GAMERA/シンフォギアの守護者~The Guardian of Symphogear~第二楽章-LUNAFALL 作:フォレス・ノースウッド
中央に円形が象られた一室にて、その円を取り囲む形で電動車椅子に腰掛ける《武装組織フィーネ》の実質的首魁ナスターシャ、その支援者(パトロン)にして《錬金術師》のキャロルと配下のオートスコアラーの一人のレイア、さらにもう一人のガングニール使いの装者マリア・カデンツァヴナ・イヴと生化学者のドクターウェルがいた。
その光る円は大型のホログラム投影機であり、機器が今映し出している立体映像の内容は、朱音とミカの戦闘記録であった。
『Let’s Dancing go(さあ踊りブチかますぞ)~~♪』
朱音自身の前世たるガメラの手を象った炎を纏いて歌う彼女の拳と、ミカの大熊を思わす巨大な拳。
拳同士の正面衝突で全方位に広がる衝撃波が大気を震え上がらせ、両者の足が踏みしめるアスファルトはクレーターができる程の亀裂が走り、破片が虚空に舞い上がった。
ミカは左手をガメラの右手と鍔迫り合ったまま、左の掌の中心部からカーボンロッドを至近距離から朱音の顔面目掛け射出したが、それは読まれていたらしく、朱音はその場でしゃがみ込み直撃を回避した。
同時に朱音がガメラの炎の手を開いてミカの熊手(ひだりて)を掴み上げて引き寄せ、指間腔から鈎爪を伸ばした左の握り拳からアッパーを繰り出す。
『一本ぐらいクレてやるぞぉ~ほらヨ~』
拳打と刺突の重ね掛けを腹部に受けたミカは、されど苦痛を見せないどころか笑みを浮かべたまま、掴まれている左手をパージし、二本に分かれたロール髪の先からジェットを噴射させて上空へ昇った。
切り離した左腕の断面、瞬く間に新たな腕を生やして再生され、両手の掌から小振りのカーボンロッドを地上にいる朱音めがけ乱れ撃ち出す。
対して朱音は―――その場から一歩も動かぬまま、上空のミカを見上げている。
「地味にナイス判断」
この戦闘映像の記録者当人でもあるレイアが賛辞の言葉を送った通り、ミカは回避されるのを見越してカーボンロッドの弾幕を張ったのだが、朱音の翡翠の瞳はそれも看破したらしく、敢えて不動に徹したことでロッドは全て外れて地上に突き刺さるに終わる――かと思われたが、ミカは朱音の首筋めがけ、アイスピック程の細身にして鋭利なロッドを一本を発射していた。
だが刺さればギアアーマー越しでも致命的になりかねない凶器(ロッド)を、朱音の手は見事にキャッチして、そのまま握りつぶした。
「まるで猫な反応速度ですね~~〝亀〟なのに」
「………」
ウェルは朱音が見せた超感覚を前に揶揄を発する一方、実際に正面から相まみえたマリアの方は口内に溜まった唾を飲み込み、口をつぐむ度合いが強められる。
画面(ホログラム)内の朱音はアームドギアのライフルを生成し、上空のミカめがけお返しとばかり火球を連射。
『おっとアブナいゾ~!』
ミカは両手を前方に翳し、掌から放射する炎を八面体のダイス状に閉じ込めたバリアで迫る火球を全て防御してみせた――様を見たマリアは驚きで透明感溢れるスカイブルーの瞳を大きく開く。
オートスコアラーとは〝模擬戦〟と言う名の実戦で何度も戦わされてきたが、マリアが知る限り、あのような防御手段を用いられた覚えがなかった。
対して己が飛び道具を防がれたモニター内の朱音は涼しげな顔のまま足をふわりと浮かせた刹那、腰部と脚部のスラスターを点火して飛翔する。
ミカは自分の身の丈以上もある大型カーボンロッドを両手で携え、急速上昇して迫り来る朱音めがけ、上段に振り上げた。
対して朱音は軌道を変えないどころか、加速を一層上げ、握り拳にした両腕をエックスに組んで突進。
虚空を駆ける朱音のX状に交差する諸手と、上段から振り下ろしたミカのカーボンロッドが、正面から激突した瞬間、朱音は交差させていた両腕を開いて引き絞り、前腕のアーマーから生える刃(クロー)がカーボンロッドを両断してみせたと同時にサマーソルトでミカの顎を蹴り上げる。
朱音の足先が夜天に向き、体勢が天地逆転したが、まるで逆再生されたが如く彼女の足が弧を描き、右足がミカの頭部へ踵落としを撃ち込み、左足からのハイキックの衝撃が相手の頭部を一八〇度回した。
「プラズマジェットと半妖力装置(リパルサーリフト)の合わせ技か、朱音(やつ)にとっては大気中でも宇宙(うみ)を泳ぐも同然なわけだ」
まさに〝水を得た魚〟同然の機動力で空中を舞う朱音のからくりを、キャロルが口にした中、顔と胴体の向きが真逆となったミカの首に朱音は右手で鈎爪を差し込んだまま、地面めがけ急降下。
左手に携えるリボルバーの銃口をミカの胴体に密着させて連射させた朱音は、鈎爪を引き抜くとともに相手の胴体を足場に跳んでアスファルトに着地、指をかき鳴らすと―――ミカに撃ち込んだ弾丸が爆発を引き起こした。
爆炎に背を向けて立つ朱音はエルフナインと民間人の下へ駆け寄ると《テレポートジェム》をエルフナインから受け取る。
朱音は即座にその用途を理解したらしく、炎の中から上半身が爆発で吹き飛ばされながらも再生中のミカを見据えたまま、ジェムを叩き割って転移した―――ところで映像が一時停止した。
黙して映像を見ている一人なマリアは、内心では《ルナアタック》に於ける終焉の巫女フィーネにとって最大の障害と見なされていた異端のシンフォギア装者にして《怪獣転生体》たる朱音の戦闘能力に改めて圧せられている。
前述した通り、マリアもオートスコアラーたちと訓練の一環で幾度も模擬戦と繰り広げてきたが、キャロルが創造した人外たちの戦闘能力はいずれも凄まじく、何度も苦杯をなめさせられてきた経験がある。
それ程の相手を、向こうが〝本気〟を出していない小手調べではあったとは言え、初戦から互角に戦ってみせ、そこからさらに自分との連戦していた事実を前に、歯痒い思いとなっていた。
「《櫻井理論》によりますと、適合者が手にした《アームドギア》の延長線上に《絶唱》の特性が表れるとあります」
「《地球(ほし)の姫巫女》の場合は、前世の能力が能力だけあって大分勝手が利くものだな……」
キャロルが指摘した通り、朱音の《アームドギア》とは前世(ガメラ)が有していた能力、
熱エネルギーの操作と超放電現象そのものと言えよう。
「レイア、《絶唱の四重奏》の記録を」
「はい」
ナスターシャからの指示に応じて、ホログラムのコンソールを入力し直すレイアによって立体映像が切り替わる。
一週間前の増殖分裂型巨大ノイズ相手に、二課所属の装者たちがそれぞれ披露した《絶唱》の技。
翼と《天羽々斬》による神速の抜刀術。
クリスと《イチイバル》による広域殲滅の超火力。
これらだけでも〝決戦機能〟に相応しい絶大な攻撃力を有しているが――。
「《融合症例第一号》……立花響」
マリアの口から発せられた《F.I.S》でも用いられたコードネーム。
聖遺物と人間の肉体が融合した存在となっている響と《ガングニール》と朱音との同時攻撃が、本体を露出させられた増殖分裂型ノイズを一撃で灰燼に帰した様がはっきり映し出される中、レイアは追加でホログラムを表示させる。
論文(レポート)であり、著者名には〝RYOKO SAKURAI〟とあった。
「やっと邪魔なプロテクトを解除できたか……」
「はいマスター、《F.I.S》のデータベースに保管されていた先代フィーネのレポートによりますと、立花響は潜在意識に根差す〝この手に武器を持ちたくはない〟心象ゆえ、フォニックゲインを《アームドギア》として固形化することができないと記述がございました」
次に表示されたのは、元は特機二課の所有物なノイズと戦う響の記録映像の数々、《ソロモンの杖》護送任務含めた直近のものまで、響はギアのリミッター解除進行に合わせたアーマーへに追加機構が盛り込まれることはあっても、手そのものには一貫して〝武器(アームドギア)〟を持つことは無いまま、現在にまで至っている。
「やはり〝誰かと手を繋ぎ合う〟ことこそ、立花響(かのじょ)の《絶唱》の形であると言えるでしょう」
「う~ん、そこが僕には解せないのですよね~」
ウェルが鼻で笑い気味に眼鏡の中央を押す。
「立花響(かのじょ)が〝英雄〟であることに異論はありませんが……武器を持とうが素手であろうが、結局〝戦う〟ことに変わりないのですから、欺瞞に見えてくるのですよね~~」
「ですがその立花響の潜在意識、誰かと手を繋ぐことを特化した性質こそ《絶唱の四重奏》を可能とし、爆発的な《フォニックゲイン》を齎した理由の一つではあります」
「ではプロフェッサー、二課の装者たちには、もう一度その〝四重奏〟を歌わせる方針で決まりか?」
「はい」
キャロルからの問いに、ナスターシャは淀みなく答えたと裏腹に、マリアの表情からは陰りが増したきらいが見られた。
そんな彼女をよそに、ナスターシャたちは今後の方針を取りまとめていき、この場の会合が解かれ、各々退室していく最中――。
「マリア、後悔しているのですか?」
「いえマム……私は私の〝使命〟を全うしてみせる」
マリアにとって母親同然……いや母そのものとも言える女性からの問いに毅然と応えた彼女は、相手から背を向けた瞬間、その類まれな美貌に影を差したまま部屋を後にする。
「セレナ……」
回廊を歩きながらマリアは、首にかけている二つのギアペンダントの内、妹の形見である〝白銀〟の方へと手に取り、祈祷するかの様相で握りしめた。
二課仮説本部内の一室、重要参考人であるエルフナインの軟禁用の部屋でありながら、実質《錬金術師》の工房――研究室ともなっている。
壁面のあちこちにはエルフナインがチョークで描いた《錬金術》の計算式があちこちに刻まれており、その部屋の主当人はと言うと、まるで瞑想状態で瞳を閉じて座していたが、突然双眸を開いたかと思えば、PC端末機能が着いたデスクの机上のキーボード型タッチパネルへ高速で文章を入力して、送信させた。
一転して盛大に一息つかせたエルフナインは大きく椅子にもたれてリラックスしたかと思うと、デスク上に置かれている映像ソフト――通称〝円盤〟のパッケージを手に取る。
表紙の映画は、西暦二〇一三年に公開された巨大ロボットと巨大怪獣の熾烈な激闘を描いたハリウッドのSF特撮映画だ。
朱音から軟禁されている環境下での、せめてものストレスを解消する方法として、この作品含めて色々何作か朱音から、お勧めの映画のソフトをエルフナインは貰い受けていた。
他にも二課の方々からのご厚意を受けてもらったことで、心理的余裕がでてきたエルフナインは、だからこそ保護されてから今日までの日々(じょうきょう)に対して〝義もmm府〟が浮かんでいた。
エルフナインは卓上のPCを立ち上げ、ホログラムモニターを出してキーボードを操作し、映像を表示させる。
二課が記録していた朱音とオートスコアラーのミカとの戦闘映像の〝数々〟を見直し、補正(アップコンバート)も掛けていく内に、カメラたちは確かに捉えていたのに気づけた。
「レイア……」
アプコンを施しても尚解像度は荒かったが、この独特のウェーブがかったショートヘアと引き締まったスレンダーな体格は間違いなく四代元素の〝土〟を司るオートスコアラー――レイア・ダラーヒム。
つまりあの時、あの場にはキャロルのオートスコアラーが二体もいた。
さらにあの時点でノイズを自由に召喚使役できる《ソロモンの杖》は《武装組織フィーネ》の手中にあった。
いくら《ルナアタック》でフィーネから世界を救った装者の一人な朱音でも、オートスコアラー二体とノイズを同時に相手にしつつ、自分と偶然巻き込まれた立花響の実父を守る戦闘は困難なのは容易に想像でき、キャロルがその気になれば自分を連れ戻すなど簡単にできた筈。
なのに自分はこうして有益な情報を持って二課に保護してもらうことができた……向こうからすればみすみす離反者たる自分の逃亡を許した……正確には敢えて〝見逃された〟のだ。
エルフナインのその疑念が確信に変わったのは、朱音がくれた映画の映像ソフトの内の、前述の特撮映画の設定がきっかけ。
地球外生命体が作り出した侵略兵器である怪獣(KAIJU)に対抗する為に劇中の人類が開発した巨大人型機動兵器は、二人のパイロットが一組(バディ)で乗り込んでお互いの脳と機体のシステムを繋げる形で操縦するのだが、怪獣の生態を研究する科学者な登場人物の一人が、この機能で怪獣の脳と自らを繋いで、怪獣たちの能力及びそれを差し向ける侵略者(エイリアン)に関する情報を探ろうとした。
けどこの感覚の共有(シンクロ)は、繋がり合ったお互いの脳にある情報を相手に曝け出す行為であり、それを怪獣と行った科学者は、図らずも地球人類側の手の内を向こうに与えてしまったわけだ。
説明が長くなったが、エルフナインは映画のこの展開から、自分とキャロルもそのような〝感覚共有〟の状態にある可能性に行き付いた。
もしこの可能性が本当なら、自分が簡単に二課と接触できた理由も見当がつく。
(きっと朱音さんも、その可能性に感づいたから、ボクにこの映画の鑑賞を勧めてくれた……)
二課本部内にて軟禁生活をおくる自分を案じての厚意も本当だろうが、〝木を隠すなら森の中〟と言うことわざの通り、これは朱音が自身の趣味を活用して自身に送られた忠告(メッセージ)なのは確実だ。
お陰でエルフナインは、自分が〝無自覚なスパイ〟として二課に送りこまされた危険性(かのうせい)に行き着くことができた。
この〝肉体〟はキャロルが悠久の時を生き続ける為に用意した《人造躯体(ホムンクルス)》の内、求められていたスペックに満たされなかった〝十一番目の欠陥品〟だが……元よりキャロルが作り、彼女が使う予定の〝ホムンクルス〟だったことに変わりないので、エルフナイン自身がこの身体で見聞きした情報が、あちらに漏洩される懸念は想定した上で事を進めるべきなのも確かだった。
それに――ソフトの再生機能もあるデスクに中身の円盤を入れて再生したエルフナインは、改めて冒頭を見直す。
(〝映画見て、ご飯を食べて、よく眠る〟……こんな有効な特訓方法があったことは驚きだったな)
朱音たち二課所属のシンフォギア装者も行っていると言うこの特訓法(トレーニング)、最初朱音当人から仔細を聞いた時は懐疑的だったが、実際に映画内の描写(イメージ)を下地に精神を集中を繰り返して始めてから一週間……今はこちらからキャロルの五感を通じて《武装組織フィーネ》の現状をおぼろげなビジョンながら見聞きできた。
先程急いで端末に入力したのはその情報で、逆にキャロルに悟られる前に急ぎ櫻井了子博士に伝達していたわけである。
もう少し具体的な情報を取り寄せたい欲はあるが、余り深入りし過ぎると、キャロルに裏をかかれてしまうだろう。
なのでエルフナインは〝特訓〟の続きも兼ねて、映画鑑賞を続ける。
『倅がああなっちまったのは俺に原因がある、俺一人で育ててきた……器量はあるんだが、可愛がるべきだったか、それとも引っぱたくべきだったのか……今でも分からん』
『お言葉ですが、今は引っぱたくべきでしょう』
場面は丁度、息子もロボットのパイロットかつバディでもあるベテランの父親が、怪獣から世界を守る傍ら男手一つで我が子を育ててきた苦悩を主人公に打ち明ける下りで――。
〝キャロル……世界を――〟
「パパ……」
思わずエルフナインは、彼の様に男手一つで自分たち……否、キャロルを育ててくれた〝父親(パパ)〟との記憶(おもいで)を反芻するのだった。
「さて、おセンチな呵責は後々ってことでね……」
二課仮説本部の艦橋(しれいしつ)では、長野県皆神山で発見された聖遺物《神獣鏡》を《武装組織フィーネ》が有していた理由が、他ならぬ先代の自分自身(フィーネ)であった事実に対し自責の念で沈んでいた了子は、エルフナインから贈られてきた例の情報(メール)の着信に応じる形で一度外していた眼鏡をかけ直し、レンズ越しに引き締まった双眸をモニターに向けて操作を再開する。
「エルフナインくんはなんと?」
弦十郎の五感は、了子から鼻を啜る音と、瞼を拭った手の甲の水気の煌めきを感じ取ったが、毅然と職務を全うしようとする彼女の心意気を尊重し、敢えて先の《神獣鏡》と奏とその遺族に関する懺悔の言葉に関しては言及せず、仕事に徹することにした。
「まずはあちらさんの〝装者とギアホイホイ作戦〟疑惑についてね………あ~案の定、例の病院が〝かすみ網〟だったか」
「まあ、いかにもなきな臭さがあったからな」
ここ数日、緒川ら二課エージェントたちは《QUEENS OF MUSIC》での劇場型テロが起きた直後、会場付近に乗り捨てられていたマリア・カデンツァヴナ・イヴ関係の大型トレーラーの入手経路を通じて《武装組織フィーネ》の手がかりを集めており。
〝こいつNINPOを使うのか!?〟
〝まさか噂のNINJAか!?〟
〝アイェェェ~~!?ニンジャ!?ニンジャなんでぇぇ!?〟
つい数時間ほど前、緒川はかの組織が置いて行ったトレーナーの経路を遡る過程で浮かび上がった、表向きは〝土建屋〟と言うことになっている某反社会的組織の殺伐とした事務所へ殴り込み……もとい訪問し、押収した出納帳から、架空の企業より大型医療機器や医薬品に計測器等が、約二か月前にて大量発注されていた痕跡を発見していた。
そして例の出納帳に記載されていた情報を追いかけ、ほぼ同時期から、現リディアン校舎からそう遠く離れていない地点にある、廃屋となってから長年放置されたままの《浜崎病院》に、度々物資が搬入されていた記録も入手していた。
〝罠(えさまき)ですね……それ明らかに〟
その時司令室にて緒川からの一連の報告を聞いていた面々の内、装者の中で唯一あの場にいた朱音の口からもぼそっと、これは二課をおびき寄せる〝罠(トラップ)〟の可能性が言及されており。
〝あの日までずっと存在を隠匿して世界を欺いてきた連中が、ああも分かり易くて露骨な手がかりを置き去りにしたとしたら、そいつは〝わざとやった〟に他なりませんよ……〟
続けて朱音の口から発せられた皮肉も込みで、弦十郎たちも同意し、異論など差し込む余地など無かった上に、エルフナインからのダメ押しで確証へと相成った。
『司令、緒川です』
噂をすれば何とやら、先程反社会的な方々が運営する土建屋で大立ち回り……もとい情報収集をしていた〝忍者〟の末裔でもある緒川からの通信が来た。
『おっとり刀で、先程朱音さんたちのいた区域に参じたのですが……』
司令室のホログラムモニターに、緒川らエージェントの黒スーツに備えられている超小型カメラ映像が表示されているのだが、通りには朱音と比良坂彩矢によって気絶させられ横たわっていた筈の米国特殊部隊の姿が微塵も欠片も無く、関東地方特有の季節風(からっかぜ)がどこかものさびしい響きを上げて吹いている。
「米国か、それとも《錬金術師》の仕業か……」
「どっちにしても、手際の良いお掃除スキルだこと~~~さて、朱音ちゃんはどこに転移したのかしら~?」
程なく朱音、正確には彼女が持ってる二課専用端末(スマートウォッチ)GPS機能で現在地を割り出した了子は――。
「あらまた大胆ね~~♪」
思わずニヤケ声を上げて、口紅で煌めく口角が綻ぶ。
米国特殊部隊にマークされていた比良坂彩矢らを伴う朱音が、了子から貰い受けた《テレポートジェム》を使い転移した行き先は、それこそ《武装組織フィーネ》が二課をおびき寄せる罠(おとしあな)に選抜されていた、あの《浜崎病院》の屋上であった。
つづく。