WHITE×CAT   作:ちゅーに菌

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オリハルコン

 

 

 

 ピトーが来てから1ヶ月程経った頃。ピトーについて色々とわかったことがあった。

 

 まず、信頼出来る者の伝で、ピトーを魔獣専門の獣医師に診せたところ、ネコ……ではなく、ピトーは昆虫と人間の中間の生き物らしい。いったい、そのネコミミと尻尾は何処からやって来たのか、世にも奇妙な物語になりそうだったが、当のピトーは特に気にするどころかなんでもいいような様子なので、今のところはこの話はおしまいである。とりあえず、特に食べさせてはいけないものも無さそうだったからな。

 

 そう言えば獣医師が、"専門外だが、第一級隔離指定種のキメラアントという昆虫に似ていなくもない"と言っていたが、それは無いだろう。キメラアントなら女王蟻でも精々10cm程度の生き物で、ピトーが産まれるには小さ過ぎる。しかもピトーは女王蟻でもなんでもない。

 

 仮に人間を食べ続ける体長2m前後の女王蟻が存在すれば、キメラアントの王直属護衛軍がこんな感じになるんじゃないかと、獣医師の先生と冗談で笑いあったものだ。まあ、そんなものがいれば幻獣ハンターは大忙しであろう。

 

 そして、家でのピトーの様子はと言えば、昔と行動はあまり変わらない。俺の横を通り過ぎるときに体を擦り付けてきたり、必ずお出迎えするお喋りにゃんこだったり、頭を撫でていると転がってお腹を見せてきたり、陽向や大きめの段ボール箱の中で昼寝していたり、俺が作業をしていると視界に入ってウロウロして最終的には作業を真横からじっと見つめて来たり、俺と体を動かして遊んだりである。

 

 問題はやはりそれらの行動を現在の姿がネコミミ美人だと言うことであろう。絵図が他者には見せれそうにない。

 

 しかし、俺が一番疲れるのは体を動かして遊ぶことだろう。先に言っておくが、卑猥は一切ない。黒子舞想(テレプシコーラ)をしたピトーが笑顔で爪を立て、全力で襲い掛かって来るだけである。俺は必死で防戦一方なのである。

 

 そして、なにより――。

 

 

 

「主様、ご飯ですニャん」

 

 

 

 1週間程前から料理や掃除などの家事を割烹着姿でやっているピトーが見られるようになったことか大問題である。

 

 いや、ピトーは面白いように知識を付けて、生活に適用しつつあるため、とても喜ばしいのだが……その原動力が問題で、更に要求が強かになり始めたのだ。

 

 どういうことかと言えば、晩ご飯のレバニラ炒めと小鉢を運んでいるピトーを横目で見つつリビングを見渡すと、さっきまでは無いどころか、家にも無かった最新のたまご倶楽部が机の隅に置かれており、オーラも纏っていないのにとんでもない重圧を感じる。

 

 なんというかこう、ピトーが飼い猫ではなく、女――それも奥さんに変わっていくのが見ていてわかるのだ。1ヶ月でこれなのだか1年後にはどうなっているのか想像もでき――いや、大きなお腹をいとおしそうに撫でている姿が想像できてしまった。

 

「ねぇ、主様?」

 

「な、なんだ……?」

 

 配膳が終わり、隣に座り込んでこちらに少し体重を掛けてくるピトー。密着した肌の暖かさを感じる。

 

「僕はいつでもいいからね……なるべく早くがいいけど」

 

 ……………………果たして俺はいつまでピトーの日に日に強かになる誘惑に耐えられるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然だが、この世界には色々な未知のものがある。宝石、動物、植物、細菌、民族、古代文明等々数え切れない程だ。そんな未知のものを探求する者こそが、この世界で最高の名誉ある職のひとつであるプロハンターだ。

 

 まあ、俺はプロハンターでもなんでもないため、後者は重要ではない。この世界で生まれてから存在を知ったもの――"オリハルコン"と呼ばれ、数々のゲームやらアニメで聞き覚えのある名の鉱物が俺にとっては重要なのだ。

 

 この世界のオリハルコンは鋳造過程により性質を変える性質を持つ希少金属であり、世界に存在する物質の中で最も硬く柔らかで温度耐性があり鋭く、更に念による効果を増幅させる超金属であり、オリハルコンの含有率の高い武器は金で買えない程の価値のある物品だ。そして、俺は仕事の関係上大量に保管してあるのである。

 

「それがコイツらが家に来た理由なんですかニャ?」

 

「そうだな。先月は無かったから少し油断していたが、今月は頭から早速だ」

 

 朝っぱらから俺の家に襲撃を掛けてきた人相の悪い無能力者の頭をボールのように上へ放っては受け止め、また上に放ることを繰り返しているピトーに事の理由を全て話した。

 

 ちらりと下を見れば50人は超える頭部か心臓を抉られた無能力者たちの骸と、20人程の鋭利な刃物で真っ二つになった無能力者たちが転がっていた。うーん……殺った数じゃ、全然ピトーに叶わないなぁ……。

 

「で、プロハンターでもなんでもない、ただの民間人がそのオリハルコンを大量に所持しているわけで、そうなると当然、腹が立つぐらいの頻度で襲撃されるわけだ」

 

「主様は何のお仕事をしているんですかニャ?」

 

「俺はオリハルコンの武器を作ってる職人だよ」

 

 ところで話は変わるが、前世で俺は"BLACK CAT"という矢吹神が"To LOVEる -とらぶる-"の前に描いていた漫画が好きであった。まあ、ジャンプの世代だったというか、子供の頃の思い出という奴である。

 

 学校で友人とジャンプを回し読みをしており、俺は"BLACK CAT"を、友人は"HUNTER×HUNTER"を読んでおり、ソイツがピトーの名前を付けたのである。今更ながら何かのキャラの名前だったのかも知れないな。特に理由もなくHUNTER×HUNTERを読んでいなかったことが、今となっては大変悔やまれる。

 

 話を戻そう。そのBLACK CATでは時の番人(クロノ・ナンバーズ)と呼ばれる抹殺者集団がおり、彼らはいかなる攻撃でも壊されることはなく、またどれほどの高温でも簡単に原形を失わない世界最高の金属であるオリハルコン製の武器を手にしていたのだ。そう、オリハルコンなのである。

 

 微妙に性質は異なるが、似たようなものであるオリハルコンをこちらの世界で見た俺は思ったのだ。

 

 

 "これは武器を作るしかない"と。

 

 

 オリハルコンは性質を付与するための加工に恐ろしく細かい専門知識に加え、通常の金属を遥かに超える高温と共に莫大なオーラを用いて加工する金属だったため、暇を持て余し、オーラ量だけは無駄に多い俺には打ってつけだったのである。

 

「その結果が、俺の念能力だな」

 

 俺は手元に武器を具現化する。それは黒い刀身を持ち、金の装飾が施されたサーベルだった。クライスト――救世主の名を冠する長剣だ。

 

「"秘密結社の武器職人(シークレット・ウェポンズ)"。鋳造した武器を自由に具現化する念能力……一言で言えばそれだけなんだが、流石にオリハルコン製の武器を具現化するとなると制約も多くてな。正直、戦闘用というよりも仕事用の念能力さ」

 

「制約ですかニャ?」

 

 地面に転がる死体を掃除し始めながらピトーは首を傾げる。ピトーの念能力には制約という制約も無さそうだからな。

 

ちなみにシークレット・ウェポンズの制約は以下の通り。

 

 

①自身で鋳造した武器しか具現化できない

②使用したオリハルコンの含有率が98.8%以上でなければ具現化できない

③鋳造した現物を自身以外が所有していなければ具現化できない

④具現化した武器は鋳造した現物の状態が反映される

⑤鋳造した現物が完全に破壊されるとその武器は具現化できなくなる

 

 

 つまりは自分で作ったオリハルコン製の武器を他人に与えることで、初めて俺が具現化出来るようになる念能力である。そして、具現化武器の状態は、現在の状態が反映されるのだ。これにより、俺がこれまでに譲渡したオリハルコン製の武器の状態はリアルタイムでわかるため、不具合や破損があればこちらから修理を持ち掛けることも出来る。アフターサービス付きのお仕事用念能力なのである。

 

 まあ、もちろんこの世界に秘密結社(クロノス)は存在しないので、俺がこれだと思った念能力者や、昔からの顔馴染みに売るぐらいだな。

 

「ニャるほど。最近、あの暖かい小屋でナイフを作ってるのは仕事だったんですかニャ」

 

 仕事だと思われていなかった事実に衝撃を受けたが、それを表面には出さない。

 

「昔、俺が鍛冶屋に落ち着く前にやんちゃしてた頃に、俺を殺しに来たこともある暗殺者からの依頼でな。最高のナイフが欲しいってことで、前金だけで軍需費みたいな額を貰っちまったもんだから、世界最高のナイフを作ってるところだ」

 

「ふーん……やんちゃ?」

 

 ピトーは顧客や仕事には興味を示さず、俺が話した一言に耳を立てた。そして、話して欲しそうにこちらをじっと見てくる。

 

 隠すような事でもないが、話したい事でもないので複雑な気分だが、ピトーにならいつかは言わなければならないことだろう。

 

「俺、これとは別の最初に勝手にできた特質系念能力が主な理由でさ……若い頃は盗賊団の頭目をしてたんだよ」

 

「盗賊団ですかニャ?」

 

「ああ、"クート盗賊団"って言えば結構悪名高い盗賊だったんだぜ……?」

 

「そうなんですかニャ」

 

「………………それだけ? 軽蔑したりはしないのか?」

 

「――? 主様は僕の大好きな主様です。それが変わることはないですニャ」

 

「ピトー――!」

 

「で? その念能力ってどんな念能力なんですかニャ? 戦闘用ですかニャ? 強いんですかニャ?」

 

 ピトーは目をキラキラさせ、今にも飛び掛かって来そうな様子で俺に詰め寄ってきた。アカン、これただ遊びたいだけだ……。

 

「駄目だピトー。あの念能力を使ったが最後、なんというかその……もう何もかもが滅茶苦茶で……兎に角凄いことになるんだよ!?」

 

「………………全く要領は得ないけど、使いたくないことはわかりましたニャ」

 

 そう言ってピトーはそれ以上言及することはなく、溜め息を吐く。その様子に観念してくれたと思った直後、ピトーは爪を立ててこちらに向ける。

 

「じゃあ、主様遊んでニャ。あんな弱っちくて脆いのじゃ沢山いても消化不良だニャ」

 

 そう言ってピトーは笑顔で俺に飛び掛かり、俺はクライストで防ぎながら全力で後退する。こういう無邪気な悪意は本当に猫のままだな!?

 

 その後、陽が傾き始めるまで俺は楽しげなピトーから逃げ回り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……」

 

 僕は頭を悩ませていた。というのも人間には戸籍というものが必要で、それがないと色々なことが大変だということがわかったからだ。

 

「やっぱり赤ちゃんの為にもあった方がいいよね」

 

 それに……結婚したりもできるようになるし……えへへ、主様と(つがい)になれたら幸せだなぁ。

 

 けれどその方法が中々難しい。主様に頼めばお金で解決してくれそうだけど、なんだか流石にそれはどうかと思う。

 

「ハンターになればいいんじゃないか?」

 

「ニャ?」

 

「いや、正確にはピトー名義のハンターライセンスを取得出来ればいいってとこだな――」

 

 すると僕の様子を見兼ねた主様が僕に説明してくれた。

 

 ハンター試験を合格したプロハンターが持つハンターライセンスには、公共機関の利用の無料化や、侵入禁止区域に入れるようになるだけでなく、国際的な証明書としての効果もあり、仮に戸籍のない存在しない人間であっても世界的に人間として証明されるんだって。

 

「スゴいですニャ! 主様もハンターなんですかニャ?」

 

「………………いやー、俺はハンターに手を焼かせた側というか、倒された側というか、むしろかなり殺した側というか……」

 

 そう聞くと、主様は遠い目でどこか遠くを眺めていた。また、聞いちゃいけないような雰囲気だね。今日は聞くけど。

 

「なら主様も一緒にハンターになれませんかニャ? ひとりじゃ寂しいニャ」

 

「……うーん、とりあえず知り合いに電話してみるか。期待はあんまりしないでくれよ?」

 

「ニャ!」

 

 僕はワクワクしながら主様が電話を掛ける姿を見ていた。電話掛けてしばらく主様はコールをし、2回掛け直したところで通話が始まった。

 

「よう、ジン。久しぶりだな、お前にぶっ倒された"クート"だよ。ちょっとハンター試験の受験資格について聞きたいこ――――なんだ。パリストン君じゃないか。あれ? 俺で電話掛け間違えたかな? ごめんなさ――え? 合ってる? ジンが携帯を本部に置いたままどっか行った? ああ……そういう」

 

 なんだか主様が掛けた電話の主はとてもルーズな方みたい。

 

「なら掛け直すよ。ん? 要件? いや、俺って犯歴の関係でハンター試験の受験資格があるのかどうか聞こうと――お、おう……凄い食い付きだなパリストン君。別に大したことで――え? 大丈夫? 全く問題ない? むしろ今すぐにでも歓迎する? そこまで言われると危ない詐欺にでも引っ掛かってる気分になるな……まあ、いいや。ありがとうパリストンく――いや、君が権力とか使って何かしなくていいからな? 普通に受けるって、ああ。ありがとう、じゃあ、また今度食事でもな」

 

 主様は電話を切ると、僕に向き合って神妙な顔つきになる。僕は嬉しさのあまり笑顔でそれを待った。

 

「じゃあ、とりあえず受験票を書いて応募してみようか。まだ、ちょっと期間あるけどな」

 

「ありがとう主様! えへへ……これで結婚もできますニャ」

 

「……………………あれ?」

 

 僕は主様に抱きついた。主様はちょっと困ったような釈然としないような顔をしているけど、よくみると嬉しそうでもあるので、僕は目一杯、主様に抱きついて身を寄せた。

 

 

 






~登場人物~

クート・ジュゼル
 元クート盗賊団の首領。10年以上前にプロハンターのジン・フリークスに盗賊団ごと壊滅させられ、それからは司法取引の末にオリハルコンの武器職人として、ジャポンに住む男性。来歴から少なくとも40歳は越えていると思われるが、20歳代にしか外見上は見えない。最近、前世の飼い猫が家に戻って来た。

ピトー・ジュゼル
 何故かキメラアントの王直属護衛軍の1体――ネフェルピトーの体を持つが、中身は前世で主人公が飼っていた白い毛並みで金の瞳をした白猫。飼い主の元にいたい一心で世界を越えた。クートの薦めで常識や理屈を急速に覚えてはいるが、それでも本能的に猫っぽい。また、獣らしく生殖活動にはやたら前向きかつ情熱的。


~クートの念能力~

秘密結社の武器職人(シークレット・ウェポンズ)
 ハンター業界でも伝説級の希少金属であるオリハルコンで鋳造された武器を他者に渡すことで、その武器の状態をそのまま具現化できる仕事用の側面の強い具現化系念能力。オリハルコンは鋳造方法により、世界に存在する物質の中で最も硬く柔らかで温度耐性があり鋭く念による効果を増幅させる超金属であり、オリハルコンの含有率の高い武器は金で買えない程の価値のある物品である。
制約:
①自身で鋳造した武器しか具現化できない
②オリハルコンの含有率が98.8%以上でなければ具現化できない
③鋳造した現物を自身以外が所有していなければ具現化できない
④具現化した武器は鋳造した現物の状態が反映される
⑤鋳造した現物が完全に破壊されると具現化できなくなる

特質系として最初に目覚めた念能力
 兎に角、使うことをクート本人が嫌がっている念能力。クートが盗賊団をしていた理由の大半はこの念能力が原因。詳細は今のところ不明。


~小話~
 一応、クートは原作キャラです。レイザーの逮捕がジンの功績に上がらず、クート盗賊団の壊滅がジンの功績に上がっているとなると、クートってとんでもない念能力だったのではないかという妄想から独自設定を作っております。





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