休止 鋼鉄のレクイエム -双胴戦艦播磨出撃する!-   作:紅の1233

1 / 3
序章

序章

 

気付くと私は水の中に沈んでいた。

私の目の先は瑠璃色の水に包まれ、その先には白く輝く海面が見える。視界外から長い髪の毛が視界に入ってくる。右へ左へ、目の前を遮ぎる。

自分の髪なのに邪魔に思えてくる。

髪の間からまれに泡が一つ、二つと現れて海面に上がっていく。自分を嘲笑うかのようにひらりひらりと上に行く。

 

もう動きたくないです

 

そう彼女は思った。体は鉄のように重く、節々が痛い、まったく動かせそうにない。

 

私はこのまま幾つもの海流に当たり魚に弄ばれ砂に埋もれ一生を終えるのですか

それもいいかも知れないです

 

彼女は目を閉じ視界を無にする。

 

今までの苦痛からしたら幸せです

 

でも、過去に何を私はしたのでしょう?

もう過去の事は忘れてしまいました。今はこの時間を楽しむことに徹することにします。

彼女は安堵し永遠の眠りに入ろうとした。

 

 

『いけませんねそれでは』

 

 

突如頭の中に声が響く

 

なに?

 

彼女は突然の事に驚くが体は動かない、唯一動く目だけを動かして周りを見るがさっきと変わらない瑠璃色の世界だ。

 

『貴女には守る物があったんじゃなかったの?』

 

いきなりなんですか?

 

『なんの為に戦っていたか忘れたの?』

 

別に良いじゃないですか?私はこのまま一生を終えるんですから

 

すると視界が黒に覆われる。影からして向こうも女性だ。ちょうど私の上から誰かが私の顔を覗いてるような感じの影だ。その黒の中から赤の瞳が光っていた。

 

『それではよくないの、まったく世話が焼ける娘ね』

 

そう言って赤色の瞳が近付いてくる。

 

ヒッ!

 

私は一瞬怖く思ってしまい目を瞑ってしまった。

 

チュッ

 

その影は私の額にキスをした。

 

ッッ!!?

 

私の頭の中になにかが流れ混んでくる感覚が襲う、高熱の溶岩が流れるようなグツグツとした暑い感覚、猛毒を流しこんだような溶けるような苦しい感覚が来る。それと同時に私の脳に何かが形作られて、色々な物がフラッシュバックしてくる。

 

痛い思い出、暑い思い出、苦しい思い出、憎しみの思い出、怒りの思い出

 

思い出してくるのは艦船の記憶だ。

 

でも、なんで艦船の記憶なんですか?

 

その影は私からゆっくり離れる。

 

『それは貴女が“艦娘”になるからよ』

 

私には理解出来ない言葉だった。

 

艦娘?なんですそれは?

 

『ハァー』

 

ため息と共に目の前の瞳が目をつむる

 

『やはり今のでは駄目みたいね未完全すぎるでも、こうすれば』

 

目の前の瞳がゆっくり開かれる

 

『知識としての記憶から血肉となった記憶になる!』

 

開かれた瞳が紫色に変化し不気味に光始める。

 

自分の中でなにかが構成され始める。意識が飲まれる、そして私は思考が停止した。

 

気付くと私は海の上に立っていた。そして、私の体には艤装が装着されていた。

背中から展開される船体を模した装備、肩甲骨や腰に付けられた基盤、そこに取り付けられた50.8cm三連装の大型の砲塔六基とその隙間を埋めるように各所に設けられた20.8cm三連装砲。黒色の士官服と白地に赤と黒の線が入ったミニスカート、頭には電探と測距儀を模したカチューシャが付いていた。

 

これが私の体ですか

 

そう思っていると周りが騒がしくなり始めた。空を異形な航空機が飛び回り、異形の生き物達が現れる。

あれは?

『あれは深海棲艦、貴女の敵ね』

またあの声が頭に響く。

敵、じゃあ全て沈めなくちゃいけないですね。

『いえ、近くに味方がいるから誤爆されたらまずいわ。IFFを起動させて...』

私が一回瞬きすると見えている敵の横に説明書きのような物が表示され始めた。

おぉ、これは便利ですね。

『これから貴方は色んな仲間に会うわ、その時これが多いに役立つはずよ。それじゃあ私はこれで...』

声は聞こえなくなった。

周りを見ると敵はまだ状況が解らないのか様子を伺っている。

さぁて戦闘を前に見得を切らなくちゃ、えぇと私の名前はなんでしたっけ?

口元に手を当て考え思い出す。

「思い出しました!よおーし!!」

私は全砲口を敵に向けいい放つ

 

「双胴戦艦ハリマ!これより戦闘開始します!!」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。