神のみスピンアウト・ちいさなひみつのドクロウちゃん 作:猿野ただすみ
七香から駆け魂を追い出した翌日。舞島北小学校1年
ふわあぁ
「わあぁっ!?」
「体が、物が浮かんでるっ!」
「上手く動けない!?」
突然、校舎内のあらゆるものが浮かび上がる。何とかしようとジタバタしても、その場で手足を動かしているだけで移動が出来ない。
「岡田さん、タイヘン! 学校中のものが浮かびあがってるのっ!」
『浮かび上がる…。空中アクロバティックをするアイドルユニット、いける!』
「そうじゃなくって!」
まろんはまたもや、電話相手とどうしようもない会話を繰り広げる。
そんな中、ドクロウは。
(……向こうの方から、魔力を感じる。
でもこれ、瘴気ではない?)
そう思考したドクロウは、壁を蹴ったりしながら移動して、廊下の窓から外を見る。
(出所は、体育館…、の屋根の上?)
さすがにドクロウでも、そこが変わった場所なのはわかっていた。それでも放っておくことは出来ないと、ドクロウは急いで窓を開けて飛び出す。
すると、途端に身体は地面に引っ張られる。1階でなかったら、大けがをするところだ。
(影響は、校舎の中だけ…?)
体育館の裏までやって来たドクロウは、魔法少女になった時の感覚を想い描き、魔力の発動を試みる。すると、自分の身体を駆け巡る魔力を感じ取ることが出来た。
しかし、あの時のようには飛ぶことが出来ない。とはいえ、魔法少女への変身は、いざという時のためのもの。
屋根の上の何者かがどういう存在かわからない今、まだ変身するべきではないと、頭ではなく心が訴えていた。
そこでドクロウは、一杯までしゃがみ、勢いよくジャンプすると同時に推進力として魔力を放出した。それは驚くほど上手くいき、ドクロウは体育館の屋根に転がるように着地した。
年の頃なら16、7。露出度高めの黒を基調とした衣装の、長い金髪の右側をサイドアップにした、キツめの美少女だ。左肩には、小柄なフクロウが留まっている。
「あら、かのんじゃないのね」
少女が目を細め、ドクロウを見下ろしながら言う。
「かのん、さん? あなたはだれ? 学校に何をしたの?」
「フフ…、私はかのんのライバル、魔法少女のベル!
世界征服の足掛かりとして、まずはこの学校の重力を奪ってやったわ!」
ドクロウの疑問にババン! と答えるベル。
『ベル様の魔力では学校の校舎が精一杯だけど、本当は日本中の重力を奪ってるところだぞ!』
「黙れフクロウ!」
余計なことを言う
「そこまでよ!」
「現れたわね」
屋根の上に舞い降りる、ひとりの少女。
「オンステージ・かのん100%!」
「遅いわよ、かのん! ずっとお子様の相手しなきゃならないかと思ったじゃない!」
「お子様? って、ええっ!?」
ベルの傍でペタリと座るドクロウに気づき、思わず声をあげるかのん。
「……あー、えっと、危ないからとりあえず、離れてもらえるかな?」
困ったという表情でかのんが言うと、コクリと頷き、ドクロウは移動する。
「……ベルは邪魔しないんだね?」
「……悪役なのは自認してるけど、さすがに小さい子を戦闘に巻き込みたくはないわよ」
どうやらベルは、悪役ではあっても悪人ではないようだ。
「それじゃあ改めて、いくわよかのん!!」
「さっきはすごかったねー。宇宙に行くと、きっとあんな感じなんだろうな」
「そうだねー」
「……」
昼休みも、もうすぐ終わり。ようやく落ち着いた教室で、こずえとまろんが仲良く話し、ドクロウはそれを黙って見ている。
結局屋上の戦いは、かのんが歌う「LOVE KANON」で勝負がついた。
そのあと。
---ドクロウちゃん、だね。話は聞いてるよ
---ドクロウちゃん、私が下まで降ろしてあげる
---じゃあね、ドクロウちゃん
こんな感じで、殆ど会話をすることもなく、かのんとは別れてしまった。
「ドクロウちゃん、どうしたの?」
「何か考え事?」
こずえとまろんが、ドクロウに尋ねる。
「え、あ…、何だか変わったことが起きる学校だと思って…」
かのんのことを話せないドクロウは、この間のはぐれ魂が起こした事件や今日のことを言った。
「あ、そうだね。夏休み前にも、みんながオンチになっちゃったこともあるし」
因みに、その事件を起こしたはぐれ魂は、ノビティアを虐めていたシャイアンである。
「ホントにね? 岡田さんだったらこっそりと、『あの学校、呪われてるんじゃないかしら?』とか言ってそう」
ノビティアの時に言っていた。
「……岡田さんって?」
「あ、岡田さんはかのんちゃんのマネージャーさん。親戚の私のことを気にかけてくれる、優しい人だよ」
ドクロウの疑問に答えるまろん。
補足を入れると、マネージメント能力に優れた有能な女性だが、それ故に思考が空回りし、ポンコツになるときがある。まろんとの受け答えが、まさにそれだ。
ガラガラ
「みんなー、授業始めるわよー」
藤村先生がやって来て、話はここまでとなった。
翌日。給食のお昼の放送で音楽を流し始めた、その時。突如として曲が途切れてしまう。
『あれ…、あれ…!?』
校内放送から、放送委員の戸惑う声が流れてくる。
「……どうしたんだろ」
「なんか様子がおかしいよね」
こずえとまろんが訝しんでいるその横で、ドクロウは既に異常を感じ取っていた。
(これ、昨日とおんなじ魔力…?)
ドクロウは昨日、体育館の屋根の上で出会った魔法少女を思い出す。
その時、屋上から激しい曲と歌が聞こえてきた。途端に、クラスメイトと先生が脱力して机に伏せてしまう。
「こずえちゃん!?」
「まろんちゃん…、体に、力が入らないよ…」
それを聞いたドクロウは、教室から飛び出して屋上へと向かう。当然そこにいたのは。
「あら、昨日の子じゃない。あなた、どうして私の力が効かないの?」
「そんなの、知らない。そんな事より、みんなを元に戻して」
「イヤよ。これが私の、世界征服への足掛かりになるんだから!」
昨日と同様、ババンと答えるベル。
『そんなこと言って何時も失敗するけど、今回は本当に凄いんだからなっ!』
「余計なこと言うな、フクロウ!」
そしてこの受け答えも、昨日と同じパターンだ。
「でも、すぐにかのんさんが…」
「残念だけど、それもないわよ。何しろこの辺り一帯の、私以外の歌や曲を奪ってやったもの」
「え…?」
ドクロウには、ベルの言ってる意味がわからなかった。
「あら、知らないの? 私やかのんは歌の力で変身しているの。だからこの範囲内では、かのんは邪魔できないって訳」
ドクロウは、使い魔が「今回は本当に凄い」と言ってた意味を理解した。確かにかのんが来なければ、ベルがいい様に出来てしまう。
「……それなら、私が何とかする」
しかし、ここには今、例外がある。
「何とかするって、あなた如きが私に…」
「魔法少女は、あなたやかのんさんだけじゃない」
そうベルに言い返すとドクロウは、心に浮かんだワードを口にした。
「天魔転装!」
その瞬間、ドクロウの体が光に覆われ、それが収まったときには13~14歳くらいの、エプロンドレスに似た衣装に包まれた少女が立っていた。
「魔法少女プロセルピナ!」
「な、あなたも魔法少女なの!?」
『ベル様! あの少女の力、ベル様やかのんとは、また違ったものみたいです!』
「急に普通の、魔法少女のサポートキャラらしいこと言ってんじゃないわよっ!」
ベルも使い魔も、ドクロウの突然の変身にてんやわんやである。
「……くっ、でも倒してしまえば同じことよ!」
言ってベルは、マイク型のステッキを口許まで持ってくる。
「
---♪♪♪~
ベルの歌が魔力の衝撃波となって、プロセルピナに襲いかかった。弾かれ屋上から飛び出したプロセルピナは、慌てて飛行魔術を発動させる。
(……強い。あのフィ…何とかさんも強かったけど、この人は戦い慣れてる感じ)
三流悪役っぽい言動が多いものの、毎回策を弄し、かのんと渡り合ってきたのだ。技能云々は別にしても、経験的な強さは充分にあって当然だろう。
「
二曲目を範囲攻撃で発動するベル。威力は落ちるものの、確実に当てに来る。
(……くっ! 私は、戦うための技術も経験もない。……それなら)
「偽・証の鎌!」
プロセルピナは魔力で証の鎌のレプリカを創り、衝撃波を切り裂きながら一直線に、ベルへと突っ込んで行く。当然全ての衝撃波を無効には出来ないが、もとよりダメージは覚悟の上、そんなのはお構いなしだ。
「な、ちょっ…!?」
目前まで迫り、鎌を消して右手を振りかぶり。
「
再び心に浮かんだワードを口にし、拳を振り抜く。拳自体は当たっていないが、その魔力が隠った衝撃波によって、今度はベルが吹っ飛ばされてしまった。
「いったぁ…」
『マズいです、ベル様! あの攻撃力は、ある意味かのんと戦うのよりもヤバいです!』
使い魔がそう進言している傍から、再びプロセルピナが接近し。
「
「きゃあっ!」
「
「ひあっ!?」
「
「ノオオオオッ!」
吹き飛ばしては、ベルが体勢を立て直す前に詰め寄り再び吹き飛ばす、という格ゲーのハメ技の様な攻撃を繰り返すプロセルピナ。
(技術も経験もないなら、攻撃の隙を与えなければいい…!)
そう。これはあくまで、足りない部分を補うための戦法なのだ。結果、格ゲーで対戦相手に嫌われそうな状況になってはいるが。
そんな訳でこんな事を繰り返すうち。
「う…、き、今日の所は、負けを」
「
「へぷぅっ! 喋ってる途中で攻撃すんじゃない!」
ベルに突っ込まれ、攻撃を止めるプロセルピナ。
「改めて、今日の所は負けを認めてあげるわ! 憶えてなさいっ!」
そう捨て台詞を残して、ベルは
変身を解いたドクロウが教室に戻ると、みんな平静を取り戻し食事を再開していた。お昼の放送では音楽も流れている。
「あ、ドクロウちゃん、お帰りなさい」
「ドクロウちゃん、どこ行ってたの?」
まろんが声をかけ、こずえが尋ねる。
「えっと…ちょっと…」
聞かれたドクロウは言葉を濁す。この時ドクロウは、桂馬に言われた言葉を思い出していた。
---ドクロウ、魔法少女の正体は隠しておけ
---敵にバレたら変身前に狙われるかも知れないし、教えた相手にも危害が及ぶかも知れないからな
その説明になるほどと思ったドクロウだったが、それでは先程の変身は迂闊なものだったと言う事になる。しかし、何故かドクロウには、ベルにはバレても大丈夫だと、そんな気がしたのだ。
「ほら、ドクロウちゃん。今日は…今日も?変なことが起きて時間も少なくなったし、早く給食、食べちゃおう」
「……うん」
まろんに言われ、ドクロウは席に着き、残りの給食を食べるのだった。
お昼休み。給食の時間が押して短くなったものの、ドクロウはこずえとまろんに連れられて校庭へと出る。
「えっと、何して遊ぼうか」
どうやらこずえには、これといった目的はなかったようだ。
「うーん、そうだねー…」
まろんが思案に耽っている。と。
「いたわね、まろん!」
突如、まろんに向かって投げかけられた声。
「この声は…」
少し困った表情で振り返るまろん。こずえとドクロウも遅れて振り返る。
そこにいたのは、長い金髪の右側をサイドアップにした、キツめの可愛い女の子。
「……誰?」
「この子、となりの
(……ベル?)
こずえの説明を聞いて、考え込むドクロウ。
(魔法少女のベルさんと同じ名前? 顔も何だか似てる)
ドクロウはベルの顔をじぃっと見つめた。
「ち、ちょっと、何よあなた!?」
ベルは少し身を退きながら尋ねる。
「……ううん、なんでもない」
まさか魔法少女の事を口にするわけにもいかず、ドクロウはあっさりと退いた。
「……まあ、いいわ。あなた、名前は?」
「……ドクロウ。黒野ドクロウ」
ドクロウが答えると、ベルは顎に手を当てながら、ふぅんと頷く。
「そう。それじゃあドクロウ! 今日からあなたもライバルよ! 覚悟してなさい!!」
そう高らかに言うと、踵を返して立ち去っていった。
「な、何だったんだろ?」
こずえはキョトンとして呟く。
「……ベルが私以外をライバルって言うなんて。ドクロウちゃん、何かしたの?」
「……? さあ?」
まろんの問いに、ただ首を傾げるばかりのドクロウだった。
歩美「高原歩美と…」
メルクリウス「メルクリウスの…」
歩美・メル「あとがき代わりの座談会コーナー☆NEXT!」
歩美「……って、ホントめちゃくちゃ久しぶりじゃない!?」
メルクリウス「作者が【めがみ~な】を書いた勢いで、こちらも書き上げたみたいだね」
歩美「勢い任せって、まあ、いいけど…」
メルクリウス「さあ、それよりも説明をさっさと始めよう」
歩美「なんか、珍しくやる気があるわね? こっちも、まあいいけど。えっとまずは…、いきなり【マジカル☆スター かのん100%】から始まったね」
メルクリウス「これは前回の座談会で告知したとおり、鈴印・コネクト事ベル・マーク・アツメ登場回だからね」
歩美「ベルマークで鈴印、
メルクリウス「そこは捻りすぎても意味がないからね。ともかく、これでドクロウとベルが初顔合わせしたわけだ」
歩美「次は…、おかしな事が起こる学校だって話から、かのんちゃんのマネージャー談義に入ったね」
メルクリウス「まあ、如何にポンコツか、というところに行き着いたが」
歩美「アレがなければ本当に有能な人だって、かのんちゃんに代わって一応フォローはしとくよ?」
メルクリウス「そして翌日、再びベルの襲来だ。今度はかのん対策で音楽を奪い、更にみんなの体の力を奪っているな」
歩美「で、予告通りドクロウが魔法少女に変身。でもベルの方が戦い慣れしてる…って、引き合いに出されたフィ何とかさん、扱いヒドくない?」
メルクリウス「歩美のそれの方が非道いと思うが。ドクロウの場合は耳にした程度だから、うろ覚えだっただけだね。歩美のそれとは違うよ」
歩美「う、正論で返されるとは思わなかった。……と、とにかく続きだけど、[偽・証しの鎌]ってどっかの投影武器かっ!…て感じなんだけど」
メルクリウス「パロディであるのは作者も認めてるよ」
歩美「まったく…。それでドクロウの技[
メルクリウス「因みにこの技、作者の別作品【特異点F ~元・ポンコツ悪魔の人理修復~】のディアナが使っていた、[
歩美「使い回しかよっ!」
メルクリウス「いや、もうひとつあった。力の源が魔力か理力かの違いがある」
歩美「神か、悪魔かの違いかぁ」
メルクリウス「本来は[
歩美「やっぱり意味ないじゃない!」
メルクリウス「まあ、それは置いておくとして、お昼休みにようやく登場したね」
歩美「無視されたっ!? ……まあ、いいけど。えっと、ベル・マーク・アツメの事だね。でも、正体隠す気あんのかな?」
メルクリウス「魔法少女のベルは、その正体は本名非公表のアイドル、ベル。この作品のオリジナル設定だけど、これで問題は無いはずだ」
歩美「うう、なんか釈然としない」
メルクリウス「リアルは所詮、クソゲーだから」
歩美「桂木みたいなこと言うなっ! ……もう、いいよ。えっと、それで次回だけど、まだハッキリと決めてないって」
メルクリウス「[攻略]に介入するか、[はぐれ魂]にするかで迷ってるらしいね。ただ、[攻略]の方は原作とは違う、代替ストーリーらしいけど」
歩美「女神全員、復活してるからね。とにかく、また時間が空くのは決定みたいだね」
メルクリウス「この作者では仕方がないだろ」
歩美「まあね。それじゃあ皆さん、またしばらくかかると思いますが、次回もまた御覧ください」
メルクリウス「……よし、これで心置きなく惰眠をむさぼれる」
歩美「やる気があった理由はそれかーーーっ!!」