WHITE×CAT   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。

やっと次回からピトーとイチャイチャできるぜ……。


系統と母親

 

 

「まあ、修行とは言ったが、正直四大行の纏・絶・練の基礎作りぐらいしか今はできないので、軽めにやっていこう。発は今すぐにやらんでもいいしな」

 

「その発というのは具体的になんなんだ?」

 

「うん、最もな質問だ」

 

 とりあえず、修行のために筋トレをしていた場所まで来た俺を含めた7人できた。そして、早速クラピカくんから質問が上がったので答える。

 

「発はそのまま言えばオーラを自在に操る能力。簡単に言えばゲームの必殺技だな」

 

「ゲームの必殺技?」

 

 何故かその言葉に一番よい食い付きを見せたのはキルアくんだった。まあ、彼は普通にゲームをしていそうな子だしな。兄貴のミルキくんは中々ディープなオタクだし。

 

「そう。例えば俺の発は――」

 

 そう言って手元にクライストを具現化して見せ、それで自分自身の片腕を飛ばした。しかし、腕の断面から、ナノマシンが修復していることに由来する白煙が立ち上ると共に、無くした片腕が瞬時に再生する。

 

 4人に見やすいように大袈裟に手の感覚を確かめ、もと通りだということを強調してから再び口を開いた。

 

「俺の発はオリハルコンの武器を具現化する秘密結社の武器職人(シークレット・ウェポンズ)。体内にナノマシンを具現化するG・B(ゴッド・ブレス)。そして、肉体から人格に至るまで女性に変わる矮小な男と高飛車な女(ジキルとハイド)。最後に女性体でしか使用できない、最終試験でヒソカくんと戦った時と、試しの門をぶっ飛ばした時に使った幻想虎徹(イマジンブレード)の4つだな。今のところは」

 

「なるほど、女の方が私に言っていた超能力にしか見えない事とはこういう意味だったのか……」

 

「ってか、やっぱり家の試しの門をぶっ壊したのお前かよ!?」

 

「ちなみに念能力者の間で、念能力と言えばもっぱらこの発のことだ。そのため、発が使えない念能力者は半人前にすら満たないとも言えるな。とは言え、念能力は一度作ると消せず、どれだけ念能力が作れるのかも個々の才能によるため、焦って作る事だけはしてはいけない。その辺りは、渡した本の内容を頭に入れた上で師を仰げ」

 

 容量(メモリ)が、まだ残っているからな。まだ、念能力を増やせなくもない。特に必要性もないので、もしも必要になった時のために残すことにしているのだ。

 

 二人の呟きを聞き流しつつ、俺はホワイトボードは流石に持ってこれなかったので、空に六角形の大きな図と、それぞれの頂点に漢字を書く。

 

「クートさんそれは?」

 

「念能力の系統図だ。てっぺんが強化系、そこから右回りに変化系・具現化系・特質系・操作系・放出系ときて、強化系に戻る。系統とは個々が生まれついて持った血液型のようなものだが、その重要性はある意味、念で最も重要だと言える」

 

 まずは強化系。性質としては、物の持つ働きや力を強くする肉体や武器の強化といったわかりやすい能力だ。それ故に念能力者としては最も、単純な肉弾戦に向いている。

 

 変化系。性質は、オーラの性質を変えることが主だな。オーラを炎に変えたり、金属のように固くしたり、形状を変えたりと兎に角多岐に渡る。個人的には初見で念能力が、特質系を除けば一番わかりにくい系統だな。

 

 具現化系。これはある意味、強化系に次いでわかりやすい、オーラを物質化する性質を持った系統だ。特殊な武器の創造、念獣、念空間などを主に念能力にしている。俺の秘密結社の武器職人(シークレット・ウェポンズ)もほぼ具現化系の念能力だな。

 

 特質系。これに関しては……そもそも特質系の才能がなければ発現しないものなので、あまり気にしなくていい。敵の能力の予想もほぼ不可能だし、見たところ特質系に属するような気質は君達からは見られないしな。まあ、俺ら三人は全員特質系だからあんまり説得力はないか。

 

 操作系。物質や生物を操る性質を持ち、そのまま他人の操作や、命令の強制なんかをさせる系統だな。皆とも知り合いのキルアくんの兄で、俺の弟子のイルミくんは操作系の念能力者だ。

 

 放出系。これはオーラを体外に留めておきやすい性質だ。主にオーラで作った弾丸の念弾、瞬間移動、念獣などを念能力にしている者が多い。

 

「おい、今兄貴の師匠って言ったよな……?」

 

「家庭教師みたいなもんだ。後で知りたければ教えてやるよ。そして、生まれ持つ系統が最も習得が早く、力が発揮できる。逆に相性の悪い系統ほど、扱いにくく覚えにくい。例えば強化系系統の念能力者なら、強化系は100%、両隣の変化系と放出系は80%、その下の具現化系と操作系は60%、最後に最も遠い特質系は40%だが、発現していなければここは0%だ」

 

 空に浮かべたオーラを図の中に言った通りのグラフを出現させ、視覚的にも分かりやすく説明する。

 

「まあ、特質系は発現したらしたで、系統が特質系に変わってしまうから、それはそれでまた面倒なことになるが、今はまるで関係ないので忘れていい。詳しくは教科書の系統の項目の特質系のページを参照してくれ」

 

 それからとりあえず、全ての系統を一通り、グラフで見せてから、"ここまでで何か質問はないか?"と呼び掛けると、クラピカくんが手を上げた。

 

「どうぞ」

 

「当然のように我々は見ているが、その図や文字を作り、中のグラフを作成すること。もしや、凄まじく高度な技術なのではないか?」

 

 試しに空にオーラで文字を書こうとし、まるで出来ていない様子のクラピカくんはそんなことを質問する。よいところによく気がつく子である。しかし、これに関して気づいたのは、多少余計だったな。

 

「うーん? まあ、遊びみたいなものだよ。オーラ技術が俺やジン並みに向上すれば、そのうちできるようになるかもしれないさ」

 

「つまり、常人にはまずできない芸当だということか……」

 

「そうとも言うが、あまり自分の限界を決めようとするな。念は精神面の状態に大きく左右される。それ故に限界という定義は誰でもない自分自身が設定してしまうものだ。だから、目標はより高くより遠くに、そして強く持て。そうだな例えば、()をぶっ倒すことが目標だっていい」

 

「……そうか、すまなかった」

 

「いや、決して謝ることじゃないさ。それで、話を戻すと、この系統を調べることに水見式という方法が、一番楽なんだが、それをするために練が必要なんだ」

 

 その言葉の直後、俺は予備動作なしに練を行い、オーラ攻防力を跳ね上げ、戦闘時のオーラに切り換え、それを4人にぶつける。4人は突然、俺から溢れ出続ける濁流のようなオーラに当てられたことで、吹雪に襲われた人間のように腕で顔を覆っていた。

 

 それを見て練を止め、肩で息をしている四人に微笑ましさをを覚えながら口を開く。

 

「そして、極めれば練だけでここまでのことができる。まあ、それ以前に少なくとも2~3時間は戦闘中に練を保ち続けること。瞬時かつ予備動作なしに練をできるぐらいにならなきゃ、念能力者としては二流以下だ。ひとまずは一週間で練をできるようになることが俺からの課題だが、当面の目標はそれにするといい。では練のやり方を説明するからやってみようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の夕方頃。今度はホテルのスイートルーム内にいた。

 

「えーと……ゴンくんとキルアくんとクラピカくんがだいたい半日で練ができるようになって、レオリオくんが一日半でできるようになったか……はーん、皆超優秀だなぁ……」

 

「私たちが言えた義理じゃないけど、彼らスゴいね」

 

「ニャ」

 

 あれ? なんか前もこんなこと言ったような気がするが、まあいいか。なんだろうなこれ……本来ならレオリオくんの才能で無茶苦茶感心を覚えるぐらいなんだが、他三人が異次元過ぎて、レオリオくんが霞んでしまう。

 

 レオリオくん以外の三人、その中で既に覚えていたゴンくんを除く、二人に絶の仕方を教えたのだが、レオリオくんが練を使えるようになるまでに使えるようになったしな。

 

 まあ、幸いなことは特にレオリオくんは気負うこともなく、むしろ率先的に三人からやり方を聞き、三人も楽しそうに教えていることだろうな。レオリオくんの絶に関しても、触りは教えたので時間の問題だろう。

 

「これで水見式ができるんでしょう? クートさん!」

 

「お、おう……そうだな。とりあえず道具は用意したから実演してみるぞ」

 

 ゴンくんの笑顔が眩しいので、とりあえず、水見式のやり方を教えよう。まず、水見式とはネテロ会長の流派である心源流に伝わる方法で、水を張ったグラスに葉っぱを浮かべ、そこに手をかざして練をすることで、グラスと葉っぱに起きる反応で系統を判断するのだ。

 

「ほー、それでどんな風に変わるんだ?」

 

「そうだなレオリオくん。大雑把に言えば、強化系は水の量が変わる。放出系は水の色が変わる。操作系は葉が揺れるようにして動く。特質系はその他。具現化系は水に不純物が出る。変化系は水の味が変わるといったところだな」

 

 そう言いつつ、先に水を張って葉っぱを乗せたグラスを洗面器に乗せてから、それに向かって俺は練を行った。

 

 するとみるみるうちにグラスの中の水が、地に溢れた人血のような毒々しい赤黒さを帯びる。そして、人血よりもさらに濃厚な鉄臭さと血腥(ちなまぐさ)さを帯びた異臭を放ち始め、更に何故か一切溢れずに体積が増えたことで、グラスを容易く破壊する。そして、洗面器の中で、意思を持つかのように赤い水が移動し、雪の結晶のような形になり、そのまま硝子細工のように固まった。

 

 ふーん、今日の形は広幅六花か。赤黒くて臭くなけりゃ、少しはマシに見えるんだがな。

 

「え……?」

 

「は……?」

 

「いや……今のは?」

 

「おいおい……」

 

「キレイだったニャ……」

 

「相変わらず、クートの水見式キモい」

 

 悪かったなイヴちゃん。意味のわからん水見式の結果で。世界最低最悪の念能力者の水見式の結果が普通になるわけないだろ。()の方はもっと酷いからまだマシだ。人形のデザインといいピトーの感性はちょっと変わってるなぁ。

 

「とまあ、今のが特質系の水見式の結果だ。要するに他の五系統とは全く異なる結果が出る。ちなみにピトーは葉っぱが枯れて、イヴは葉っぱが再生して元の植物に戻る。じゃあ、皆やってみようか」

 

 そんなこんなで始まった水見式。まずはゴンくんから始めた。ゴンくんがグラスに練を行うと、グラスから一筋の滴が溢れ落ちる。

 

「あっ、増えた!」

 

「水が増えたということは強化系だな」

 

「ゴンらしいニャ」

 

 それは単純馬鹿で、理屈が通じないとかそう言う皮肉だろうか? いや、系統での性格が大雑把に判断できるほど念能力者を見ていない筈なので、単純にそう思ったのだろう。

 

 それから三人の水見式を行い、結果はキルアくんは水が甘くなったので変化系。レオリオくんは他の水を張ったグラスと並べてみるとわかる程度に色が変わったので放出系。クラピカくんは水に不純物ができたので具現化系という結果になった。

 

「4人いて誰も被らなかったな」

 

 まあ、別にそれがなんだというわけではない。強いて言えば系統が変われば、性格もまるで異なる場合が多いので、そんな人間らがこうして友人として集まっていることが、少々不思議に感じることぐらいか。

 

 さて、個人的な本題に取り掛かるか。

 

「クラピカくんや」

 

「なんだ? ク――」

 

「くもー」

 

 笑顔でクラピカくんの目の前にオーラで作った12本の脚を持つ蜘蛛を浮かべると、クラピカくんの目が緋色に染まり、即座に俺ごと蜘蛛に殴り掛かってきた。

 

 俺はオーラの蜘蛛を浮かべたまま、何もせずにそれを受けたため、顔面に拳が衝突した。しかし、オーラ量や身体能力の差から、俺は一切傷を負わず、むしろ殴った方のクラピカくんの拳に血が滲んでいた。

 

 もう、必要ないので蜘蛛は消しておく。

 

「おい、クートさん! クラピカが蜘蛛を見ると激情するってこと知って――」

 

「ああ、知ってからそうしたんだ。三次試験でその場に居合わせたからな」

 

 俺は友達想いのレオリオくんを制しつつ、クラピカくんの腕を掴んで、水見式のグラスへと移動させ、それから口を開いた。

 

「クラピカくん。緋の目のままで、もう一度練を行って見てくれ」

 

「何……?」

 

「例えば、さっき少し言ったが、俺が私になっただけでも水見式の結果が変わる。そして、これは言っていないが、後天的に特質系に変わるような場合は、両隣の具現化系か、操作系であることが多いんだ。だから、緋の目の状態では結果が変わるかも知れないと思ってな」

 

「ッ!? そのためにか……わかった。やってみよう」

 

 そして、クラピカくんが行った結果は、水の色が変わり、それと同時に葉が回るという。五系統に属さない系統――特質系を示していた。

 

 四人はとても驚き、やはりクラピカくん自身が最も驚いている様子だった。

 

「……ふむ、もう一度。緋の目ではない状態で練をしてみてくれないか?」

 

「あ、ああ……わかった」

 

 すると最初の水見式の結果と同じく、グラス内に不純物が形成された。これは珍しいな。今となっては知るよしもないが、クルタ族というものは皆、こうだったのだろうか?

 

「俺もこういうタイプは何人も見たことがない。どうやらクラピカくんは、通常は具現化系で、緋の目の間だけ特質系に変わるらしい」

 

 どうやら、彼はあらゆる意味で一筋縄ではいかない念能力者に育ちそうだ。修行方法も特殊になることもそうだが、なにより戦闘中に系統が変わるなど相手からすれば堪ったものではないだろう。

 

 しかし、少年漫画の主人公みたいな能力だな全く……あ、少年漫画だったわ。HUNTER×HUNTER(ここ)

 

 俺は小さく溜め息をついてから彼ら4人を眺めて呟いた。

 

「うん、四大行の基礎はこれで、一通り終わっちゃったんだよね。後はとりあえず、練でもっと生み出せるオーラ量を増やしてもらわないといけないから、俺抜きでもできるし、時間的に拘束する気はないからひとまずはここまでだな」

 

 そういうと全員が"え? これで終わり?"とでも言わんばかりの様子で目を点にしていた。

 

「もし、これ以上の師事を仰ぐのなら、少なくとも5年は俺と共にいるぐらいのことは覚悟しておくように」

 

 そもそも俺としては、彼らに念の説明をする気もなく、裏ハンター試験を普通に与えられた師の下で覚えるものと考えていたが、()が大変余計なことをしたり、更にその後の流れでこうなったので、既にかなりやり過ぎた感は否めない。

 

 既に手配されているであろう念の師に怨まれそうなので、基礎だけ語り、後は師の方で鍛えて貰うことが最善だろう。心得、基礎の更なる修行、応用技、系統別の修行方法など幾らでも教えてもらえることはあるからな。

 

 なによりも、この子らにこれ以上、本気で俺が師事したら……熱が入り過ぎて俺の方が離れられなくなりそうだ。

 

「特にレオリオくんは医大受けるんだから勉強しないといけないしな。絶をしながら勉強すれば常に疲労を回復しながら行えるから、驚くほど効率的にできるぜ?」

 

「マジか!? ありがてぇ!」

 

 うんうん、念なんてそれぐらいの使い方でいいのさ。まあ、試しの門を開ける気なら、ゼブロさんの家の設備では2~3週間は掛かっただろう。そのため、筋トレを含めて一週間程でここまで来れたのだから、多少は助けになったと言えると思いたいところだ。

 

「後、殺す気がないなら、無能力者に念は振るうなよ? 簡単に血染みができあがるからな。後、念の秘匿については教科書に載せているから、そこだけは読むように。もちろん、教科書は差し上げるので、暇なときにでも読んで多少の参考になれば幸いだ」

 

 まあ、ある程度極めれば加減はできるようになるが、生憎その段階までは流石にかなり遠い。だったら始めから使わないことを教えた方がいいだろう。

 

「そうだゴンくん。ジンについての話だったな。いいぞ、全部話して――」

 

「あ、それ。やっぱりいいや、クートさん」

 

 その言葉に俺だけでなく、話すに至る経緯を知らないイヴちゃん以外の全員が目を丸くしていた。

 

「いいのかよゴン? アイツ、ああ見えて無駄に人脈広いから、他人の情報は基本なんでも知ってるぜ? なんならそのジンの現在地なんかも――」

 

「うん、だからだよキルア。ジンはやっぱり、俺が見つけ出して直接話を聞かないとダメだと思うんだ。クートさんの話もジンから聞くことにするよ!」

 

 ジンから見た俺の話を聞くという猛烈にこそばゆいことを言われ、なんとも言えない気分になりつつ、その妙なところにこだわりがあるところ、一切自分を曲げないところ、結果よりも過程や自分の目標も重視するところが――。

 

 

 

 "()"にそっくりなんだよなぁ……。

 

 

 

 

「なあ、ゴンくん? ならもうひとつだ」

 

「なにクートさん?」

 

「君を産んだ母親について知りたくはないか?」

 

「え……?」

 

 そう言うとゴンくんはとても驚いた様子だった。そちらまで知っているとは思っていなかったのだろう。まあ、知っているどころの話ではないのだがな……。

 

「なんというかな。まず、君の母親はピンピンしている。そして、俺と非常に親密というか、腐れ縁というか最早離れられないというか……兎に角、俺がよく知る人物だ」

 

 ええ、本当に……本当に世話の掛かる奴なんだよ。

 

「何よりも、ソイツは一切、母親として向いていない。子育てなんかした日には、君を理由に世界を敵に回しかねないから、ジンがどうにか説得して引き剥がして、ソイツの目の届かないところで育てることになった。だから、今の君があるんだ」

 

 とはいえ、それでもひとつだけ、わかっていて欲しいことだけはあった。想いを共有している俺だからわかることだ。

 

「ああ、でもこれだけは忘れないで欲しい。君の母親は、未だに君を愛しているよ。君が思っている以上にずっとな」

 

 そう語り掛けると、ゴンくんは少し目を瞑り、そして見開くと真っ直ぐに俺の目を見ながら口を開いた。

 

「クートさん。とってもその人のこと想っているんだね。真剣な目を見てわかったよ」

 

「ああ、とてつもなく世話の掛かる妹みたいなものだ……」

 

「そうなんだ。けれど俺にとってはやっぱり育ての親のミトさんが、母親なんだ。だから――その人のことは母親とは思えないよ」

 

「そっか……わかった。すまないが、1階のフロントに借りているホワイトボードを返して来てくれないか? 言えば引き取ってくれると思うから」

 

「うん、わかった!」

 

 そう頼むとゴンくんはすぐにホワイトボードを引いて、部屋から出ていった。

 

 そして、扉が閉まるのを確認してから、大きく溜め息を吐き、回りを見ると、半眼で見つめてくるイヴちゃん以外の皆が俺を絶妙な表情で見ている姿が目に入る。

 

 まあ、ゴンくんみたいな純粋無垢な子以外はあの説明でわからない方がおかしいからなぁ……。

 

「言いたいことがあるなら言うように」

 

 するとピトーとゴンくんの仲間の三人が集まってしばらく話し合った末、ピトーが俺の前に出て来て口を開く。

 

「あの主様……ゴンの母親は誰なんですかニャ?」

 

 最早、怖いものなど何もなくなったようなとても軽い気持ちになりつつ、ピトーではないどこか遥か遠くを見ながらポツリと呟いた。

 

 

 

「"()"だよ」

 

 

 

 その後、ゴンくんが戻ってくるまで、何故か自分でもわからないが小さく笑うことが止まらなくなっていたが、誰もそれ以上質問をしてくることはなかった。

 

 皆優しいなぁ……ああ、そらきれい。

 

 

 

 

 


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