未来がわかる本の鬼 作:かんりにん
「貴様は誰だ?」
素流道場から山に戻る途中、橋の上で黒髪の男性と出会った。貴様は誰だという問いに私は答えず、目の前の男性が発言するのを待つ。
「おかしな気配を感じたから来てみれば、その鬼の肉体が別のものに乗っ取られているではないか。貴様は誰だ?何故その鬼の中に入り込んでいる?」
「さあ?気がついたらこうなっていたもので。乗っ取ってしまっていたんですね。申し訳ないです」
「思ってもいないことを。別に構わぬ、どうせその鬼は弱い。中身が変わったことで強くなるのであれば上々だ」
男性は口角を上げて笑ったかと思うと、瞬時に近づいてきて私の顔に手を伸ばした。そして暗転。顔に何かが刺さっている感覚によって男性の腕が私の顔を貫通している事に気がついた。
「十二体ほど強い鬼を作ろうと思っているんだ。私の血をもっと分けてやろう。強くなり、私の手足となれ。その未来予知を私の為に使え」
「・・・あれ、私のこの本のこと知ってるんですね?」
「私は全ての鬼の思考と行動を把握している」
なるほどねえ、と納得したのと同時に腕が顔から抜けた。数秒は何も見えなかったが直ぐに再生したようで周りの様子を見ることが出来た。男性は近い位置で不敵に笑っている。
「お前の名は今から
「未来の類義語ですか。まあ、未来予知が出来ることを考えたら相応しい名前とも言えますね。ありがとうございます。えー、と」
「鬼舞辻無惨だ。いいかい、喋ってはいけない。私のことを誰にも喋ってはいけない。先程言った通り、私はいつも君を見ている」
そういうと、男性・・・もとい鬼舞辻無惨は私の両目に指を翳した。また貫通させられるのかと思っていたら、瞳がじんわりと暖かくなっただけだった。
「お前は弍だ。上弦の弍。ただこれはまだ鬼がいないからこの数字なだけだ。他の鬼より弱いと分かったら堕ちていく」
そう言うと、踵を返してどこかへ行ってしまった。私もそのまま山に帰り眠りについたのだった。
数年、数十年。目が覚めたら街並みがまるきり変わってしまっていた。きっとかなりの年月が経ってしまっていたのだろう。これからどうしようかと逡巡しているとベベンという琵琶の音が聞こえた。
「どこここ」
瞬間、物理法則も重力も無視したような屋敷の中に居た。周りを見ると人と同じような姿の鬼や異形の鬼が6人いた。そのうちの一人、琵琶を持った女は上の出っ張った所に座っている。
「おやおや?キミが爾今殿か!いやあ、1度も会ったことが無かったからな、存在しているのか不安だったんだぜ」
「誰?」
「俺かい?俺は童磨だ。よろしく頼むよ!入れ替わりの血戦!」
入れ替わりの血戦とはなんだろう・・・と考え込んでいると、鬼舞辻無惨の声が聞こえてきた。
「先日、上弦の陸が死んだな。そして新たな陸が入ってきた。丁度いい、入れ替わりの血戦を望むものが増えてきたから今この場で執り行う」
鬼舞辻無惨も話しているが、入れ替わりの血戦ってなんだ?と思っているうちにどうやら始まってしまったらしい。まずは、私とさっきの童磨。
「まさか本当に出来るとは!爾今殿、いい戦いにしよう!」
「・・・無理ですね。鬼舞辻無惨様、私はこの戦いは降ります。どう足掻いても勝てそうにありませんので」
本を取りだし、ペラリと捲るとまたもや未来が記されていた。その内容を速読してみたがこれはもう勝てないだろう。時には諦めも肝心だ。
「そうか。分かった。では、今この時点で上弦の弍は童磨、上弦の参は爾今だ」
「あれれ?爾今殿と戦えると思ったのに残念だ。キミ、上弦でやっていけるのかい?」
「無駄な事はしない主義なので。大丈夫、肆から陸までの鬼になら勝てますから」
童磨の事はもう頭の片隅に追いやり、次の戦いの未来を読む事にした。が、記されている未来をどうやって変えようかと考えるまでもなく勝てるのが分かった。なんだ、そんなに強くないのか。童磨と上弦の壱が異様に強いだけだな。
そう思った通りに他の3人には余裕で勝つことが出来た。この本、未来を記すだけではなくて攻撃も出来るらしい。