ん"ん(咳払い)。
ふぅ。
呪術アニメ化だよっしゃぁぉあ!!!
これは、荒谷明仁が呪術高専から強制追放された後の事。
五条悟が比較的交流のあった一級術師から聞いた話だ。
「俺だって嫌だったんだ。アイツ、俺の好物を覚えてくれてたんだぜ? 超ごくたまに一緒に任務った時、いっつも手土産に持ってきてくれる、良〜奴だ。けどよ、流石に上からの命令じゃぁ、断れねぇよ」
「断れよ」
「……皆が皆、おめぇみてぇに出来るわけじゃねぇ〜の」
高専内に用意された病室で、肩から腹にかけてまで包帯で包まれた男は、五条の言葉にため息まじりに返した。
五条は肘を机に乗せて、頬杖をつく。
あいも変わらずバンダナで両目を隠しているが、その視線は普段の緩さを外に、鋭さのみを残しているのが分かる。
その視線を直に受けた男は、ポツリポツリと言葉を紡ぎ始めた。
「上からの命令は『荒谷明仁の呪殺』。事の後は、上層部がうまいこと明仁の暴走って感じに内容を書き換えるっつー話だった。けど、そんなの了承できるわけがねぇ。上は普段のアイツを知らねぇんだ。俺ぁ、アイツに好意も恩も抱いてる。逃す気満々だったぜ」
それに、いざ集まってみると、他の奴らの半分もそんな面構えだった、と。
笑いながらそんなこと話すと、ふと笑みを消して続けた。
「正直、負ける気はしなかった。特級術師ったって、一級術師八人、準一級術師十一人を相手に勝てるわけねぇって。あ、お前は別な」
茶化すようにそう言うと、次いで自嘲気味に笑った。
「たった二分、そんだけで俺たちは全滅だった。俺を含めた何人かはゴリゴリに手加減はしてた。けど、上に忠実な何人かは本気で攻撃したんだが、アイツに傷一つつけられなかった。術式も使わない、単純な呪力の防御だけで、一級術師の攻撃をいなしやがったんだ」
肩をすくめて虚空を見つめる彼の姿に、五条は何も言わない。
ただ、次の話を待っていた。
「俺らは別に明仁にやられた訳じゃねぇ。アイツはずっと防御にしか回ってない。俺らはアイツが使役する特級呪霊にやられたんだが、どういうわけか奴の攻撃はこっちの防御を容易く抜けてきた。それによ」
彼は自身に巻きつけられた包帯を無造作に外すと、五条に向き合い、荒谷との戦闘で受けた傷を見せた。
──いや、既に傷と云うには烏滸がましい。
「見ろ。もうほぼ完治だ。手加減されてたんだ、俺たちは」
アイツを過小評価していた、と。
そう言って彼は大きくため息をつく。
「あの時の、荒谷の顔は忘れねぇ。俺ぁ、恩を仇で返しちっまったんだ。我ながら救いようがねぇ」
そう、心の底から後悔するように目を瞑って上を見上げる彼に、五条は呆れたように肩をすくめた。
上の命令とはいえ、動くのは前線の呪術師達だ。
その大半が反対していたのなら、まだ他にもやり方はあったろう、と内心思う。
そんな五条の内心を見透かしたのか、彼は小さく苦笑いを浮かべると、続けて頭を下げた。
「すまん、五条。俺らを許してくれとは言わねぇ。けど、俺たちに、アイツに謝る機会をくれ。アイツを、
そう言う彼の姿に、五条は十秒ほど無言でいた。
その間、男は言葉を紡ぐどころか頭を上げる様子もない。
これは本心である、と。
そう結論付けた五条はこと意味ありげに大きくため息を吐くと、ビシッとサムズアップして答えた。
「任された」
♦︎ ♦︎ ♦︎
「死ね」
そんな一言で宿儺が右腕を振る。
ただ呪力を纏わせただけの大振りってだけで地面がえぐれ、石飛礫と呪力の衝撃が
俺は全身の呪力をさらに強め、それらを真正面から受ける。
術式すら使わない雑な一撃だっただけに、見た目ほどのダメージはない。
だが。
「これならどうだ?」
石飛礫と砂埃を分けて、宿儺が接近。先程よりも明らかに呪力がこもった右拳を、そのまま俺の顔めがけて振るう。
下手な術師が受けようものなら顔面の骨が陥没するだろうどころか、頭部が破裂しかねない一撃だ。
宿儺自身もそれが分かっているようで、元々の身体の持ち主である虎杖であれば絶対しないであろう下卑な表情を浮かべている。
バァン、と何かが破裂するような音。
直撃を予感したより悪醜に歪み笑う宿儺だったが、すぐさま気づいた。
「舐めるな」
ギリギリの所で俺の右手が宿儺の拳を受け止めており、その攻撃力を完全に殺していた。
「なに?」
呪いの王たる宿儺は、全力近い一撃を片手で防がれたことに不快感を感じたようで、眉をひそめる。
完全ではないとはいえ呪いの王、術式以前に呪力の扱いなども人のそれとは段階が違う。
単純な呪力だけで受け止めるだけなら、恐らく五条でも難しいだろう。
「ほら、仕返すぞ」
俺に右拳を握られているところに、真横からムラマサが居合の形で抜刀。右腕を断ち切らんとばかりに刀身が迫る。
宿儺は瞬間的に呪力で右腕を覆い、逆に刀を破壊しようと試みるが──
「っ!?」
刀身が呪力の衣を撫でた時点で宿儺は危険を察知。防御ではなく回避へ移行し、全力で後ろに下がる。
俺はわざと宿儺の拳を離して逃すが、流石に間に合わず宿儺の右手の指二本が切断された。
切断された指を御構い無しに、宿儺は十メートルほど離れると、右手の指を反転術式で再生させながら先ほどのムラマサの一撃に注目した。
「(……呪力で受けたはずが、すんなり貫通してきた。奴の術式か?)」
ムラマサが呪力による防御を無視できる術式を持っていると悟った宿儺は、次いで再生したての指近くに流れていた血を舐める。
血を舐めることに意味があるわけではない。
ムラマサの刀に触れた血から、彼の呪力の残穢を取り入れるだめだ。
そうして、気づいた。
「貴様、呪霊か」
その言葉と共に、先程よりも鋭くなった視線を受けるムラマサは口を開かない。
ただ、刀を宿儺へ向けて戦闘の意思を示す。
「フム、口を開かぬ……か。なぁに、
そう言いながら姿勢を正し、ムラマサへ向ける視線を幾分か挑発の色を宿して続けた。
「四肢の一、二本捥げば、言わずとも知れる」
挑発するような笑みを浮かべる宿儺に対し、ムラマサは視線を鋭くすることで返す。
すると、宿儺はクックッと笑みをこぼしながら、掌印を組んだ。
「っ!」
その意味が分からないムラマサではない。
ムラマサはすぐさま刀を鞘に収め、柄を逆手に持って居合の形を取ると、次いで人差し指と中指を立てる。
それ即ち意味することは、至極単純。
領域展開には、領域展開で対抗する。
「「領域──」」
向かい合う二人が同時に、そう呟いた時だった。
「待った」
俺は自身を中心とした円状に凄まじい呪力放出と共に、そう口にした。
呪力の放出自体に攻撃的な意味を持つわけでは無い。
単純に、気をひくために仕方なく無駄に放出しただけにすぎない。しかし、そのかいあってムラマサはもちろん宿儺も印は解かないものの、ほんの少しだけこちらに視線をやって、口を開いた。
「なんだ? 命乞いか? 頭を垂らし、平伏すれば考えてやらんこともないが?」
表情に苛立ちを浮かべながら、思ってもいないことをいけしゃあしゃあと告げる宿儺に、俺は右腕を前に出しながら返す。
「違う。俺もムラマサも、
前に差し出した右腕に巻きつかれた黒い包帯をゆっくり外しながら、俺は言葉を紡いでいく。
それを聞いている宿儺は最初の俺の言葉に面白いと言いたげにしていたが、後々続いた言葉の意図が分からず眉をひそめる。
「結果として、四肢の一つでも破壊されれば、呪霊であるムラマサはまだいいが、反転術式も使えない俺からしたらそれはメチャクチャ困る。今後にも差し支えるしな。だから、もしアンタが領域を展開するってんなら──」
包帯が外れ、パサリと地面に落ちる。
そして。
「俺も、コイツを呼び出さなきゃいけなくなる」
俺の右腕に描かれていた呪力による紋様、呪印。
それを見た宿儺は即座に後ろに跳んで距離を取る。
宿儺は驚きに見開いた両目で俺の右腕を見ながら小さく呼吸を何度か挟むと、視線を鋭くさせて俺へと移した。
「貴様………一体何を飼っているッ!?」
心の底からの激情故か、初めて声を荒げる宿儺。
俺はそれを聞いて、内心苦笑いを浮かべる。
「一体どっちが飼われてんのか、分からないけどな」
となりにいるムラマサにすら聞こえないぐらいの声量で呟くと、大きく深呼吸を一つ挟んで、告げた。
「取引だ、宿儺。俺としても、コイツを呼び出すのだけは正直避けたい。アンタが俺たちを見逃してくれるなら、コイツを呼ぶことも、俺たちが今日これ以上そちらに関わることもしない」
俺がそう告げると、宿儺は疑心的な視線をこちらに向ける。
時間にして、およそ数秒。
何やら考えが落ち着いた宿儺はゆっくりと姿勢を正して顎を持ち上げると、「ケヒ」と笑みをこぼした。
「残念だが、それは聞けんな。そも、俺はこの小僧の身体がどうなろうと構わん。俺はまだ他にもいるのだからな。貴様らの取引とやらに付き合うつもりは毛頭ない。呼ぶのなら呼ぶがいい。その姿を一目見て終わるのも、それまた一興だ」
心底意地の悪そうな笑みを浮かべながらそう言い放つ宿儺。
それを見たムラマサが再び戦闘態勢に入るべく呪力を練り上げるが、再度俺はムラマサを手で制した。
曰く、もう少し待ってくれ、と。
「宿儺の受肉体、その子以外に当てはあるのか?」
「答える必要などないな」
「まぁ、聞いてくれ。アンタの指はそれぞれに潜在的な意識はあれど、適正のある人間でなければ受肉できない上、指のままだと好き勝手出来ず不便だろう?」
俺の言うことに素直に耳を貸してくれる宿儺だが、いい加減飽きた様子でふとした拍子に襲いかかってきそうな雰囲気が感じ取れる。
流石に話を伸ばすのも危険なので、俺は結論から述べた。
「呪いの王たるアンタが、今生、それを見るまで死ねないと思うような興味を、あの伏黒って子に持つことになる」
「…………なに?」
あまりの俺の断言ぶりに、宿儺は初めて懐疑的な視線をこちらに向ける。
話を聞くのが飽きてきた様子が変化したことにとりあえず安堵したが、横目にムラマサが此方を見てくるのに気付いた。
「(分かってるよ。口先だけじゃないさ)」
俺は右腕を下ろして続けた。
「もちろん、俺が戦闘を避けるために嘘を並べてる可能性もある。だから宿儺、ここで『縛り』を課そう」
下げた右手を心臓の位置に持っていき、笑みを浮かべ──
「俺の言うことが外れた時、俺の心臓を貴方に捧げよう」
その言葉に、ムラマサが目を見開いて驚愕する。
まぁ、それもそうだろう。
宿儺自身、自らの意思で動ける時間は限られている。その間に俺たちを殺せるかというと、それは無理な話だ。
それをたかだか無傷で見逃してもらうための損得の一環に命を掛けたのだ。側から見れば頭がおかしい。
だが、それは俺自身、宿儺が伏黒に興味を持つという確信がある。
そもそも、俺は転生者。
物語の全てを知り得る訳ではないが、その一部はいまだに記憶の中にある。
それを利用することになんの躊躇いもない。
加えて、これは自分への『縛り』ではなく、他者との間で交わす『縛り』。
自分への『縛り』であれば未来を知り得るというアドバンテージから『縛り』としては弱く、成り立たない可能性がある。
それに対して、他者との間で交わす『縛り』は
俺は自分の命をかけるという行為が過剰だなんて思っていない。
でなければ宿儺に釣り合わないと判断されかねないからだ。
……十秒は経ったろうか。
顎に手をやって此方を見やる宿儺が不意に微笑を浮かべると「良いだろう」と口にし、瞬間その場から姿を消した。
俺とムラマサの呪力が静まっていく。
一山抜けたとため息を一つつく俺に、ムラマサが心配の色を浮かべながら此方に視線を向けた。
「マスター。大丈夫なのか?」
「ん? あぁ、大丈夫のはずだ。そうでなきゃ、俺もあんな提案はしないよ」
そんな簡易的なやり取りを交わしていると、ようやく領域が閉じる。それと同時に、俺のポケットから振動が伝わってきた。
俺は携帯電話をポケットから取り出し、通話ボタンを押して耳に当てる。
わざわざ新しく買った携帯電話故、相手は知れている。
「冥冥か?」
『そうだよ。やっと繋がったね』
通話先から安堵のため息のようなものが溢れたのを感じる。
俺は首を傾げて耳と肩で携帯を挟み、右腕に包帯を巻いていきながら口を開いた。
「新しい情報か? 先に言うと、宿儺のことなら既に知っているぞ」
『へぇ、それは耳が早い。けど、それとはまた別件だよ』
ピタリと、包帯を巻く腕を止める。
「なんだ?」
俺がそう問い尋ねると、冥冥は一つ間を作って答えた。
『君が追っている組織の支部として目をつけていた、長野県M市の博物館。そこに未確認の帳が下りているのを鳥達が発見した。私たちとはまた別の誰かが、襲撃してる』
♦︎ ♦︎ ♦︎
長野県M市に位置する、縄文時代からの石器物や平安時代からの書物などを保管し展示している博物館。
周囲は緑で囲まれているため人の気は少なく、非常に静かな雰囲気を纏っているそこは、観光客などにとってはとても人気な施設だ。
施設の中に入れば歴史を感じる数々を見ることができ、外に出れば広い草原と森が風に揺れてザァザァと心地よい音を奏でる。
近くの住民の中にも、その居心地の良さに毎日通う者もいたほどの良環境。
そんな場所が、血や臓物で汚れていた。
澄んだ空気には鋭い金属の匂いと臓物の匂いで汚れ、心に安らぎを与えてくれる緑の景色は血の色で下品に濡れている。
それら内蔵の類を散らした者達は全員その博物館の従業員。
ある者は真上からの圧で潰れたように。
ある者は何か大きな獣に噛みちぎられたように。
ある者は強い力で引き裂かれたようにその命を散らしていた。
だが、その内の誰一人として絶望や困惑の表情をしていなかった。
鋭い目つきで敵をにらめつけていたであろう男性。
悔しそうな表情のままで地面に額をつけている女性。
果ては仰向けのまま恍惚の表情で事切れている者もいる。
何故そのような顔をしているのかと言われると、一つしか答えを持たない。
彼らは全員、『呪いたる器の会』の構成員だからだ。
よく見ると、辺りには彼らが得物として扱っていたであろう刀や槍、弓などの呪具が確認できた。
それらを扱って、何と戦っていたのか。
彼らの死体の状態や呪力の残穢を見れば簡単に分かる。
かなりの数の呪霊と戦っていたのだろう。四級などの木っ端がいるものの、その数は百を下らない。
何故、それほどの数の呪霊が襲来していたのか。
本来、呪霊というのは生まれた土地にとどまる性質がある。それは一級といえど例外ではなく、特級呪物『両面宿儺の指』のような更なる呪力を得るといった目的も無ければ移動してくることはおろか、集まることもない。
今も呪霊が徘徊している博物館。『呪いたる器の会』が運営しているだけあって呪いに精通しているものが多く、それどころか彼らにとって此処は博物館という名目でさまざまな呪物や呪具を収集する役割を持つ重要な拠点だ。
そんな場所へ簡単に呪霊が集まってくることになるようなヘマを彼らは犯さない。
それならば、何故か。
「ンなモン、誰かがよぉ。引っ張ってきたか、操ってるかしかねぇだろうよ、そんなん」
博物館の地下、高級の呪物や呪具などを隠し保管する名目で作られた広いドーム状のシェルター。
そこの中心で一人立っていた男はポツリとそう呟いた。
シェルターの入り口、トラック2台が同時に通れるぐらい大きな扉の近くにはいくつもの破壊痕。呪力を纏った槍や斧、長剣といった呪具が突き刺さっており、その数から相当数の呪霊を祓ったことが分かる。
「チッ、舐めた真似しやがってよぉ。畜生が」
苛立ちに表情を歪めながら乱暴に髪の毛を掻くと、次いで扉の方から音が聞こえた。
反射的に視線を鋭くし、音の発生源に目をやる。
「……お、発見」
そこに居たのは黒で染まった袈裟を着込み、額の大きな傷の縫い跡が目立つ男性。
こちらに視線を向けつつ、袈裟にかかった土埃をはたいて落としながら、一歩一歩進んでくる。
ピタリ、と。
視線の先二十メートルで止まると、彼はジロジロと観察するように男の上から下までを見やる。
「纏う呪力量に加えて、頰に五字呪・『者』の文字。うん、君がここの長か」
どこか胡散臭い笑みを浮かべながらそう尋ねる男は、元呪術高専に在籍していたが、今は呪詛師として活動する特級呪術師、夏油傑。
そんな彼に対して、忌々しげに鼻を鳴らす男、
「そういうテメェは何だ、テメェ。バッカみてぇな量の呪いを放ちやがってクソ野郎が」
「なに、名乗るつもりはない。要件は一つだけ。それが済んだら直ぐに帰るさ」
ここまで暴れといてどの口が、と者祓は内心吐き捨てる。
夏油は怒気に身を包んだ者祓を見ながら、告げた。
「
その一言と同時、者祓が何かしら手振りを行うと、凄まじい速度で懐から一本の槍が射出された。
対し、夏油は腕を組んだまま動かない。そのまま直撃と思いきや、寸前で夏油の前に何かが介入。
人間サイズで二足歩行する亀のような呪霊だった。
自慢の甲羅で受けるべく構える呪霊であったが、槍は呆気なく甲羅を破壊し、呪霊を貫く。
しかし、夏油を守ることには成功したようで、亀を貫通した槍の先が夏油の目の前で止まった。
「……へぇ」
感嘆するように声をこぼす夏油。
どうやら槍の一撃が亀の呪霊の防御力を上回るとは思ってなかったようだった。
仕留めきれなかったことに舌を打つ者祓。
夏油は槍の先を軽く撫でて、軽く笑みを浮かべる。
「呪具か」
「あン? 何驚いてやがる。ここの奴らが散々使ってたろうがぁよ」
「……うん、まぁ、そうなんだけどね」
忌々しげに眉を上げてそう言い放つ者祓に、夏油は困ったような表情を浮かべると、続けた。
「君の情報を話すよう拷問しても誰一人喋らなかったもんだから、ちょっと驚いたのさ」
「……そうかよ」
おどけるように話す夏油に、者祓は目を細めて短く呟く。
次いで、夏油に聞こえないほどの声量で、馬鹿野郎共が、と吐き捨てた。
者祓は再度構え直すと、全身に呪力を纏っていく。
「部下どもの仇だ。殺すぜ、テメェを」
そんな彼の宣言を、夏油は呪霊を展開することで応えとした。
こっからは主にサイドストーリーとして物語が進行していきます。
もちろん、原作キャラも登場はしますが、原作に沿うのはもう少し先になりそうです。
呪術原作でもまだまだ設定が全て開示されてないことからおかしな点も増えていくかもしれませんが、これからも当作品を読んでいただければ幸いです。