休止 鋼鉄のレクイエム -双胴戦艦播磨出撃する!-   作:紅の3000

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第壱章『俊足の覚醒』前編

もう日がすっかり傾き辺りがオレンジ色に染まる中播磨は無人島にいた。

「よいしょ」

艤装を外し砂浜に降ろすと、ドスンと重い音と共に砂にめり込みその横に播磨も腰を降ろした。

「ふぅ...突然とはいえ、つい逃げてきてしまいました。」

播磨は体育座りになり水平線を膝越しに見る。

「どうしましょう...」

それは数時間前に遡る

 

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まだ青空が見えるなかそれを遮るように突発的に起きた大きな雨雲が現れる。その下には十二人の艦娘が隊列を組んで航行していた。その隊列の前を行く四隻の艦娘、片方二人は弓道袴を着た赤と青の空母、もう片方は同じ艤装をまとった戦艦、赤城と加賀、長門と陸奥だ。

「雲を出るぞ、これから敵との激しい戦闘が起こる。覚悟しろ!」

『はい!』

長門の渇に皆気を引き締める。

「索敵隊出ます!」

「こちらも発艦します!」

彼女達が雲の下から出て行くと赤城と加賀は急いで艦載機を発艦し始める。

索敵機の彩雲と護衛の紫電改が空を突き進む。

赤城と加賀は目を閉じ、彩雲から送られる景色を見ていた。だが、

「あら...」

「どうした赤城?」

「いえそれが...」

赤城は長門にどう返答しようか迷った。

「敵がいません」

加賀が先に言ってしまった。

「敵がいない?そんな事あるのか?」

赤城と加賀に送られた光景、それは敵の航跡によって白くかき混ぜられた海ではない、残骸やそこから漏れだした重油で黒く濁った海だった。

「あっ!」

加賀がなにかに気付いた。

「なにか見えたか?」

「二式水戦が見えます。」

加賀に送られてくる景色、それは彩雲の前をふらふらと飛ぶフロートを付けた零戦、二式水戦だ。二式水戦は彩雲の前を遮るかのように飛び回る。まるでこっちへ来るなと言ってるような光景だった。

「邪魔よ...」

そう呟くと彩雲は持ち前の大馬力を生かして二式水戦の前に出て一気に引き離した。飛んでいくと段々敵の残骸が増え始める。その残害の中央に人影が見えた。

「あれは...艦娘?」

 

「ふぅこれで作戦終了?当海域を脱出しないと」

ハリマは周りの深海棲艦の艤装の残骸を見ながら呟く。

「あれレーダーに反応...」

それは五感とは違う感覚

「ヤバいかなりの数!逃げなきゃ!」

播磨は反対方向に一目散に逃げ出した。

ド派手に水しぶきをあげながらその速度は40ノットを軽く越え、いや50ノットも越え始める。

頭に送られるレーダーの反応がどんどん小さくなっていく、だが航空機の反応は段々強くなって近付いてくる。

「どうしよ、あっ」

目線を先には雨雲が広がっていた。その下の海では雨が降っていた。

「仕方ないあそこに急げ!」

 

「ぜぇ...ぜぇ、なんで、追い付かないの...ぜぇ」

播磨を追い掛けようと派遣してきた駆逐艦娘達、息を切らしながら追い掛けるが、播磨との距離はどんどん離れていく。

播磨の速力はすでに50ノットにまで到達している。現状播磨に追い付ける能力を持った艦はいない。

駆逐艦達の遥か先では播磨は雨雲の下に入り見えなくなっていった。

「雲下に入られると流石に追跡は無理ね」

加賀は艦載機から送られてくる光景からそう判断した。

「周囲の残骸から判断するにかなりの数の深海棲艦がいた筈ですね。それを一隻で退けられる能力を持つ、もし味方になってくれればとても心強いです!」

赤城は目を輝かせていたが、陸奥は不審そうな顔をした。

「でも、逃げるってことは敵である可能性も捨てきれないわね。どうする長門?」

陸奥が長門の方を向く。

長門は不明艦が逃げていった方向を見ながら、各艦へ指示を出す。

「機動部隊と支援艦隊は帰投させろ、軽巡と駆逐で偵察部隊を作くり不明艦の捜索に向かわせろ。組み合わせは陸奥、頼めるか」

「ふふ、了解。」

陸奥は無線で軽巡洋艦と駆逐艦に召集命令を出す。

「赤城、あの二式水戦を此方に呼び寄せられるか?」

長門は上空を指差しながら言う。赤城か指差した先を見上げると、先程の不明艦から発艦したと思われる二式水戦が、紫電改に追いかけ回されていた。

「あれは不明艦追跡の鍵になるかもしれないからな」

 

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辺りがすっかり暗くなっているなか播磨は雨風を凌げそうな場所がないか、無人島内を歩き回っていた。

「やっぱり洞窟なんてそう簡単に見付からないですね。」

播磨は腕組ながら、その場で唸る

「むっー、やっぱりそこらの木を斬り倒して小屋を作るしかないですか。」

何を思ったのかその場で決めポーズをして、カメラがあるはずない場所にカメラ目線で

「播磨の突撃無人島生活ー!!なんつってる場合じゃないですね。とりあえず艤装を森の中に隠さないと...」

我にかえって播磨が艤装が置いてある砂浜方面へ向くと、目に様々な情報が送られてきた。

「艤装周辺に反応多数?数は四つ...」

木の影からこっそり顔を出すと私の艤装の周りをぐるっと囲む形で、四人の艦娘がいた。

「反応からして軽巡と駆逐艦が二席づつ...あれ?」

視覚に表示される情報に播磨は不思議に思った。

「艦名が付いてる?」

播磨は不思議に思った。

播磨のいた世界では超兵器といった代表的な艦には固有の名称が付いていた、だが大量生産された艦には特に名称がない。

殆どが何級の何番艦、といった感じで呼ばれていたからだ。

「天龍型に球磨型、暁型...天龍に木曾に雷と電、へぇ面白いですね」

「動かないで下さい!」

後ろから不意に声がかかる。

「振り向くくらいなら許して下さいね?」

ゆっくりと播磨は振り返る。

セーラー服を吹雪が手に持った12.7センチ連装砲を播磨に向けていた。

(兵装は12.7センチ砲と魚雷、いや今は陸上だから使えるのは砲のみ...)

播磨は冷静に吹雪の兵装を調べ、格闘すれば勝てなくない相手だと分析した。

だが、今の播磨は丸腰で出来ることなら無益な戦闘は避けたかった。

「貴方の指示に従います。それよりその砲を下ろしてくれますか?」

吹雪は砲を下へ向け

「やっぱり戦艦でも駆逐艦の砲は怖いのですか?」

播磨は少し笑って

「こんな近距離で狙われたらね、それに今は丸腰だから余計にね♪」

播磨の様子に緊張感が解けたのか吹雪の顔にも笑みが現れた。

敵意がないと読み取ってくれたようだ。

「じゃあ皆さんの所に一緒に来て貰いますけど」

「えぇ案内お願いしますね。」

「そういえば名前を聞いていませんでしたね、私は吹雪です!」

「私は播磨、宜しくね♪」

 

 

「こんなデカい艤装見たのは始めてだ」

「天龍見ろよこの砲の大きさ」

「すごいわ大和さんや武蔵さん以上ね」

「強そうなのです」

天龍、木曾、雷、電が播磨の艤装を見ていると

「天龍さーん、木曾さーん」

吹雪の声だ。

天龍と木曾は吹雪の声がした方へ向くと、吹雪と一緒に見慣れない艦娘が手を繋いで歩いてきた。

「おい吹雪、その隣の人はなんだ?」

「あっ探してた不明艦です」

天龍と木曾は血相を変え自身が装備する刀に手をかけた。

「吹雪そいつから離れろ!」

「敵かも知れないんだ!」

吹雪は播磨の前に立ちはだかって

「待ってください!播磨は敵じゃありません!」

「いやまだ俺は信じられない」

「天龍の言う通りだ、まだ武器を隠し持っているかもしれないからな!」

天龍と木曾の気迫に押され雷と電は横でオロオロするしかなかった。

「吹雪さん私に説得させて」

「えっでも...」

「原因は私なんです。せっかく私を受け入れてくれた吹雪さんの手を煩わせる訳にはいきません。」

播磨は吹雪の前に出る。

「まだ私は敵だと思っていますか?」

『そうだ!』

天龍と木曾は綺麗に声が揃った。

どうやら二人は仲が良さそうですね

「でも、私はもう敵意がある訳ではないですよ。天龍さん、木曾さん」

急に名前を呼ばれたことに一瞬不意をつかれた

「なぜそう言い切れる?」

天龍が念を押して聞いてくる。

「もし本当に敵意があったなら今頃私は吹雪さんを人質に取って、その艤装を付けて逃げていました」

『...』

二人は黙ってしまった

「それか頃合いを見計らって艤装を奪い、貴女方を撃滅することだって出来ました。」

先に口を開いたのは天龍だ

「確かにそれもそうだな」

「おい天龍!」

天龍は刀から手を離した。だが木曾はまだ刀に手を添えている。

「木曾、俺はアイツの言うことを信じるぜ。もしアイツが敵意を持っているなるなら、吹雪と手を繋いで歩いてこないぜ。それに...アンタは昼間に深海棲艦を全滅させたんだろ?」

「えぇそうです。」

あれ全滅?

潜水艦位残ってるかと思ったけど本当に全滅させてしまったようです

「俺達の敵である深海棲艦を滅したんだ、理由はそれだけで十分だろ。」

「ぐっ...」

木曾は刀から手を離しそっぽ向いてしまった。

その様子を見ながら、やれやれといった感じで天龍は頭をかきながら播磨の方へ向かった。

「さっきは刀を抜こうとしてすまなかった」

「良いですよ、敵か味方かよくわからないものを受け入れる時は大体こんな反応をしてしまうものです」

「名前は確か播磨だったよな、宜しく俺は天龍だ、ふふ...怖いか?」

「えぇ、刀を抜きかけた時は少しドキッとしました」

「そ、そうか!」

天龍はちょっとだけ得意気な感じになった。

可愛らしい方です

天龍に後に続いて、雷と電も来た。

「私は雷よ、宜しくね♪」

「電です。宜しくなのです」

「宜しくお願いしますね。雷さん電さん♪」

二人とも同型艦ってだけあってよく似てますね

なんて思っていると播磨の元へ木曾もやって来て

「木曾だ...」

といってまたそっぽ向いてしまった。

「木曾~、ちゃんと挨拶しないと駄目クマよ~」

天龍が球磨の物まねして囃し立てる、すると木曾は

「うるさいな!俺はまだ貴様の事を信じてる訳じゃないんだからな!」

膨れっ面になってまたそっぽ向いてしまった。

天龍と木曾のやり取りに雷と電、吹雪はケタケタと笑った。

播磨もその様子に小さく笑っていた。

 

 

播磨達のいる無人島から遠く離れた海域、水上を進む一隻の深海棲艦がいる。

重巡リ級だ。

だが、普通の重巡リ級と装備が違う。手に持った砲は三連装砲化され足には本来付いてるはずのない五連装魚雷発射を装着している。

さらに特筆するのはその巡航速度だ。今リ級は80ノット近い速度で航行していた。そんな高速で航行できる艦はこの世界にはいない、筈だった。

そして、リ級の目からは“紫色”のオーラが漂っていた。


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