神のみスピンアウト・ちいさなひみつのドクロウちゃん   作:猿野ただすみ

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ドクロウの担任、実は…。

※歌詞の使用が可能になったので、音符で伏せていた場所を訂正しました。


ドクロ3・はぐれ魂と魔法少女

夏休みも終わりを告げ、2学期の始業日。

ここ、市立舞島北小学校1年(おんぷ)組の教室では、担任の藤村先生がクラスの皆に挨拶をしている。そして。

 

「さて、今日からみんなと一緒にお勉強をするお友達が増えます。

さあ、入ってきて」

 

藤村先生の合図と共に、ひとりの少女が扉を開け教室の中へ入ってくる。

 

「はい。今日からみんなのお友達になる、黒野さんよ。黒野さん、自己紹介をして」

 

先生に促されてコクリと頷き、自己紹介を始める。

 

「……黒野、ドクロウです。……よろしく、お願いします」

「あー、ええと、緊張してるのかな?

うーんと、それじゃあ一番後ろの、窓際から二番目、……西原さんの後ろが黒野さんの席ね」

 

ドクロウは先生に頷き、席へと移動する。

 

「さて、それじゃあ、夏休みの宿題集めるわよー」

 

先生が声をかけると、生徒たちがドリルやら絵日記やらを教卓の上に置いていく。

 

「……うん、これで全部ね。

それじゃあ次の授業まで自由時間よ。ただし! あんまり五月蠅くしないことと、勝手に教室を出ないこと!」

『はーい!』

 

生徒たちは元気に返事をした。

 

 

 

 

 

「ねえねえ! ドクロウって変わった名前だね!」

 

突然、ドクロウの前の席に座っている、ツインテールをリボンで止めた女の子が声をかけてきた。

 

「……私の名前、変わってるの?」

 

ドクロウは小首を傾げて聞き返す。

 

「え? うん、変わってると思うけど…」

 

逆にビックリした表情になって答える少女。

 

「そう、なんだ。……私にはよくわからない」

「え、ええと…」

 

微妙な空気になり、なにを言ったらいいのか判らなくなる少女。そこへ。

 

「駄目だよ、こずえちゃん。変わってるなんて、失礼だよ?」

「あっ、まろんちゃん」

 

こずえと呼ばれた少女は、声をかけてきた少女の名を呼んだ。

 

「こずえちゃんは、自分の名前が変わってるって言われて、嬉しい?」

「え? ……ううん、微妙かも」

 

こずえは、ちょっと考える表情になってから答えた。

 

「それじゃあ、謝ろ?」

「うん。

あの、ドクロウちゃん。変わった名前とか言って、ごめんね?」

 

こずえが頭を下げて謝ると、ドクロウはふるふると首を横に振り。

 

「大丈夫。私は、気にしてないから…」

 

と答える。それを聞いて安心したこずえは。

 

「よかったぁ。

……ねえ、ドクロウちゃん。よかったら私と、お友達になって」

「あ、それなら私ともお友達になって欲しいなー?」

 

まろんと呼ばれていた少女も便乗する形で言った。

 

「……私、友達なんていなかったから、どうしたらいいのか判らないけど、それでもいいなら」

 

ドクロウの告白に、目を丸くするこずえ。

 

「お友達、いなかったの?」

「それなら、私達が初めてのお友達だね!」

 

危うく重たい方向へ話が進みそうになるところを、まろんが元気に吹き飛ばす。

 

「ほら、こずえちゃん。自己紹介しなきゃ」

「あっ、そうだった。

えーと、私は西原こずえです」

「私は中川まろん。今はお父さんとお母さんのお仕事の関係で、こずえちゃんのお家で居候中なんだ」

 

まろんの自己紹介に、ドクロウの表情が少しだけ動く。

 

「居候? 私も同じ…」

「わあ、そうなんだ。ねえ、どういうお家なの?」

 

まろんが尋ねると、ドクロウは静かに口を開いた。

 

「……ゲームばかりしてるけど優しいお兄ちゃん、ドジだけどお掃除とお料理が上手なお姉ちゃん、怒ると怖いけど普段はとっても優しいお母さん。そんな人たちが暮らす、明るくて賑やかなお家」

「……ドクロウちゃんは、その家族が大好きなんだね?」

 

聞いていたまろんが、優しく微笑みながら言う。

 

「……? なんで、そう思ったの?」

「あ、それは私でもわかるよ! だってドクロウちゃん、ほんのちょっとだったけど、微笑んでたもん」

「え…?」

 

こずえに言われ、内心で驚くドクロウ。

ドクロウは気づいていた。自分の感情が希薄だということを。

勿論、喜怒哀楽が無いわけではないし、条件によっては酷い恐怖心に駆られることもある。

しかし普段は、表情に出るほどの感情の起伏があるわけではなかった。それが、桂木家の人たちを語っていたとき、微笑んでいたと言う。

桂木家に身を寄せて、僅か数日。しかしドクロウは、確実に変化していた。

 

「どうしたの、ドクロウちゃん?」

 

黙り込んだドクロウが気になるこずえ。

 

「ううん、何でもない」

 

ドクロウは心配かけまいと、首を横に振る。その想いもまた、変化であることに気づきもしないまま…。

 

 

 

 

 

ふと。得も言われぬ違和感を感じた。

 

「なに…?」

 

同じ様に違和感を感じたのだろう、まろんが教室を見渡す。そしてふたりは気がついた。

 

「みんなが大人しくなってる」

 

ドクロウの発言を聞いて、まろんがハッとした表情になる。

 

「こずえちゃん!?」

 

見ればこずえは、机に突っ伏している。

 

「大丈夫、こずえちゃん!?」

 

まろんが駆け寄り声をかけると、こずえは気力のない眼差しを向ける。

 

「まろんちゃん、なんだろ。急にやる気が無くなっちゃって…」

 

よく見れば、周りの子たちも皆、こずえと同じような目をしている。

 

「大変!」

 

言ってまろんはケータイを取り出し、慌てて電話をかける。

 

「もしもし岡田さん、大変なの! 急に皆が、やる気をなくしちゃったの!!」

『やる気のない脱力系アイドル…、いけるっ!』

「いえ、いけませんから!」

 

素っ頓狂なことを言う岡田に、まろんはツッコミを入れた。

 

 

 

 

 

「それにしても新学期早々、まろんの学校は事件が起きて。あの学校、呪われてるんじゃないかしら?」

 

通話を切った岡田郁子は、左手を頬に当てながら言った。するとそこに。

 

「スミマセン。岡田さん、休憩を取ってもいいですか?」

 

まろんと顔立ちのよく似た、高校生くらいの少女が声をかける。

 

「あら、かのん。もう休憩?」

 

中川かのん。それは現在人気急上昇中のアイドルである。

 

「……そうね、それじゃあ30分くらい取りましょうか」

「ありがとうございます!」

 

かのんと呼ばれた少女は深々と頭を下げて、その場から立ち去っていった。

 

 

 

 

 

ドクロウは教室を飛び出した。理由は単純。この異変と同時に魔力、しかも古悪魔(ヴァイス)が放つ瘴気が流れ込んできたからだ。

 

(瘴気は…、上から?)

 

瘴気の流れを感じ取ったドクロウは階段を駆け昇り、屋上の扉を開け放つ。するとその上空には。

 

『みんなー、何にもしないで昼寝しようよー』

 

そんな、だらけたことを言うはぐれ魂がいた。その名は[ノビティア]。別のはぐれ魂[シャイアン]に虐められ、やる気をなくしてしまった存在である。

勿論そのようなことは、ドクロウには関係がない。ただ。

 

(あれを何とかしないと…)

 

それだけである。

意を決したドクロウが、ふたたび魔法少女になろうとした。が、その時。

 

---♪♪♪~…

 

どこからか歌声が聞こえてきて…。

ひとりの少女が上空に舞い踊る。

 

「オン・ステージ! かのん100%!」

 

それは、アイドルの中川かのんだった。

 

「みんなのやる気を奪うなんて許せない!」

『いいじゃないかー。朝から昼寝して、昼には散歩なんて、素晴らしいじゃないかー』

「人間には学校も仕事もあるのー!

『かのん100%』ー!」

 

---かのん100% 元気レボリューション

   大丈夫 どんな運命も かえちゃおう!…

 

かのんが歌うと、はぐれ魂は力が弱まっていく。そこへ。

 

「勾留ビンー!」

 

いつの間にか屋上にいた、半透明の羽衣を身につけた黒髪ポニーテールの少女が、大きなビンを使いはぐれ魂を吸い込んでいき。

 

「駆け魂勾留!」

 

ビンのふたを閉めながら彼女は言った。

それは、ドクロウの逃走を手伝ってくれた少女の出で立ちと似ており、そして。

 

「……お姉ちゃん?」

 

謎の少女の姿を見て、ドクロウが呟く。そう、その少女は桂木えりによく似ていた。

 

「え? あっ!」

 

ドクロウに気がついた少女が駆けよってくる。

 

「あなたがドクロウちゃんですね? ハクアや神にーさまから聞いてます。

私はエリュシア=デ=ルート=イーマ、駆け魂隊の悪魔です。

こちらでは桂木エルシィという名前で、神にーさまやえりねーさま…、桂木桂馬と桂木えりの母親違いの妹ということになってます!」

「エリュ、シア…」

「あ、エルシィでいいですよ。みんなからもそう呼ばれてますし」

 

そう言って、にっこりと微笑むエルシィ。

 

「それじゃ、エルシィお姉ちゃん」

 

そう言われた瞬間、エルシィは雷に撃たれたかのような衝撃を受けた。

 

「ド、ドクロウちゃん。もう一度私のこと、呼んでくれませんか!?」

「……? エルシィお姉ちゃん?」

「はうあっ!?」

 

エルシィは身悶え、顔を紅潮させる。

 

「し、知りませんでした。お姉ちゃんと呼ばれることに、これほどの破壊力があるとは…!」

 

その様子を見たドクロウが言う。

 

「言ってることが、お姉ちゃんとおんなじ」

「あ~、それはそうですよ。何しろ私とえりねーさまは、……は!? げふんげふん!!」

 

エルシィは誤魔化すように咳払いをする。それを訝しげに見ていたドクロウだったが。

 

「……そう言えば、さっきの人は?」

 

気がつけば、かのんの姿はいつの間にか消えていた。

 

「あ、えーと、かのんちゃんも色々と忙しいですから。

……あーっ! 私も用事があるんでしたっ!!」

 

そう言ってエルシィは背を向けるが、一度ふり返りドクロウに言った。

 

「ドクロウちゃん。かのんちゃんが魔法少女になって戦っていたのは、ナイショにしてください」

 

こくり

 

ドクロウが頷くとエルシィは安堵し、再び背を向けると空を飛んで去っていった。

 

 

 

 

 

ドクロウが教室に戻ると、そこは元通りの賑やかさを取り戻していた。

 

「あっ、ドクロウちゃん。どこ行ってたの?」

「あ…、うん、ちょっと」

 

こずえに尋ねられたドクロウは、曖昧な返事を返す。

 

「んー、まあいいや。

……あっ、そうだ。ドクロウちゃんはまだ知らなかったよね? まろんちゃんって、かのんちゃんの親戚なんだよ」

「……え、かのんちゃん?」

「そう! 人気アイドルの中川かのんちゃんだよ!」

 

そう言って、パスケースに入れたかのんのブロマイドをドクロウに見せた。

 

(……やっぱり。この人、さっきの魔法少女)

 

かのんという名前は、それこそさっきエルシィから聞いたばかりである。

ドクロウは親戚だというまろんをチラリと見る。

 

「ん? どうかした?」

「ううん、何でもない」

 

慌てて首を横に振るドクロウ。

 

(エルシィお姉ちゃんはかのんさんのこと、ナイショって言ってたけど…。まろんちゃんはこのこと、知ってるのかな?)

 

ドクロウは疑問に思う。そしてその疑問は、新たな疑問を生み出す。

 

(……エルシィお姉ちゃん、お兄ちゃんとお姉ちゃんの妹って言ってた。じゃあふたりとも、かのんさんのことを知ってる…?)

「はーい、みんな待たせたわねー。授業始めるわよー」

 

しかし藤村先生が戻ってきたため、ドクロウの思考はそこで中断せざるをなかった。




桂馬「桂木桂馬…」

えり「桂木えりの…」

桂馬・えり「あとがき代わりの座談会コーナー☆NEXT!」

えり「……って、今回私たち、出番がありませんよ?」

桂馬「まあ、ドクロウが主役だからな。向こうのボクは静かにゲームが出来ていい、……というわけにもいかないんだよなー」

えり「一部を除いて、原作の攻略はちゃんと起きるんですよねー」

桂馬「夏休み明けは、……七香か」

えり「ドクロウちゃんとのエンカウント、必至ですね」

桂馬「ここで敢えて言わせてもらおう。
リアルはクソゲーだ!

えり「向こうのにーさま、女神さんたちのせいで難易度上がってるんだか下がってるんだか…」

桂馬「事情を知っていて協力的だが、ストレスは半端ないらしい」

えり「ここで1話目に繋がるんですねー」

桂馬「そういうことだ。
さて、裏話もこれくらいにして、解説を始めるぞ」

えり「はい。ええと、まずは…。藤村先生、ですね」

桂馬「ああ、藤村だな。無論、あの藤村だ。
どうやら、舞島東から移動になったらしい」

えり「随分近くに移動になりましたね?」

桂馬「おそらく白鳥家か藤村組、あるいは両方の圧力があったんだろ」

えり「藤村組って、それじゃあ元の作品と同じ設定になるんでしょうか?」

桂馬「舞島出身ってこと以外は、大体同じみたいだな。勿論、あの作品のような出来事は無いが。名前も『藤村大河』にするそうだ」

えり「タグ、増やさないといけませんねー。
ええと、次は…。こずえちゃんとまろんちゃんですね」

桂馬「このふたりに関しては、神のみ読者および視聴者には、多く語る必要もないだろう」

えり「設定は、大体マンガ版から来てるみたいです。もちろん、この世界独自のものもありますけど」

桂馬「まろんの人生が、この世界独自のものだからな。
そうそう、こずえの苗字は連載時のかのんの苗字、西原から来ているそうだ」

えり「巻末四コマでネタにされてた、あの苗字ですか」

桂馬「そして事件が起きて、はぐれ魂の登場だな」

えり「[ノビティア]と[シャイアン]。[シャイアン]はマンガ版に出てきたはぐれ魂ですね。それに虐められていた[ノビティア]って、あのネコ型ロボットが出てくる作品ですよね!?」

桂馬「[シャイアン]自体がそこから来てるみたいだからな。
そして、『朝から昼寝して、昼には散歩』は、あの妖怪アニメのOPネタだな」

えり「かのんちゃんのツッコミもそれでしたね」

桂馬「そしてようやく、エルシィの登場だ。
ドクロウのお姉ちゃん呼びに対する反応は、えりのそれと同じものだが…。重要なことをポロッと言いそうになってるな」

えり「え~と、その方がエルシィさんらしくて安心します!」

桂馬「相変わらずのポンコツぶりってわけだな。
そして最後は、かのんとまろんの間柄が説明されて、ドクロウが疑問を抱えるわけだ」

えり「……ええっと、にーさま。何だかヴィンテージ、出てきませんね?」

桂馬「ヴィンテージはまだ、ドクロウの居場所を特定出来てないからな」

えり「……そーなんですか?」

桂馬「唯一特定していたフィオーレは、ハクアが勾留したままだからな。しかも下っ端だから、誰もいなくなったことに気づいてない」

えり「……こっちでも、フィオの扱いヒドいなぁ」

桂馬「さて、大体こんなとこか」

えり「そーですね。次回は多分、七香さん攻略の話題が入るんじゃないかと…」

桂馬「タイミングがモロかぶりだからなー。
そんなわけだから、次回も忘れずにロードしてくれ」

えり「つーづーく!」

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