Fate GO/Elshaddai   作:キョウキ

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 遅れてしまい、申し訳ありません。
 六話目です。エルシャダイ要素薄めです。
 次も恐らく遅れるかと思います。すみません。


第六話 セイバー

 科学、物理学、薬学、法律学etc・・・。それらに彩られ、それらを不変の常識とする世界には、人々が知らないもう一つの側面が存在する。それが、「魔術」と「魔術師」の世界である。

 

 彼らは魔力を用い奇跡・神秘を再現する。人々が練り上げ、積み上げてきた常識を容易く打ち砕く。

 

 手から炎は出ない。いや、出る。呪いは存在しない。いや、存在する。使い魔を引き連れた魔女など存在しない。いいや、存在する。魔術の世界を裏とするならば、表の世界の人間にはとても理解などできないもう一つの叡智。人々が進むべき道を選択し、そして得てきた手段の一つ。

 

 その魔術の中でも最上級の物と称されるもの。それが『英霊召喚』である。

 

 かつて偉業を成した者達。神話・伝承に語られる英雄達。彼らを召喚し、使い魔(サーヴァント)として使役する。それが英霊召喚。

 

 そして基本的に、その英霊は基本的に七つのクラスに分けられる。

 

 剣士、セイバー。

 槍兵、ランサー。

 弓兵、アーチャー。

 騎兵、ライダー。

 魔術師、キャスター。

 暗殺者、アサシン。

 狂戦士、バーサーカー。

 

 そして例外、特殊クラス エクストラ。

 

 それぞれの英霊がかつて成した、もしくは成したとされる(、、、、、、、)逸話に基づき、それらは決定される。その戦力は、人類・魔術世界において超える物のない最強兵器とされる。

 

 

 そんな魔術師に使われるはずの魔術師(キャスター)は、怒り狂う一人の女性を笑い半分で対応していた。

 

「バカじゃないのふざけるんじゃないわよあと少しで私も巻き込まれて燃えていたところなのよ何を考えているの本当に私をどこの家の生まれだと」

「ありゃあんたを助けるためだろうがよ。なあ、一度落ち着いてくれねぇか。これじゃあ話せることも話せねぇ」

 

 猪突猛進と言えるほどの勢いでキャスター・・・クー・フーリンに詰め寄るオルガマリーは、今にも首筋にかみつくかと思われるほどに激昂し、詰め寄る。キャスターはそんなオルガマリーを片手で抑え込み、なんとかなだめようとしていた。

 

「フォウ・・・」

 

 その様子を見たフォウ君は呆れたように鳴き、この状況になかなかついていけていない三人はその様子を見守っている。その中、藤丸のデバイスから放たれる光はひび割れた建物の中にいる一人の男の姿を壁面に投射していた。

 

「あの、所長?落ち着いてくれませんか。どうやら彼はまともな英霊で」

「私を守らずにあんな大魔術を行使する英霊がまともなもんですか!」

 

 オルガマリーが全力で投げたボールを、キャスターが優しめに返し、返されたボールは十倍ほどの熱量を持ってまた投げられる。時たまにロマニがオルガマリーに進言するが、それも怒りによる全力投球でかき消される。先程からこれの繰り返しで、一向に話が前に進む気配がない。

 

 

 この状況を見かねたイーノックは、オルガマリーとキャスターの間に割って入ろうとするが、やめた。藤丸がキャスターに歩み寄ったからだ。

 

「あの・・・クー・フーリンさん」

「あん?」

「さっきは助けてくれてありがとうございました。藤丸立香です。これからよろしくお願いします」

 

 藤丸は頭を下げ、右手を差し出す。そのことにオルガマリーは面食らい、言葉を失った。キャスターはそれを見て笑い、その手を取った。

 

「良い挨拶だ、坊主。こちらこそよろしく頼むぜ、マスター」

 

▽△▽

 

 キャスター、クー・フーリンによって辛くも髑髏面のサーヴァントであるアサシンの魔の手から逃れたカルデア一行は、クー・フーリンからの協力要請を快諾し、道行を共にすることにした。

 

 キャスターが狂った聖杯戦争と聖杯の在処、もう残されたサーヴァントが自分を含めて4騎であること。その内のセイバーが聖杯を所持していることが語られた。

 

 そして、マシュの宝具についても。

 

 ボクは通信機からの音声でその話を聞きながら、ある一人の男のことをジッと考えていた。その男とは、無論キャスターではない。ハドラニエル・・・改め、イーノックのことだ。

 

(((イーノック・・・預言者エノクだと?いや、単なる名前の一致だとは思うが・・・)))

 

 イーノックの存在を通信から知ったボクは、すぐさま「英霊の座」に登録されている英雄たちの中から「Enoch」の名を探してみたが、そんな名前は何処にも存在しない。それはつまり、彼が英霊・・・サーヴァントではないことを示す。つまり、普通の、生きている人間であると。

 

「そんなバカな・・・」

 

 ただの人間が、あのような時代錯誤的な鎧を身につけ、エネミーのみならずサーヴァントとの戦闘を可能にしていると?しかも、彼は魔術師ではない。それはこのカルデアに来た時に分かっている。

 

 ・・・それらのことから、考えられる可能性は一つ。

 彼が、サーヴァントでもなく英霊でもなく、イーノック本人であるという事だ。

 

 そして、それ以上に重要なことに。

 彼は藤丸君の、マシュの、所長の、味方であること。そして、この異常事態の最中、よりありえない事情を抱えていること。

 

 

 堕天使。

 

 

「・・・ハドラニエル・・・帰ってきたら、すべて話してもらう」

 

 

▽△▽

 

 キャスター先導の元、セイバーが鎮座する大空洞へと歩みを進める道中。度々現れるエネミーをマシュとイーノック、キャスターの力の元蹴散らしながら、カルデア一行は山を登っていた。その進行速度はキャスターが加わったことにより格段に増し、遂にはその入り口にまでたどり着いた。

 

「これは・・・天然の鍾乳洞ですか?」

「いえ、恐らくこれは半分天然、半分人口の魔術工房です。長い時間をかけて作られているようね」

 

 炎と煙に巻かれる市街地とは打って変わって、洞穴内は薄暗く肌寒い。時折天井から垂れる鍾乳石から水滴が滴り落ち、澄んだ水音を響かせる。藤丸たちは、滞留した闇の中を慎重に進んでいく。オルガマリーがその身を寒さに震わせると、フォウ君がそれと同調するようにくしゃみをした。

 

「うぅ、毛布が欲しい・・・・・・」

「フォ~ウ・・・・・・」

 

 オルガマリーはフォウ君を抱きかかえ、イーノックと隣り合うようにして歩く。イーノックは武器を構えず、時折その歩みが遅れるオルガマリーを励まし、敵が現れると即座にそれを倒してオルガマリーの元に戻ってくる。薄闇の中に金髪が揺れ、白い鎧は光を放つようであった。

 

 だが、敵の数は膨大。故に、イーノックの独壇場というわけでもなかった。

 

 マシュは藤丸とオルガマリーを守護しつつ、矢は弾き刃は砕く。盾による殴打はすさまじい威力であり、一振りでほとんどのエネミーを彼方に吹き飛ばしてしまう。キャスターの魔術はほぼ万能と言えるほどの能力を発揮し、乱戦時には自らに身体強化のルーンを用いて白兵戦に打って出る等、八面六臂の立ち回りを演じてみせた。

 

 藤丸はロマンの指導の元に二人に魔力の供給を行い、オルガマリーは率先して戦闘には参加しなかったが、極稀に訪れる隙を埋めるべく魔術、ガンドで敵を粉砕した。

 

 防御面、攻撃面において通常のエネミーでは歯が立たぬ。さしもの竜種の爪や牙から作り出された竜牙兵と言えど、その猛攻と鉄壁の前には手も足も出ず。しかし数だけは勝っていたため、その進行を遅らせる壁の役割は果たしていた。

 

「うっとおしいな。次から次へと来るぜ」

「この辺りが正念場でしょう。どうか、油断をなさらないように」

「はい!マシュ・キリエライト、道を切り開きます!」

 

 快刀乱麻の進行劇。彼らの前には障害などないも同然だった。

 やがて敵の勢いはだんだんと減じていき、最後の竜牙兵の一体をマシュが倒したことで、再び洞穴内に足音と水音だけが響く冷たい静寂が戻ってきた。藤丸達は先程の戦闘時の勢いのままに進んでいた。

 

 その時、後方から風を切る鋭い音がキャスターの耳に届いた。

 

「兄ちゃん!後ろだ!」

「!」

 

 その声に反応したイーノックは振り向きざまにアーチを振るった。飛来した刀剣が蒼刃とぶつかり、消えた。

 

「これは・・・アーチャーの仕業だな。どうにも出てこねぇもんだから俺の知らないうちに消滅でもしたかと思ったが・・・」

 

 洞穴内の薄闇の中から滑り出るように姿を現したのは、褐色の肌を持った一人の男。両手には白と黒の刃を持ち、その眼光は獲物を狙う猛禽類のような凍る狂気を孕んでいた。

 

『キャスター。協力者を引き連れて戻ってきたというわけか。・・・それに、マスターもできたようだな』

 

 鷹の目が藤丸を射抜く。藤丸はこの瞬間、胴と言わず脚と言わず、全身を刃や矛で貫かれる姿を幻視した。それは、生き物が持つ危機回避の直感が見せた警告か。だが、戦わなければ前には進めない。藤丸は確固たる意志を持って、アーチャーを睨みつけた。

 

 

 と、そこでイーノックが刃を展開しながら藤丸たちの前に立った。

 

「どうか、先へ。ここは私が引き受けましょう」

「イーノックさん・・・よろしいのですか?」

 

 イーノックが答える間に、アーチャーは武器を投影して射出する。マシュはそれを防ぎ、イーノックはステップで接近してアーチャーに切りかかる。アーチャーは避けてしまえば壁際に追い込まれることを予想し、蒼刃を両手の短剣で受ける。

 

「先へ!」

『行かせるか!』

 

 短剣を滑らせるように刃を逸らし、投影した刀剣を首元へ放つ。イーノックはそれを体を回転させるようにして避け、またその刃をアーチャーへとぶつける。アーチャーは大きく後方へ飛び、岩壁を蹴って藤丸たちの方へ跳躍してみせるが、アーチの力によって高く跳んだイーノックが脇腹へ蹴りを繰り出し、地面に叩きつけてみせた。

 

「行かせはしない。君は門番なのだろう?ならば、せめて私をここに留めることに尽力すべきだ」

『・・・向かったところで、勝てる道理などない。あの聖剣・・・あの騎士王を相手にしてはな』

 

▽△▽

 

 藤丸たちは、時折襲い来るエネミーの生き残りを退治しつつ、ゴツゴツした洞穴を奥へ奥へと進んでいた。その時、不意にオルガマリーは思いだしたかのとうにキャスターに聞いた。

 

「そういえば、あなた。セイバーの正体は知っているの?何度か戦ったことがあるような口ぶりだったけど」

「ああ、知ってるとも。ヤツの宝具を喰らえば誰でもその正体・・・真名にたどり着くからな」

 

▽△▽

 

「騎士王?聖剣だと?」

『知らないようだな。ならば教えてやる』

 

▽△▽

 

 はるか先に、光が見える。偉大で病める、太陽にも匹敵する優し気な光が。それが、この洞穴の「出口」にして「最終地点」。

 

「王を選定する岩の剣のふた振り目。お前さんたちの時代においてもっとも有名な聖剣」

 

▽△▽

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)。そして、私の任務は達成できた』

「!?、これは・・・」

 

 イーノックが宙を仰ぎ見ると、無数の刀剣、矛、槍、斧。数えるのも馬鹿らしくなるほどの武器の数々が二人を覆っている。アーチャーが武器を捨て、その体を蒼刃で刻まれながらイーノックの体を掴む。イーノックはそれを引き離そうとするが、最期の意地か。否が応でもその手を放そうとしない。

 

『お前が私の話に興味を持ってくれて助かった。このままじゃジリ貧だったからな。早々に決着をつけよう。私の敗北と、お前の退場という形でな』

「!・・・」

『例え防げたとしても。避けられたとしても。無傷では済まないだろう。必要なのは負傷、そして時間。お前という存在が騎士王のもとにたどり着くのを遅らせる。それが私一人の命で買えるなら、安いものだ』

 

 蒼刃の一端が霊核に傷をつけ始める。アーチャーは黒く変色した血を吐いた。目を閉じる。

 

『・・・さらばだ。セイバー』

 

 次の瞬間、二人に向けて限界まで引き絞られたアーチャーの"矢"が、豪雨の如く降り注ぎ全てを砂塵で覆い隠した。

 

▽△▽

 

「なんてこと・・・超抜級の魔術炉心じゃない・・・なんでこんな極東の島国に・・・」

 

 今にも意識を持ってかれそうなほどの圧力を受けながら、藤丸たちは大聖杯の前に立っていた。暴風、もしくは闇の濁流とも形容できる圧倒的プレッシャー。藤丸は大聖杯を見た。いや、正確には大聖杯の前に立つ者を見た。その者こそが、この耐えがたき威圧感を発している者だった。

 

 青白い肌。金色の瞳。漆黒の鎧に走るようにして刻まれた血のような紅は、地獄を表しているかのよう。その体つきこそ華奢で、顔立ちこそ美しいが、いざ常人が前に立ってみれば失禁・嘔吐、しかる後に全身を痙攣させてショック死するほどの殺意を全身から立ち上らせている。

 

「あれが、アーサー王・・・アルトリア・ペンドラゴンだ」

 

 キャスターが魔杖を構えながら言うと、セイバーの視線がキャスターからマシュへと移った。

 

『__ほう。面白いサーヴァントがいるな』

「なぬ!?テメエ、喋れたのかよ!?今までだんまり決め込んでやがったんだな!?」

『ああ。見られている故、な。案山子に徹していたのだが__』

 

 セイバーが刃を持ち上げる。その切っ先をキャスターでもなく藤丸でもなくオルガマリーでもなく・・・マシュに向けた。

 

『構えるがいい。名も知れぬ娘よ。その守り。その覚悟。真実かどうか、この剣で確かめてやろう!』

「来ます__マスター!」

 

To be continued

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