GAMERA/シンフォギアの守護者~The Guardian of Symphogear~第二楽章-LUNAFALL 作:フォレス・ノースウッド
10話近く分かけてやっとG2話分費やしてしまいましたが、ともかくGの序盤の山場まで来れました。
感想お待ちしています。
「Back Off~~My Friend(下がれ! 我が戦友)~~♪」
朱音が腕に自身の前世の後ろ姿を象る甲羅(シェルシールド)を携えて走り、翼の《影縫い》で動きを封じられているマリアと〝対話〟を試みようとしていた響に《即興歌唱》で警告し、彼女より前に躍り出て盾を構えたと同時に、まるで月面から降り注ぐ形で〝閃光〟が押し寄せた。
《旋光防陣――フォトンスパイラルシールド》
甲羅(ひょうめん)を超振動させつつ高速回転する盾は、人間が知覚できる範囲を遥かに超越した奇音を発し大気を裂いて突き進む月色の線流(ひかり)を受け止める。
振動と回転により強度が向上されている甲羅(シールド)に阻まれた一筋の閃光は分裂して弾き飛ばされた。
「――ッ!?」
「嘘だろッ!?」
枝分かれした線流の流れ弾と接触したライブ会場の一部に起きた現象を前に、閃光から発せられた雑音(ノイズ)が脳内で残響する中、朱音以外の二課の装者たちは驚愕で言葉を失う。
流れ弾を受けた壁面、天井、床と言った舞台セットが綺麗に両断されていたのだ。
あの線流そのものが万物を切り裂く刃……そのものの切れ味といい、線流から発する〝超音波〟の奇声(ノイズ)と言い、朱音が防御したかの閃光(こうげき)の異質さに翼たちの額から戦慄(あせ)が滴り落ち――。
「Use~Reflector~~AII range~~♪」
「お、おう!」
――ている暇もないのだとばかりに、朱音がクリスに《イチイバル》の防御機能の使用を催促し、クリスは腰部アーマーを展開させて《エネルギーリフレクター》の粒子をドーム状の全方位に展開されたとほぼ同時に、今度はあらゆる方角から多数の線流が一挙に押し寄せ、挟撃してきた。
線流たちは高密度粒子(リフレクター)に阻まれ反射させれるも、閃光そのものが発する奇声がクリスの聴覚にも襲い掛かろうと目論んでいたが。
「邪魔はさせない~~戦友(とも)の旋律(いのり)を~~牙を向くなら我が立つ~♪」
先程エルフナインを襲っていたノイズを殲滅する際にも使用したギターに変形させた朱音の弾き語りによる音色で生み出されたエネルギーフィールドがイチイバルの障壁(リフレクター)に重ね掛けされ、雑音の猛威ごと防護するだけでなく、リフレクターの強度自体も向上させて、朱音にとって因縁が深すぎる存在からの攻撃を受け止めていた。
(〝奴〟以外の装者か……)
朱音たちはこちらへ斜線を描いて迫っている新手の〝機影〟を目にした。
ピンクとグリーンとホワイトの三色に彩られる光球が、渦を巻いてうねり来る。
クリスの障壁(リフレクター)は、装者たちを閉じ込める体のまま張り巡らせられた閃光(やいば)に斬られまいと防ぐのに手一杯な中。
「立花ッ!」
「はいッ!」
翼は刀(アームドギア)を大剣形態に、響は腕部アーマーをハンマーパーツに変形させると、互いの呼吸と歌声を重ね掛け、二人から発する出力(フォニックゲイン)が増していき。
《双星ノ鉄槌――DIASTER BLAST》
上段から振り下ろす大剣と、上空に突き出した拳から放出されたエネルギー同士が融合して竜巻――かつて戦場にて歌うツヴァイウイングの連携攻撃(コンビネーション)の再演――と相成る。
正面から光球と竜巻は衝突し、けたたましい轟音をかき鳴らすと共に、膨大なエネルギーは夜天を照らす一瞬の太陽(ひかり)となって会場全体を一時的に白銀一色に染め上げた。
「~~~♪」
ギアで強化された視力でさえホワイトアウトしてしまう白銀の世界の中を、朱音は瞑目したたま歌い、疾駆する。
そんな朱音を左右から挟み込む様に、あの奇声を発する閃光(やいば)が幾重にも迫るが、速力を緩めることなく弾幕をすり抜け、直撃が避けられぬ射線には脳波操作する甲羅(シールド)たちで防ぎ、駆け走る彼女には、視力に依らずとも〝見えていた〟。
先の光球の正体にして、協奏(ユニゾン)で繋がり合い追撃を仕掛けようとする二つの影を、朱音の感覚ははっきり捉え。
《ディフェンサーウォール――玄震昇壁》
《ヴォルナブレーザー》の槌を大地に叩き付け、大気とプラズマエネルギーと高周波が組み合わさった衝撃波が壁面状に立ち上り、攻撃を防御と同時に仕掛けてきた当人ごと弾き飛ばす。
左手に《ヴォルナブレーザー》の柄を握ったまま、朱音はレミントンM1858に酷似した長銃身の自作式な回転式拳銃(リボルバー)を生成して右手に取り、白銀(ひかり)が収まって閉ざされていた翡翠の目を開く。
(装者がもう二人、いや三人か……)
片や翠と大鎌、片や桜色と丸鋸によるギアアーマーを纏いてアームドギアを携え、後退の最中な二人の少女たちに銃口を向けた朱音と、続く形でホワイトアウトから視力を取り戻した翼とクリスも彼女に並び立つ。
クリスのクロスボウのを乗せた弓が引かれ、翼の刀の刃にエネルギーが纏われる。
朱音は一切の躊躇なく連続(ダブルアクション)でトリガーを引き、同時に翼の斬波、クリスの矢も放たれた。
弾丸と矢と光刃は、飛び退く只中な二人へと正確な狙いで突き進むも、着弾直前に宙をかける物体が盾となって阻まれてしまう。
(相変わらずの超反応だ……〝イリス〟)
それでも朱音の前世から変わらぬ翡翠色の瞳は、自分たちの攻撃を悉く防護せした〝物体〟の形状(すがた)を捉え、臨戦態勢を崩さずに《ヴォルナブレーザー》の長柄を両手で握りしめ、中段構えで相手に向け直し、共に並び立つ翼とクリスも各々のアームドギアの銃口と切っ先を相対する〝《F.I.S》のシンフォギアの担い手たち〟に向け、臨戦態勢を示す二課の装者たち。
だがその中で、ただ一人、響だけは朱音たちの背後にて〝戦意〟を発することができずにいた。
数瞬遅れて、今自分は〝戦場〟にいるのだと思い出し、臨戦態勢の三人に並ぼうと踏み出そうとするも、響の瞳が朱音たちの後ろ姿越しで相対する相手を改めて捉えた瞬間、足は踏みとどまってしまった。
さっきの攻撃で破壊されたドローンのライトが照らした影に突き刺さっていた翼の短刀――《影縫い》の術から解き放たれた《黒いガングニール》を纏うマリアと、もう二人。
二人とも、年は自分らとほぼ同一らしいあどけなさの残る少女。
そして三人とも、同じ〝人間〟……この事実だけで響が逡巡してしまう理由は十分であった。
一方で響とて分かっている、今宵マリアたちが引き起こしたのは、二年前自身も巻き込まれた………櫻井了子(フィーネ)がツヴァイウイングの最後のライブにて巻き起こした行為と同じ〝テロ〟に他ならないことを。
ここで自分たちが戦ってでも食い止めなければ………二年前のあの惨劇が、《ルナアタック》の時の様な災厄が、繰り返されてしまう。
自分たちが頑張らなければ、いつかの未来に蘇るであろうフィーネに自身が告げた〝現在を守る〟宣言(ことば)が、嘘になってしまうことを分かっていながらも。
〝だから私は……この道しか選べなかった……〟
響が逡巡してしまうのは自身の争いごとを嫌う気質だけではない、他ならぬフィーネのあの時自分たちに告白した言葉の数々が、心(むねのうた)の中で何度も反響していたからだった。
〝ごめん…なさい……ごめんなさい……私は――〟
(フィーネさん……泣いてた)
特に最後の、咽び泣いて懺悔を求めるかの如く手を伸ばしてきたフィーネの姿が焼き付いて離れない。
響にはあの告解の意味の全てを理解できなくとも、その涙そのものは嘘も撃つ割もない、フィーネの心(むねのうた)から発せられた〝真実(ほんとう)〟のだと今でも確信を以て言えるだけに、その手を握り返すことができなかったのが悔やみとなっていた。
だから響はどうしても――〝戦う〟――以外の方法は無いのだろうか?
自身の両手の拳を戦う為に握ることができない中――。
(そんな調子でうちらから守れるん?〝融合症例第一号〟はん)
「――ッ!?」
響の葛藤で渦巻く脳裏に突如、訛りと皮肉と嗤いの籠った少女の声が侵入し、握りしめることができずにいた自身の掌を見つめていた目線が思わず上がった。
装者(せんゆう)たち越しにマリアたちの様子を窺うも、三人とも戦意は示しても先の〝テレパシー〟を発した様子は見られない……では誰が響の意識に直接挑発してきたのか?
疑問が過る響は、ふと朱音が夜空を見上げて、後ろ姿越しでも彼女の翡翠の瞳から発する眼光が強まっているのを感づいた。
朱音の眼光の先へ、響は己が双眸で追いかけると……月光が広がる夜天の中を、まるで海の中を流れゆく様に浮遊し、自分たちを見下ろす装者らしき黒髪赤眼な少女が佇んでいた。
その少女が纏う装束(アーマー)も、手が握りしめる武器(アームドギア)と思わしき槍の穂先の姿形は、響にも見覚えがあった。
少し前に朱音が描いて見せてくれた絵……前世(ガメラ)の時に戦ったと言う怪獣と、余りに酷似していた。
名前は確か――。
「い、イリス……」
響の口から、ギリシャ神話の登場する〝虹の女神〟と同じ名が、微かに零れた。
片や月に背を向けて見下ろし……片や月光を浴びて見上げる……かつての守護神と邪神。
超古代の叡智が生み出した兵器にして、人知を超越した神々――《怪獣》であった少女二人は、月の煌めきが強まると引き換えに空の闇は深くなり、秋風の笛が奏でられる夜の中。
「その様子だと、少しは〝思い出せた〟かしら?」
「そうだな、その顔を見て、名前くらいは思い出せたよ」
前世は《怪獣》、今は装者の歌女な二人は、互いの瞳――翡翠と鮮血――から眼光をぶつけ合い。
「お前の名は、〝比良坂真矢〟だ」
「そう言う貴方は、〝草凪朱音〟」
互いの今の己が名を呼び合う。
これで相まみえるの因果は二度目――否――〝三度目〟となる、朱音(ガメラ)と真矢(イリス)の再会なのであった。
同時刻の二課司令室では、会場内の戦況をリアルタイムで映していた主なるドローンたちが謎の攻撃を受け撃墜され、大型ホログラムモニターは一時ブラックアウトしていた。
「予備ドローンカメラ補足、最大望遠です」
それでも予備に待機させていたドローンを、カメラのスペック限界まで会場から引き離した上でオペレートを再開させる。その間約一五秒、長年特異災害含めた〝超常〟を相手にしてきた二課職員たちの能力も伊達では無く、遠間からの撮影の都合上で先程より画質が落ちつつも、《武装組織フィーネ》と面々と対峙する装者たちの姿をモニターに再投影させた。
「あの二人の少女が使うのも――」
「《シンフォギア・システム》にアレンジされた聖遺物ね」
オペレーションの一時停止と復旧するほんの僅かな間に了子はこの場にいる誰よりも速くキーボートを演奏するように操作し続け、撃墜されたドローンが映していた戦闘模様――マリアの助太刀に朱音たちへ攻撃を仕掛けてきた新手が使う《聖遺物》の正体(なまえ)をホログラムに表示させた。
「《イガリマ》と《シュルシャガナ》……だと?」
「〝石を砕く者〟――戦いの女神《ザババ》が使っていた〝二つで一つ〟の武器よ」
その単語を読み上げた弦十郎に続いて、了子は《メソポタミア神話》に関連する遺物(しりょう)の写真を追加表示しつつ、元の担い手たるシュメールの戦女神の名を口にする。
「その戦神の刃たちも《シンフォギア》となっていると言うことは……」
「櫻井了子(わたしたち)が、おそらく《F.I.S》辺りでこっそり作り置きしていた〝イレギュラーナンバー〟なのはほぼ確実」
《聖遺物》の欠片を《シンフォギア》に加工し直した上で運用に至らせることができるのは《櫻井理論》を提唱した張本人、終焉の巫女――フィーネの依代となっていた頃の〝了子たちただ二人〟だけ。
現にフィーネの人格が去った今の了子一人では、新たに聖遺物から《シンフォギア》を製造するのはおろか、仮にも自身の産物である《櫻井理論》そのものすら、消失したピースで穴だらけのパズルの如く全容を把握し切れていないのだ。
朱音の《ガメラ》と言う異端中の異端を除き、二課が所有もしくは存ぜぬ《シンフォギア》があるとすれば、それは《ルナアタック》以前に了子(フィーネ)たちが二課以外の組織で密かに製造したものに他ならない。
《黒いガングニール》も、《イガリマ》と《シュルシャガナ》も然り。
例外があるとすれば、夜の虚空に佇む黒髪赤眼の少女と、その者が纏うギア。
「先程の攻撃は、三〇〇万サイクルの〝超音波メス〟と判明」
あの少女からの閃光(こうげき)の正体は、超音波を線流(ビーム)状に集束して放つ、万物を切り裂く衝撃波。
二課の面々にとって、かつて地球を守護する神獣――ガメラだった朱音からの説明越しではあるが、この攻撃手段を有する存在に覚えがあった。
「これ、もしかして、もしかしなくても……」
「彼女のアームドギアとアーマーの形を御覧なさい、明らかにクリっソツじゃない」
了子は宙に二つのホログラムモニターを追加で投影させる。
「あれは?」
画面に表示されたものを見て、司令室の背後にいたエルフナインが身を乗り出した。
「片方は朱音ちゃんのイラスト、もうかたっぽはそれを元に二課が作成したCGモデル、確か〝柳星張〟とも呼ばれてたのよね? 例の〝ギャオス変異体〟――通称(コードネーム)は………《イリス》」
「っ……」
まさか二課がその存在を周知していたと思っていなかったらしいエルフナインは、はっとした表情で了子からの問いを肯定したのだった。
〝比良坂真矢〟
それが前世(ガメラ)にとって、宿敵にも等しい存在だったギャオス変異体《柳星張》――またの名を《イリス》の転生体なあの少女の名だ。
しかし〝比良坂〟とは………もし彼女にその名を授けたのが運命の神の仕業なら、性根が邪悪過ぎるにも程があると思わざるを得ない。
劇場型テロの勃発から戦場となったことで晴れ舞台の面影がとうに消え去ったこのライブ会場に参じて彼女が傍観しているのを翡翠(このめ)で察した瞬間、ポーカーフェイスの内側で現在の日本には実在しない、元は日本神話におけるあの世の入り口を指す《黄泉比良坂》が由来であろうかの苗字込みで、その名が記憶の奥底から急に浮上してきて蘇った。
どうやら私は以前、既に〝柳星張転生体〟たる彼女とご対面していたらしい。
我ながら記憶力は良い方だし、もしすれ違った程度でも前世からの因縁の相手なら一時でも忘れるわけがない………ならば確実に記憶のほとんどが忘却していると把握しているあの夏の〝神隠し〟に遭っていた間に再会し、相まみえていたと断言して良いだろう。
柳星張転生体――比良坂真矢は自分と違って、草凪朱音(いまのじぶん)のことははっきり覚えているみたいだし。
その転生体当人には蘇った記憶は名前だけだと口では言ったが、実際はもう少し断片的ながら思い出していた。
二課の仮説本部たる潜水艦も停泊し、京都での決戦を思い起こさせる炎の荒野に包まれた軍港らしき施設の区画内で対峙している、自分と真矢。
〝相変わらず鬼畜外道なやり口だ……お前も、仲間の□□も、だがそれに心痛めるくらいの良心は育ってるらしいな、イリス〟
〝そういうアンタの方こそ、あの頃からは想像がつかないくらいに〝口が達者〟になったものね〟
お互い相手へ皮肉たっぷりにブラックジョークを叩き合いつつ、生まれも時代も次元も変わっても自分たちは戦う因果(さだめ)からは逃れられぬと、互いの得物(アームドギア)の矛先を向け合い激突する。
〝――ただ殺すために作られ、憎しみしか知らなかった私に……折角得たはずの光すら奪われた私に……遺されたモノなんてもう……アンタを倒してその存在する価値を示す以外にはもう、何も残っていないのよッ!!〟
しかし、比良坂真矢は戦闘の最中、仮にも宿敵の間柄な自分にこのような悲愴な心情を吐露していたことも思い出せた。
前世の悪逆非道さを踏まえればこちらを油断させる演技と勘繰ることもできたが、
神隠しの記憶のほんのひと欠片しか忘却の深海から手繰り寄せられてない今の自分から見ても、あれは策でも芝居でもない〝真心(むねのうた)〟だったと察せざるを得ない。
現に当の本人は無自覚だろうが、比良坂真矢の月夜がよく似合う麗しい表情(かお)からは〝またこんな形で会うなんて〟と言いたげな心持ちがにじみ出た、複雑な面持ちをしていた。
少なくとも〝比良坂真矢〟は、邪神としての記憶は持っていても、前世(かつて)の自分自身からは遥かに遠い人格(ひととなり)の持ち主なのは、違いないようだ。
だがそれで、私が彼女たちと戦う意志に揺らぎはない。
どのような経緯であれ、真矢とマリアたち《武装組織フィーネ》はテロと言う〝災厄(わざわい)〟を引き起こし、そこにどんな主義主張や理由があっても、不条理な災いを前に無力な人々を犠牲にすることを良しとし、今夜の舞台(ライブ)に来てくれた観客たちの想いを踏みにじったことに変わりない。
『我は災厄の敵~~ひた向きに生ける者たちの味方~~生命(いのち)害なすならば~~~我が炎で立ち塞がろう~~♪』
神隠しに遭っていた間の〝私(じぶん)〟からの贈り物でもある《ヴォルナブレーザー》を正眼に構え直し、心(むねのうた)が即興で編み上げた歌詞を謳い、己が意志を表明し直した最中――胸部の勾玉と自身の感覚に〝鳥肌〟が走った。
程なく、会場内に巨大な空間歪曲からの緑がかった閃光が煌めいたかと思うと、肉塊たちが禍々しく寄り集まった大型ノイズが姿を現す。
「新手のノイズっ―――なに!?」
「おいおい……呼んだの自分らだろ!?」
《超音波メス》
《HORIZON†SPEAR》
《α式・百輪廻》
《切・呪リeッTぉ》
明らかにあのノイズを召喚させたのは向こうの筈だろうに、真矢とマリアたちは各々の武器(アームドギア)で攻撃、巨大な肉体をバラバラに四散させてそのまま退避行動に走った。
「撤退だと!?」
「ここまで盛り上げといて尻尾巻きかよ!」
「ねえ!待って!!」
「よせ響!」
咄嗟に追いかけようと駆け出しかけた響を、私は引き留めた。
「深追いは禁物だ」
「でも……」
「それに、こいつらを野放しにしておけない」
「そっか……このノイズって」
先の攻撃で飛び散った肉塊は、その全てが秒刻みに体躯を急速に肥大化し続けている。
増殖分裂の特性を有した《巨大アメーバ型》。
『朱音ちゃんたち、応答して下さい!』
「はい藤尭さん」
通信機(ヘッドセット)に藤尭さんの切羽詰まった声が響く。
「こいつらの増殖が会場外に出るまでの時間は?」
『計算が正しければ、後五分でそこは丸ごと呑み込まれます! その先は、ご想像ってことで……』
スピードも精度も卓越した彼の情報処理能力なら、ほぼ計算通りに被害は拡大していくのは必至。
会場のすぐ外には、未来たち含めた避難した観客たちもおり……このままノイズの増殖を許せば奴らの災禍に今度こそ巻き込まれる。
「迂闊な攻撃では増殖を速めるだけ……」
「ちきしょっ!どうすりゃいんだよ!」
と、なれば……《巨大アメーバ型》による人的被害をこれ以上一切出さず、さらに二次災害を最小限に抑えた上で確実に殲滅させる方法は、ただ一つ。
「絶唱……〝絶唱〟と〝ユニゾン〟です!」
響の口から、その手段が発せられた。
単に殲滅するだけなら、増殖と再生速度を上回る火力を叩き込めばいい。私一人でも我が炎(プラズマ)なら可能ではある。
だがその選択肢を取った場合の二次災害も尋常ではない規模となってしまう、奴らの断末魔(ばくはつ)の業火だけで会場周辺の避難民(かんきゃく)たちは確実に呑み込まれ、犠牲となる………私がかつて、〝渋谷〟で犯した悲劇の再演と言うわけだ。
観客をより遠方へ避難させようにも、ノイズの増殖速度では満足に逃げることもままならず連中に心中させられてしまう。
無辜の人々を巻き込まずにノイズたちを滅する、その両方を成立させるには、私たち四人全員で絶唱を歌い、協奏(ユニゾン)させて出力を上げた上で奴らの増殖活動を抑制、炭素化を促進させる〝清めの歌〟を奏でる……の一択しかない。
「けどよ、あいつらの目的が《ネフシュタン》の時とおんなじなら……」
クリスからの懸念も分かる。
《武装組織フィーネ》のこの演出が凝った一連のテロ行為の真の目当てが、装者をこの場に集めてその歌声から生成される《フォニックゲイン》を利用し、《F.I.S》が所蔵していたのを強奪した眠れる聖遺物を覚醒させる為だとしたら……ここでその〝奥の手〟を使えば目覚めさせてしまうだろう。
「そうだな、元より私たちの絶唱で〝叩き起こす〟魂胆であの置き土産を残したのだろう――」
みすみす前世の宿敵も属しているテロリストどもの目的を達成させるのは癪に障らない……と言われれば嘘にはなるけど。
「――だが、人命には代えられないッ!」
自分たちシンフォギアの担い手に課せられた〝守護者としての使命〟は忘れてなどいない。
災厄から一人でも多くの命を助ける―――その為に私たちは今日まで装者として活動を続けているのだから、躊躇っているわけにはいかない。
「朱音(くさなぎ)の言う通りだ、ここで逡巡しているようでは、我らが背負う〝防人〟の名が泣くッ!」
「アタシもソロモンの杖でこれ以上誰かが泣くのは御免だ、異論ねえッ!」
「それじゃやろう!私たちみんなでッ!」
覚悟を締め直して頷き合った私たちは、自身の手を繋ぎ合わせて輪を作る。
「《S2CA・Quartet Burst》――Set Harmonicsッ!」
さあ――歌いてお見せしまう、災厄を齎す者たちよ心して聞くと良い――私たちの〝絶唱〟を。
〝Gatrandis babel ziggurat edenal~♪〟
〝Emustolronzen fine el baral zizzl~♪〟
〝Gatrandis babel ziggurat edenal~♪〟
〝Emustolronzen fine el~zizzl~~♪〟
朱音たちが《シンフォギア・システム》の決戦機能《絶唱》の詩を歌い終えた瞬間、手を繋ぎ合った装者たちの全身から荒ぶる地球とこの星の生命全てが持ちうるエネルギー《フォニックゲイン》――《マナ》が迸り、虹色に彩られた波(オーラ)となった歌声の奔流はドーム状に広がり、増大してゆく。
あわや増殖分裂型の大型ノイズに蹂躙されつつあったライブ会場内を包み込んだ。
朱音たちがカードを切った〝奥の手〟の名は《S2CA》。
正式名称――《Superb Song Combination Arts》。
翼やクリスが該当する《第一種適合者》でさえも心身に多大な負荷(バックファイア)を齎す〝諸刃の剣〟な《絶唱》を、装者たちによる合唱ギア同士を共振と共鳴させることで出力を上げる《ユニゾン》を以て緩和、制御下に置いて奏でられる装者たちの連携戦術(コンビネーションアーツ)である。
この四重奏(カルテット)による〝調律〟を浴びた大型ノイズは、猛威を振るおうとしていた増殖活動を停止寸前にまで抑制された。
今がこの巨大なる災厄を滅する好機。
先陣を切るは翼、己が刀(アームドギア)の刃を鞘に納め、巨体へと神速の脚力で肉薄し抜刀。
《絶唱・天羽々切――真打》
鞘から目にも映らぬ速さで抜かれた蒼き炎を纏う刀身が、巨体の全身を隈なく、ほんの一瞬で切り刻み、切断面から噴き出す火がノイズの増殖と再生を阻害させる。
《TERA DOWNPOUR ZEPPELIN 》
続いてクリス、大型化させたクロスボウの二挺(ツーハンド)を上空に向け、エネルギーの矢を引き絞り発射。
ノイズの頭上に飛び上がった二本の矢は分裂、無数大多数のエネルギーの鏃となりて〝土砂降り〟が翼の斬撃痕が癒えぬ巨体に降り注ぐ。
これらの攻撃で増殖肥大していた醜悪な肉塊のほとんどが消失し、人間の脊髄に似た体躯に二本足と海生生物のエイめいた頭部を持つ本体が姿を曝け出された。
身ぐるみ剥がされた本体は尚も増殖しようと肉塊を纏おうとするが、《絶唱》と《ユニゾン》の重ね掛けによる虹色の波動(フィールド)によりその進行は余りにも微々たるもの。
無論、装者たちはこの好機を逃さない。
響は両腕の籠手(アーマー)を合体、右腕に変形装着された円錐状のハンマーパーツが回転し始め。
朱音も右手に握る《ヴォルナブレーザー》の穂先からプラズマエネルギーを放出させるとともに旋回させ、左の掌をノイズ本体で翳す。
前世(ガメラ)の頃よりその巨体を音速で大空へと羽ばたかせる力の源の一端であった反揚力(リパルサーリフト)の波を受けたノイズの二脚が、接地していた足場から離れ、浮き始めた。
そこにクリスからの《リフレクター》の結晶粒子が交わり、乱反射作用で効力が増幅した反揚力は増殖分裂型ノイズの本体を地上から引き離し、夜天の虚空へと昇らせていく中、朱音と響はそれ目掛け跳躍し、推進器(スラスター)の火を盛大に点火させ急上昇。
「「これが!私たちの――~~♪」」
《爆熱閃光刃――バニシングバレード 》
朱音の《ヴォルナブレーザー》の穂先と、響の右腕から放出される膨大な《フォニックゲイン》が螺旋の槍となり。
「「――絶唱ォォォォだァァァァ~~~♪」」
《爆熱烈火槍・絶唱――バニシングバーストグングニル》
二人が繰り出す暴風――同時攻撃の直撃を受けた《巨大アメーバ型》の本体は《フォニックゲイン》の奔流の竜巻に飲み込まれ浴びられるがまま空へ、成層圏の高度にまで突き飛ばされ、虹色の閃光となって四散していくのであった。
その光景を、会場から離れたビルの屋上から眺めている者たちがいる。
「な、なんデスかあのトンデモ……」
「綺麗……」
比良坂真矢たち《武装組織フィーネ》の装者たち。
「あれ程の力を持つ者たちもまた、私たちが戦わねばならぬ相手……」
真夜中がほんの一瞬ながら昼と見間違いかける閃光(かがやき)を前に、調と切歌と呼ばれていた《戦神ザババ》のギアの担い手な少女たちは圧倒され、マリアも苦虫を噛んだ様子でその光景を注視している中。
「この程度で圧されないで下さいよ皆さん」
彼女らの背後から響く男の声。
真矢は振り返り、深紅の瞳をその男に向けた。
「君たちは僕が英雄になる為にプロデュースされる〝救世主〟と相成る身なのですから」
《ソロモンの杖》をその手に握る男の発言、特に〝英雄〟の単語に対し、真矢は盛大に溜息を吐きつつも。
「ドクター・ウェル……進捗は?」
「成功です、目覚めましたよ……〝天に落ちたる巨人〟――《ネフィリム》がね」
了子の推理通り、今は《フィーネ》の構成員であるウェルの口元がほくそ笑み、また一つの《聖遺物》が覚醒したのだと告げた。
つづく。
この回は絶対『S2CA』で締めると前から決めてたので、どうにか収まって安堵。
しかしニコ動でS2CAトライバーストの場面見直したのですが、コメントがすっかりパチンコ関連ばっかでしたねw 自分はてんでパチンコやらないので専門用語は何が何やら(コラ
ただ『S2CA』は名前こそ同じだけど経緯が前作で大分アレンジしたせいで用途が大分変っちゃいましたね。
でもせっかく『コンビネーション』なのに絶唱の負荷全員分をビッキーが背負って一人で絶唱パンチが……ビッキーばかり身を削らせてどうなの?と思うところがあったので、各々のギアの特性を生かした連携攻撃にしてみました。
原作と違って『マリアたちがノイズを置き土産にしたのは絶唱で聖遺物を覚醒させるため』と分かっていながらも歌った朱音たち。
月の落下から世界を救う為とは言え、その為に犠牲を良しとする『武装組織フィーネ』との対比でもありますね。