GAMERA/シンフォギアの守護者~The Guardian of Symphogear~第二楽章-LUNAFALL   作:フォレス・ノースウッド

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2025年最初の投稿です。なんとか1月に間に合った(-"-;A ...アセアセ

しかしマリアさん……なんでガングニールの時の貴方の戦闘シーンあんなに少ないの?かなしーじゃん。
アガートラームの時はあんなにレパートリー多い技もだし、アームドギアのギミックもあんまり無いし、そのくせマントは便利過ぎるしで……もう想像で書くしかなくなっちゃったよ(コラ

サブタイからウルトラマンブレーザーくん浮かんだ方もいるでしょうが、ネタ自体はブレーザー放送前の情報公開よりずっと前からガメフォギア本編では温めてたアイディアでした。

《使用曲》
烈槍・ガングニール
月煌ノ剣


#6 - ヴォルナブレーザー ◆

 某怪獣特撮映画で何度も決戦の地となった〝宝石の様に美しい〟夜の横浜市街地が覗ける《横浜ノース・ドッグ》にて停泊する潜水艦――《二課仮説本部》の傍らのアスファルト上に、マゼンタ色の円陣が出現したかと思うと、そこからギアアーマーを纏った朱音とエルフナインと守崎洸が姿を現した。

 

「便利だな」

「ですがこの《テレポート・ジェム》は使い捨ての消耗品、相応の素材と設備が無いと一つ作るだけでも相応の労力を伴います」

 

 円陣が消えたてのアスファルトから、《岩国基地》で採取したのと同種の物体を朱音は拾い上げる。

 同基地内にて拘束されていたウェル博士が〝神隠し〟に遭った正体(トリック)を用いて、

 朱音たちは山下埠頭から《ノースドック》敷地内まで〝瞬間移動〟してきたのだ。

 

「守崎さ~ん?」

 

 朱音はそれこそ一般人らには創作の中でしか見ない現象たる〝空間転移〟現象を直に体験した守崎洸の様子を窺い、彼が立ったまま〝考えるのを止めた笑顔〟で気絶していることに気づいた。

 

「おやおや~~」

 

 彼の顔の前で手を振る朱音だが起きる気配が無い。呼吸音も心臓音も響いているし、全身をよく見れば体幹(バランス)を利かせて身体自身が立たせ続けている上で眠っている状態なのが分かって、朱音の口元が苦笑した。

 

「立ち寝する人って、本当にいるんですね」

 

 エルフナインも妙に感心して洸の寝顔を見上げている。

 ある意味意味で器用と言うべきか………そう言えば某少年誌の人気漫画で普段は超のつくヘタレだが眠ると神速の抜刀術を披露するタンポポ頭の剣士がいたことを朱音は思い出しつつ。

 

「寝かしておくか……」

「はい、そうしましょう」

 

 おそらく彼が勤めている警備の仕事は深夜業務、心身ともに負担の大きい時間帯に〝非日常〟なアクシデントに見舞われる災難に遭ったのだから危険手当代わりにこのまま睡眠と言う臨時休暇を提供することで朱音とエルフナインは同調し、頷き合った。

 

「博士、避難の進捗は?」

『もう二・三分すれば会場から閑古鳥が鳴くわね』

 

 耳(ヘッドセット)に手を当てる朱音は、了子との通信で会場の現況を確認する。二課が今まで手にした情報は朱音にも通信で伝えられている。

 

「そして真っ向から二人を歌い合わせると……」

『そうなるわね、私と朱音ちゃんのご推察通りなら』

 

 朱音自身も、〝武装組織フィーネ〟がノイズを用いてライブ会場を占拠した事態から《PROJECT:N》の類似性を嗅ぎ取っており、さらに表向き劇場型犯罪を演出して全世界に中継されている状況下で翼が装者である事実を露わにし、彼女の歌手生命ごと二課に社会的ダメージを与えた上でかの組織が《F.I.S》から強奪した休眠状態であろう聖遺物を、装者同士歌わせ戦わせることで生じるフォニックゲインで目覚めさせようとしていることも推察していた。

 

「他に聖遺物を持った共犯者は?」

『避難誘導がてら、エージェントのみんなが探してみたけど、見当たらないわね』

「そうですか……」

 

 マリアの背後にいる組織と《F.I.S》の襲撃者が同一犯なら、奪われた聖遺物が響及びかつて奏が担うのと同一の《ガングニール》のみである筈がない。

 そして《F.I.S》が米国におけるフィーネの〝隠れ蓑〟だった可能性も踏まえれば、聖遺物を目覚めさせられる《適合者》がマリアだけではないことも。

 

(隠れ続けているのなら、引きずりだすまで……)

 

 朱音の心中の奥で前世(かつて)の宿敵の存在が過る中。

 

「朱音ちゃん!」

 

 潜水艦(ほんぶ)のハッチが開いて、あおいと二課エージェントらが出迎えてきた。

 

「この子――エルフナインをお願いします、《武装組織フィーネ》に関する重要証人なのは確かなので」

「ええ、それでこの人は……」

「立ち寝しているだけの巻き込まれた民間人です、暫く仮眠室に寝かせて手続きは後でもいいでしょう」

 

 洸はエージェント二人に腕を担がれる形で艦内に運ばれていった。

 

「私は現場の方に急ぎます」

 

 飛行の為、あおいたちと距離を取って両足と腰のプラズマエネルギースラスターを点火しようとする直前。

 

「朱音さん!」

 

 少し駆け出したエルフナインが朱音へ呼びかける。

 

「言いそびれるところでした……会場を占拠したメンバーに――〝柳星張〟――がいます」

「りゅう、せいちょう?」

 

 エルフナインの口から発せられた単語をオウム返しをして脳裏に疑問符を浮かべるあおい、エージェントたちも同様の戸惑いを見せていた。

 

「そう………大体分かった」

 

 ただ一人、その言葉の意味を悟っている朱音は、翡翠の瞳をより鋭利にさせて推進器(スラスター)の火を盛大に吹かし、その場から夜天の星々へめがけ飛翔、上空に雲を描く流星(ひかり)を煌めかせて友――翼が機器に瀕している会場(せんじょう)へと急ぎ向かっていき、その軌跡を見上げるエルフナインであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから少しの時間を経た二課仮説本部司令室兼艦橋では――。

 

「大成~功~!」

「なんとか間に合いました……」

 

 了子が天井へ腕一杯に伸ばした指先をツーピースに立て、藤尭がほっと安堵のため息を零して深々と椅子にもたれていた。

 司令室内の宙には様々な立体モニターが投影されているが、《QUEEN OF MUSIC》のライブ中継を配信していた動画を表示している画面は、いずれも黒をバックに『視聴できません』『問題が発生しています』とエラーを主張している。

 

「名付けて『天下の衆人観衆オールシャットアウト作戦』!」

「後から命名するのか?了子くん」

 

 先祖(フィーネ)の魂が離れた後でも〝相変わらずの調子〟を見せてくれる友人のセンスに、弦十郎は微笑ましさ混じりで苦笑する。

 

「だって~~事前に作戦名考える余裕なかったわけだし」

「ほんとギリギリでしたね……」

 

 弦十郎からのツッコミを受けて少し不貞腐れる了子と藤尭らオペレーター陣は、マリアが世界各国に口上を述べ翼に挑発をしかけている裏で、ハッキングでライブ会場の中継インフラを一時的ながら《武装組織フィーネ》より奪い、配信を停止させた。

 しかし藤尭の計算では以て三〇秒、それを超えると向こうに配信権限を奪い返される恐れがあったのだが、その間に現場に急行した朱音が持前の超放電現象(プラズマ)操作能力を応用した広範囲雷撃によるEMP攻撃で、会場内のカメラと音響設備を破壊する形で中継を強制的に中断、衆人環視の状況を打破せしめたのだ。

 朱音より遅れる形で会場に到着した光学迷彩を施されている二課のドローンのカメラが、

会場の現況を司令室のモニターに見せてくる。

 画面内には、奏が使っていたのと形状の相違はあれどほぼ同じ大きさの激槍(アームドギア)を構えるマリアと対峙する朱音と翼の勇姿が映し出していた。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

 

 既に了子の推理――敵の目的は聖遺物の覚醒――と言う可能性は朱音たちに伝えてある上に、かつてのガングニール輸送作戦で響が意図せずデュランダルを起動させた事態を教訓とした対策(とっくん)も日々行ってきた。

 二人ならば、マリアの他にいる〝共犯者〟をあぶり出すことは可能だろう。

 それと――背後から出入り口のオートドアが開く音がし、弦十郎は振り返る。

 

〝やはり、瓜二つだ〟

 

 腰掛けたまま椅子を回して振り返った弦十郎の瞳は、あおいに案内されて入ってきた今回の一件の重要参考人たる、自らを〝錬金術師〟と称した少女――エルフナインを捉え。

 

「さて、ここからどう出るのかお手並み拝見ね、アイドル大統領のご子孫さん」

 

 了子は朱音と翼との戦端が開かれる直前なマリアの姿を凝視したまま、そう呟きを零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(遅いわよ、後輩)」

 

 各々のギアアーマーを纏いて朱音と二重奏(デュエット)をする私は、歌唱を継続させつつ間一髪かけつけてくれた戦友に念話(テレパシー)を送る。

《ルナアタック》での櫻井女史(フィーネ)との決戦の際に発現した《限定解除(エクスドライブ)》は、私たちに装者に肉声を使わずとも念じることで会話できる能力を付与させた。

 その残り香と言うべきか、私たちは今日までの特訓の恩恵もあり、合唱(ユニゾン)で互いの歌声を共鳴させてフォニックゲインを高めた状態を維持していればXDとならずとも念話機能を引き続き使用できる様になっている。

 

「(間に合ったんだから良いでしょ? 先輩)」

 

 先程の災難は本当に間一髪、櫻井女史たちと朱音の作戦により中継が遮断されるまで時間稼ぎすること自体に異論も文句も無かったのだが、まさかヒールが限界に来て手折れるのは想定外だった。

 ライブ中に不測の事態で負傷は起こすまいと日々鍛錬は怠っていないと自負はしていたが、まだまだ修練が足りないと痛感せざるを得ない。

 

「(まあ、また絶妙な頃合いに駆け付けてくれたのには感謝してるとも)」

 

 これは、皮肉抜きの賛辞も込めた心よりお礼の言葉、朱音はマリアに翡翠の眼光を向けたまま、微笑んで頷き応じてくれた。

 

『『~~~♪』』

 

 最悪の場合……歌女としての自分との決別(わかれ)も覚悟していただけに、自分だけの〝歌う〟理由(いみ)を見出したのを通じてこの心(むねのうた)に宿った己が〝夢〟も守ってくれた朱音たちには、感謝しても仕切れぬ程の多大なる〝ありがとう〟の想いを―――今は戦地(せんじょう)の渦中に居ると忘れまいと胸の奥にしまいつつ、《不死鳥のフランメ》を歌う互いの歌声を重奏(シンクロ)させ続けたまま、マリア・カデンツァヴナ・イヴと対峙している。

 私と朱音が事前に打ち合わせたわけでもなく《不死鳥のフランメ》を選曲したのはここ最近で一番一緒に歌う機会が多かったのも理由の一つだが、向こうに揺さぶりをかけてマリア以外の戦力をあぶり出す意図も咄嗟に合致したからでもあった。

 しかし、向こうも安易に手持ちを晒してはくれないらしい。

 

「(どう思う?)」

「(あれも確かに……《ガングニール》だ)」

 

 装者としての私を全世界に晒す計画が狂いながらも堂々として不敵なる立ち振る舞いを崩さぬマリア当人の手には、かつて奏が得物としていた〝撃槍〟に勝るとも劣らぬ巨槍(アームドギア)が握られている。

 私の直感も、あのギアはかの北欧神話の戦争と死の神が愛用していたものの〝欠片〟から作られたものだと告げている中、先の朱音の攻撃で一度は殲滅させられたノイズの新手が会場内に出現し、私たちは背を預け合う態勢に変えた。

 

 

「(一騎打ち、頼めるか?)」

「(Roger(承知))」

 

 マリアを含めたこの舞台(いくさば)を演出した者たちの正体と目的も気になるが、ノイズたちを場外に出すわけにもいかない。

 立花と雪音が戦場(こちら)に到着するまでまだ幾ばくか時間がかかるゆえ、今は頼りになる朱音(せんゆう)にマリアへの対応を任せ、私はノイズの群体へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「一つ目の太刀~稲光より~最速なる風の如く~~♪」

 

《千ノ落涙》

 

 翼は自身の戦闘歌を詠い、傷ついた月の光が注ぐ夜天の宙を跳ぶ彼女の周囲に光の諸刃たちを生成し、ノイズらに目掛けその名の如く降り注がらせ。

 

「二つ目の太刀~~無の境地なれば~~林の如し~~♪」

 

《逆羅刹》

 

 続けて両脚の双刃でなます切りにしていき。

 

「我がやらずて誰がやる~目覚めよ~~蒼き破邪なる無双~~♪」

 

(ノイズのみで我が防人の剣、阻めると思うなッ!)

 

 刃が月煌に照らされた刀(アームドギア)を手に、冴え渡る剣閃を振るう翼だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《QUEENS OF MUSIC》会場内を見下ろせる上空にて、地上からは丁度月光が逆光となる体で、闇夜よりも濃い黒髪と血の如き双眸が特徴的なあの真矢と呼ばれた少女が一人、滞空していた。

 今彼女の肢体は、その瞳と同等の鮮やかな血の朱(あか)と漆黒と銀色の配色で構成され、胸部には水色の発光体に加え、朱音のギア――ガメラのと似て非なる勾玉状の集音機(コンバーター)が装着された《シンフォギア・システム》のスカートのフリル付きのインナースーツとアーマーを身に纏っており、その手には《ソロモンの杖》を携えて、会場内に出現するノイズたちは全て彼女の制御下にある。

 真矢はもう片方の掌に小型立体モニターを表示させた。

 

〝予想より早いご到着ね……〟

 

 モニター内には、朱音と自動人形(オートスコアラー)の一人ミカとの戦闘記録映像が表示されている。

 ミカの攻撃の隙間を狙い、朱音はCAR(センターアクシズリロック)システムで構えた拳銃形態(アームドギア)の銃口から銃弾を撃ち込み。

 

『Exploding~♪』

 

 後退しながら〝起爆〟と唱えた瞬間、着弾した弾頭が瞬時にプラズマ化してミカの上半身を大爆発させた――ところで映像が停まる。

 あの錬金術師お手製の人形たちに埋め込まれた〝賢者の石〟で再生されるだろうが、四体の中で一番エネルギーの消耗が激しいミカとなれば、当分戦線復帰はできないだろう。

 

「マム、〝ネフィリム〟の様子はどう?」

 

 かつての〝宿敵〟の強かさに舌を巻かれる思いな真矢は、ツーサイドアップに纏めた黒髪の合間に着けられている三角状のヘッドセットに手を当て通信を行う。

 

『稼働までに必要なフォニックゲインの量は、現在十八パーセント付近です』

「はあ……」

 

 相手はナスターシャであり、彼女からの進捗状況を聞いた真矢はため息を零した。

 

『本来なら、草凪朱音と風鳴翼による先の〝ユニゾン〟で八十パーセントは吸収できる計算でしたが……』

「特機部二(むこう)もきっかり対策済みってことでしょ? 《デュランダル》の一件で」

 

《ルナアタック》で失われた不滅の剣の異名を持つ完全聖遺物は、移送作戦中に起きた戦闘にて、立花響の歌声に呼応する形で起動し、奪取を阻止せんと尽力する彼女が手に取った瞬間暴走が引き起こされ、あわや戦場となった化学工場を壊滅させかねない事態を招きかけたものの、幸いにも朱音と翼の二重奏(うたごえ)によって響の意志を乗っ取り荒ぶる不滅の剣を鎮めたことで、最悪の事態は免れた。

 その件もあって二課所属のシンフォギア装者は、戦闘中に己が歌声で休眠状態の聖遺物を不用意に起こさぬ為の訓練も課せられている―――と言う事情(じょうほう)を、下準備(ハッキング)の一環にて《武装組織フィーネ》も存じている。

 

『はじめましてね、いやむしろ――〝久しぶり〟と言うべきかしら? 草凪朱音――ガメラ』

 

 ヘッドセットから真矢の聴覚に、通信でマリアの声が響き、彼女はギアの恩恵で強化された視覚でライブ会場内に目線を向ける。

 深紅の眼は、自分がけしかけたノイズに翼が対処している傍ら、舞台上で各々のアームドギアを手に対峙しているマリアと、そして朱音の姿を捉えた。

 

『ほう……今度は〝アイドル大統領〟として世界を束ねる気か? 終焉の巫女様』

 

 不敵な微笑を崩さずにいるマリアに対し、朱音も皮肉(ユーモア)をたっぷりと込めた笑みを返す。

 

「(ガメラはん、明らかに分かってて乗っとるね、真矢が言ってた通りノリの良い元守護神はんだこと)」

 

〝そういうアンタの方こそ、あの頃からは想像がつかないくらいに口が達者になったものね……〟

〝アメリカ暮らしの長さで、自然と鍛えられたものでね〟

 

 真矢の脳内で、現在の自身の血肉を共有している分身――彩矢の声が響く中、彼女はかつて再会した時の朱音とのやり取りを反芻しつつ、元宿敵の翡翠色をしている慧眼さが健在であることを実感させられていた。

 

『言ったでしょう? 〝永遠の刹那に生き続ける巫女たる私は何度でも蘇る〟と』

『だから櫻井博士と言う優良物件にいる内に、次の憑依先(ひっこしさき)をせっせと集めていた、その一人が〝マリア・カデンツァヴナ・イヴ〟と言うわけか……』

 

 彩矢の言う通り、朱音は明らかに看破している上でわざとマリアの〝芝居〟に併せている………とんだ演技派役者だと真矢が揶揄したくなった。

 その上《レセプターチルドレン》のことを感づいてもいる口振り、本当に食えない奴だ。

 

『お喋りはここまでよ、我が悲願を成し遂げる道を貫く上で、お前は最大の障害、《カ・ディンギル》を手折った恨みごと、ここで晴らさせてもらうッ!』

『なら何度でも立ち塞がってやる!この世界の歴史の教科書は、お前の妄執の犠牲となった人々のリストで一杯だ! これ以上増やさせないッ!』

 

 互いの得物(アームドギア)を構え直し、切っ先を相手に向け合い、眼光をぶつけ合う朱音とマリア。

 真矢はその際言い放った朱音の本音(ひとこと)に、耳が痛くなる思いだった。

 朱音――ガメラにとって、テロリスト……ましてやノイズまでも利用する類は、ギャオスと柳星張(じぶん)を生み出した挙句超古代文明を滅亡に至らしめた者共と同類に他ならならず、イデオロギーを掲げて犠牲を是としてまで事を為そうとし、生きとし生ける者たちの生命を脅かす存在には、たとえ自身が愛する〝人〟であろうとも戦う覚悟が今の朱音(ガメラ)にはあるのだと、ある別世界にて八百万の神々で創造された仮想世界の内での戦いと日常も含めた日々にてこれでもかと身に染みて知っている。

 果たしてこの世界のマリアは、そんな守護者(ガメラ)に、どこまで張り合えるか?

 

「(見ものやね)」

「見世物じゃないのよ……って!」

 

 彩矢の言葉に苦言を呈した真矢に〝見られている〟感覚が突如過る。

 目線の主が誰かはすぐ分かった……ほんの一瞬ながら、朱音の翡翠(ひとみ)がこちらに向けられて、真矢の深紅の瞳と合わさっていた

 

「そう、〝来るなら来い〟ってわけね……」

 

 真矢の額から冷や汗一滴、頬を伝う中苦笑する。

 だが真矢たちの本来の目的の都合上、このままおいそれと元宿敵(ガメラ)の挑発を安請け合いするわけには行かない。

 自分が朱音たち《特機部二》の装者たちと相見えるのは、そうせざるを得ない事態となった時、今はまだ静観に徹するしかないと、真矢は自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(どうやら向こうは、覚えているらしいな……)

 

 アームドギアのハルバードをから戦意をマリアに発したまま、朱音は遥か上空にて潜んでいる柳星張の転生者(しょうじょ)の姿を見抜き、翡翠の眼光で牽制して視線を漆黒の《ガングニール》を纏う自称〝フィーネ〟に向き直すと、手を通じて得物にフォニックゲインと脳裏に現れているイメージを送り込んだ。

 刹那、一瞬の閃光を経て、朱音のアームドギアが変化する。

 ハルバードの左右対称で扇状の諸刃だった片方がより鋭利な三日月の斧刃となり、もう一方は六角柱の分厚いハンマーへと変化、先端の刃が伸び、長柄後部の端も棍棒(メイス)となりて、より攻撃的なフォルムと相成った。

 

 その名は―――《ヴォルナブレーザー》。

 神隠しの間に、自分が創造し、命名したと思われる特注のアームドギア。

 

「っ………」

 

 マリア当人はポーカーフェイスを装っているのだろうが、その麗しい淡い空色の虹彩から、微かに動揺が表出したのを朱音は見逃さない。

 

(知らないか、無理もない――だって私も〝知らない〟)

 

 正確には、まだ思い出せない点が多い。

 夏の時に遭った〝神隠し〟から帰ってきた時、いつの間にかこの形態(アームドギア)が頭の片隅に残っていた……が、どう言う経緯で自分が創造するに至ったか、今でも忘却のベールに包まれている上に、わざわざこれをノイズ相手に使う機会も理由も無かった。

 そもそも《シンフォギア・システム》を前にノイズの武器たる炭素分解も位相差障壁も無力化される以上、それを模倣した上に前世(ガメラ)と同じ超放電現象(プラズマエネルギー)が付加されている時点で過剰戦力だと言うのに、この武器でノイズ相手に戦うとなると、喩えるならもはや住民を困らせるハチの巣に対戦車ミサイルで駆除するに等しい行為だ。

 ならば、おそらく神隠しの最中の時の朱音自身が固有の名を有するこの武器を生み出した理由は一つ………ノイズ以外の災厄(わざわい)の数々の中でも突出した〝強敵〟たちと戦う事態を想定して編み出したに他ならない。

 さらに幸いにも、神隠しから帰ってきてその間の記憶が失われる可能性を朱音当人は想定していたのか、事実この出自を思い出せないままなこの武器(ギア)の〝使い方〟は身体が覚えている。

 なら今の朱音には、それだけで十分だったし、当時の自分に感謝の念を贈りたい程だ。

 秋の夜風が口笛を鳴らす舞台にて、曰く付きのアームドギアである《ヴォルナブレーザー》の穂先を、後方に向けて相手に間合(リーチ)を悟られにくくする〝脇構え〟の体勢に朱音は構え直す。

 対するマリアも、巨大な槍の柄を握り直した。

 両者の透明感溢れる双眸のにらみ合いが続く中、夜風の音色が一瞬止まり――。

 

《蒼ノ一閃》

 

 ―――同時に翼が振るう大剣(アームドギア)から放たれた光の斬撃を受けたノイズたちの断末魔(あえぎ)に乗って舞い上がる爆発の焔と二人の美しく煌めく長髪を揺らす爆風、奇しくも開戦の合図となった。

 

「「~~~♪」」

 

 互いの戦闘歌が会場全体に反響しせめぎ合う中、ほぼ同時に相手めがけ、電光石火の勢いで疾駆する両者。

 朱音は脇構えのまま、《ヴォルナブレーザー》の長柄を大きく振り絞り、マリアも巨槍を振り上げる。

 斧による右切り上げと、槍による袈裟斬りで、双方のアームドギアの刃が激突するかに思われた。

 

「~~~ッ!」

 

 歌唱の途切れは阻止したものの、マリアの眉間に驚愕が走る。

 斧の切り上げに見せかけて朱音は、柄後部に備えるメイスの刺突(フェイント)で巨躯な槍を突き上げ、すかさず斧頭に備えられた噴射口から吹かれる炎による推進力を乗せたハンマーの一撃を刃に叩き込み、マリアのアームドギアは舞台上の表面(フロアー)を大きく抉らされた。

 今の一撃の勢いに乗って朱音はその場から跳んでマリアに肉薄し、ストレートキックを叩きこもうとするも、相手は裏拳を振るって迎撃。

 蹴りは防がれるもマリアの拳を踏み台に二段目の跳躍で淡いピンクの髪で覆われた頭上を宙返りし、《ヴォルナブレーザー》の柄の長さをトマホークほどのにまで収縮させながら天地が逆さとなって舞う状態で朱音は背後(マント)を取る。

 朱音のこの〝武器(とっておき)〟は、柄をある程度自在に変えられる機能を盛りこんでおり、先のメイスの刺突も柄を伸長させたことで先手を打てたのだ。

 この距離では大きすぎるマリアの槍(アームドギア)では対処できない、このまま上段から振るう朱音の一撃が決まる――筈だったが、朱音の攻撃はまたも防がれ、彼女の翡翠(ひとみ)が一瞬見開いた。

 マリアの漆黒のギアアーマーでひと際目を引くマントが意志を持つかの如くひとりでに動き出し、装着者当人を中心に竜巻状に旋回して、朱音の攻撃を受け止めた。

 

(〝バッツィー〟が欲しがりそうな機能だな)

 

 心中、某アメコミ界で最も著名な蝙蝠のコスチュームを纏うダークヒーローを用いて揶揄した朱音は反撃を危惧して反揚力機能(リパルサーリフト)とスラスターでマリアと距離を取る。

 その直感は当たり、渦を巻くマントからマゼンタ色の線流(ビーム)が四方八方で放たれたかと思うと、朱音に狙いを定めて一斉に迫ってきた。

 誘導性能を持ったビームたちの猛攻を、空中を飛び回って後退する朱音は、掌のプラズマ噴射口にエネルギーを集め、舞台上に降りたと同時に襲い来る光線を前に横薙ぎに振るう。

 

《光粒ノ防壁――リフレクトパーティクル》

 

 掌からプラズマエネルギーの粒子が鱗粉の如く発せられ、一種のミサイルチャフの効果で誘導ビームを迎撃、阻まれた線流は粒子との衝突で爆炎と変わる。

 

「My TURNッ~♪」

 

 その炎を突き破って、マリアは巨槍(アームドギア)の穂先を朱音に向け突撃してきた。

 朱音は斧頭から火を吹かして下段から逆風の軌道で槍を叩き上げようとするも、その槍の刃は三つに分裂し、朱音の迎撃は勢い余って虚空を薙ぐに留められる。

 左右に別れた槍の内の二つは、自律駆動して朱音を挟み撃ちにしようとし、さらにマントが鞭のようにしなって迫り、ダメ押しに槍本体を上段で高速回転させたマリアの攻撃が繰り出されてきた。

 一連の同時攻撃を前に、為す術なく朱音は攻撃を受ける――。

 

(見事だが、惜しいな)

 

《シェルシールド》

 

 ―――ほど柔ではなく、ふっとほくそ笑むと同時に、先の防御技の際に宙へ散布したプラズマエネルギーの残りを再利用して、計四つのガメラの甲羅を模した盾を出現させ、二つの刃とマントの鞭を受け止めると。

 

(いつの間にッ!?)

 

 右手に握られていた筈の《ヴォルナブレーザー》は、トマホークほどの長さで朱音の背後から左手による左切り上げで振り下ろされた本体の槍をマリアの体躯ごと宙へ打ち飛ばす。

 

《背車刀》

 

 実在する剣術の流派にある背面で刀を持ち替えて不意を突く技の応用で、柄を収縮させた《ヴォルナブレーザー》を左手に素早く持ち替えて槍の攻撃を迎え撃つ――と同時に右手にライフル型のアームドギアも生成し。

 

《烈火球・散乱――リードショットプラズマ》

 

 腰だめにプラズマエネルギーの散弾をマリアへ放つ。

 

(この距離とタイミングでも対応するのか……)

 

 しかし、マントが素早く弾頭からマリアを防護。

 

《炎貫弾――スティングプラズマ》

 

 続けて衝撃と貫通力に特化したプラズマ弾頭を連射するが、それらも再び旋回するマントの防壁を前に弾かれてしまう――のと引き換えに、その時のマリアの反応を朱音の碧眼(ひすい)は見逃さなかった。

 

「絶対に譲れない~~夢が吠え叫ぶよ~~♪」

 

 マリアの巨槍(アームドギア)の矛先が展開し、砲塔が姿を現して光輝きだす。

 対する朱音も右腕のアーマーを変形させ、右手を覆う砲身を生成し、紅緋色なマイクロ波の稲妻を迸らせ。

 

《HORIZON†SPEAR》

 

《雷光集束波――フォトンスパイラルシュート》

 

 同時に放射される極太の砲撃の奔流。

 片や緋色、もう片やパープル色の光線は真正面から衝突し、闇夜のライブ会場に眩すぎる閃光を打ち上げたのだった。

 

つづく。

 




おまけ:絶唱しないガメフォギアG(リディアンチャイム~♪)

 ※マリアのマントから拡散ビームが発射された時。

弦十郎「ゲ〇ターァァァァーーービィィィーームだとォォォォーーー!?」
あおい「司令!?急にどうしたのですか!?」
藤尭「なんか目もぐるぐるしてて怖いんですけど、勢い余って虚無らないで下さいよ……」
了子「前世のなんとやらが蘇ったのかしらね、朱音ちゃんみたいに(クスクス」
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