ここ数日は比較的順調に活動を進められていたので、GW中の投稿を目標に頑張っていたのですが、気づいた時には意外なほどあっさりと連休の最終日を迎えてしまっていました。この場合、どう
明けましておめでとう? ハッピーバレンタイン? あるいはハッピーイースター? どれを取っても、
さて、気を取り直して。それでは物語の一つ目の山場に向けて
午後九時。
板チョコは軽くてかさばらないうえに高カロリーなのでサバイバルに好適で、自衛隊などでも隊員に携帯食料としてチョコを支給しているらしい。
愛香はフライトジャケットでやや着ぶくれした体をよじると、眼下に広がる森を眺めた。森には月明かり程度では到底見通せない深い
輸送機は、随分前に国境線であるモノリスも越えている。このあたりはすでにガストレアの闊歩する危険地帯、未踏査領域だ。
このどこかに、IP序列元百三十四位のペアが隠れ
愛香は板チョコを持つ右手が小刻みに震えているのに気づき、そっと二の
これは彼らを狩りだすための言わば総力戦だ。作戦に投入された多数の民警の中には、影胤ペアより序列の高い者もいるかもしれない。
どこに潜伏しているとも知れない影胤たちを、東國民間警備会社がいの一番に見つけて
不意に肩をつつかれてハッとする。
「あのさ、ちょっと聞いていい?」
愛香と同じく緑のフライトジャケットを着込んだ
「えぇ、もちろん。どうしたの?」
「病室で話してたステージⅤって、何? ガストレアはステージⅣまでしかいなかったよね?」
「……え? 雛乃、あなた民警マニュアル読んだこと無いの?」
愛香が思わず聞き返すと、雛乃は後ろ頭を
「読んだことはあるけど、細かい部分とか難しいとこはあんまり覚えてなくて……」
「あの、東國社長?」
「……ハイ」
「仕事に必要な知識ぐらい、せめて自分のイニシエーターには覚え込ませるべきだと思うんですけど」
「ハイ、ごめんなさい……」
彩花がしゅんと肩をすぼめると、背後でラクシオが笑みこぼれる気配。
「内地で仕事をしている分には、この先必要になる知識もそこまで重要ではないからね。でも確かに
ラクシオは「他の皆も聞いていてほしい」といって注目を集めると、ひとつ
「通常、ガストレアはステージⅠから始まって、ステージⅡ、ステージⅢと成長するごとに大きく、
「うん、そこまでならボクも知ってるよ」
雛乃がこくりと
「そうだろうね。ステージⅤというのは、そんなガストレアの常識の外にいる存在だ。ガストレアは
そこで
「おまけに、自重で
「でも、モノリスがあればどんなガストレアでも東京エリアには入れないでしょ? 大きくても意味なんて無いんじゃ……」
愛香は食べ終わった板チョコの包装紙をラクシオに手渡すと、
「問題はそこね。結論から言うと、ステージⅤはバラニウム磁場の影響を受けないの」
続いて、
「それだけじゃない。わけても恐ろしいのはステージⅤによってモノリスが一ヶ所でも壊された場合だ。そうなると
「ど、どうなっちゃうの……?」
「──『
明理の言葉に、雛乃の体がびくりと
「私たちはそういうケースのことを、そう呼びます。過去に中東やアフリカで起こったことがありますが、あれは端的に言って地獄かと」
そこで勇磨が
「わかっただろ雛、いまが東京エリアに大絶滅が訪れるかどうかの
これはなにもあいつ
「ステージⅤっていうのは、たくさんいるの?」
その問いに、いままで事の成り行きを見守っていた
「目撃されてるのは十一体。奇跡的に二体だけ倒されてるね。あまねくガストレアウィルスに感染した細胞は
その時操縦士から「着きました」と声が掛かった。彩花は雛乃に手を伸ばし、力強く
「さぁ行こう、雛ちゃん。東京エリアを私たちで救うのよ」
1
作戦を終え帰投の途につく輸送機を見送ってから、彩花は
「ここからは、絶対に大きな音を立てちゃ駄目だよ」
「なんで?」
「ガストレアを起こすから。動物には、私たち人間みたいに朝起きて夜寝る種類もいれば、夜行性っていって、夜中に起き出して活動するのもいるの。大きな音を立てたら夜行性のガストレアを引き寄せるだけじゃなくて、いま寝てる動物も起こすことになるから大変なんだよ」
彩花に続き、やや離れた位置に立っていた
「私も、普段は歯を打ち鳴らした反響音で周囲の状況を探っていますが、ここからは超音波式に切り替えるつもりです」
雛乃は「ふむふむ」と
彩花は表情を引き締めて、周囲に視線を
「さて、それじゃどうする、社長? 暗すぎてお互いの顔もよく見えねぇけどよ」
「ひとまず安全を確保するためにも、引き続き固まって動こう。それと、問題は……」
そこまで言ってから、首を
「
勇磨の隣に立つ
「たしかに私の能力なら、この
彩花は肩を落として小さく
「そうだよね……。本当はガストレアや
言いながらライトを取り出し、続ける。
「じゃあ皆、ペアごとに一列に並んで。それからラクシオさん、後ろから列を照らしててもらえる?」
「ああ、構わない。
「大丈夫よ、背中は任せて」
ラクシオの言葉に、愛香はすぐにアリの触角のような二本のアホ毛を小さく振って
列の先頭に立った
気温はやや肌寒いほどなのに、熱帯雨林にしか生えないようなシダ植物や
中には、見たこともないほどねじくれた幹を伸ばしながら周囲の木に
なにより異様なのは、音だった。
熱帯雨林の夜というと昆虫や鳥、カエルなどの合唱でかまびすしいほどなのに、この
「し、社長……」
「十年の間に、モノリスの外はこんなことになってたのね……。これが……『未踏査領域』……」
「
ガストレアが支配する地域は、動植物の分布が
彩花が歩きだしつつ腰からブッシュナイフを抜き、後ろに続く雛乃が通る際
イニシエーターは強力な自己再生能力があるため、枝に
「このまま森を抜けて、近場の街まで行こう」
彩花が前を向いたまま口を開くと、雛乃が意外そうな声を上げる。
「この周囲を探せって言われてなかった? ジンカイセンジュツ……だっけ?」
「あー、それはそうなんだけど……」
すると、勇磨の身体ごしに顔だけ出した
「私も社長の意見に賛同します。こんな場所、まともな神経の人間なら長居したいとは思わないはずです。
「
ラクシオがなにかを言いかけたその時、不意に上着の
「どうしたんだよ、明理?」
「──シッ! ライトを消してくださいッ」
そう言ってラクシオから懐中電灯をひったくると、有無も言わさず電源を切ってしまう。前を行く彩花も異変に気づいたらしく、光源を失った
服を引かれ、
「何だってんだ、さっきから?」
「とにかく静かに。全員、頭をできるだけ低く」
直後、愛香が小さく
「うぐッ、ケホッ。なに、このにおい……ッ」
「におい? どんな?」
ラクシオが小声で
「なんか、ものが
そこまで強烈な悪臭はしないけどな、と思いかけてすぐに首を振った。彼女は、アリのガストレア因子を体内に宿したイニシエーターだ。きっと勇磨たちには感知できない
「いまは
「来るって、まさか……」
その時、勇磨も強烈な悪臭を感じて思わず鼻を押さえる。同時に断続的な
──なんだ、あれは。
胸の内の疑問を解消する間もなく
「ガストレア、完全に通過しました。気づかれた様子はありません。もう安全だと思います」
その言葉に勇磨はそっと体を起こしながら、大きく息を吐きだした。
「何だったんだ、いまのガストレア。体の上でなんか光ってたよな?」
見ると、明理は
「全体的な姿は昆虫のようでしたね。そして光る器官を備えているということは、ホタル……?」
「それからさっきのにおいだけど、
ラクシオの言葉を聞き、勇磨も
「つまり、花とホタルが混ざった
「それに、そこまで特殊進化した個体だと、ステージⅢだろうね。見つからなくてホントよかった」
「こんなところで
2
少し進んだところで開けた道に出た。足場が柔らかい地面から
天を
いつの日か、人類がガストレアに勝利したとして、ここまで
「そういえば、変なんだよね。ここに来てから少し体が軽いし、気分も良いんだよ」
不思議そうに手を開閉する雛乃に、彩花がかすかに笑みこぼれる。
「バラニウム磁場は、
「──おっと」
その時、背後から聞こえたラクシオの声に振り返ると、明理が足を止め周囲に視線を巡らせていた。
「今度はどうした?」
問いかけると、明理は口元に人差し指を当てる。
「すみません。ほんの少し、時間をください」
そう言うや
「間違いないですね。この先で、ガストレアと
その一言で、全員に緊張が走った。
「他にわかったことはあるか?」
「はい。大きさから考えて、おそらく獲物はステージⅣ。場所は五百メートルほど先の森の中です」
そこでわずかに言い
「交戦中の民警は、私が確認できた範囲では一組だけでした。完全体を相手に、まさか正面から挑んでいるとは思えませんが……」
「……。──社長」
顔を上げると、彩花も頷きを返した。
「助けに行こう。いまならまだ間に合うかも」
各々のペアが素早く肩を組むのを見ながら、
明理とアイコンタクト。彼女の
次の
上着が強風であおられ、空中で
明理は太い枝の一つを見定めると、両足で着地し、再跳躍。そのまま
勇磨は情けなくも明理にしがみついていた。彼女が跳躍するたびにかかる強烈なGに振り回され、落下しそうになる。
「見えました、あそこです!」
明理が指差す先に視線を向けるが、枝葉が
勇磨が明理の肩を短く三回タップして合図すると、明理はシャチの跳躍力でもって大きくジャンプ。吹き飛ばされるような加速度に歯を食いしばっていると、やがて圧力がふっと消える。
さきほど明理が指差した辺りに目を
「落ちます」
明理の合図を境に慣性力が消え、
だが明理は危なげなく太い枝に足を
あわや地面にぶつかる直前、勇磨は前転して落下のダメージを逃し着地。
「おいッ、しっかりしろ! 大丈夫かッ?」
マフラーを巻いた少女は
「あ、あなたは……?」
「君を助けにきた。ここにいるのは全員味方だ。プロモーターは?」
すると、大きく見開かれていた少女の両目から涙がぼろぼろと
「あ、あぁ、あ……」
その時、ずしんという重低音が伝わってきた。続いて、腹の底に
身長は六メートル以上ある。
それはおとぎ話のドラゴンの姿に似ていた。
間違いなくステージⅣのガストレア。
そこで勇磨はドラゴンが先ほどから
──青年の体を頭からむさぼっている。
状況から考えて、まず目の前の少女の相棒だろう。政府がなりふり構わない物量作戦をごり押しした時点で、
ドラゴンに視線を
「いいかい、
勇磨は、油断なくドラゴンに視線を
「ちょっと待ってくれ、それじゃアンタらは……」
「大丈夫、勝算はある。僕だってこんな場所で死ぬ気はないし、愛香も絶対に守ってみせるさ。勝算……といっても、僕たちだけでこのガストレアを倒せるとも思えないけどね……」
今度は背後の
「先ほど跳んだ際、ここから
ドラゴンは
と、その時、不意にドラゴンが天を振り
「愛香ッ!」
ラクシオが叫ぶと同時に、
ふっと
「
ラクシオの
「『
後方宙返りしつつ
一方、下段では愛香がバスタードソードを振りかぶっていた。助走をつけて飛び出した少女の
発生した
勇磨は
勝負の
「いきますよッ」
声とともに見えざる手に
明理は太い枝に両足を
「さっき言ってた建物って!?」
「こっちです。ついてきてください!」
勇磨は必死で明理に
彼らの無事を
ここまでで一つわかったことがある。おそらくあのガストレアに飛行能力は無い。でなければ空から追跡してくるはずだ。地上からの追跡ならそのうち限界がくる。
だが直後、
逃げおおせたのは
──どっかの
視線を振ると、明理の表情も曇っている。彼女も
そこでふと前方を見て、勇磨は思わず声を上げた。
「明理、まずいぞ……
前方に切り立った崖があり、その下に広がる広大な森までは三十メートルほどの高さがある。
しかし、明理は速度を
──いや、違う。何かがおかしい。
確かに、明理は先ほどから変わらず木々を飛び移りながら勇磨と少女を運んでいるが、どうもその足取りは安定性に欠ける。
「おい明理、聞こえたか? 崖だって! おい!」
不意に脳裏に電光が走って、勇磨の顔から
彼女は逃げることに集中しているのではない。
しかしそれを理解したところで勇磨にもどうしようもない。いまは高速機動中で、その動作のほとんどを明理が制御している。もし彼女が着地をし損じれば、即座に三人とも地面に激突して大ダメージを負うことになる。
次の
ヒュオン、と強風が吹き、
彩花は必死で腕に力を込めながら笑顔をつくる。
「ギリギリ間に合ったね。大丈夫、三人とも?」
理解が一瞬追いつかなかったが、よく見れば彼女の腰を抱えた
「大丈夫じゃねぇよ。実は、さっきの爆発で明理が耳をやられたらしくて、意識が無いんだ。このままじゃ全員まとめて落ちるぞ」
「──だい、じょうぶ、です……どうにか、持ち直しました……」
「お、気づいたか、よかった。その
まだ明理の表情は苦しそうだったが、確かな動作で
「雛、なんとか引っ張り上げられねぇか?」
「無理だよッ。いまだって支えるのでやっとなのに、ここから四人も引っ張り上げるなんて!」
勇磨は頭上に向けて声を張り上げるが、それに対し雛乃はとんでもないというように首を振った。
「──なにやってるのよあなたたち!」
そんな叫び声が
全員がへたり込んだところに、やや遅れてラクシオも追いついてきた。
「さっきのガストレアはどこかへ行ったみたいだね。
「おかげさまで、な……」
「し、死ぬかと思った……」
勇磨が
「まだ、耳がよく聞こえませんが、とりあえず助かりました」
明理の言葉に
「まずは、トーチカを目指そうか。積もる話は、安全を確保してからだ」
3
時折
用心深く進んだ先には、明らかに人工物と思われる建物があった。小さな石積みの平屋で、ボロボロだが風よけくらいにはなるだろう。
勇磨たちは互いに顔を見合わせて
道中、拾い集めてきた枯れ木を積み上げると、携帯燃料から火を移す。
全員で腰を落ち着けてから、勇磨が
続いて、勇磨はやや離れた位置で
名前は
勇磨は彼女の傍らに置かれていたアサルトライフルを指さす。
「その銃、見てもいいかな?」
「……はい、別にいいですよ」
和穏は
それを両手で受け取り、
勇磨は
それにしても目の前で相棒を食い殺された直後だというのに、彼女のこの落ち着き払った態度はなんなのだろう。初対面時の印象から、それなりに信頼関係を築けたペアだと思っていたが、勇磨の間違いだったのだろうか。
そこまで考えて、違う、と首を振った。
おそらく、
勇磨は
黄金色の
「これは……支給品か?」
顔を上げると、和穏はこくりと
「出発前、
渋木
アサルトライフルを返しながら、
「君のプロモーターについて、一つ聞かせてほしい。
その言葉に、
「私も、初めは反対したんです。バラニウム製の武器を使わないなんて
「私があの時、もっと説得できていれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに……ッ」
勇磨は顔に出さずに
確かにガストレアの急所は脳と心臓の二つであり、この部位は基本的に再生不能とされているため、その意味では渋木の発言も正しいといえる。
だが、大多数のガストレアの姿形は千差万別。心臓はおろか脳の位置さえ判然としないものも少なくないだろう。
また、
そこで
「えっと、和穏ちゃん? その言い方だとまさか
その問いに勇磨はぞっとして視線を戻すが、和穏は静かに首を縦に振っただけだった。
「『俺は後衛だから無理に前に出る必要は無い。お前が勝てそうになかったら逃げれば済む』って言われて。でも、あんなドラゴンみたいなガストレアを見たのは初めてで、私、足が動かなくて……ッ」
そのまましばし彼女に泣かせてやってから、
勇磨は表情を改めると彼女の両肩に手を置き、
「
「それから、あんまり自分を責めなくていいんだよ。和穏ちゃん達が今回の作戦に参加したのは東京エリアを守りたいと思ったからでしょ? だったら何も
「はい……ありがとうございます」
そこでラクシオが明るい声を出す。
「さて
そういって、彼がザックからスポーツ飲料のボトルを出すと、残る六人で顔を見合わせる。特に辞退の声も上がらず、その場で一息つくことになった。
ペットボトルに口をつけつつふと
「暑いならマフラー取ったらどうだ?」
すると彼女はこちらを見上げて困ったような笑みを浮かべた。その表情の意味を
「そういえば和穏さん、いまさらですが、あなたは何のガストレア因子が混じってるんですか?」
その問いに和穏は
「そうですね。勇磨さんたちには、二度も命を救われました。いまさら隠すのも変ですよね……」
勇磨たちが顔を見合わせるなか、和穏はマフラーにゆっくり手を掛けると、脱ぎ去った。
トーチカ内に静かな
彼女の首筋に三本、
「こんなことってあるんだ?」
「ああ。混ざり合ったガストレア因子が発現する時、元になった動物因子が強く作用して骨格や
へぇ、と
「私の
「改めまして、私は
勇磨は
「あ、えっと、ツナっていうと、つまり……」
困惑して
「アレだよね? サラダとかに入れる、マヨネーズで
「あ、ボクそれ好きだよ〜」
「単品では
「私の因子の話なのに、なんで食べ物の話になってるんですか!」
「あぁいや、ごめん。ツナって言われるとどうしても食べ物の方を想像しちゃってさ」
「食べ物の因子ってなんですか、マグロですよぅ」
「あぁ、マグロね、そういやそうか」
そこで、愛香が気づかわしげに口を開いた。
「でも、マグロって、大丈夫なの? その……」
彼女が視線を振ると、ラクシオも一つ
「そうだね。マグロといえば、止まると死んでしまう魚として有名だ。でも、君はそんな
和穏は得心がいったように「あぁ」というと、微笑を浮かべて答えた。
「確かにそうですね。私の場合、力を解放している間だけは、動きに連動して呼吸が止まってしまいます。でも、それもみなさんが思ってるほど危険じゃないんですよ。どこかが少しでも動いていれば呼吸が止まる心配もないので」
勇磨は、あらためて感嘆の吐息をつく。たったいまラクシオが指摘した通り、マグロといえば一生泳ぎ続ける魚という印象が強いが、彼らの特徴はそれだけではない。
「じゃあ、君の能力は……」
勇磨が呟くと、和穏はこくりと頷いた。
「雛乃さんと同じスピード特化型。ですが、力を解放している間は体の動きを止められなくなるので、持久型ともいえますね」
次に、和穏は後ろに手を回すと、持っていた武器を体の前に持ってくる。
「私の武器はこのバラニウム製の
「ヒット&アウェイ、というやつですね。それでは、体内浸食率の上昇も
明理の問いに、和穏は笑みを浮かべた。
「はい。私は呼吸できなくなるリスクを最小限に抑えるために、
そのとき、勇磨のスマホが
勇磨がアイコンに触れようと指を動かしかけた時、再びスマホが震動。画面一杯に表示された着信名は
向こうもいまが
『勇磨くん、無事かい? 例の
何の話かと思ってから、勇磨が倒したガストレアの目撃情報がサイトに表示されていなかったことを思い出した。
「やっぱり、情報の更新が
『うん。そして、かなり
渚島は
『いま、作戦に参加しているすべての民警の位置情報をGPSで追跡しているんだけど、どうやら蛭子影胤が見つかったらしい』
その言葉に、全員で顔を見合わせた。
「どこでだ?」
ラクシオが取り出した地図を地面に広げる。
『民警たちは、そこからすぐ近くの丘付近に集まってきていてね。総出で
勇磨は
顔を上げると、隣の
「あの、いまの電話はいったい……?」
「あー……。ウチの
勇磨が話している間に
「さて、
和穏はプロモーターを失っているため、作戦本部に連絡すればすぐにIISOの職員が
「いえ、私も行きます。ここで勇磨さんたちと出会えたのも何かの縁。
勇磨は彩花と顔を見合わせ小さく笑いあうと、表情を改めて街の方角を見る。とにかく、この戦いの結末だけでも見届けなければ。
時折振り返り、追跡者の気配を確認しながら、
平常時であればこの程度の道のりなど、体内にガストレア因子を宿す弥由紀にとってはどうということもない
しかし、呼吸だけは荒く乱れていた。過度の緊張と姿の見えない敵に対する恐怖で、足がもつれかかる。それはどこに
そう、これは
弥由紀は正面に見えてきた森に
──およそ二分。
民警チームの
無線機から途絶音を聞いた
そこで手近な茂みに飛び込むと身体を半回転させ、息を
敵の追跡能力はおろか、現在追われているのか
あの戦況では、自分の相棒を含め全員がほぼ間違いなくやられてしまっただろう。自分のような生き残りがいるなどという楽観的な憶測は捨て去るべきだ。
ならば次にすべきことは決まっている。一刻も早く他の民警を見つけ出し、救援を要請するのだ。
しかし、同時に迷いもあった。確かに自分があの場に残っていたところで何かが変わったとは思えない。だがいまの自分の行動は果たして本当に最善の選択といえるのか?
弥由紀は首を振ると、心に
自分は新作をひとつ書き終えた時、達成感を覚えると同時に前回の投稿日に目が留まります。そこで毎度のように自身の遅筆ぶりを痛感するのですが、前回投稿したの、もう去年のクリスマス前なんですよね。正に
余談ですが前回の後書きで、年末帰省できるか心配だ、といったお話をしたかと思います。あの結果だけ報告致しますと、案の定というべきか、見事に電車が止まっていました。雪で。お陰で生まれて初めて正月
加えて、紅白歌合戦の視聴や初詣も経験せずに新年を迎えることになったわけですが、それでも今では問題なく日常を送ることができています。人間の感覚とは不思議なものですね。……いや、この場合自分の拘りの無さに危機感を覚えるべきなのか……?
まあ、そんな状況下で執筆された今回ですが、まずは新たに名前が判明した登場人物の紹介から。
和穏の髪型は作中で『ハーフアップにした茶髪ロングヘアー』という表現を使っていますが、厳密には『この素晴らしい世界に祝福を!』のアクアをイメージしています。
渋木についてはコミック版で防衛省に召集された民警の内、将監の頭突きを受けた蓮太郎を見て
ちなみに実は、今回のサブタイトルの『希望を背負った者たち』は原作第一巻のサブタイトル『神を目指した者たち』に対応させたかたちになっています。このアイデアを思いついた当初はそこそこの手応えを感じましたし、書き進めていくうちに様々な意味を織り込めたと思ったんですが、やはり細かすぎて伝わりませんでしたかね、ハイ。
また、今回の内容について二点ほど注釈をば。
まず勇磨たちがニアミスした発光器官をもつガストレアは、原作で伊熊ペアを
和穏たちを襲ったガストレアは、里見ペアを襲った個体です。こちらについて、原作とコミックで描写が多少異なっており、自分はコミック版のデザインが気に入ったためそちらを採用しました。
勇磨たちが襲われている最中に聞こえた爆発音が夏世の使用した四〇ミリ
原作の該当箇所は第三章の終わり一歩手前まで。時系列としては今回のお話の終わりと時を同じくして、本シリーズでも度々扱ってきた「あの人」の話が
ちなみに原作やアニメでは簡潔な描写だけで終わっていたこのシーンですが、コミック版だと、もりのほん先生のアレンジによりトンデモない感動シーンに生まれ変わっています。できることなら是非すべてのB・Bファンの目に焼きつけていただきたい。
また、今回の最後のシーンについてはコミック第二巻ラスト、影胤の襲撃を受けた蓮太郎を救うべく延珠が救援要請に向かった場面を意識して作りました。ここも原作とはほんの少し異なる描写がなされていましたが、ご存知の読者の皆さんにはコミック版の緊迫感に近いものが伝わっていることを祈っています。
それから、コミック版B・Bについてもう少しだけ。
今月二十七日をもって、B・Bはコミック第一巻の初版発行から九周年を迎えます。
自分が購入したのも随分前ですし、現在では入手方法があるのかどうかも定かではありませんが、もし機会があれば購読することを強くお勧め致します。というのも、コミック版B・Bは自分がこの『ブラック・ブレット・オリジナル』を書くきっかけになったほどの素晴らしい作品だからです。
先ほどの繰り返しになりますが、原作とは異なるアレンジがいくつも組み込まれているので、原作を読み込んだ方でもまったく問題なく楽しめるつくりとなっています。
さて、今回でようやく原作第一巻も佳境に入り、段々と最初の節目が見えてくる
次回はバトルシーンを多めにして盛り上げていけたらと思っていますから、楽しみにしていてください。
それでわ、しーゆーあげいん!