呪術転生 〜とりあえず死にたくないです〜 作:匿名中
設定やストーリーがまだまだ分かりきってないので、おかしな点があると思いますが、それでも呼んでくれたら幸いです!
「先日発生した暴力団員斬殺事件。会長他幹部を含めた暴力団員五十八名が斬り殺された事件として警察が調査を進めていましたが、犯人の足がかりが全く掴めなかったため警察が協力を要請。それによりこちらが調べたところ僅かに呪力の残穢が確認されました。しかし、検証しようにも呪力の残穢が非常に薄いため、呪霊なのか呪詛師なのか確証も得られない状況です。ですが、恐らく──」
「また
分厚い報告書を片手に淡々とそれを読み上げていた痩躯で神経質そうな顔つきをした男性、伊地知潔高の言葉を聞いて、黒いサングラスをかけた強面の男性、夜蛾正道がポツリと呟いた。
伊地知が持つ報告書とは別に、見やすいよう要点がまとめられた紙に目を向けながら大きく息を吐くこの男、夜蛾は東京都立呪術高等専門学校の学長を務めており、一般人には視認できない存在、呪いが具現化した『呪霊』を祓うのを生業とする『呪術師』である。
呪術高等専門学校とあるように、ここに勤める先生と生徒らの全員が夜蛾と同じく呪術師であり、先生は新たな人材の育成のために、生徒は呪霊から一般人を守るためにこの学校に在籍している。
ちなみに、報告書を読み上げている伊地知は彼ら呪術師と違い、任務のサポートや警察といった他団体との連絡などを行う補助員だ。実際に戦闘を行う役割ではないが、呪術師が一般人に認知されないよう行動するためのあれこれを担う重要な役割である。
現在、彼らが居るのは東京都立呪術高等専門学校、通称高専内に設えられた第一会議室。
そこには夜蛾と伊地知の他に、数名の呪術師が存在しており、彼らも夜蛾と同じ書類を片手に伊地知の言葉を聞いていた。
話題が話題なだけに各々の緊張が空気に伝わり、それを肌に感じていた伊地知は内心悲鳴を上げていた。
そんな中──
「ども〜、元気にやってる?」
室内に張り詰められた緊張の糸がほどけて緩むような、そんな声色で一人の男性が入室してきた。
両目を黒い布で隠し、飄々とした笑みを浮かべるその男性の登場に、伊地知は心の中で珍しくその男に感謝した。しかし、ほかの術師はそうではなかったようで、夜蛾は右手を額にやり、ため息を一つついた。
「四分の遅刻だ。十分前とは言わんが、もう少し早く来い、五条。重要な会議と伝えたはずだ」
学長にそう言われてなお笑みを消さない男の名は、五条悟。
雰囲気や言動はおちゃらけたものではあるが、その実力は呪術師の中でもトップクラスであり、世界にたった四人しかいない『特級呪術師』の一人である。
「いやぁ、道に迷ったおばあちゃんの道案内してたんだって。シルバーカーカラカラ回してウロウロしてんの、善人の僕が見過ごすわけないでしょ?」
「お前、さっきまで校内で伏黒と話してなかったか?」
「うん」
「隠す気ねぇだろその嘘。なんで校内にパンピーのババァがいんだよ」
夜蛾の叱責に対してヘラヘラと答えた男に、先生の一人がため息混じりでその嘘を暴くが、そんなことを気にせず両隣が空いていた夜蛾のとなりに五条が座ると、「ちょっとごめんなさいね〜」と言って、夜蛾のために用意された資料を横から掠め取り、内容を読み始めた。
「………また、あの子か」
声色が変わった。
それにより先程弛緩した空気が再度引き締められ、伊地知は心臓がキュウと締め付けられる感覚に襲われる。
すると、夜蛾と五条以外のベテラン教師陣営がポツリポツリと言葉を漏らし始めた。
「夏油に続いて、二人目の呪詛師がこの学校の生徒から生まれるとはな。全く、呪術界の恥さらしめ」
「だから始めから首輪をしとけと俺は言ったんだ。あんな危険な術式を扱う若者など、ろくなものじゃない」
「しかも、今回も前回に引き続いて大量殺人などと、隠すつもりなぞ毛頭ない愚行。表の組織にも見つかるとは、自らの力を過信している馬鹿の典型ではないか」
「特級呪術師という肩書きに溺れたのだろうな」
次々と上がってくる、今回の犯人とおぼわしき人物への
それらを無言で眺める夜蛾だが、そのとなりに座る五条は小さく舌を打った。
「(自分たちが勝手に追い出したくせして、いけしゃあしゃあと。老害どもめ、ほんとに反吐がでる)」
五条が思い出すのは、呪いに関する書物を漁って知識を会得しようという勤勉な少年の姿。割り振られた任務でも仲間や一般人を重んじり、それらを解決していく中で危険と判断された上層部からの無茶振りや嫌がらせを受けても仲間には笑みを絶やさなかった人の良い少年の姿。
ただ、術式が危険というだけで上層部から強引に追い出された、不遇な少年だった。
不意に、伊地知は己の報告書に目が行った。
そこに書かれていたのは、今回の犯人と思われる元生徒の名前とプロフィール。
五条悟の元生徒であり、補助員としてサポートした際お礼と称して数々のお土産をくれた、呪術界では珍しい心優しき人格者であり、四年前に一部教師陣の強行により高専から追い出された術師。
たった一人で一級術師八名、準一級術師十一名を相手取り、その全員を倒した、特級呪術師に相応しい男。
名を
等級は特級。
使用する術式は『
触媒を介して呪霊を
♦︎ ♦︎ ♦︎
「夏油、あの男が貴様が仲間に加えたいという呪詛師か?」
大勢の人が行き交う都会の有数の高層ビルの上、目下の人々を見下ろす二人の、いや一人の人間と一体の呪霊がいた。
行き交う人々に醜悪の感情を向ける呪霊の頭部は火山のような形をしており、加えて大きな一つ目。人型ではあるものの呪いとして存在するそれの雰囲気はあまりに呪霊らしい。
名を漏瑚、古代より人々が天災として恐れた大地より生まれし呪霊である。
「いやいや、違う、違うよ」
そんな彼と並び、含むようにして笑う人間は使い込まれたであろう袈裟を着込んでおり、額には大きな傷の縫い跡がある男性。
名を夏油傑。等級は特級。五条の元親友であり、取り込んだ呪霊を操る『呪霊操術』をもって、過去百人の一般人を呪殺、大規模呪霊テロ・百鬼夜行を起こした史上最悪の呪詛師である。
「違うだと? 貴様が述べた特徴の通りの筈だが?」
己の推測を否定された漏瑚はその大きな目をギロリと鋭くさせ、夏油の方へとやる。それに対して、夏油は視線を変えぬまま淡々と答えた。
「この前私が言ったのは彼が使役する呪霊の事だよ。今人混みに紛れて歩いている
「なんだと?」
夏油の言葉を聞いた漏瑚は再び視線を目下の
「アレが呪霊だと? ほとんど
彼の視線の先にいるのは黒い着物とは反対に白いマフラーをしている長身の男性。髪は着物と同じく黒い短髪で、少し癖っ毛のあるものとなっている。口元はマフラーで隠れている上に両目は閉じているため、その表情は窺い知れないが、同じ人型呪霊である漏瑚と比べれば、その外見は人間と変わらない。
人間への恐れから生まれた呪霊である『真人』であれば、元々のベースが人間であるためあの姿は理解できるが、そうではないアレがあそこまで人に似るのは不可解と考える漏瑚。
そんな考えを見通すように、夏油はゆっくり口を開いた。
「人間の負の感情を根底と為す呪霊のほとんどは奇怪な姿をしているわけだが、その原因は一人一人のイメージの違いや感情の歪みによるものだ。まぁ、その歪みも一級までで、特級ともなると大体は人型で落ち着くわけだが、荒谷が生み出す呪霊は例外。彼は呪霊を生み出す際、触媒を呼び水に、そこからの呪霊の構築は全て自身の呪力のみで完結する。つまり、根底は触媒に宿る呪いやそれにまつわる忌事であるが、そこからのイメージは彼の頭の中のものが色濃く反映されるのさ」
まぁ、これは私の推測なのだけど、と夏油は続けるが、漏瑚はそれを聞いて不満そうな顔をして鼻を鳴らした。
「フン、ではアレは特級ではなく、一級以下の呪霊であると?」
人型ということである程度視線の先で歩いている呪霊の力量を計っていた漏瑚は、夏油の推測からアレはそこまで強くはないのではと考えた。
しかし──
「いや、アレは紛れもなく特級呪霊だよ。それも領域展開を会得している、非常に強力な個体だ」
ほう、と漏瑚が笑みを浮かべた。
夏油はそんな彼を見て、薄い瞳を僅かに開ける。
そして、漏瑚は夏油の予想していた言葉を吐いた。
「力で屈服させることは?」
視線はビル下の呪霊に固定させておきながら好戦的な笑みを浮かべる漏瑚に対し、夏油は彼に気づかれないように舌を出す。
呪いといえば触れるもの全てに攻撃、ないしは積極的自ら攻勢に出ることも少なくないが、特級ともなると知恵を蓄えて自ら退く、機を伺うといった手段を取るようになる。漏瑚やその仲間らもその典型で、それにより着々と仲間を募り、力を付けてきた。だが、今の彼は戦いを求めているらしい。
そのことに内心夏油は所詮呪霊かと呆れていたが、それの答えを理性的なものであった。
「あの呪霊はどんなことがあろうと自らの主人である荒谷くんを裏切ることはないよ。呪霊が生まれた地から離れないのと同じさ。けど、アレは漏瑚や花御一人で充分抑えることは出来る。その間に荒谷くん自身を襲って、無理やり配下にするっていう手はなくもない」
その説明を聞いて、漏瑚は更に邪悪な笑みを深める。
呪霊を生み出し使役する呪術師。最初は我らを自らの手で生み出す不遜な輩と思っていたが、領域展開が可能な特級呪霊を生み出すほどとは思わなかった。しかも、夏油の説明によれば本人が求める能力を持った呪霊などを触媒に応じて生み出すことも出来るという。これほど便利な術式はない。加えて、仲間の数も増やせて一石二鳥だ。
しかし、その思いは夏油の次の言葉に挫かれた。
「が、それは四年前までの話。今はちょっと事情が違う」
含みのある笑みを浮かべたままにそう告げた夏油に再度漏瑚はギロリと視線を向けた。
「さっきから貴様は聞かなければモノを話せんのか?」
すでに隠すつもりもない漏瑚の不機嫌に、夏油はごめんごめんと簡単に謝る。
その態度に漏瑚はフンと鼻を鳴らして視線を戻した。
「して、事情とはなんだ?」
その質問に、夏油は視線を落として答えた。
「特級呪霊一体が増えていた」
「………ほぅ」
漏瑚は珍しく感嘆の息をこぼす。
領域展開を会得している眼下の特級呪霊に続いての二体目。あの個体だけでも古来よりの呪いである自分たちと同等の力量を得ているのを見ると二体目の呪霊もそれはそれは強いのだろう。
そこまで考えた後、漏瑚はそれほどの特級呪霊を二体生み出した術者の高度な術式、強大な呪力に思考の手が伸び、自ら見下す人間相手に感嘆してしまったのだ。
しかし、それでもあの呪霊よりも少し強いぐらいと考えた漏瑚は再度奇襲をかけないのか確認を入れようとするが──
「ダメだよ、漏瑚」
「むっ」
先回れて放たれた夏油の制止に、思わず開きかけていた口を閉じる。そして、夏油は独り言のように続けた。
「そうだよ、私が情報を流し、悟のいない間に高専上層部から強行的に追放されたとはいえ、彼は悟が敵じゃないとは知らない。なら彼にとって高専全員が敵だ。そうなるとそうだ、
ブツブツと呟くような声量だったが、しっかり耳に届いていたため漏瑚は黙って夏油の言葉に耳を傾けていた。
そして、それらが一段落すると夏油は息を一つ吐いて、たった一言告げた。
「彼に手を出してはいけない。私たちが全滅する」
漏瑚は僅かに表情をしかめるが、それを黙って受け止める。
すると、少しおどけるように夏油が眉を上げて自分よりも身長の低い漏瑚を見下ろした。
「怒らないんだ?」
「もういい、さっさと訳を話せ」
先までのやりとりで学習した漏瑚は単純に理由を求め、夏油は満足そうに笑みを浮かべて続けた。
「情報が揃っている訳じゃない。自分だって見たのはたったの一度、しかも遠目だ。けど、それでもアレの異常性は理解できた。アレはたぶん、彼自身も予想外だったのだろうな。あれは本来、『
「貴様が警戒する、あの目隠しよりも強力なのか?」
「単純な術式同士の戦闘なら、たぶん五条悟よりの互角。けど、『領域』でいうなら別格だ。現存する呪術師全員でかかっても絶対に勝てない」
夏油が用いる術式は呪霊操術。
五千を超える呪霊を取り込み、万を超える呪霊を見てきた彼はその観察眼、つまり呪霊の特質や力量を捉えることができる。
小癪ではあるが、漏瑚もその点に関しては彼を評価し、だからこそ我々は夏油に助言を求めた。
そんな彼が言い放つその言葉はそれだけで現実味を帯びるものである。
「……我ら全員での勝率は?」
「考えうる全ての対策を踏まえて二割。負け戦はゴメンだよ」
その会話を最後に二人の間には沈黙が続く。
果たしてどれほど時間が経っただろうか。
気づけば、二人の姿はビルの上から消えていた。
♦︎ ♦︎ ♦︎
一般人に自らの姿が視認されているわけではない。
いまも相当数の人間が行き交う道路を歩んではいるが、人間達も視認できずとも嫌な空気を無意識に感じ取れるのか、自分とぶつかる前に左右に分かれて自分に道を譲る。
人に近しい姿をしているといっても、結局自分は呪いを孕んだ邪な存在、呪霊。
それは自分も、自分を生み出したマスターも分かっている。
だが、それでもマスターは、自分になるべく一般人のように振る舞えと命じた。
命令というか、ほとんどお願いのような言い方ではあったが、主人として仰ぐ彼の言葉を無下にはできない。
今この場も道路の真ん中を突っ走るとは言わないが、ビル群の屋上を跳んで移動する方が楽だと思いながら歩みを進めている。
そうして歩くこと、数十分。
気付けば人の姿はなくなり、一つの廃墟の前に立っていた。
外から見れば壁も天井も、それらを支えて柱ですらボロボロで今も崩れ落ちそうに感じるその建築物は、大人はおろか好奇心旺盛な子供でさえ危険を感じてしまう。
が、それは外から見ればの話。
廃墟の中に入り、そのまま奥へ。
屋上が崩れているため所々の隙間から太陽光が差し、本来は暗闇であろう空間にほのかな明かりが映える中、彼はこの廃れた建物に似合わない損傷のない灰色の扉に辿り着いた。
そこで立ち止まり、一度自分の羽織る着物とマフラーを整える。
気軽に接してくれていいとマスターは言うが、一応主従の関係にあるためそこの配慮は必須であると自分は考える。
ある程度服装の歪みを直して充分と判断すると、ついでにドアノブに手をかけて、その手を引いた。
「待って待って! 服を着るのはいいけどそれはなしっ! それは着れないっ!」
「何を言ってるんだい? 僕がちゃんと採寸して作ったんだから着れるに決まっているだろう?」
「んじゃあ、言葉変えるわっ! それは着たくないっ!」
「それこそ何を言っているんだい? 四年前に話し合って、僕に服を作る道具を用意すること、僕が作った服は着ることと決めただろう? 性格がクソで、呪霊どころか人殺しすらなんとも思わず、常識さえ欠如する君たち呪術師の数少ない美点、決め事を守るというのは嘘だったのかい?」
「ほとんど脅しみたいなもんだったけどなっ! それに俺が了承したのは──え、なにそれそんなこと思ってたの?」
扉を抜けた先、外見からでは想像もつかないぐらいの整えられた玄関に足を踏み入れる前に何やら奥から賑やかしい声が聞こえてきた。
それに対して眉一本動かすことなく進み始める。
「てか何で女物の服なん!? 俺男よ!?」
「僕の最高傑作をただの女物の一単語で済ませてほしくないかな。一つ一つ説明してあげたいんだけど、聞くよりも着てみるのが一番良いだろうね。さぁ」
「さぁ、じゃっねぇよ! もう一度言うよ!? 俺男! 一応もう一度言っとくよ!? 男!」
「知ってるよ? さっきから何を当たり前のことを何度も言ってるんだい? もしかして日本語の使い方が分からない?」
「言葉の裏読め長身イケメン女っ! 俺は男だから女の服は着たくないって遠回しに言ってんだろが!」
「そういう人もいるんだろう?」
「そういう人じゃねぇんだよ俺はっ!」
「確かに童顔というわけでもなく、間違ってもイケメンとは言えない顔立ち、まるでゴブリンやオーク、犬が混じったようななんとも言えない顔の造形ではあるが、服は着る者の魅力を引き立てるものさ。たとえ君の顔であろうと私の服を着れば上の下ぐらいにはなるだろう」
「引き合いに出す生き物、ゴブリンとオークまで来たらファンタジー通せやっ! ゲテモノ二体の仲間にされた犬が可愛そうだろ犬がっ! そして何より俺がっ!」
「もう、煩わしいなぁ…………そろそろ怒るよ?」
「はい、着ます」
そこまで聞いて、自分は声の主であろう二人のいる部屋の扉を開けた。
「マスター、自分が帰還した」
そう告げながら視線を男の方へやると、そこにはパンツ一丁でメイド服らしき装飾を着ようとしているマスターの姿があった。
彼はまるで自分を救世主かのような表情で迎えると、ゆっくり口を開いた。
「助けて、
そんなマスターの言葉に、自分はゆっくり首を振った。
視線の先で、マスターが絶望した。
オリ呪霊のうちの男の方は分かりますよね?
では、女の方は一体誰でしょうか?
しっかりモデルも取っているので、考察してみてください!