漆黒が嗤う 作:運命の奴隷
また、このレイヴェルは
あぁ、最近の悪魔にはいろいろと欠けてしまっていると、そうは思わないか。いや、悪魔に限った話じゃあなかったか。天使だろうが堕天使だろうが、人間だろうが変わらない。みんながみんな、足りない奴は足りてないし、持ってる奴は持っている。そういうモンだ。
ホント、見当違いも甚だしいよなぁ。
種の繁栄だとか魔界の未来だとか。冗談も過ぎるとさすがに笑えないぜ。そんなものは人間が考えていればいいことだ。
戦も遠く自身の存在価値も忘れちまったのか。
悲しいことだ。魔王なんかに至っては他人の猿真似で魔界をどうにかしようとしていやがる。
そもそも、だ。『魔界の未来』なんてものを考えている時点で悪魔としてはどうかしているんだよなぁ。
悪意と欲望の塊が、何をどう弄り回せば『未来』なんてモンを語れるのか教えてほしいな。邪道なんだよそんなものは。
より良い社会を作るだとか、子供たちが安心して過ごせるようになんてのは、悪魔の在り方として間違っている。
一度この身は悪魔であると定義されたのだ。最期の一瞬まで悪魔として生きるのだ。我々にそれ以外の生き方は必要ない。
欲望のままに生きるのだ。それこそが悪魔としての誇りと知るがいい。
本能に忠実であれ。その先に、未来など無用の長物。他人を慈しむだなどと寝言を言いだした時、既にソレは悪魔としては終わっているのだ。
そうだ。
今の奴らには、圧倒的に『欲望』というものが足りていない。無論、それを為しえるだけの『覚悟』もだ。
残念なことに俺の同胞は、種の滅亡なんていう些事にビクビクしているのだ。
まるでウサギかなにかみたいに、怯えて、逃げて、生き延びることなんて考えていやがる。
違うだろう。
俺たちは肉を貪る強者のハズだ。
それが一体どうしてこうなってしまった。一体なにに怯えているって言うんだ。
滅んだからなんだ。俺たちとなにか関係があるのか。そもそも子孫なんてものを作ったとして、テメエらはなにをさせたいんだ。
何かを残すことに、そこまで懸命になれる理由を教えてくれ。んなものに意味はあるのか。俺たちに得はあるのか。そこになんの歓びがある。
.....意味も解っていないのに、行動だけをしようとするから成功しないんだよ。
アイツらはそこのところを理解できてないんだ。
そりゃあ成功するわけないだろう。
本来なら俺たちに必要のないものを無理矢理つくった挙句、それを末永く未来までなんて。宴会のかくし芸でももっとマシなことするぜ。
「まあ、コイツ造った奴は相当なモンだと思うけどな」
「どうしてですか?」
「だって考えてもみろ!」
この大地も、海も。全てを自分の作った規則で縛り上げて統率する。
全部が自分のシナリオで動くお人形だ。どれだけ生活を良くしようと、上の地位を目指そうと、手のひらで踊ってるマリオネットに変わりはない。
あぁ、最高だろう。
全部が自分のものだ。新しく出てきた考え方も、たとえ殺し合いでさえも、全ての原点は自分だ。
「こいつを造った奴は、まるで自分が魔界全てが自分のモンにでもなった気分だったろうさ」
「それは.....わたくしにはスケールが大きすぎてよく分かりませんわ」
「自分の作った演劇を見てるのと同じだ。コレを観てた奴は愉しくて仕方なかっただろうな」
「悪趣味ですわ」
「そう言うな。悪魔としては限りなく正しい在り方だと思うぜ。だって世界ひとつ分作っちまうんだからな」
「まぁ、男の方は好きそうですわね。そういうの」
「俺を見て言うな。まるで俺が趣味悪いみたいに聞こえるだろ」
「あんな考えが出てくるだけで、間違いなくそうだと思いますけど」
「ガラじゃねえんだよ、人の上に立つなんてのは。だいたい、見てるだけなんて飽きるだろ」
「貴方様がそういうひとなのは知っています。言ってみただけですわ」
人の作ったものをただ見るだけなんて、詰まらないにもほどがあるだろう。
何か一つでも、そこに価値を見出せなくては。それは『ない』のと何ら変わりない。
歓びがなければやっていけない。あぁ、なんせこの身は悪魔なのだから。
「で、お前は自分の兄貴についてなくてよかったのか?」
「なにが悲しくて兄の縁談に立ち会わないといけないのでしょう。そんなことより、こうして貴方様と過ごす時間の方がよっぽど大切だと思いませんか?」
「それでしてることが畳でゴロゴロしてるだけなんだから、なんだかなぁ」
「いいではないですか。レイヴェルはこうして貴方といるだけで幸せですよ」
ハァ.....暇つぶしにライザーの縁談がどうなってるかでも覗き見するか。
やっぱり他人の恋愛事情ってのは見てて楽しい。
「一番楽しいのはやっぱり野次馬なんだなって」
「それはわかります。結果がどうなろうと実害もありませんし」
さてさて、あいつらは今どんなことになってんのかね。
しかも相手はあの我儘姫だ。こいつはもう昼ドラ展開間違いなしだな。
〈ライザー視点〉
俺は今、とんでもなく面倒な状況に出くわしている。
親が勝手に決めた婚約についてリアス・グレモリーと話し合うつもりでいたのだ。いたのだが.....。
まったく話が通じない。それはもう全然だ。
「ライザー!私はあなたと結婚するつもりはないわ!」
俺もねえよ。なにが悲しくて世間知らずの我儘姫なんかと結婚しなきゃならんのだ。
そもそも俺は魔界でナンバーワンホスト目指してるんだ。所帯なんか持てるか。
「そうだ!テメエなんかに部長は渡さねえ!!」
「もぐもぐ」
「小猫ちゃん。あんまり食べ過ぎるとイッセーくんと部長の分がなくなっちゃうよ」
「あらあら」
いやリアス嬢の眷属の半分ぐらいが、俺の手土産として買ってきた崎〇軒シウマイ食ってるんだけど。
大丈夫か、コイツら。なんかちょっと同情しちゃうぞ。
「そう縁談だ。俺は縁談破棄の相談をしにきたんだ」
「.....信用できないわ」
「きっとなんか裏があるに決まってる!!」
「あ、食べ終わってしまいました」
「ちょっ!だから言ったじゃないか。僕もあんまり食べれてないのに」
「皆さんの分のお茶を淹れましたよ。ライザーさんも一杯どうぞ」
突然湯吞を差し出された。
「あ、ありがとうございます。崎〇軒、もう一箱あるんで良かったら食べてください」
ほんとは帰ってから眷属に渡すつもりだったけど、なんか好評だったみたいだしあげちゃってもいいか。
帰りに東京バ〇ナでも買えばいいだろう。
それにしても.....俺ってなにしに来たんだっけ。旅行に来たんだったか。
「ライザー様。縁談の話です」
「あ!そうだった。グレイフィアさん、申し訳ない」
ヤバいヤバい。後半ののほほんとした空気のせいで、危うく本来の目的を忘れるところだった。
お土産渡して帰るだけになるところだったぜ。
「ライザーあなた、本当に話をする気があるの!?」
「そうだそうだ!!」
「悪かったよ。いや、ホント他意はないんだ」
いちいち嚙みついてきて面倒にもほどがあるんだが。
もうヤダ魔界に帰りたい。っていうかなんで俺がこんなことしなきゃあいけないんだよ。親が決めたことだろ。親同士でなんとかしろよ。
「あぁ、それで婚約に関することなんだが.....」
「私は絶対にイヤよ!!」
「テメエに部長は渡さねえからな!!」
.....なあ。俺はもしかして時間を巻き戻っているのか。
そうとしか思えないぐらいに話が嚙み合わないんだが。ひとが下手に出てりゃあ調子乗りやがって。
いや落ち着くんだライザー。こんな奴らに怒っちまったら、それこそこいつらと一緒じゃねえか。
大丈夫だ。俺は冷静だ。そう、冷静に冷静に。激情にかられるな。自分をコントロールしろ。俺ならできる。
よし!
「もうこの際だからハッキリと言わせてもらう。俺はリアス、君と結婚するつもりはない」
「.....どういうことかしら」
「どうもこうもない。俺はお前と結婚しない。魔王様に誓ってだ」
まだ訝しげではあるが、何も言わなくなったな。
よし、取り敢えずは第一段階クリアだ。あとはもうグレイフィアさんに任せようかな。俺から説明してたらどんだけ時間が掛かるかわかったもんじゃない。
「とは言っても俺たちはお互いに家とか、考えなきゃいけない事もたくさんあるからな。サーゼクス様が良案を提示してくれた。俺はえに乗るつもりだ」
「.....そう、わかったわ。後のことはグレイフィアから聞く。あなたはもう帰ってちょうだい」
「そうだ!帰れ帰れ!!」
「またお土産持ってきてください」
「今日はありがとうございました」
「リアスが申し訳ありませんでした」
「それじゃあ、俺はこれで。グレイフィアさん、後は頼みます」
帰り道の足取りは羽のように軽い。
いやぁ~!面倒ごとが片付いた後ってのは、こうも晴れやかな気分になれるのかね。
しばらく観光してから帰るとするか。温泉でも行こうかな。この疲れを癒したい。
〈ライザーsidout〉
「なんだ。思ったよりも状況が穏やかだな」
「まあ、暇つぶしならこれくらいが丁度なのでは?あまり濃いものだと見ているこちら側も疲れますから」
「それにしてもあの赤髪、まるで話が通じてなかったぞ。あそこまで突き詰めると逆に面白いな」
「自分が話をしたいとは思いませんけれど。気が立って焼いてしまいそうですわ」
「その点、ライザーは流石と言うか。あんなのと話して平静を保っていられる奴は魔界にはそういない」
「貴方様の場合、気付いた時には蛇の餌になっていそうですわね」
「それはある。いや、ほぼ間違いなくそうなるな」
「やめたほうがいいですわ。きっとお腹を壊してしまいます」
「馬鹿野郎。悪魔一匹で腹壊すとか、流石に笑えねえぞ。まあ、味は期待できそうにないけどな」
「それもそうかもしれませんわね。あ!そういえば、覗き見に使った蛇はしっかり回収しましたか?」
「問題ない回収は終わっている。まあ、放っておいても誰一人として触ることすら不可能だが」
影の中に帰ってきた蛇を見せてやると、レイヴェルは満足そうに頷いていた。
まったく、心配性なことだ。コイツを完全に理解できる者など、俺以外に存在しないというのに。
「そういう問題ではありませんわ!回収が遅れれば、またあのウロボロスがここに来ます」
「あ~なるほど。確かにそれはダルいな。本当に面倒だ」
「でしょう!だからこそ、今後も蛇の回収は迅速にお願いしますよ」
「わかったよ。なるべくな」
あぁ。確かにオーフィスと関わり合いになるのは面倒だ。
なにが面倒って、機嫌が悪くなるレイヴェルを抑えるのが一番面倒だ。レイヴェルは俺に近づこうとする女には容赦ないからなぁ。
ま、処理できないオーフィスが相手じゃあストレスも溜まるだろう。俺もそんなに奴への好感度は高くないしな。丁度いいと言えばその通りなのかもしれん。
「そういえば話は変わりますが、近ごろ赤トカゲの転生先が分かったのでしょう。貴方様は動かないのですか?」
「.....どうしよう。まあ暇だしなぁ。あの子たちで遊ぶのもまあ、アリかもしれないけど」
「何かあるのですか?」
「うん、まあ.....なんていうか。今代の赤龍帝ってさ、あの我儘姫の眷属になったらしいんだよ」
正直なところ、好奇心と同じくらいには面倒くさいとも思っている。
どれぐらい面倒かってオーフィスにまとわりつかれるぐらい面倒くさい。いやまあ、三勢力のいざこざとかも見れて愉しいとは思うんだが、どうにもなぁ。
「別に直接かかわるわけでもないんですから、そこまで重く考えなくてもいいのでは?」
「でもあんまり遠い位置につけてると見たいものも見えないんだよなぁ」
「それでは高校に入学してみてはどうでしょう!?わたくしは一年生、貴方様はなにかの担当教師として」
「俺は構わんがお前はいいのか。あそこ元女子高だぞ」
「心配ありませんわ。さすがに有象無象に嫉妬するほど、器の狭い女のつもりはありません。それに、万が一貴方様に手を出すような蟻がいても、焼いてしまえばいいのですから」
不安だ。すごくすごく不安だ。
レイヴェル、敵判定するの早いからな。少し話しかけただけで消し炭一歩手前までいった奴とかいたし。
こんなんで高校とか行ったりして本当に大丈夫か。いやダメだろ普通に考えて。
いや、そもそもだ。
「レイヴェル。俺は表舞台には立てないんだが」
「同位体ですか。わたくしはそこまで気にしなくてもいいように感じますが」
「大事なことだぞ。自分と『同じ』存在っていうのは、そうあっていいモンじゃない」
「でも、実際にあうとも限りませんよ。気に留めて動きさえすれば問題ないのでは?」
「駄目だな。相手はアレだぞ。こんな面白いこと、絶対に手を出すに決まってる」
「それでは名前を偽ってみてはどうでしょうか?わたくしたちの間では貴方様を知る者はほとんどいませんから」
「まあ確かに。名前はアッチのが有名すぎて、お前たちは神話なんて読まないからな」
悲しいかな。三勢力のなかで、俺の名を当てられる奴はいないだろう。
同位体があんまりにも名前が売れてるからな。考え付きもしないはずだ。
「.....わかったよ。お前はフェニックス家でなんか適当に理由付けて、俺はお前の護衛ってとこでいいだろう」
「ありがとうございます。それではお母様にそう頼んでおきますわ」
「任せた」
転生悪魔の赤龍帝か。まったく、楽しくなるな。
今回の赤龍帝はどんな生き方をするのか。興味は後を絶たないな。魔王様方も動くようだし、丁度いいタイミングだったのかもしれん。
「楽しそうですわね」
「退屈な日常も愉しくはあった。しかしまあ、そろそろ新しい刺激が欲しかったのも事実だ」
「お好きなように行動して下さいませ。このレイヴェル、いついかなる時も貴方様に着いて行きますわ」
「さあ、悪魔故に悪魔らしく、この一幕を愉しむとするか」
鳥と蛇は、暗闇のなか駒王町に飛び立つのだった。
婚約の話の部分は、もしかしたら書き直すかもしれません。