刀奈求める楯無き者   作:乱麻@PINK

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あまりにもこそこそとした専用機の初陣。そして雰囲気で口からビームを吐く待ち“ゴーレム”。
あとアニメとは違いアリーナのシールドは閉まりません。


11.対襲撃者

アリーナの遮断シールドを貫通したビームは、そのままアリーナの地面に着弾した。一夏と鈴音も無事に避けたのを確認していると、空いた遮断シールドの穴から落下してくる巨体が一つ。

アリーナ全体を揺らす衝撃と共に舞い上がる土煙。そしてその中に浮かぶ、一つのシルエット。

――――砂煙が止めば、それは姿を現す。

灰色っぽい黒の全身装甲。足はひょろいくせに、腕だけは丸太よりもずっと太く長い。

怪しく光る赤はカメラアイだろう。しかも三つ以上の複眼。忙しくなく動き続け、周囲を探り続けていた。その様子はまるで考え事をしているようにさえ見えた。

 

「楯無……」

 

簪が現状に怯えながら、俺の腕に縋り付く。

いきなりこんな状況になってしまったら無理もない。パニックにならないだけ冷静で助かる。

周囲の生徒達は少しずつ状況を理解してざわつき始める。もう少しで大混乱の始まりだ。

 

「あれは何ですの……IS?」

 

訝しげに襲撃者を見つめるセシリアの声に頷く。俺と相棒はアリーナの襲撃者を知っていた。

データだけだが見た事はある。あれは束姉が開発していたIS。名前は確か――――。

 

(“ゴーレム”。お母様が試作した無人ISです)

 

(無人機……ISもそこまで来たか)

 

各国技術陣が聞いたら仰天ものだろう。ISは人が居なければ動かない。そういうものだと思っている人間の集まりだからな。

まぁ、束姉が作ったものなら安全だ。どうせ一夏を成長させる目的で送り込んできたんだろうから、アリーナ内部に居る二人は大変だろうが殺されはしないだろう。

 

「とりあえず巻き添え食わないように屈んどけ。教員の避難指示に従うのが無難だろ」

 

既にパニック状態に陥っているアリーナの観客席。アリーナの出入り口に向かって人が殺到していた。

最前列で見ていた俺達は身動きする事なくその場に留まっている。

 

「援護に向かいませんの!?」

 

「……それは止めておけ」

 

確か“ゴーレム”はISに反応して攻撃を仕掛けてくる仕様だった筈だ。

ここでセシリアに“ブルー=ティアーズ”を展開されると、こちらにアリーナの遮断シールドを貫通する威力のビームがこちらに飛んでくる。

直撃すればたとえISだろうと無事では済まない。生身の人間が喰らったらなんて考えたくもなかった。ISに人殺しはさせられない。

一夏と鈴音は“ゴーレム”との戦闘を開始している。アリーナの客席の方へ被害が行かないようにする為だろう。

ビームの雨霰が一夏達を襲う。代表候補生の鈴音は当然として、一夏もセシリアとの特訓の成果かぎりぎりの所で凌いでいた。

 

「本当に……大丈夫なんですの?」

 

セシリアが異変に気付いた。

“ゴーレム”から放たれるビームの出力が下がっていた。あれでは絶対防御は貫通しない。

恐らくは遮断シールド越しの標的を攻撃する時だけあの出力で発射するようにプログラミングされているのだろう。

遮断シールドを貫通した後の出力では、たとえ直撃してもISの絶対防御は貫通しない。

 

「あぁ。怪我したくなきゃ大人しくしとけ。この手の騒動だとパニックに巻き込まれての怪我が一番多いらしいから」

 

観客席の出入り口はロックされているらしく、殺到している人達はちっとも減らない。束姉、大分周到だな。

変わらず俺の腕にしがみついたままの簪の手を解き、手を繋ぎ直す。

 

「大丈夫だ。一夏と鈴音が粘ってる間に、教員達がハッキングを解除するさ。落ち着いて、パニックになる事だけは避けろよ」

 

「……うん。楯無が手を繋いでいてくれるから、大丈夫……」

 

簪は落ち着いてくれている。セシリアも無理に何か行動を起こすわけではなさそうだ。

その事に安堵していると、“打鉄”の方に通信が入った。

 

『雪月。聞いているか』

 

通信は管制室の千冬さんからだった。

いや、個人に連絡してる場合じゃないだろ。

 

「聞こえてますよ。アリーナの扉のロック解除はまだですか。怪我人が出ても知りませんよ」

 

『それはクラッキング班が対応している。それより、お前は出れるか?』

 

「生憎と出れませんね。観客席に被害が一切ない所を見ると、あれはISに反応して攻撃をしている。一応ISを展開出来そうな場所はあるけど、今俺とセシリアがISを纏えば死人が出る可能性がありますね」

 

『そうか……』

 

「クラッキングに成功しても、絶対にISを持った教員をアリーナの出入り口付近に回さないでくださいよ。そうすれば少なくとも死人は零で済む」

 

まぁ、一夏ならその内“ゴーレム”が無人機だと気付く筈だ。

一夏と鈴音が攻勢に移らない限り、“ゴーレム”も攻撃の手を緩めている。

あれ程分かり易いヒントもそうそうない。

一夏と鈴音は空中で合流して何かを話している。鈴音の驚いた様子から察するに、“ゴーレム”が無人な事に気付いたな。

 

「一夏達が攻勢に出るみたいだぞ」

 

一夏が高速で“ゴーレム”へ向かう。敵対行動に対して“ゴーレム”がビームを乱射して牽制するが、一夏は回避を続けながら“ゴーレム”との距離を詰めていく。

それを鈴音が衝撃砲で援護をし、“ゴーレム”の体勢を崩していく。

 

「一夏、今よ!」

 

「うぉぉおおおお!!」

 

一夏が雄叫びと共に直進する。その加速は通常のスラスター速度を遥かに凌駕していた。

あれは――――。

 

「瞬時加速!? 一夏さん、何時の間に……」

 

どうやらセシリアが教えたわけではないようだ。……と言うか、セシリアは多分瞬時加速は出来ない。

すれ違いざまに一夏が“ゴーレム”の右腕を肩から斬り落とした。無人機相手には“零落白夜”の力が存分に発揮出来る。成程、束姉が“ゴーレム”を送り込んできた理由が見えてきた。

そのまま近接戦で斬り刻もうと、“ゴーレム”の懐に留まった一夏。だが、“ゴーレム”の左腕が鞭の様に払われ一夏が吹き飛ばされる。

空中で体勢を整え、追撃のビームを切り払う一夏。

距離の詰め直しだ。だが、一度潜り込めたという事はもう一度潜り込めるという事。鈴音の援護を受けながら地道な作業の再開だ。

何の問題もない――――筈だった。

 

「何だ……?」

 

奇妙な違和感が襲った。“ゴーレム”が数瞬動きを止めた。

一夏達の動きを見る為のものではない、まるで操縦者が交代する為に機体が止まったような――――完全な停止。

今のは一体。その疑問は、直ぐに答えとして現状に反映される。

 

「なっ――――きゃあ!」

 

鈴音の悲鳴が上がった。恐るべき推進力で近付いた“ゴーレム”が左腕で鈴音を捕らえる。すかさずフォローに入った一夏に対して鈴音を投擲して牽制。

受け止めて体勢が崩れた一夏に向かって左拳を掲げ殴ろうとする。二人は弾けるように二手に分かれて回避して距離を取った。

 

(マスター。今の“ゴーレム”の攻撃は異常です)

 

相棒の言葉に同意する。今の数回の動作。その全ては“ゴーレム”が能動的に行ったものだ。

何より距離を詰めるのは今まで一度も見せなかった動きだ。無人機を制御しているAIが切り替わったのか。

だとしたら何だ。右腕を切断されたからか? それとも他に何かスイッチがあったか、束姉がAIを切り替えたのか。

“ゴーレム”が深呼吸をするように身体を広げる。口元にある発射口に光が集まっていた。

 

「不味い!」

 

一夏が咄嗟に上空へ退避してゴーレムの発射角をずらす。口元から発射されたビームを何とか躱し、直進するビームは再びアリーナの遮断シールドを貫通して空の彼方へと消えていった。

今の出力は“ゴーレム”が現れる際に放たれた出力と同じだ。

――――違う。これは束姉の仕業じゃない。あの人はISにこんな事はさせない。

 

「……楯無?」

 

簪が心配そうに俺の顔を覗き込む。繋いでいる手に力を入れ過ぎてしまったようだ。

どうにかして安心させてやるべきなんだろうが、今嘘を告げてしまうわけにはいかない。正しい情報を与えておかなければ命取りになる位置に簪は居る。

 

「明らかに敵の様子がおかしい。……多分、このままだと人が死ぬ」

 

「そんな……!? じゃあ、織斑さんと凰さんが!」

 

「安心しろ。……空いてる場所はあそこか」

 

簪を宥めながら、俺は周囲を見渡して見つけた。今はアリーナの出入り口に人が集中している。となれば、必然的に空いている場所がある筈だ。

――――そう、ISを展開しても問題がないような、開けた場所が。

簪と繋いでいた手を放し、戦場へ向かえない事へ歯噛みしていたセシリアへ声を掛ける。

 

「セシリア、簪を頼む。絶対に怪我をさせるなよ!」

 

「あなたはどこへ行くのです、私も参りますわ!」

 

「アリーナの観客の安全が確保出来たら好きにしろ、今はお前じゃないと簪を任せられないんだよ」

 

セシリアへ簪を押し付ける。簪を受け止めたセシリアは納得してなさそうにこちらを見たが、今は従ってくれるようだ。

“ゴーレム”の猛攻は徐々に二人を押しつつある。このままだとビームが直撃するのも時間の問題だ。

 

「――――楯無!」

 

簪に名前を呼ばれる。

振り返ると見える心配そうな表情に、俺は微笑みながら告げる。

 

「大丈夫。俺の前で、ISに人殺しなんて絶対にさせない」

 

篠ノ之束が作った翼はそんな事をするものではない。

あの人はISにそんな願いを込めたわけではない。

俺がずっと感じてきた事で、だから俺は相棒と共に居る。

ISを展開する為の場所へ向かいながら、“打鉄”で管制室へ通信を入れる。

 

「千冬先生、ISの展開許可をください。出れる状況になったので、二人の援護に向かいます」

 

『織斑先生と呼べ……先程から変わったあの動きに何か関係があるのか』

 

流石は世界最強。無人機の動きの変化にはもう気付いているようだ。

詳しく説明するのは時間がないので、適当に話を合わせておこう。

 

「そうです。今はISを展開していなければ狙われない保証はありません。だったら速攻で潰して安全を確保します」

 

『分かった、展開を許可する。しかし、オルコットはどうした?』

 

「……いや、碌に連携訓練もしてないのに、オールレンジ兵器使いかねないのはちょっと……」

 

実はセシリアを下げたのはそういう理由でもある。

直線兵器であるライフルだけ使ってくれればいいのだが、その内ビットを使い始めそうで怖い。

唯でさえ三対一でごちゃごちゃになりそうな戦闘だ。これ以上増えるのは流石に厳しいものがある。

 

『……それも分かった。オルコットにはその場で待機を改めて命じておく』

 

珍しくげんなりとした千冬さんの声を聞きながら通信を切って、今度は一夏と鈴音へ繋ぐ。

開けた場所へ着いたと同時に左目のナノマシンと“黒雷”のリンクを解除して“打鉄”を展開。待機をしながら二人へ通信を入れた。

 

「二人共、聞こえるか」

 

「聞こえてるぜ! だけど――――」

 

「正直呑気に話してる余裕ないわ! こいつ、さっきから動きが鋭いのよ!」

 

二人は“ゴーレム”の追撃を躱すのに手一杯だ。あの巨体からは想像出来ない程の機動力、そして長い腕のリーチに苦戦している。

 

「あいつの開けた遮断シールドからそっちに向かって、援護に入る」

 

スラスターを吹かしてアリーナの遮断シールドの穴へ向かい、アリーナの中へ入る。

――――そして、目が合った。

アリーナの中央に居座る黒いIS。その赤く光る複眼が、確かに俺を見ていた。

何時かの自分を思い出した。相棒がまだ“黒鉄”で、赤と白のカメラアイのバイザーをしていた頃の自分を。

それ思い出したのは何故なのか。それは分からない。唯はっきりしてるのは、今こいつはこのアリーナの中で誰よりも、俺に集中していた。

 

「大人しく前の状態に戻ってくれ。それなら俺は止めない」

 

微かな願いを込めた俺の言葉に“ゴーレム”の反応はない。

唯俺をじっと見つめるのを止め、挨拶をするような気軽さで左腕を上げた。

 

「楯無、来るわよ!」

 

「分かってるよ」

 

左腕から放たれたビームを軸に螺旋を描くように“ゴーレム”へ接近する。

左腕にアサルトライフル、右腕に近接ブレードを展開。胴体の銃口から弾幕として放たれるビームを躱しながら、こちらもお返しにアサルトライフルを撃つ。

――――違和感を感じた。

 

「こいつ……」

 

「援護するわ!」

 

鈴音の衝撃砲による援護を受けながら、近接ブレードの圏内にまで入った。

首を狙って斬撃を振るう。しかしその太刀筋は異常な速度で動かされた太い左腕に阻まれ、有効打には至らなかった。

“ゴーレム”の銃口が光った。それに反応して後退し、一度鈴音達と合流する。

 

「ちょっと、あんたよく見たら“打鉄”じゃない! それで行けるの!?」

 

「見た通り装甲の上から有効打を与えるのは無理みたいだな。狙うなら関節か。……もっとも、あの反応速度にそこまで出来るかは分からないが」

 

「なら、俺の出番だろ」

 

一夏の声に頷く。そりゃそうだ。きっと束姉はそういう目的で“ゴーレム”を設計した。

ありとあらゆるエネルギーを消し去る“零落白夜”なら、あの装甲を直接の攻撃力で突破出来る。

二人と散開しながら通信で作戦会議する。

 

「敵と向かい合う奴を基準として、俺と鈴音が射撃武器で前方と右側後方から牽制する。止めは左後方から一夏。それでいいな」

 

「了解!」

 

「それでいいわよ、さっさと沈めないと皆が危ないしね!」

 

俺は正面、鈴音は右側後方、そして一夏は左側後方へ。“ゴーレム”を中心として、三角形を描くように取り囲む。

一夏を俺から見て左側に配置したのは、斬り落とした右腕側に位置するからだ。そこからなら一番左腕の妨害を受け難い。

そして、俺を正面に配置したのにも理由がある。

――――あいつ、何故か俺に対しての攻撃が甘い。

俺に対しての攻撃だけビームの出力が低い。離脱する際も“打鉄”よりも圧倒的に推力が上なくせに追撃をしてこなかった。

それが何故かは分からない。今“ゴーレム”を操っている相手の都合かどうかは知らないが、とにかくそれが事実だ。

 

「一夏、斬るなら左肩から胴体を斜めにいけよ!」

 

「分かってるさ!」

 

一夏は隙を窺う事に徹する。鈴音はマシンガンの様に衝撃砲を連射し続ける。“甲龍”は相当燃費と安定性に優れているようだ。

俺の“打鉄”のアサルトライフルは、流石に専用機の第三世代兵器と比べれば豆鉄砲みたいなもんだ。

だったら接近する。こいつが俺を注視する傾向にあるならそれを利用しない手はない。

俺の“打鉄”では装甲が薄すぎて一発で稼働停止に持ってかれないが、世界三位の実力はここぐらいしか使い道がない。

 

「こっちを見てくれたか……!」

 

「遊ぼうよ」。そう誘うように俺への攻撃が激しくなった。

ならそれに乗ってやる。鬼ごっこなら得意だよ。

センサーには警報が鳴りっぱなしだ。ビームの雨霰をすんでの所で躱し、躱しきれない部分は近接ブレードで弾く。

そうしている内にも鈴音の準備が終わった。隙を作る為の、鈴音の――――。

 

「フ、ル――――パワァァアアアア!!」

 

最大までチャージされた衝撃砲が、“ゴーレム”に直撃した。

その衝撃はあの巨体を揺るがし、体勢を崩させた。

俺達は声に出さずとも一夏の方を見た。一夏も頷く事すらせずに、真っ直ぐ“ゴーレム”へ向かう。

そのまま瞬時加速で距離を詰め、左肩から胴体を斜めに斬る――――筈だった。

 

「一夏!」

 

アリーナに声が響いた。

――――嘘だろ。

 

「男なら、男ならその位の敵に勝てなくて何とする!」

 

声のする方向を向けば、俺の背後――アリーナ全体を見渡せる場所に篠ノ之箒が立っていた。

突然の声に一夏の足が止まる。当たり前だ。一夏は戦闘のプロではない。極限まで集中していた時に意識外から呼ばれてしまえば動きは鈍る。

完全にチャンスを潰された。“ゴーレム”は篠ノ之を捕捉し、迅速に左腕を上げた。

 

「不味い――――逃げろ、箒!」

 

一夏の声も聞かず、篠ノ之は“ゴーレム”を睨んで対峙し続けていた。

“ゴーレム”の左腕にエネルギーが集中していく。もう間に合わない。

――――アリーナの遮断シールドをものともしないビームが篠ノ之に向かって放たれた。

 

「この馬鹿がっ!」

 

篠ノ之のいる場所に向かって瞬時加速で向かう。振り向きながら握っていたブレードとライフルを解除、両腕にシールドを展開し、更にスモークグレネードを握っておく。

ビームを見据え、シールドを装備した両腕をクロスさせて篠ノ之の前に立ちはだかる。

……悪い、“打鉄”。

ビームが直撃する。重ねたシールドは容易く割れ、シールドエネルギーが瞬く間に減っていき、装甲が砕け、絶対防御が発動する。

機動性を優先して装甲を削ったのが仇となった。攻撃を防ぐのはこの“打鉄”に最も向いていない。

 

「……何とか、耐えきったか」

 

(マスター。篠ノ之箒は無傷です)

 

目的は達成したが、“打鉄”の状態はボロボロだ。元々少ない上半身の装甲は殆ど残っておらず、下半身の装甲もひび割れている。

シールドエネルギーはとうに尽き、具現維持限界にまで状態が悪化している。

スラスターの推力は損傷とエネルギー低下から落ちていき、俺は比喩でも何でもなく落下した。

地面に墜落し、バウンドしてアリーナの壁に激突した。その衝撃で握っていたスモークグレネードを取りこぼし、“打鉄”は解除される。

ISの補助がなくなり、アリーナの壁に凭れ掛かりながら座り込む。

装甲が薄い上半身を中心に俺の肉体にまで損傷が至っていた。

 

(クロスさせた時に前に出した左手は火傷。右手も装甲の破片で裂傷……ちっ、浅いけど脇腹にも裂傷がある。堂々とした戦線復帰は無理か)

 

「うぉぉおおおお!」

 

「よっくもぉぉおおおお!」

 

俺の撃墜で意識に火が付いた一夏が、当時の作戦通りに左肩から斜めに胴体を斬り裂いた。追撃する鈴音の衝撃砲も直撃して装甲を爆散させる。

――――巨体が、二つに割れて落ちる。

既に複眼に赤い光は灯っていない。確実なシステムダウン。それを確認した。

“ゴーレム”は最後まで俺を見ていた。最後の一撃は避けられるタイミングだったにも関わらず届いたのは、きっとそのせいだろう。

“ゴーレム”が沈黙した事により、システムハッキングは解除されたようだ。アリーナの扉は解放され、今更の避難が始まった。

つまり、突入班もアリーナにやってくる。事後処理をするのは構わないが、今それをされるのは困る。

地面に転がっていたスモークグレネードが急に起動し、煙を吐き出し始めた。もくもくと吐き出され続けるスモークはやがてアリーナを覆い尽くした。

 

「どうなってるんだ、楯無!」

 

「あんた無事でしょうね!?」

 

「……問題ない。二人共、そこから動くなよ。煙は直に晴れるから」

 

俺は首元に付けている黒いチョーカーに意識を向ける。

 

(相棒、展開と同時に“黒息吹”を発動。やれるな)

 

(問題ありません。機体展開、開始)

 

煙の中、光の粒子が俺を包む。粒子は黒い装甲へ変わっていき、俺の相棒の姿――――“黒雷”を形作った。

ISの補助が復活し、立ち上がって“ゴーレム”の残骸へ向かう。

“黒雷”の“黒息吹”は一言で言えば完全ステルスだ。姿は透明になり、レーダーにも感知されない。

……まぁ、武装にエネルギーを回せないのがネックだが。

残骸に近付くと、身体部分の中心の装甲を剥がす。その中に見える、手の平サイズの球体。

――――ISコア。世界に四百六十七しかない筈の、ISの中心となる文字通りの核。

 

(マスター。このコアはネットワークに登録はありません)

 

(だろうな……)

 

やはり、この為に新造されたコアか。ISコアを回収し、俺が元居た場所へ戻る。

“黒雷”を解除すると、丁度アリーナの扉が開かれて突入部隊がやってきた。




初陣(装甲引っぺがすだけ)
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