている女性、夢子は仕事をこなしつつ、主を注意する。
「だって、サラとルイズはどっかいっちゃうし、ユキマイもなんか武者修行がどうのこうので居ないし、エリスは何してるかわかんないし、サリエルはだいぶ前から居ないし……なによりアリスちゃんがいないし」
「サラとルイズ、武者修行に出たユキとマイ、そしてお嬢様は幻想郷と呼ばれる場所に居るようですよ。エリス様は…まぁマガンくんにちょっかい出しに行ったんでしょうが、サリエル様はわかりません」
神綺がこの館にいたかつての住民達の居所を問うと、夢子は一文字も間違えることなくハキハキと言った。
というのも、この館はかつて神綺自らが作った住民達の家でもある。その他の魔族や魔界人は勝手に生まれたようなものであり、厳密に言えば神綺の管轄下の存在でない。この館に者達こそが、真の神綺の子達である。
そしてその住民は夢子と神綺を除いて皆外出中。そんなに暇ならば外に出ればいい、と言いたいところではあるが、そうはいかない事情があるのだ。
無限に広がる魔界では、最深部にある『パンデモニウム』と呼ばれる神綺が許した者しか入れない特別空間がある。そこには洋風の舘がそびえ立っており、そこには二人住んでいる。
つまり現在神綺と夢子がいるパンデモニウムは外からの情報を一切遮断している状態である。魔界神という立場もあるため、外出も出来ない。といっても、定期的な見回りがあるし、神綺にとって魔界は創造物、つまり手に取るようにわかる。遮断していても嫌という程耳にはいる。
「…幻想郷って、そんなにいいところなの?」
「人と妖怪が共存していると聞いています。妖怪の中でも最強と言われた妖怪の賢者、八雲 紫をトップに、数々の猛者が住まうと」
「…魔界とどっちが強いかなぁ」
「それはわかりませんが…数からすれば魔界の方が圧倒的有利かと。何よりこちらには貴女様が」
ふぅ~ん、と神綺は髪の毛を弄りつつ足を少しバタつかせながらそう言った。心無しか、そのサイドテールはぴょこぴょこと跳ねている。夢子はその姿を見ると──
「幻想郷へ行くつもりですか?」
「そりゃあ、みんな向こうにいるんだもん。気になるじゃない」
「しかし、魔界の管理は──」
「そんなの下の連中に任せとけば?私達実際政治には関わってないし、神なんて立場なんて無いようなものでしょ?」
現在の魔界は、民主主義の体制に近い政治を行っている。
数千、百年前はそれこそ神綺の言葉一つで政治や物事が決まる時代ではあったが、神綺自身、何でもかんでも自分が決めるのは悪いし、何より面倒との事で、政治権を民に渡した結果、民達は自ら行政機関を立ち上げて政治を行い始めた。以外にも行政機関が行う政治は神綺が治めていた時代よりも幾分か良いものであった。故に神綺や夢子は政治には一切関与していない。今はあくまで、『魔界の象徴』という立場である。
「ですが、魔界に万が一──」
「侵略程度でやられるほど魔界人や魔族は弱くないわ。元々戦いしか脳のない連中ばっかりだったんだし、大丈夫よ。もしもの時は私が直ぐに気がつけるし」
先程言ったように、魔界は数ある世界の中でも魔境中の魔境。素の体力が並の妖怪以上を誇る魔界人に、人間界である程度、またはかなり有名な悪魔や魔族は多数存在し、神綺が居なくとも自己防衛でほとんど方が着いてしまうほど魔界という戦力は大きい。
中でも、夢子は神綺が一番最初につくりあげた完全無欠の魔界人であり、その戦闘力は魔界最強クラスを誇る。神綺という規格外を除けば明らかに魔界トップの武闘派魔界人である。
「──そこまで言うのであれば」
「わかればよろしい。じゃ、行きましょ♪」
「仰せのままに」
幻想郷へ行きたい。
そんな主の気まぐれが、ちょっとした波乱を呼ぶことになるのは、誰も知らない。