WHITE×CAT   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。

 5~7年以上前、まだ二次創作をあまり書いておらず、私自身が神様転生などを普通に受け入れられた時代の黒歴史のリメイク作品になります(吐血)。今さら需要あるのだろうかとも思いましたが、今でも時々感想が来ることもあるのが申し訳なくて、今の私の技量でフルリメイクいたしました。大して変わってないような気もしますが、昔より多少は見れるものになったと思うので、暇潰しにでもなれば幸いです。




帰巣本能

 

 

 

 

 寒い……お腹すいた……。

 

 

『にゃー……』

 

 

 僕……死ぬのかな……。

 

 

『にゃ……』

 

 

「ん? こんなところに猫が捨てられてる」

 

 

『にゃ?』

 

 

 僕は男の人に抱き上げられた。

 

 

「白毛の女の子か、可愛いなぁ」

 

 

『ごろごろ……』

 

 

 撫でるのが気持ちい…。

 

 

「人懐っこいなぁ……うちに来るか?」

 

 

『に!? にゃー!』

 

 

 行きたい!

 

 

「おお、そうか。これからよろしくな」

 

 

『にゃー!』

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 主様に拾われてから大分たった。

 

 

 主様はとってもいい人。

 

 

「可愛いなぁ。ピトーは」

 

 

 いつもゲーム片手に僕をナデナデしてくれるの。

 

 

 ピトーってのは主様が主様の友達と付けてくれた名前。

 

 

 変な名前だけど主様からもらった名前だからそれなりに気に入ってるの。

 

 

『にゃー』

 

 

 僕は主様が大好きだ。

 

 

「そろそろ、行ってくるぞ」

 

 

『にゃー……』

 

 

 主様はいつも朝はナデナデしてくれるけどお昼頃から夕方まではどこかに行って寂しい……。

 

 

「じゃあ、行ってきます」

 

 

『にゃー!』

 

 

 いってらっしゃい主様!

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 変だ。

 

 

 あれから三回ぐらいお日様が昇っても主様が帰って来ない。

 

 

 それどころか主様と住んでいたところから知らない人に知らないところに連れてかれちゃった。

 

 

 私を連れてきた人は"息子は死んだ"とか"あの人はもういない"とか言ってるけど僕にはよく解らない。

 

 

 とりあえずあの家で主様を待つんだ。

 

 

 だって主様は"いってきます"って言ったの。

 

 

 いってくるなら必ず帰ってくるの。

 

 

 だから僕は外に出て家に向かった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 やっと主様の家に着いた。

 

 

 なぜかどこからも入れないし、明かりもついてないから仕方なく外で待つ。

 

 

 帰ってきたらいっぱい文句いって知らんぶりしてから撫でてもらう、それで許してやる。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 もう、お日様を数えるのが億劫なぐらい随分主様を待った気がする。

 

 

 何度か知らない人が来て僕を連れて帰ったけど、その度に主様の家に戻った。

 

 

 一体、いつまで僕を待たせる気? 早く帰って来て。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 い、家が全部壊されてしまった……。

 

 

 沢山止めてって頼んだけど誰も聞いてくれなかった……。

 

 

 またまたまたまた、僕を連れ去る人がきたから今度は指先を噛み千切ってやった。

 

 

 ざまーみろだ。

 

 

 僕は主様を待ってるだけ、邪魔するな。

 

 

 何も無くなっちゃったけどここで待つ。

 

 

 そうすればいつか主様は帰ってくる。

 

 

 帰ってきたら一日中遊びに付き合ってもらうの。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 あれからまた随分たった気がする。

 

 

 ねえ、主様……実は僕もうあんまり目が見えないんです。

 

 

 それどころかからだもあんまり動かない……。

 

 

 お願いです……戻ってきてください……。

 

 

 一目見るだけでもいい……です……撫でてくれなくても……ごはんくれなくても許し……ます……だから…………だから……。

 

 

 

 

 

 

早く帰ってきて………………主様……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 我ながらとんでもない夢を見てしまった。ある意味、これまで見た中で一番の悪夢かもしれない。

 

 何故今さらになって遠過ぎる場所に残してきた家族の夢を、それもわかる筈のない視点で見るというのか。

 

 ベッドから頭と上半身を少し起こして窓の外を見ると、まだ高い空に位置する月が見え、心なしかそれは猫の瞳のようにも見えた。

 

 着ているシャツに目を移せば、酷く汗ばんでおり、自分がどれだけうなされていたかがよく分かる。それを感じながら、あらゆる意味で酷く遠くなってしまった"前世"の場所に想いを馳せ、小さく溜め息を吐き――。

 

 

 

 

「ん……むぅ……にゃ」

 

 

 

 隣から聞こえる女性の寝息に驚きながら視線を向けた。

 

 そこで静かに体を横たえていたのは、肩に少し掛かる程の白髪に色白の肌をした女性だった。しかし、特筆すべきことはそこではなく、白い耳と尻尾が生えていたことだ。尻尾は俺の脚に張り付くように添えられている。

 

 それを見た瞬間、俺は思考が全て塗りつぶされる程の途方もない既視感を覚える。そして、有り得ない筈なのに、望郷とも安堵とも似ているようで、区別のつかない感覚を覚え、静かに一言だけ呟いた。

 

 

「………………"ピトー"?」

 

 

 そう呟いた瞬間、僅かに彼女の体が跳ねる。特に彼女の耳がピンと立ち、ひくひくと動いた。そして、彼女は寝惚け眼を擦りながら体を起こすと目を見開く。その双眼は真っ赤な色をしており、人とは思えないほど澄んで見えた。

 

主様(あるじさま)……?」

 

 彼女はそう呟いてから酷く驚いた表情で俺を見つめる。暫くそうしていたが、ある時を境に彼女は震え出し、その瞳から大粒の涙をぽろぽろと流し始め、そのまま俺に飛び付いてきた。

 

「主様! 主様ぁ! あるじざまッ!」

 

 俺は黙って彼女を受け止める。姿形は変わっても中身はまるで変わらない様子になんとも言えない歯痒いような嬉しさを覚えた。

 

「えへへ……お帰りなさい主様……」

 

「ああ……ただいま、ピトー」

 

 彼女――前世で飼っていた白猫のピトーとの間に最早、それ以上の言葉はいらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然だが、帰巣本能とはなんであろうか?

 

 帰巣本能とは、動物が棲みかから離れても再びそこに戻ってくる生得的な能力のこと。 動物が棲息場所や産卵・育児のための巣などから遠く離れてもそれらの位置を知って戻ってくること。 アリ、ミツバチなどの社会性昆虫や伝書バト、ツバメ、ミズナギドリなどの渡り鳥、また生れ故郷の川へ産卵のために戻るサケ・マス類、人間の家で飼われているイエネコやイエイヌなどに典型的にみられるものである。

 

「それが強過ぎて世界を越えた上、魔獣っぽく(そう)なったのだろうか……?」

 

「そうなのかにゃ?」

 

 泣き止んでニマニマとした笑顔に変わったピトーは俺に正面から抱き着いたまま、ゆっくりと左右に尻尾を揺らし、俺の脚を静かにぴしぴしと叩いている。また、すりすりと俺の胸板に頭を擦り付けたりもしており、実に猫っぽい。

 

 百歩譲ってこの世界に来たのは俺と同じように前世で死んだことがトリガーに来たとしよう。だが、体がそのようになったのはやはりこの世界の基準で考えると――。

 

「"念"のせいか……」

 

「ネン?」

 

 ピトーは新しい自分の体をなんとなく動かしつつ首を傾げてそう呟いた。マジかピトー……顕在オーラから推し量ると"俺と同じぐらいのオーラ総量"しているように見えるのだが、全く念については知らない様子のようだ。

 

 自慢ではないが、俺は念の天才と言えるだけの才能を持っている。実際、オーラ総量だけでも、俺よりオーラ総量の多い人間を目にしたことがほぼないため、そうなのだろう。まあ、そのせいで"馬鹿みたいな特質系念能力"で、"歴史に悪名を刻むハメになってしまった"ので才能なんて呪いに等しいと個人的には思っている。

 

 後でピトーにも水見式させないとな。特質系だけはいかんぞ、特質系は……。勝手に出来る念能力なんて必ずしも本人が望んだ結果になると限らないのだ。

 

 話を戻すと、仮に帰巣本能が念能力になったのならば、今のような状況になることも可能かもしれない。体については……お手上げだな。せめて、HUNTER×HUNTERという漫画を読んでおくべきだったと今さらながら考える。

 

「念っていうのはな――」

 

 話そうと思ったが、そこで言葉を止める。再会した直後にこんな話をする必要もないと思ったからだ。今は嬉しさを噛み締める方がいいだろう。

 

「なあ、ピトー」

 

「なんですかニャ?」

 

「今度はもう絶対に居なくならないからな」

 

「――――! はい……」

 

 俺がそう言うと、ピトーはぎゅっと目を瞑って抱き締めてきた。俺はピトーの背中に手を回しつつ頭を撫でる。そうしているうちにピトーの力は緩んでいき、やがて寝息を立て始めたのを確認し、ピトーをベッドに横たえて俺も横になると幸せそうな寝顔を眺めた。

 

 あれだけ待って、人のような姿になってまで、また俺の許に来てくれた娘を今度こそ悲しませるものか。

 

 まあ、今の俺は車やトラックどころか、電車と正面衝突しても掠り傷ぐらいしか負わないので、こっちだって早々死ぬ気なんてないし、死なないように今まで鍛えてきた。そう考えながらピトーを抱き寄せて俺も眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、念について教えようか。後、ピトーの体も少し見せてくれ」

 

「はいニャ!」

 

 翌日。一応、食べても猫の腎臓が悪くならないようなメニューで朝食を済ませた。まあ、食べ物についてはピトーの体を魔獣専門の医師に見せる必要があるかも知れないな。流石に猫の腎機能を労り続けるとバリエーションに限度があるので、猫寄りなのか人寄りなのか調べなければならない。

 

 その後、外に出て、念についての説明と、ピトーの体についてを調べることになった。俺の家は郊外に立つ、そこそこ広い屋敷であり、庭は車で軽く走り回れる程度に広いため、訓練には打ってつけだ。

 

「念っていうのは――」

 

 念とは、生き物ならば持つ生命エネルギーそのもの。それをオーラと呼び、自由自在に使いこなす言わば誰しもが持つ在り来たりな力のことだ。しかし、それをどれほど使いこなせるのかは、才能や努力による。概要としては、そんなところだ。

 

「わかる?」

 

「ニャるほど、さっぱりですニャ」

 

 ですよね。こんなオカルトチックなことをいきなり言われても理解できる筈がない。俺も最初は新手の宗教勧誘かと思ったものだ。頭の中には吹いたらポアとかタグがついている、とある真理教アニメのオープニングが流れたものである。

 

「見せた方が早いよな……」

 

 俺はピトーの前で殻に包まれた胡桃を取り出す。胡桃を素手で割るには80kgの握力が必要らしい。まあ、それぐらいならオーラを使わずとも余裕で割れるが、一応参考にはなるだろう。

 

 俺は小指と親指で胡桃を挟み込んで指先にオーラを纏わせると、そのまま割って見せた。

 

「こんな感じに――」

 

「すごいニャ! 岩が砂みたいだニャ!」

 

 そこには説明を聞いておらず、庭にあった普通のスコップを手に取り、それにオーラを纏わせ、教えてもない周で庭石をサクサクと掘るピトーがいた。無茶苦茶楽しそうに掘っている。

 

「こら、庭石を壊すんじゃない」

 

「にゃ!?」

 

 どうやらピトーに必要なのは念能力ではなく倫理観な気がしてきたが、猫だもんなピトー。

 

 その後も頑張って念を教えたのだが――。

 

 

 

「こう、水を張ったコップに葉っぱを浮かべて、そこに手を近づけて練を行うのは、心源流という念の流派に伝わり、今では最もポピュラーな系統判定方法の水見式っていって――」

 

「葉っぱが枯れちゃったニャ」

 

「わぁい、特質系だぁ……」

 

「主様とお揃いですかニャ?」

 

「うん……まあ、そうだね」

 

「やったニャ! 嬉しいニャ!」

 

「……まあ、いいか」

 

 

 

「円は纏の練応用で、体からオーラを広げる感じ――」

 

「こうですかニャ?」

 

「……う、うん。そうだね。出来てるよ。明らかに半径1km以上広がってるから一旦止めようか」

 

「ぐにぐにの円にすれば2~3km行ける気がしますニャ!」

 

「…………俺、頑張っても900mぐらいなんだけど」

 

「主様、何か言いましたかニャ?」

 

「なんでもないぞー! ピトーは良くできる娘だな! よしよし!」

 

「えへへ……喜んで貰えて嬉しいニャ……」

 

 

 

「硬は纏・絶・練・発・凝の5つの合わせ技、要するに練で生み出したオーラ全てを一点に集め――」

 

「えいっ!」

 

「庭石と芝生がぁッ!?」

 

「出来たよ主様! えらい? えらい?」

 

「…………うん、偉いよ可愛いよピトー……庭が爆撃でもされたみたいだ……」

 

「えへへ……可愛いニャ? 嬉しい……」

 

 

 

「発っていうのは、念能力者にとっての必殺技のようなもので――」

 

「なんか出ましたニャ」

 

「なんだそのキモ――独創的なデザインの人形のような物体は……?」

 

「可愛いニャ」

 

「ええ……」

 

 

 

 一応、そこそこ念能力者を育てた経験がないこともない俺であるが、こんなに色んな意味で教え甲斐のない子は初めてであった。

 

 やだ……家の猫、才能ありすぎ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫くピトーの念を見た結果、俺はある結論に達した。

 

 

「ピトー、人間の常識を学ぼう」

 

「ニャ?」

 

 

 可愛らしく小首を傾げるピトー。それだけで流されそうになるが、庭に視線を向ければ、かつてキチンと整備され、春夏秋冬全て季節毎に違った顔を覗かせていた家の庭は、ハリケーンと土木工事業者の重機が通り過ぎたような有り様になっていた。

 

 いつもなら誰かの常識は誰かの非常識等とひねくれたこと言う俺であるが、このままピトーが常識を学ばなければ、我が家は廃屋になってしまう。念能力なんて一旦放置である。というかピトー俺より絶対強いし、なんだよ"黒子舞想(テレプシコーラ)"って……あれ使われるとほぼ反撃出来ない自信があるんですけど……?

 

 悲しい現実は頭の隅に追いやり、俺はピトーに人間の常識を説き、極力それに則って行動してもらうことにした。

 

「わかりましたニャ。けれど僕の頼みも出来れば聞いて欲しいニャ」

 

 するとピトーはその代わりになのか、交換条件を提示してくる。色んな意味で強かになったなと考えていると、ピトーが頬を赤らめてモジモジし始める。

 

「えっとね……その……」

 

「うん、できることはなんでもするぞ」

 

 余程に伝え難いことなのか目を泳がせて口ごもっていたため、ホモが喜びそうな言葉で伝えるとピトーは、身長差があるため、上目遣いで俺を見上げながらポツリと呟いた。

 

 

 

「今度は……子宮を取らないで欲しいですニャ……それと……この体なら……主様の子供とか……産めるのかなって……えへへ……にゃあ」

 

 

 

 俺は数秒沈黙し、真っ赤な顔で照れ臭そうにしているピトーの言っている意味を飲み込むのに時間が掛かった。

 

 え、子宮を取るってなに……? 俺別にカニバルとかグロデスクとかそっちの気は全くな――。

 

………………………………。

…………………………。

……………………。

………………。

…………。

……ハッ!?

 

 猫の雌は発情期に子宮が膨らんで鳴いたり、そわそわしたり、気性が荒くなったり、イエネコだとストレスにしかならないので、前世でピトーを保護した数日後には動物病院に行って、子宮を摘出する手術をして貰ったことを言っているのかまさか!!!?

 

「いや……うん……しないというか出来ないから大丈夫だよ……うん」

 

「本当ですかニャ!?」

 

 今のピトーの姿に当て嵌めると鬼畜過ぎる諸行に見えることに愕然としつつ、今度は手術なんて絶対に行わないと俺はピトーを諭した。

 

 こうして、俺の日々にはこれからピトーが加わり、色を取り戻すのだった。

 

 

 

「やったニャ! ありがとう主様! 赤ちゃん楽しみにしてるニャ!」

 

 

 

 ……………………………………あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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