相変わらずの不定期投稿、加筆修正の多さですが、それでもいいという方は楽しんでいって下さい。
春先。
少年、
VRMMORPG──いわゆる仮想現実空間におけるフィールドの一つ、その名も『古代宮殿』。勇磨はその中にダイブ──つまり自宅に体はありながら、精神だけを移動させて活動していた。
その時、勇磨の洗練された聴覚が、ヒタヒタという足音を捉える。獲物のお出ましだ。まぁ実を言うと、先ほどからずっと複数の足音に追われているのは気づいていたのだが。
勇磨は振り返ると、背に差した愛剣を抜いて中段に構えた。
「来いよ、化け物ども」
不敵な笑みを浮かべつつ勇磨が口を開くと立ち並ぶ石柱の林の陰から、するすると複数の影が姿を現す。その数、三体。
姿は現実世界に存在するイヌ科の野生動物に
──低レベルモンスターの一種、〈ユーロピアン・ウルフ〉。
まぁこいつ
勇磨はそんなことを考えながら、ゆっくりと右足を浮かせると着地と同時に正面の狼に斬りかかった。
連中はもたもたしていると複数でプレイヤーを取り囲み、たちまち
まずは真ん中の一体に
勇磨の水際立った動きに、狼たちは
即座に左手が条件反射的に
二体はHPバーを削り切られてガラス
これが、この世界における『死』だ。
しかし、残る一体、最初に飛びかかってきた狼は、仲間の死など意に介することなく──そもそもこんな低レベルのモンスターにそんな感情はプログラミングされていないだろうが──爆散する無数のポリゴンを
銃を取り出した勇磨には
高速で思考する勇磨の知覚に反比例して、あたりの時間の流れが
飛びかかってくる狼のその
勇磨は
この空間には実はもう一人、心強い相棒がいる。
その相棒は、自身の愛銃・MP7を右手に下げたまま、
「まったく、相手のレベルが低いからって油断し過ぎですよ、勇磨さん」
「
身長は勇磨の胸元までしかないのに、やけに冷徹な十歳児、
「さ、
「いつも思うが、何なんだ、この儀式は?」
彼女の頭に手を置いて、ストレートの黒髪を頭ごと
「この過程がないと私は勇磨さんを守り切れません。実力は五割減です」
すると明理は目を伏せてされるがままになりつつ、どこぞの
「これがないとわかっていたら、さっきも自分だけ、安全域まで逃げるところでした」
「そりゃ
苦笑しながら手を降ろすと、明理は一歩下がり、目の前にメニューを呼び出す。と、彼女の
「勇磨さん、社長から速報です。第二十三区にて『ガストレア』が出現。他の
「そっか、りょーかい。んじゃ今日の攻略はここまでだな」
勇磨も応えると、目の前にホログラムのメニューを呼び出し、ログアウトボタンに触れる。
たちまち二人の周りを青白い光の円柱が取り囲み、視界が
現実世界──東京エリアの自宅に帰ってきた勇磨は、目を開けると頭に被っていたヘッドギアを外しながら身体を起こす。
勇磨は
「さてさてさーて、っと」
今日もまた、
西暦二〇三一年、人類が『ガストレア』との大戦に負けた十年後の春。勇磨達、民間警備会社──略して民警──は、石版モノリスの結界の向こうから度々迷い込んでくる『ガストレア』を狩る仕事をしている。
しかしそんな非日常の中でも、勇磨はゲーム等の
剣と銃の織りなす
それならば、ゲームの中の世界もまた一つの現実と
『MMORPGはゲームであっても
それが
1
勇磨は外に出ると、ベランダに立った相棒を見上げる。
「どうだ?
トレードマークの錨マーク付きの鍔付き帽を被って目を伏せ、歯を小さくカチカチと鳴らしていた少女はすぐに答える。
「はい、近いです。ここより約三百メートル先、一体のガストレアと民警が交戦しています。獲物は十中八九
浪川明理。モデル・キラーホエール──つまり
勇磨はそれを聞いて、苦笑と期待を等分に含む笑みを浮かべた。
「そりゃまたなんともベタな状況で。──そんじゃ、プランAなー」
「言ってる意味がわかりませんが、いつも通りということは理解しました」
勇磨は自転車にまたがると、ギアを一番重い六まで上げてこぎ出した。
明理が見ていた方向から察するに、獲物は勇磨たちから見て北北東の方角にいる。住宅地が並ぶやや危険な状況だ。
やがて一人の青年が巨大なクモ型の怪物に向かって銃を乱射している現場に行き当たる。
勇磨はその場で自転車を乗り捨てると、背中の剣の
「ガストレア、モデル・スパイダーを確認。これより交戦に入るッ! ──勝ちはもらってくぜぇ新米さんよぉッ」
ぎょっとして振り返るベレー
「ッし、まずは一発……ッと、近過ぎたッ」
その攻撃がスパイダーを刺激したのか、
青年の相棒らしい少女はクモ糸に
勇磨は思い切り飛び上がると、ビルの壁面を
「さて、こっからが本番だ」
フェンスを伝って横に移動すると
そして目を開けると、
勇磨の右眼の黒目内部に
勇磨がビルから飛び降りると、スパイダーがすかさず上を向き、ばっちり眼が合う。直後、勇磨に向けて網状のクモ糸を
「あ、ヤベ……ッ。──なんつって」
その行動を読んでいた勇磨は、
民警
昔、仕事仲間の友人から授かった知識が脳裏をよぎる。
『クモの糸ってのは、フィブロインっていって、タンパク質の一種なんだ。だから可燃性で、それもよく燃える』
次の
勇磨はその中から焼け焦げたクモを見つけると、両手で振り上げた剣に全体重を乗せて突き下ろした。
決着の予感に勇磨はほくそ笑むが、その
「あッ、チクショウ抜けないッ」
勇磨がもたもたしているとすぐにクモが暴れ始め、やむなく剣を
「勇磨さん、無事ですかッ?」
「おー、無事無事。けど参ったなぁ……」
「?」
「ほら見てくれよ。アイツに剣、ぶっ刺しちまった」
ガストレアを
「だからいつも武器は大切にしろとあれほど言っているのに……」
「まぁやっちまったもんはしょうがねぇ」
「開き直らないで下さい」
勇磨が手を差し出すと、明理が仕方なく自分の
「今回で最後ですよ?」
「はいはい、善処しますよっと」
勇磨は二、三度剣を振ってみて
「しかしいつ持っても、お前の剣は軽いなぁ……」
「勇磨さんのが重過ぎるんですよ。そんなことより、早く終わらせて下さい。調子に乗った
「へぇーい」
冷たい一瞥をくれながらも、どうせ心の中では信頼してくれているのだろう少女の言葉に気のない返事をすると、勇磨は先ほどの再演の如く洋刀を中段に構えた。
「そんじゃ、いっちょやりますか!」
数分後。
これでもかとばかりに斬りつけ続けられたクモ型の怪物が完全に息絶えたのを確認してから、勇磨はガストレアの体に足をかけて愛剣を回収。続いて振り返ると、いままで棒立ちになっていたベレー帽の青年に、明るい声と共に手を差し出す。
「よっ、大丈夫か? お疲れさん」
しかし青年は勇磨に敵意丸出しの視線をくれると、吐き捨てるように
「フン、
勇磨はその当然の、しかし心ない言葉に肩をすくめる。続いて青年の脇を歩いていき、今度は彼のイニシエーターに声をかけた。
「おい、立てるか?」
すると、少女ははにかみながら「助けて下さい」といって
ハーフアップにした茶髪ロングヘアーの少女は、勇磨が助け起こすと折り目正しく一礼する。
「ふぅ……。危ないところを助けて頂き、ありがとうございました」
「いやいや、いいってことよ。それに、礼ならあっちの、ウチの相棒にしてくれ。アイツが君たちのこと、見つけてくれたんだからな」
親指で勇磨が指し示すと腕組みしてそっぽを向いていた明理は一転して微笑と共に軽く
「おい
ぶっきらぼうに言い放って、和穏と呼ばれた少女を置いていく青年に、和穏は慌てて追いすがる。
その二人の背中を眺めながら、勇磨は一つ呟いた。
「……ま、悪い奴らじゃあなさそうだな」
「そうですね」
微笑を浮かべていた明理は、そこで唐突に
その行動を半ば予想していた勇磨は、すかさず身をよじると彼女の肘をかわした。
「おっとッ。なんだよいきなりッ?」
明理はこちらを
「……早く私の剣、返して下さい」
「あ、ハイ……」
2
勇磨たちが勤める『
勇磨と明理がガストレアを倒し、事後処理を済ませたその
西洋建築なのだが中途半端に和風な為土足を脱いで脚を
客人でも来ているのかと
意を決して戸を引くと、そこにはソファーに座って読書をする金髪の青年と、隣にはアリの触角に似た二本のアホ毛がある焦げ茶色のボブカットの少女がこちらを見ていた。
見知った顔に、勇磨は明るい声を出す。
「おぉ、ラクシオさんじゃねぇか! いつ帰ってたんだよ!?」
極端に病弱なためいつもマスクを着けている青年、ラクシオ・バルバトスは
「やぁ、数ヶ月ぶりだね勇磨くん。僕はちょっと大阪エリアに逃げたガストレアを捕まえに行ってて、ね。しばらく前から
「おー
「あぁ、僕たちの新たな仲間だ」
「
静かな声でラクシオのセリフを引き取った少女に、軽く自己紹介を返す。
「それで、社長は?」
勇磨が言うと、今度は手前のソファーに座っていた少女が伸びをするように両腕を突き上げる。
「向こうで事務整理中だよー」
茶髪ツインテールの少女──
どうやら、例によって相当ご
歩いていくと、できるだけ平静を
「あー、コホン。──プロモーター
形式通りに敬礼すると、栗色のロングヘアーの少女は一拍おいて「ご苦労」とそっけなく返す。
「あのー……
「──私が怒ってる理由、わかるよね?」
さらに一拍おいて、彼女は大きなはしばみ色の
「えっと……あ! 連絡から解決までが遅かった?」
「それは別の話」
「あ、ハイ……。えと、取り分が少ないから……?」
「わかってるじゃないのッ!」
せまいリビングに
「いっつもいっつも、勇磨くんが他の民警に追いつけずにそのまま獲物を横取りするせいで、ウチにくる
「ま、まぁまぁ、落ちついて聞いてくれよ社長。
「キミがゲームしてない時に限ってガストレアが来ないのがおかしいと。へーそーですか、そんなこと言いますか」
半眼でこちらを見返してくる社長に手をこまねいていると、
「勇磨さん、
明理の言葉で、ようやく少女の言い分を理解する。
「あー、つまり、俺がいつもガストレアを横取りしてたせいで、俺達の序列が思うように伸びていない、と」
腕組みしてどっかと椅子に座り直したウチの社長は、そのまま不満そうな声を出す。
「キミには明理ちゃんっていうとっても優秀な相棒がいるにもかかわらず、キミの序列は未だにウチのなかでも最弱の二万四千六百八十位。明理ちゃんが優秀なプロモーターと組めば『千番越え』も楽にできる
「……。──俺が弱いからだろ?」
「──キミが! いつも!
ひとこと発するごとに机を
「まぁ、俺達民警の目標は世界中のガストレアを
するとそこで、ラクシオが本から顔を上げ、マスクを下ろして口を開いた。
「まぁ勇磨くんの意見にも一理あると僕は思いますよ、東國社長」
「あぁ〜もう、ラクシオさんまで……」
少女は腰砕けになって椅子に座る。
「そんなのわかってるよ……。私だって社長として、勇磨くんに危ない橋を渡らせるわけにはいかないし……」
その言葉に勇磨はラクシオと目
東國
「……おやつ」
「はい?」
「おやつ何か一つ
「あの、社長、俺のいまの所持金──」
「──ちゃんと、
「……はーい」
そこで、ラクシオがなにか思い出したように「あ」といって脇に置いてある
「社長、これを」
「はいはーいッ」
へたり込んでいた彩花はその声がスイッチになったように元気に応えると、こちらに「キミもこれからも頑張るように」と可愛らしい笑みをくれながら、袋を受け取る。
「ふ〜! 見てよ勇磨くん、この報酬の山! どこかの
「へいへい、わかりましたよ……ってうお」
勇磨も彼女のテンションに
ラクシオ・バルバトス。彼はこの会社の書類上の経営者にして『先生』の兄であり、
また、その
そこまで考えて、勇磨は先ほどのラクシオの言葉が意味するところを悟り、改めて驚嘆した。
彼は『大阪エリアに逃げたガストレアを捕まえに行っていた』と説明した。しかし、たったいま
二〇三一年現在、日本は巨大な石版モノリス群によって、東京を含む五つのエリアに分断されている。
モノリスの正体は、バラニウム製の金属塊。ガストレアはこの金属を極端に嫌う。バラニウムの出す特殊な磁場が天然の結界の役割を果たし、その内地だけは大規模なガストレアの
逆にいえば、日本に残る五エリア以外のすべての地域に
それはつまり、彼がそれだけのことをやってのける実力をもっているということに他ならない。もし彼が虚弱体質でさえなければ、どれほどの実力になっていただろうか。
勇磨はそんなことを考えつつ、人知れず
「よーし、今日はこれを皆で山分けね! 勇磨くんはこれ、明理ちゃんはこれ、ラクシオさん達にはこれッ」
「おいニセお
勇磨が口を開いた途端、発言権は与えないとばかりに冷たい視線がこちらを貫いた。
「
「やったぁッ、ボク焼き肉大好きぃッ」
両手を突き上げて喜ぶ
──ラクシオさんと社長が三割ずつとして、明理が残り三割の俺一割なわけは
その時、彩花が「んッ」といって伸びをする。ポキポキと小気味のいい骨の鳴る音が聞こえた。
「じゃあ今日はこれで解散か? 途中まで送るぞ?」
「そう、ありがと」
ノートパソコンを閉じた彩花に声をかけると、そこで本日の業務は終了となった。
3
勇磨と明理が次に向かったのは、
受付を顔パスで通過し、消毒液の臭いの
無論これは落とし穴などではなく、このさらに下、地下に住む『先生』の部屋へと続く階段がよく見ればわかるほどの急角度で付いていた。
足を滑らせないようゆっくり降りていくと、やがて巨大な両開きの
なんだか手術室のようで不気味だが、ちゃんと住人がいることを示すように、巨大な頭部をもった二本のポール型監視カメラが両脇に並んでいる。
いくらなんでも監視カメラまで増設してしまうのは度がすぎていまいかと思いつつ、扉を押し開けた。
「先生ぇー。先生? どこだよ?」
「──ここです」
「うおッと、いきなり真横に立つのは止めろ、心臓に悪い!」
暗がりから声がして、ややもせずその奥からサイズの合わない白衣をまとった金髪ロングヘアーの少女がにっこりと
彼女の名前はセルシア・バルバトス。ラクシオの妹であり、またこの地下室の女王にして、知る人ぞ知る天才美少女外科医だ。
彼女には、十五歳という若さで有名大学に入学した挙げ句飛び級で卒業した元国際警察の五つ星。更には世界最高クラスの頭脳達『
彼女を知る勇磨の数少ない知人たちは、口を
『知られざる五人目の賢人』、あるいは『もう一人のグリューネワルト』と。
彼女について語り出すと、このようにキリがないので、それはまたの機会に説明していくとしよう。
「で、どうですか、調子は?」
お
「ま、おかげさまでぼちぼちってところかね」
「そうですか、それはなによりですね。今後も全力でイジらせてもらいます」
「最後の一言が思い切り余計だよ……」
あくまで
「そんで、だ。『奴』はもう届いてっか?」
「あぁあれですか。はい、いま持ってきますね」
「おい待てフザケんな、いらねぇよッ」
「ハハハ、
「それこそ冗談キツいぜ……」
彼女にはもう一つ、現在の肩書きがある。それは──勝手にこの地下室、もとい霊安室を増設して──ここ、清華大学附属病院に客員教授として勤務ないし居住して、政府からガストレアの
「
その言葉に、明理は顔を真っ赤にしながらも自分の胸元を
「先生、そのネタはよしてくれ。明理の心の傷が無駄に増える」
クスクスと笑うセルシアにうんざりしながら、なんとか話題の方向を修正しようと努める。
「で、どうだったよ? こっちの情報を先に言っとくと、ソイツは俺達と戦う前にすでに別の奴らと戦ってた」
「あぁ、それでですか。ようやくあの謎に
「あの謎?」
「あのガストレア、何発も
その言葉に勇磨は
ガストレアはその驚異的な回復能力により、普通の銃弾、つまり鉛弾では効果が薄い。というより完全に与えるダメージと
ガストレアには、基本的かつ簡単な対処法が大きく一つ存在する。それは、バラニウムと呼ばれる特殊な磁場を発する金属を使った武器で
ガストレアはこの金属にどういうわけかもの
民警の間では、このバラニウムを使った武器を使うことが原則であり、不文律となっている。
勇磨は自分のワルサー
重量感のあるブラッククロームの
横に座る明理を見る。彼女の
更に、彼女にはもう一つ武器がある。それは、身の内に宿したガストレア因子によって人並み外れた身体能力や回復能力を発現し、更にどんな病気にもかからない耐性をもつこと。ただしこの
まず、ガストレアと同じようにバラニウムの攻撃を受けると傷の再生が
彼女たちの出自は実に特殊だ。母親の
「明理の体内浸食率、いまどのくらいだっけか?」
勇磨が疑問を投げかけると、セルシアが即答する。
「六.二%、完全に安全域です」
「そっか……」
そう。この体内浸食率には、臨界点というものが存在する。
──五〇%。その数値を超えるとたちまちヒトの姿を
これはガストレアウィルスに後天的に血液感染した者にも同じことが言える。彼らは、先天的に感染したガストレアウィルス
そこでひとつの疑問に行き当たり、正面に座る幼き天才解剖医を見やる。
「そういえば、アンタこそどうなんだよ、最近の身体の調子は?」
「勇磨さんに心配をかけるほど大変ではありませんよ。こちらもぼちぼち、というところです」
「なら良かった」
彼女──セルシアにも実は勇磨たち近しい人間のみが知る、ある秘密がある。
それは、彼女が人間のアルビノであるということ。彼女は本来、生まれつき身体の色素が
そしてなんとも奇遇なことに、ガストレアや『子供たち』は生まれつき、そして能力を解放したときだけ
そんな
そんなことを考えていると、勇磨の視線を読んだセルシアが静かにはにかむ。
「そんなに悩まないで下さい。いまはこうして細々ながら暮らしていけてますし、なんならいっそ、ここにずっといる方が快適ですよ? あ、そーだ! 今度、良かったらウチに引っ越すというのは──」
「あー! そうだ明理、今日の夕食当番は俺だったよな。またご指導願っとくぜ」
無理やり話をねじ曲げた勇磨の判断を責めるような者はいなかった。明理の顔にも『重要な話がないなら早くこの薄暗い地下室と目の前のイジり魔の手から脱したい』と書いてあったのだ。
「わかりました。では今日は新しいメニューに挑戦しましょう」
「う……ッ。