WHITE×CAT   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。



はじめての念

 

 

「さて、メンツも揃ったことだし、念能力について説明しようか」

 

「主様、その女はなんなんですかニャ?」

 

「スタッフに頼んだら、見ての通りホワイトボードとマーカーを用意してくれたのでよかったよ」

 

「僕という者がありながら、他に女がいるんですかニャ?」

 

「念が万物に備わる生命エネルギーだということは話したよな。まあ、そこはそういうものだと思ってくれればいいので、深くは説明しな――」

 

「詳しく……説明してください。僕は今、冷静さを欠こうとしていますニャ」

 

「ちょっと皆タイム。後、イヴちゃん集合」

 

 ピトーが視線で人を殺せそうな目と、感情を全て失ったような顔で俺に密着してきて、とてつもなく怖いので先にそちらを解決することにした。

 

 すると、何故かイヴちゃんは無表情で口の端だけをつり上げる。なんだその顔、何か思い付いたときの()みたいな表情しやがっ――はっ!?

 

 そう思い当たったときにはすでに遅く、イヴちゃんは"よよよ……"と呟きながらゆっくり床に倒れ、"ナノマシン(トランス能力)"で作り出したハンカチで、涙も出ていない目を拭っていた。

 

「久しぶりに呼びつけて……来たら新しい女を見せつけるなんて……」

 

 イヴちゃんの下手な演技にゴンくんらの4人は目を点にしているが、周囲を10%程しか見ていない、ピトーにはそうはいかなかった。

 

「主様ァァァ! 酷い! 浮気だニャァァ!?」

 

 そう言いながら俺の首を全力で絞めつつ叫ぶピトー。うーん、中々の独占力の強さ、絞められ過ぎて目が霞んできた。

 

 そして、冤罪過ぎる……それに仮にイヴちゃんと関係があったとしてもそれは、ピトーと出会う過去の話なんだから――うん、止めよう。()でよく知っている。こういうときの女という生き物に理屈は通じないんだよなぁ……。

 

 どうしようこれ……もう収拾つかねーぞ。ピトーも話聞ける状態では既にないし。うーん、何か方法は――。

 

 あっ……。

 

「おい、ピトー」

 

「浮気者! バカバカ! 主様のバカ!」

 

「それ以上、落ち着いて話を聞かないと()になるぞ?」

 

 ピトーは一瞬ですごく落ち着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピトーの誤解はなんとか解き、イヴちゃんは俺の娘みたいなものだと納得させてから説明を再開する。そして、4人には教本代わりの念能力者の野望 with パワーアップキットを配布した。

 

「さて、まずは四大行と呼ばれるものが念の基本だ。お手元の教科書の5ページ目を開いて――と、言いたいところだが、キルアくんが怪訝な顔をしているので、そちらの話を聞こう。大方、友達の下に来たら、家に出入りしている知り合いから宗教染みたことを言われて困惑したが、他の仲間は全員真剣な様子で聞いているので、どうしたらいいのかわからないといったところかな?」

 

「全部わかってるじゃねーか!? なんなんだよこれは!?」

 

 バシーン!と大きな音を立てて、キルアくんに渡した念能力者の野望 with パワーアップキットは床に叩き付けられる。しかし、神字をこれでもかと刻み込み込んで作った教科書はそれぐらいではびくともしない。

 

「ちなみに念とはハンター試験で、ピトーや俺が使うとキルアくんが部屋の四隅まで逃げてたアレのことだ」

 

「あの嫌な感じの奴か……」

 

 そう言うとキルアくんは思い当たる節があった呟きを上げる。まあ、イルミくんの針が頭に入ってるから、尋常じゃない恐怖を感じているだろうからな。

 

「あ、そうだ。キルアくん、この本を何をしてもいいから壊してみなよ」

 

「これを? いいのかよ?」

 

「いいよ、どうせキルアくんには壊せないし」

 

「あぁん……?」

 

 俺がそう言うと、案の定キルアくんはすぐにムキになって、手を掛けて血管が浮き出て筋肉が膨張するほど破こうと引っ張る。

 

「がっ……ぐぎぎ……ぐっ……なんだこれ、ただの本なのにびくともしねぇ!?」

 

「それも念なのだよ、ははは!」

 

 念の修行中の事故で破れないように、濡れないように、燃えないようにと、どんどん性質を付与しながら強度を上げていった結果、とてつもなく壊れにくくなったのである。

 

 どれ程かと言われれば、"こんなもんもう武器じゃねーか!"と、本の耐久性をジンからお墨付きを頂くほどだ。

 

 ちなみにひとつあたりの製作コストに約3000万ジェニーほど掛かり、一冊につき、2~3日ほど製作期間が必要なので、大量生産はそもそも無理。とは言え、暇を見つけては作っているので、渡したものを含めて400~500冊ぐらい存在する。

 

 また、非売品である。

 

「主様のその、必要ないところへの無駄なこだわりはなんなんですかニャ……」

 

「クートは昔からこうだもん。どっちのクートもバカなの」

 

 何か外野からとても酷いことを言われている気がするが、受講者じゃない君たちはお口にチャックです。

 

「ねえねえ、クート?」

 

「何さ、イヴちゃん?」

 

「ハンターライセンス取ったの?」

 

「ああ、今期のハンター試験で取ったな。というか、ここにいる奴らは全員今期のハンター試験の参加者だ」

 

「ふーん……そうなんだ」

 

 そう言うと、何故かイヴちゃんは余裕たっぷりの笑みを浮かべていた。"ふんすっ!"と擬音を付けたくなるようなドヤ顔である。

 

 更にイヴちゃんは持っていたお洒落なバックを探り――。

 

「私の方が3年先輩」

 

「なん……だと……?」

 

 第284期生と刻まれたハンターライセンスを取り出してきた。しかも星がひとつ付いているため、シングルハンターのようである。ハンターにこれまで一切、興味がなかったのでイヴちゃんがプロハンターであることすら全く知らなかった。

 

「え!? イヴさんもハンターなんだ!」

 

「先輩ハンターだよ」

 

 一番驚くゴンに先輩風をぴゅーぴゅー吹かせているイヴちゃん(20代半ば)。

 

 クート盗賊団にいた頃は名実共に一番年下の少女で、団員からもそのように扱われていたため、どうやらその反動だと思われる。

 

「ちなみに何ハンターなんだ?」

 

「ブラックリストハンター」

 

「え? イヴちゃんもA級首なのに?」

 

「シングルハンターになるときに星を自主返納すると、その恩赦で、自身に掛かっている罪を帳消しにもできる。だから、私はもう法律上は犯罪者じゃないし、ブラックリストからも消えた」

 

「ほーん」

 

 イヴちゃんはそれに"もちろん、犯歴の程度・場合・頻度、無犯罪でいた期間にもよるけど"と追加していた。ということは、イヴちゃんは更正した上で、一回はシングルハンターを返納し、その後でもう一度シングルハンターになったということなのだろう。大したものである。

 

「それは……どんな犯罪者にも適用されるのか?」

 

「いや、最後の犯歴から数年から十数年無犯罪でいる期間が必要だから、大半の犯罪者には無理だと思うよ」

 

 クラピカくんの質問にイヴちゃんは丁寧に答える。

 

 あ、うん。そりゃ無理だな。また、法律ガバガバじゃねぇかと思ったが、犯罪の空白期間が加味されるのでは、本当に捕まらなければならないような連中が、その期間に何もせずにいられる訳がない。

 

「…………ブラックリストハンターに興味があるの?」

 

「ああ……一応、そうだな」

 

 クラピカくんがそう答えると、イヴちゃんはものすごく食い気味にクラピカくんに迫り、無表情で目を輝かせるという器用なことをし始めた。

 

「なら私と組まない?」

 

 …………ああ、これは後輩ハンターにする気満々なのようだ。まあ、クラピカくんレベルの才能を持つ者で、同業者の卵を見つけたならわからんでもないが、他の理由としてはハンター十ヶ条に準ずるものだろう。

 

 ハンター十ヶ条とは――。

 

①ハンターたる者、何かを狩らねばならない

②ハンターたる者、最低限の武の心得は必要である

③一度ハンターの証を得た者は如何なる事情があろうともそれを取り消されることはない。但し証の再発行も如何なる事情があろうとも行われない。

④ハンターたる者、同胞のハンターを標的にしてはいけない。但し甚だ悪質な犯罪行為に及んだ者に於いてはその限りではない。

⑤特定の分野に於いて華々しい業績を残したハンターには星が一つ与えられる。

⑥五条を満たし且つ上官職に就き、育成に携わった後輩のハンターが星を取得した時、その先輩ハンターには星が二つ与えられる。

⑦六条を満たし且つ複数の分野に於いて華々しい業績を残したハンターには星が三つ与えられる。

⑧ハンターの最高責任者たる者、最低限の信任がなければその資格を有することは出来ない。最低限とは同胞の過半数である。会長の座が空席となった時、即ちに次期会長の選出を行い決定するまでの会長代行権は副たる者に与えられる。

⑨新たに加入する同胞を選抜する方法の決定権は会長にある。但し従来の方法を大幅に変更する場合は全同胞の過半数以上の信任が必要である。

⑩此処に無い事柄の一切は会長とその副たる者、参謀諸氏とでの閣議で決定する。副たる者と参謀諸氏を選出する権利は会長が持つ。

 

 という、途中までは心得で、途中からプロハンターのシステムの説明あるいは法律のようなものである。

 

 昔、ジンがしょっちゅう星の更新が面倒だの、上官職が面倒だのと俺に愚痴を溢しており、この内容についても触れる機会があったので、全て覚えてしまった。

 

 そして、十ヶ条の四番目で、上官職の方は今は考えないとして、ダブルハンターになるのは後輩ハンターの育成が必須なのだ。そして、その後輩がシングルハンターになることで初めてダブルハンターになれる。

 

 その白羽の矢をイヴちゃんはクラピカくんに立てたようだ。まあ、シングルハンターになれそうな者を育成できる機会など、そうないだろうから妥当と言えば妥当なのだろうか。とりあえず、もうすっかりイヴちゃんはハンターのようだ。

 

「か、考えさせてくれ……」

 

「わかった。これ、名刺ね」

 

 そう言って名刺を渡すと、イヴちゃんは引き下がった。イヴちゃんに詰め寄られていたクラピカくんの視線が、一瞬だけイヴちゃんの谷間に向いたことを見逃さなかったが、俺も同じ事をされたら、そちらに視線が向いてピトーにしばかれる自信があるので、見逃したことにしよう。

 

 そう言えば第二試験でも、ネテロ会長がメンチさんに話してるとき、一度だけ谷間に視線を向けてたっけな。うん、世界最高峰の念能力者も同じ事をするんだから、男なら仕方のないことなんだよ。

 

 ははは、それでピトーさん?

 

「なんでさっきからずっと俺の足をお踏みになっているんですか?」

 

「主様がチラッとイヴの胸を見てたからニャ」

 

 …………ですよねぇ。いや、ほら男の(さが)というか、どうしようもないことなんですよ。ええ。

 

「さてさて、大分脱線したが話を戻そうか! 四大行についてだったな」

 

 手を叩いてからホワイトボードに四つの漢字を書き出した。

 

 まずは(テン)。オーラが勝手に拡散しないように、体の周囲に留める方法だ。念能力者にとって最も基本のことでもあり、体を頑丈にする、若さを保つ効果もある。

 

 (ゼツ)。精孔を閉じ、体からオーラが出ていない状態にする。気配を絶ち、疲労の回復やオーラの回復を早める効果もある。これに関しては野生の生き物が自然のサイクルで身に付けていることも多々ある。

 

 (レン)。精孔を広げて、通常以上のオーラを出し大量のオーラを駆使できるようになる。オーラの攻防力が上がり、戦闘時にはこれが長時間できなければお話にならない。

 

 (ハツ)。オーラを自在に操る。まあ、これはいわゆる必殺技のようなものだ。今は考える段階に無いので気にしなくていい。

 

 四大行の説明はし終え、ボード用マーカーを置く。そして、いつもよりもオーラを絞り、薄く掌を覆う。そして、握り締めて拳にすると、4人へ振り返った。

 

「とまあ、一通りの説明をしたのはいいが、やはりオーラが見えなければ話にならないので、早速精孔を開こうと思う。まあ、この方法だと最悪死ぬが、それぐらいやって退けれないようなら念能力者になる資格はない」

 

「あん……死ぬだぁ? そりゃ、どういうこ――」

 

「こういうことだ」

 

「あがぁ!?」

 

 俺は一歩で距離を詰め、レオリオくんを殴り飛ばし、その瞬間に全身の精孔を抉じ開けた。

 

 レオリオくんは室内の壁に当たって止まり、意識は飛んでいないため、殴られた頬に触れる。

 

「テメェ! なにしやがっ……なんだこりゃ!?」

 

 そして、こちらを見る前に全身から立ち上がるオーラの奔流に気がついたのか、酷く驚いた表情をしていた。

 

「その全身から涌き出るものがオーラだ。全身に鎧をまとうように意識を向けろ。それが一番の基本の(テン)だ。できなきゃそのうち疲労でぶっ倒れ、それでもできなきゃ死ぬだけだ。後は君の頑張り次第さ」

 

 俺は拳を鳴らしながら、残る三人の方に振り返ると、笑顔で語り掛けた。

 

「さあ、次は誰だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと……ゴンくんとキルアくんがすぐに纏ができて、二人とそこまで変わらない時間でクラピカくんもできて、レオリオくんもなんだかんだ10分掛からないぐらいか……うーん、君たち超優秀」

 

 わかってはいたが、全員かなり高い念の才能をお持ちのようだ。俺としてはぶっ倒れながらでも、2~3日で纏ができるようになれば及第点といったところなので、全員花丸である。

 

「クート、まだあんな危険な方法でしてるの? ゆっくり開ければいいのに」

 

「初めに言ったが、抉じ開けて纏もできないような奴は、始めから念能力者にならない方がいい。俺は抉じ開けることしかしないが、抉じ開けるということは、そもそもその方法で問題ないと俺が判断した奴がほとんどだ」

 

 イヴの呆れ半分の言葉に俺は言い返した。ここだけは師として引けないところだ。

 

 何よりも一週間から数年近くゆっくり時間を掛けて、念を習得するのはあまりに非効率的だ。時間と安全なら俺は躊躇なく時間を取る。時というものは何にも変えがたい一番の宝だ。そして、何よりも弟子のための時間を師が奪うわけにはいかないのだ。

 

 現にこうして彼らは今すぐにでも修行ができる状態である。彼らがたまたま俺に頼って念を覚える上で、これ以上の僥倖はないだろう。

 

「ひとつ質問してもいいだろうか……?」

 

「なんなりとどうぞ」

 

 自身のオーラの感覚をしばらく確かめていた4人の中で、一番早くクラピカくんに質問があるようなので、答えることにする。

 

「その……私たちのオーラと比べて、クートさんやピトー、イヴさ――」

 

「呼ぶならイヴでいいよ」

 

「失礼――イヴのオーラは、あまりに量や質が掛け離れているように思えるのだが、その認識でいいか……?」

 

 うん、最もな疑問だとも。もちろん、答えよう。

 

「それはそうだ」

 

 その言葉と共に俺は(レン)を行って自身のオーラで室内全てを満たして見せる。ハッキリと視認できるようになった彼らは、その事実に驚き、目を見開いていた。今の彼らでは到底できることではないだろう。

 

「俺は、オーラ量だけなら俺を超える人間は見たことはない。種族としてはピトーとイヴも人間ではないが、君らの前にいる念能力者らは、潤色も傲りもなしに、紛れもなく世界最高峰の念能力者のひとりだ」

 

 それを言ってオーラをしまうと、手を叩いて注目を集める。そして、再び口を開いた。

 

「君たちは念能力者として、スタートラインに立ったばかりだ。せめて、四大行ぐらいは俺が責任を持って鍛えよう。さあ、修行を始めようじゃないか」

 

 四人の反応は三者三様だったが、それでも未知のものに立ち向かう挑戦的な目だけは持ち続けているように思えた。

 

 ああ、俺に言わせれば、君たちはもう。立派なハンターだよ。比較対象は少し悪いが、少なくとも、これまで()が殺してきた数多のハンターのよりもよっぽどな。

 

 そんなことを考え、自嘲しながら四人の修行に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

 

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