刀奈求める楯無き者   作:乱麻@PINK

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メインヒロイン出てくんの何時になんねん問題。
ある意味メインヒロインよりヒロインしてる妹の登場。
あとハーメルンの機能の使い方が全く分かりません。


2.再会と同室

放課後になった。初日はレクリエーションやら何やらで真面な授業がなかったら退屈だったな。

欠伸をしながら家に帰ろうとすると、世界最強が俺の席までやってきた。

俺の放課後の平穏が五秒で破壊される。こういう時はさっさと逃げるに限るのだが、当然世界最強からは逃げられない。

 

「待て、雪月」

 

「どうしたんですか、千冬先生――――あだっ」

 

「織斑先生だ。何度も言わせるな」

 

注意より先に出席簿を飛ばすな。しかもこの距離で。

前回の注文通りヘディングで直接返してやると、ブーメランの様に出席簿が千冬さんの手元へ戻っていく。

それをノールックでキャッチした千冬さんは、心底呆れたように言ってきた。

 

「相変わらず無駄な事だけ器用だな、お前は」

 

「酷いなぁ、今度は返せって言ったの千冬さんでしょ」

 

再び投擲された出席簿を今度はキャッチして、千冬さんに返す。

 

「お前には教師に対する敬意とかは存在しないのか……」

 

「じゃあ教師と生徒の会話をしましょうよ。昔話だと個人の会話にしかならないでしょう」

 

「それもそうだな」と小さく頷いて、千冬さんは出席簿の代わりに小さな鍵を俺に突き付ける。

それを受け取ってみると、鍵に付いていたタグには番号が書いてあった。

 

「お前の寮の部屋の鍵だ」

 

「俺は暫く自宅から通うんじゃありませんでしたっけ?」

 

「そうだったのだが、警護やらの問題が面倒でな。無理矢理にねじ込ませてもらった」

 

「……という事は」

 

「そうだ。察しがいいな」

 

どうやら一夏と同部屋ではないらしい。表情がそれを物語っていた。

それなら一人部屋とかにしてくれればいいのに、どうやらこれは裏がありそうだな。

ひっそりと首の黒いチョーカーに触れる。厄介な事にならなければいいが。

 

「と言うか、俺の荷物は? 今から取って帰るんだったら、普通に家に泊まりたいんですけど」

 

「安心しろ。何故か匿名で一式送られてきている。……まったく、過保護なものだ」

 

過保護に関しては千冬さんが言えた事ではまったくないが、相手は誰だ? 束姉?

 

「いや……まさかな」

 

もう俺とあの人の間に繋がりなんて存在しない。

俺はあの日に兎から掛けられた魔法の庇護を失ってしまった。

そうしないと果たせない目的を果たす為に、俺は一つの選択をしたのだから。

 

「まぁ、分かりましたよ。相手が誰かは分かりませんが、お礼を言っておいてください」

 

「いいだろう、鍵を無くすなよ」

 

千冬さんは踵を返して去っていった。

俺の同居人の問題やら、荷物を送ってきた相手の正体やら、不確定な要素がなくもないが、IS学園に居る内はそう警戒するような事もないだろう。

下手に警戒し続けていたら、普通の学生とは見られなくなってしまう。それはそれで都合が悪い。

千冬さんと出席簿ヘディングやら何やらしてたせいで視線を感じていた教室から出て、寮へ向かう。

 

(相棒、とりあえず部屋に着いたら盗聴器とカメラのチェックを頼む)

 

(了解しました)

 

最低限の警戒だけ相棒に頼んで、寮への道を進む。

後ろからぞろぞろと女子生徒達が着いてくるが、彼女達も同じ寮へ帰るのだ。当たり前だろう。

恐らく山田先生から同様の説明を受けていたのであろう一夏も、ぞろぞろとストーカーされながら帰っていた。その表情はもう既に疲れきっている。

しかしながら、女子生徒達の興味は殆ど一夏に向けられているようだ。やはり世界最強――ブリュンヒルデの弟という肩書は伊達ではないのだろう。

そうしている内に自分の部屋の前に辿り着いた。

 

「……さて、鬼が出るか蛇が出るか」

 

(内部のスキャンを完了。マスターが危惧していた可能性は皆無です。内部にある生体反応は一。既に帰宅しているようですね)

 

相棒の言葉を信じて、軽い気持ちで鍵を開ける。

そのままドアノブを捻ってあけ、俺は部屋の中へ入っていた。

 

「……あれ?」

 

部屋の電気は点いていなかった。相棒の話では既に帰ってきている筈なのだが。

――――いや、部屋の奥から光が漏れている。

もう少しだけ踏み込んでみれば、光源と思われる投影モニターが見えた。

部屋にある二つのベッド。その内、部屋の奥に配置されている方に人影があった。

どうやら俺の存在に気が付いてもいないらしい。一切の淀みなく、高速でタイピングを続けている。素晴らしい集中力だ。その背中には執念の様なものさえ感じられた。

ともあれ、気付いてもらえなければ挨拶も出来ない。俺は部屋の電気を点けて、彼女の作業環境を無理矢理変える。

そうして作業を中断された少女はこちらへ振り向いた。

 

「初めまして。暗い所でそんな事してたら目を悪く――――え?」

 

暗くてよく分からなかったが、少女の髪の色は青空の様な水色だった。頭部にはISのヘッドギアらしき物を付けていた。

そして何より、その弱気そうな表情には見覚えがある。あぁ、眼鏡を掛けているのは初めて見るが――――忘れるもんか。

 

「かん、ざし?」

 

「たて……なし?」

 

お互いが相手の名前を口にする。

更識簪。俺が小学生から、転校する小学生四年生の終わりまでずっと一緒に居た幼馴染。

そして何より、両親を失った俺達兄妹が預けられた施設の支援者の娘。

再会するのはもう少し後だと思っていた。別れる前の彼女の涙が、ずっと気になっていた。

 

「久しぶりだな。元気だったか?」

 

「楯無……こそ」

 

思わず口角が上がってしまう。あぁ、嬉しいさ。素直に嬉しいよ。

向こうも同じようで、可愛らしく小さくはにかみながらこちらを見てくれている。

俺は制服の上着の前を開けながら自分のベッドの方まで移動して、力を抜いてベッドに腰掛ける。よく見れば俺の家にあったボストンバッグがベッドの近くに置かれていた。

 

「六年ぶりか。おっきくなったな」

 

「それこそ、楯無こそ。おっきくなって、やっぱり男の子なんだね」

 

それからは思い出話の連続だった。お互いに離れていた距離を埋めるように、俺達は語り合う。

出会いから別れまで一頻り話して、話題はやっと再会まできた。

 

「そういえば、眼鏡掛けてるんだな。目が悪いのか?」

 

そう問えば、簪は小さく横に首を振る。

 

「これは眼鏡型の携帯ディスプレイ。完全投射型のディスプレイは高いから」

 

「成程な。部屋に入ったときに叩いてたモニターとキーボードのデバイスって事」

 

「目と言えば、私の事もそうだけど……。楯無も、変わったね」

 

俺の左目の事を言っているのだろう。ナノマシンを移植されたのは引っ越してからだから、彼女の記憶では俺の両目は赤い色のままだ。

 

「ちょっと事情があってさ。ISとの適合を高める為にナノマシンを移植したのさ。左目だけ色が白になってて驚いたろ」

 

「うん……大変だったんだね」

 

恐らくつい最近の事だと勘違いしているのだろうが、その辺は大した問題じゃないので黙っておく。

簪の興味は俺の目の事で終わらず、「それに……」と俺の首のチョーカーを指してくる。

 

「それ、ISの待機形態?」

 

「……、」

 

さて、どうしたものか。俺としては、隠しておきたくはある。

簪の事は信用していないわけではない。しかし、彼女は更識だ。彼女にその意思が無くとも、情報が渡ってしまう可能性は否定しきれない。

千冬さんもそういった意味で簪と相部屋にしたのだろう。

確実性で言うなら黙っているに限る。そう理解はしているが。

 

「……言いたくないなら、大丈夫。そのチョーカーの事も、黙ってる」

 

分かってる。俺は簪とあの人には、嘘を吐けないって。

 

(相棒。いいな)

 

(了解。マスターの心に従います)

 

「簪。これから言う事は、俺と簪だけの秘密だ。守れるか」

 

「うん……分かった」

 

彼女は頷いてくれた。六年越しの再会でこんな事を言ってくる俺を信じてくれる事を、本当にありがたいと思う。

俺のISの待機形態である黒いチョーカーから、モニターが投影される。

 

『初めまして、更識簪さん。私はマスターのIS、“黒雷”のコアです。マスターからお話は聞いています』

 

『SOUND ONLY』の画面から発せられるその声に、簪は目を丸くしていた。

まぁ、そうだろうな。世界中探したって喋るコアなんてこいつぐらいだ。

 

『マスターとはマスターが小学四年生の時に出会いました。簪さんとお別れする直前です』

 

「は、はい……」

 

面食らったまま、簪は相棒の言っている事を聞いていた。

 

『私はマスターの意思で、マスターの専用機として学園に登録されていません。マスターには何の後ろ盾もありませんから、専用機を持っているというだけで出自を怪しまれます』

 

その後ろ盾を持ったままここに入学した方が、大混乱を招いたのは間違いない。

しかし、後ろ盾がなければ堂々と専用機を持つ事も出来なかった。完全にジレンマだ。

 

『それに、マスターは私のデータを取られるのを嫌がっています。ですから簪さんには、私の事は黙っていてほしいのです。お願いできますか?』

 

「分かった……絶対に、内緒にする」

 

『ありがとうございます。それでは、またマスターとの会話をお楽しみください』

 

そう告げてモニターは閉じられた。

簪は未だに信じられなさそうな表情でこちらを見ていた。

 

「驚いたよな。急にこんな事話して悪い」

 

「……ううん。話してくれて、本当に嬉しかった」

 

にこりと笑ってくれた簪の笑顔が眩しい。

六年経って、簪は俺の記憶よりもずっと魅力的な女性になっていた。

俺の事を話して、気になった事があった。簪の頭部に付けてあるヘッドギアの事だ。

 

「俺の事もそうだけど、それ、ISのヘッドギアだよな?」

 

問えば、簪は頷いてくれた。

 

「打鉄の後継機である、私の専用機“打鉄弐式”のヘッドギア。私、日本の代表候補生だから」

 

「へぇ、そうなのか。って事は、その内簪が自由に空を飛ぶ姿が見れるんだな」

 

それは本当に楽しみだ。きっと本当に綺麗な軌道を描いて空を駆けるに違いない。

そんな俺の期待を感じ取ったのだろうけど、何故か簪は俯いてしまった。

 

「……ごめんなさい。楯無の期待には応えられないかもしれない」

 

そうして簪は告げてくれた。

自分の専用機が未完成であるという事。

倉持技研の開発スタッフは世界で二人の男性操縦者である織斑一夏の専用機の開発と解析、データ収集に全て持っていかれた事。

……そして何より、織斑一夏の専用機が新たに追加された為に新たなコアが使われ、その補填の為にISコアさえ回ってこない事。

それでも何時かISコアが回ってきた時の為に、自分だけで機体を開発し続けている事。

全てを聞き終わって、俺は彼女の今を理解した。

 

「……簪の事情は分かった。だけど、一人で機体を組み上げようとしてるのは何故なんだ? 俺ならそんな研究所見限って、自分の事をちゃんと見てくれる所に移籍する」

 

「……駄目なの。この“打鉄弐式”は、私だけで組み上げないと。……お姉ちゃんが、そうしてきたから」

 

「刀奈が……」

 

確か彼女は、今はロシアの国家代表だ。

専用機である“霧纏の淑女”は自分の手で組み上げたのか。

彼女は国家代表だからある程度のプロフィールは簡単に入手できるんだが、そこまでは知らなかった。

だが、俺は思う。簪は簪だし、刀奈は刀奈だ。いくら姉妹でも、そんな所を気にしているのはおかしいと。

そう口を開きかけて、あの時の涙を思い出した。

最後に彼女が言った言葉。『私が何も出来ないから、お姉ちゃんは楯無になってしまったの』。

俺が引っ越してしまう直前の会話だったから、詳しい事は訊けなかった。

それでも、今までの簪から言って、何も出来ない事に拘るのはおかしかった。

あの時の事が、自分だけで機体を組み上げる事に何か関係があるのかもしれない。

だったら、俺に出来る事は――――。

 

「手伝うよ、簪の機体を組み上げるの」

 

「え……?」

 

「別に直接手伝うわけじゃないさ。唯、機体のデータとかを提供したりは出来るだろ? 簪には俺の事情を黙ってもらってる。だから俺は自分の持っている情報を簪に渡す。……これは立派な取引だ。簪は必要な情報を俺から買っただけだよ」

 

本音を言えば簪相手にこんな事したくはない。こうしなければ彼女が納得してくれなさそうだったからだ。

刀奈だって、一から設計して作ったわけではないだろう。

稼働データや武装の基礎データは、間違いなく嘗てのロシア製ISから流用している部分がある。

だったら条件は対等だ。いや、寧ろ国家のバックアップ無しで組み上げようとしている簪の方が条件は悪い。

簪は再び俯いて何かを考えているようだったが、暫くすると顔を上げて、

 

「……お願いします」

 

右手を差し出してきた。

 

「あぁ、任された」

 

躊躇う事なくその右手を取って、俺達は握手を交わした。

久しぶりに握る彼女の手は温かくて、どうしようもない安心感があった。

 

「……ヒーローみたいだね」

 

「うん?」

 

簪は昔から気弱だったから、どんどんと前に進んでいく刀奈に振り回されてよく泣いていた。

俺には妹が居るから、あぁいう時には決まって手を繋いで宥めてやってたっけ。

そんな昔の事を思い出していたからなんだろう。俺も簪も、今と昔ではまるで状況は違ってしまっているのに。

 

「困った時に現れて、助けてくれる。……ずっと昔から、楯無は私のヒーローみたい」

 

昔と同じように――――照れたように笑う彼女の望みを、俺は叶えてやりたいと思ったんだ。




簪さんが登場しました。ヒロインし過ぎぃ!
原作より状況は詰んでるけど、ちゃんと彼女の専用機は完成しますのでご安心ください。
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