WHITE×CAT   作:ちゅーに菌

7 / 17
どうもちゅーに菌or病魔です。


四次試験 前

 

 

 

 四次試験は今船で向かっているコンタクトレンズケースのような形をしたゼビル島で行われる。

 

 試験内容はゼビル島内で行われるポイント制のバトルロワイアル兼サバイバルといったところ。自身のナンバープレートが3点、個々で引いた紙に書かれたターゲットのナンバープレートが3点、それ以外のナンバープレートが1点で合計6点分のナンバープレートを終了時に提示すれば通過とのこと。

 

 最低でも受験者は半分になる上、プレートを取っても終わりの期日まで守りきらねばならないため、中々ハードでいやらしい課題だと言えるだろう。

 

 

「以上のことから今回の約束ごとを決めるぞピトー」

 

「ニャ」

 

「1点なら3人まで、ターゲットなら1人まで殺ってもいいが、それ以上はダメだ!」

 

「はいニャ!」

 

(『はいじゃないだろ!?』)

 

 

 何故か、ピトーと約束事を決めていると、大多数の受験者の目が集まっていたので、見回すと一斉に目を背けた。クラピカくんとレオリオくんも見つめてみるが、絶妙な半笑いでこちらを見るばかりである。ゴンくんとキルアくんは二人で会話に熱中しているのでこっちを見ていない。

 

「それで主様は何番だったんですかニャ?」

 

「おう、じゃあ、見せ合うか」

 

 "せーの!"という掛け声の後、俺とピトーはそれぞれのターゲットが書かれた紙を見せ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 受験番号53番――ポックルは自身のターゲットである118番のソミーからプレートを回収し、6点分が集まったことに歓喜すると共に、残りの日時を自身のプレートの他の受験者に奪われないように潜伏場所を探し始めた。

 

 特に44番、399番、400番の受験者に出会ってしまえば、その瞬間に死が確定するといっても過言ではないとポックルは考え、それらの受験者が近付かなさそうな場所に目星を付けようと行動し――。

 

 

 

「こんにちは」

 

 

 

 絶望が先にやってきた。

 

 肩に少し掛かる程の白髪に色白の肌をし、紫色のシャツとオレンジ色の短パンを履き、赤い瞳を歪めて薄笑いを浮かべた女性の魔獣。

 

 彼女の白い耳はピンと立ち、艶やかな尻尾は嬉しげに、ゆっくりと揺れ動いている。

 

 そして、一切隠されることなく胸についているネームプレートには399番という文字が刻まれていた。

 

 

 

「確か……ぼっくり? いや、ポックリだっけ? まあ、なんでもいいか」

 

 

 

 彼女はそっとポケットから、受験者が引いたターゲットが書いてある紙を取り出して、ポックルに見えるように広げる。そこには"53"という数字が書かれていた。

 

 それを半ば放心状態でポックルは見つめ、ふと399番の顔を見ると、その表情は満面の笑みが浮かんでおり、その唇を震わせた。

 

 

 

「天気もいいし、死ぬにはいい日だよね」

 

 

 

 その言葉と共に399番は爪を伸ばし、獰猛な獣のように歯を見せ、ターゲットが書かれた用紙を握り潰した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主様、終わりましたニャ」

 

 53番のプレートと、118番のプレートを持って、1日目の正午に俺の下に戻ってきたピトー。しかし、何故かその表情は不満げである。

 

 そして、何故か頭にターバンが巻かれており、首にはスカーフをしており、背中に弓矢一式を背負っていた。いったい、どこから持ってきたのだろうか? なんか、微妙に見覚えがある気がしないでもないが。

 

「何かあったのか?」

 

「なんかあったんじゃないニャ! なにもなかったんですニャ!」

 

 ぷんすこ怒るピトー。つまり、どういう事だろうかと思っていると話したかったのか、ピトーはそのまま、それについての内容を愚痴り出した。

 

「僕を見た直後に"なんでも差し上げるので、命だけは助けてください!"って命乞いしてきて、殺る気が削がれちゃったニャ……逃げるものを追うか、抵抗してくるから楽しいのに……」

 

 "全然、殺り足りないニャー!"といつの間にか頭に巻いているターバンをくしゃくしゃに掻きながら叫ぶピトー。我慢できるようになったんだなぁ……ピトーの確かな成長を感じて、俺は感無量である。

 

 なるほど、その紫色のターバンと黄色のスカーフと弓矢はそういう理由か。遺留品じゃなくてよかったというものだ。後でそっと俺が持ち主に返しておこう。

 

「主様は何をしているんですか……?」

 

「海で獲った昆布と魚介類を干してる」

 

 魚は全部塩干しだが、干物だけでなく、一夜干しや丸干しも作っている。気温が高くて、カラッとした天気なので、干物日和だな。

 

「いや、それは見ればわか……なんでもないですニャ」

 

 何故かピトーに"試験より先に何してるんだろう……でも主様だから仕方ないニャ……"と言わんばかりの絶妙な呆れ顔で見られている気がするが、きっと気のせいだろう。無人島で食料も用意しなければならないので、個人的にはそちらの方が大事なのである。

 

 そんなことを考えていると、ピトーが黒子舞想(テレプシコーラ)を発動して襲い掛かってきたため、俺はクライストを具現化して、爪による一閃を受け止めた。

 

「やっぱり主様と遊ぶのが一番楽しいニャ!」

 

「そうか、それはよかった」

 

 まあ、しばらくハンター試験で相手をしてあげれなかったので、今日ぐらいはキチンと相手をしようか。しないで溜め込ませたら、ピトーが他者へ無差別に襲い掛かるようになっても困るしな。

 

 その日は干物の様子を見ながら、月が天辺に登るまでピトーの相手をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 血に集まる生態を持つため、好血蝶という名がついた蝶を追ってゴンが見つけたのは、開けた場所に一本佇む木を背にして休憩している44番――ヒソカの姿だった。

 

 四次試験でのターゲットであるヒソカの隙をゴンが伺ってわけいると、ゴンに近い草むらから371番の槍使いゴズが現れ、ヒソカに挑んだ。

 

 しかし、ヒソカはゴズの壮烈な槍捌きを全て避け、相手にしておらず、逆に(おびただ)しい好血蝶の集まり方から、致命傷を負っており、その状態で最期に戦っているゴズに目が死んでいるため死人とは戦わないことを告げた。

 

 そして、自暴自棄になったゴズがヒソカに突撃しようとしたその瞬間である。

 

「いいねぇ、そういうの嫌いじゃないよ」

 

(――クートさん!?)

 

 二人の間に割って入るように、ふらりと現れた人類史の犯罪歴に輝く黒い太陽のひとり――クート・ジュゼルにゴンは驚いて声を上げそうになった。

 

 クートはパチパチと小さく拍手をした後、突然の来訪者に肩で息をしながらも手を止めているゴズに片手を指すと、ヒソカに問い掛けた。

 

「殺る気ないなら、この場は俺が預かってもいい?」

 

「ああ、ご自由に♥」

 

「どーも」

 

 そういうとクートはゴズの前に立った。そして、頭の先から爪先まで見つめてから、少しだけ目線を交えた後、感心するように2~3度頷いてから口を開く。

 

「気に入った。あなたは20年後にはいい念能力者になりそうだ」

 

「どういう意味…………がぁ――!?」

 

 次の瞬間、クートは己の片腕をゴズの致命傷を負っている背中の傷口に直接突き入れる。少なくとも手首から先は全て挿入されており、あまりの激痛にゴズは声さえも上がらない。

 

 10秒ほど、ゴズの傷をこねくり回すように触れ、肉と水音を響かせた後、クートは腕を抜いた。

 

 ようやく痛みから解放されたゴズは地面に崩れ落ち、震える手で患部に触れたことで気づく。

 

「傷が……ない!?」

 

(治った!?)

 

 誰が見ても致命傷だった自身の傷が跡形もなく消えていたのだ。誰が神の奇跡に等しい行為を行ったかなど、火を見るより明らかだろう。

 

『スゴいでしょ? 僕の主様』

 

 するとゴンは吐息が掛かるほどの距離で声を掛けられ、驚きつつそちらを向くと、目を細めてしゃがんで座っている399番――ピトーがそこにおり、小声で話し掛けてきていた。

 

 全く気づかない内にそこにいたことに驚愕するゴンだが、状況はそのまま流れていく。丁度、クートがゴズに下がっているように声を掛け、再びヒソカと対面したところだった。

 

「おかしいなぁ……君、特質系だったよね? 系統的には最も遠い筈なんだけどなぁ♢」

 

 ヒソカは奇跡に驚く様子はないが、疑問を覚えたように眉を潜めつつ、どこか愉しげに口の端をつり上げていた。

 

『それなんだよねぇ。主様は腕を切り落としてもすぐにくっつくか生えるし。少なくとも使いたくない能力と、再生能力は別の能力っぽいんだよねぇ』

 

 ピトーはそう呟いてからゴンを見つめる。そして、目を細めてからポツリと呟いた。

 

『君といるとなんだか居心地がいい。特別に僕を撫でさせてやってもいいニャ』

 

 "でも尻尾触ったら怒るニャ"とも言いながらニマニマとした笑みを浮かべているピトー。ゴンの人間だけでなく、生き物全般に成せるコミュニティ能力の高さ、あるいは何とでも仲良くなれる力という単純なものにより、ピトーとも良好な関係を築いていた。

 

 まあ、三次試験のときに抱き枕にされたり、起きてても絡まれたりとされただけであるが、何故かピトーの方からは非常に好印象なのであった。

 

「さあな。ピエロなら種を暴いて見せるものだろう? それと俺はこう思うんだよ」

 

 クートは諭すというわけではなく、単純に世間話のひとつといった様子で口を開く。

 

「念能力者が念の才能に左右されるのは精々30%ほど。残りの70%は何れ程死ぬ気で10年単位で修行に打ち込めるかと、己の技量をどこまで極められるかで決まる」

 

「随分長い目で見るんだね。僕にはできそうにないな♣」

 

(念能力者……? 念……?)

 

『ハンター試験に合格したら、僕が教えてあげようか? それも楽しそうだし』

 

 聞いたことのないワードが飛び交いハテナを浮かべているゴンに、全く隠す様子もなくピトーはそんな提案をしてきた。とりあえず、ゴンは"今は試験に集中しなくちゃ"と告げると、ピトーは"それもそうだねぇ"と(ささや)いて、ゴンの隣で息を潜めつつ、クートらの一部始終を眺めた。

 

「そりゃあ、盗賊団の念の師はほとんどは()が行っていたからな。だから君と違って俺は師としての目線で人を見ているんだ。それでそんなに人殺しに率先的ではないというのはあるかもしれないな。もったいなくてね」

 

「なるほど……最低最悪と呼ばれた犯罪者集団は君から全て生まれたわけか、通りで魔人と呼ばれるわけだ♠」

 

 自身が異次元の念能力者でありながら、師としても極めて高いレベルの指導力を持ち、倫理観のある悪党。それらが合わさることで、生み出されるものをカリスマ性と呼ぶのだろう。

 

 するとクートはゴンとピトーがいる方とは別の草むらを眺め、どこか懐かしいといった様子の笑みを浮かべると口を開いた。

 

「さて……いるんだろイルミくん? 出て来いよ」

 

「あー、やっぱバレてたか……」

 

 すると301番の受験者――ギタラクルが姿を現し、顔の針を抜いていく。全ての顔の針が抜け終えた直後、顔面の骨格が変形し、猫目で死んだような目をした長い黒髪の青年へと変わった。

 

「久し振りだな。最近は行っても仕事で居なかったから、3年振りぐらいか?」

 

「…………そうだね」

 

 何故か一瞬間を開けてから言葉を返すイルミ。また、とても面倒なものに会ってしまったと言わんばかりの表情をしていた。

 

 いつもとは違い、妙に感情を出している様子のイルミにヒソカは目を開いて驚きつつ、面白そうなのでそのまま眺めることにした。

 

「うんうん、ちゃんと念の修行は欠かしていないようで結構結構。もう10年より前か、シルバの頼みでイルミくんの念の教育係になった日が懐かしいな」

 

「え……?」

 

「何も言うな」

 

 クートが言った通りのことをイルミに聞こうとしたヒソカだったが、他ならぬイルミに止められる。それが何よりもの肯定であろう。

 

「それで……? アンタが俺に何しに来たわけ?」

 

「ははは、そりゃあ、この場において、ここにいる理由は当然――」

 

 クートはゴズが使っていた槍を蹴り上げて掴むと、その絶望的なまでに重厚でドス黒いオーラで槍を包み込む。そして、もう片方の手でターゲットの書かれた紙を取り出し、イルミに見やすいように広げた。

 

「お前が俺のターゲットだからに決まってるだろう? イルミ坊っちゃん?」

 

 そこには"301"と書かれており、イルミは滝のような汗を流し始めていた。

 

 

 







久し振りに弟子に会った師が、稽古をつけてあげるだけの優しく暖かいお話。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。