GAMERA/シンフォギアの守護者~The Guardian of Symphogear~第二楽章-LUNAFALL   作:フォレス・ノースウッド

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朱音「実は10月3日が私の誕生日だ、あと作者のせいで発育がまた進んで原作シンフォギアなら二期のGに当たる本作の時系列時点で身長が170㎝になってしまった……これ以上伸びないで……(;´∀`)」


※今回の使用曲『不死鳥のフランメ』


#4 - 錬金術との邂逅 ◆

 翼から招待された《QUEEN OF MUSIC》のライブ会場に向かう途中で《バビロニアの宝物庫》から飛び出してきたノイズどもは、横浜港山下埠頭にて現出した。

 被害の拡大の阻止に、何より翼が自身の〝夢〟で歌える場所(チャンス)を奪わせまいと、

二課所属の装者の中で現状唯一長時間の単独飛行ができる私が現場に急行し。

 

〝さあ聞くがいい~~轟き響いて~~災いを浄化する~~旋律の光だ~♪〟

 

 独自に考案したシンフォギアの運用法――楽器(ギター)に変化させたアームドギアとの弾き語りで生み出した高密度のフォニックゲインを大気中の全方位へ波状で放出させる歌唱(せんぽう)で、ノイズの群体を一挙に炭素分解させた。

 新手が来るか否か身構え続けるも、次なる位相歪曲現象が起きなかったので。

 

「状況終了」

 

 警戒そのものは解かず、ぱっと見では〝変身解除〟したとしか見えない体で装束をギアから私服に戻した私は、《ディーンハイムコーポレーション》の社長の幼少期にしか見えない外見をした子へ歩み寄ってしゃがみ。

 

「失礼」

「はい」

 

 あれだけの数のノイズからその小さな体躯で必死に逃げてきたのだ、念のため相手の負傷の有無を確認する。

 

「大丈夫?怪我は、なさそうだね」

 

 シンプルなワンピースの上にフードと紫のラインが付いた黒いローブと言う、現代ではどこの国でも目立つのは間違いない風体をしているこの子から、幸いにも目立った外傷は見られなかった。

 

「助けてくれてありがとうございます、異端のシンフォギア――ガメラの担い手、草凪朱音さん……ですよね?」

「ああ、そういう君は? 」

 

 自分の名前、装者であること、己の前世かつギアの名も存じているらしい理由は一旦置いておいて、私は目線が対等になるようしゃがん体勢のまま名を尋ね返す。

 

「僕の名前はエルフナイン、〝錬金術師〟です」

 

 錬金術――その起源はかの先史文明時代からと言われ、近代科学が台頭する以前の時代にてかつては正統なる学問として存在し、卑金属から貴金属への生成に限らず不完全な人の肉体や魂をも完全なるものへの錬成を目指す化学技術のことだ。

 現代ではすっかりファンタジー系の創作物の題材でしかお目にかかれないものだが、エルフナインと名乗ったこの子の真剣な眼差しと物腰を見るに、どうやらかの学問が廃れたのは表向きで、社会(せかい)の裏では今日まで存続しているようだ。

 

「で、その錬金術師(アルケミスト)くんが私たちに何用かい?」

「えーと……今、《QUEEN OF MUSIC》でテロが起きようと―――」

 

 聞き捨てられない単語がエルフナインの口から発せられた最中、耳に付けた通信機から緊急警報が鳴る。

 

『朱音ちゃん!新たな位相歪曲反応が検出されたわ!』

「っ! 場所は!?」

『《QUEEN OF MUSIC》特設ステージ内よ!』

 

 通信機越しに友里さんの口から、今一番起きてほしくないと願わずにいられなかった場所で特異災害が発生してしまった事実に、私の背筋は戦慄で震えあがった。

 

 

 

 

 

 

 

『『Ignition……――』』

 

 

朱音が山下埠頭エリアに出現したノイズと交戦中だったその頃、《QUEEN OF MUSIC》ライブ会場では――。

 

『『いま不死なる~夢を羽根に~~願う明日をともに飛ばないか~~♪』』

 

 ――翼とマリアの二人が歌い上げるコラボソング――《不死鳥のフランメ》が、観客たちのコーラスも交えてクライマックスを迎え。

 

『『天を焦がせ~歌え――PHOENIX SONG~~~♪』』

 

 このライブのメインイベントを飾るだけあり、会場一杯に歓声が轟き広がり、演出の一環でホログラム投影された〝不死鳥〟を想起させる緋色の羽根たちが飛び交う中、彼女たちのコラボの一曲目が喝采の中で歌い終えられた。

 

「私もいつもみんなから、たくさんの勇気をくれてくれるお陰で、今日もこうして歌い続けていられる! この場を借りて改めて感謝したい―――ありがとう~~! だから私の歌を聞いてくれる人たちに、貰った分の勇気を分けてあげたい!」

「私の歌も世界中にくれてあげる! 振り返らずの全力疾走―――Come with me ,Only If you Can(ついてこられる奴だけ付いて来いッ)!」

 

 

 観客(オーディエンス)たちの歓呼の嵐がまだ当分止みそうに無い中、翼とマリアはそれぞれ、会場内にいる人々から配信越しに見ている者たち含めて興奮冷めやらぬ聴衆へと呼びかけ、彼ら彼女らからさらなる拍手を齎し。

 

「私からも感謝を伝えるわ、この大舞台に日本のトップアーティスト――風鳴翼とともに歌うことのできた僥倖を」

「私も、貴方と言う素晴らしき歌女(うたいて)と巡り合えたことを光栄に思う、マリア・カデンツァヴナ・イヴ」

 

 スポットライトを華々しく浴びる二人は舞台上の中心にて、握手を交わし。

 

「私たちが伝え、示していきましょう、歌には力があると言うことを」

「そうね、それは世界をも変えていける力だ」

 

 歌姫二人が、歌を通じて〝気心(おもい)〟を通じ合えた――。

 

「そして――」

 

 ――世紀の大舞台と言ってもいい今宵のコンサートを直に目の当たりにしている人々の誰も彼もがそう確信するに至りかけ、このまま彼女たちによる協奏(コラボ)の続きを刮目していたその時、マリアは翼に背を向ける形で下手側に数歩進めて――この場に似つかわしくない訝しい笑みを浮かべた。

 

「もう一つ……」

 

 白銀の衣装(スカート)の裾を翻る動作が合図となったとばかりに。観客席の至る場所から突如、空間の歪みからの緑色の発光現象が多数生じる。

 その光の中から現れたのは――。

 

「っ――ノイズぅ……?」

 

 大きく開く瞼と瞳が震え、額から冷や汗が頬を滴る翼が因縁深き特異災害の発生を知覚し、奴らの総称を口にしたと同時に、会場内にいる観客たちは目と鼻の先で突然出現した災厄を前に悲鳴を上げてパニックに陥り。

 

「うろたえるな……」

 

 発狂寸前の錯乱状態で、少しでもノイズの猛威から逃れようと叫喚と言う騒音(ノイズ)をまき散らして我先にライブ会場から脱しようする観客たちによる濁流が起きかける最中。

 

「狼狽えるなッ!」

 

 マリアから発せられた咆哮(さけび)は、喚き叫ぶ観客たちの〝パンデミック〟を瞬く間に沈めてみせた。

 しかし観客のパニックを結果的に一時鎮静化させただけで、ライブ会場内には依然としてノイズたちが微動だにせず我が物顔で鎮座し、世紀の晴れ舞台は一転として、いつ惨劇が暴発するか分からぬ〝火薬庫〟へと変貌。

 実質ノイズに〝ハイジャック〟されてしまった会場内は不気味な沈黙が支配しつつあった。

 

 

 

 

 

 

《QUEENS OF MUSIC》の表舞台にて特異災害が発生した裏で、緒川は施設内の廊下を足音を一切鳴らさず走りながら〝マネージャーモード〟の証である眼鏡を外し、腕の二課専用端末(スマートウォッチ)で、動画サイトでは未だ中継が流れていることを確認し、音響調整室に繋がる扉に近くまで辿り着いた。

 壁に背を付けて懐から拳銃《SIG SAUER P320》を取り出してセーフティを解き、ドアノブへそっと手を伸ばす。

 マリア・カデンツァヴナ・イヴの目的が何であれ、あれだけ神がかったタイミングでノイズが現れたと言うことは、先程移送中に奪取されたと《ソロモンの杖》を持った共犯者が会場内に潜伏し、一番いる可能性が高いのがここだった。

 向こうに気取られまいと息を殺して、一気に扉を開いて調整室に飛び込み銃を構えた緒川の目線が捉えたのは――。

 

「あなたは……」

 

 ミキシングコンソールの手前で立っていた人物が緒川に振り返る。

 

「思ったよりもお早いご到着ね、特機部二のNINJAさん」

 

 あのマリアのマネージャーをしていた女性――ファラは眼鏡を外し、余りに白みが強い肌色の手から諸刃の剣が現れ、柄を握る。

 咄嗟に緒川は発砲するも、ファラは銃口から発射された弾丸を全て切り捨て。

 

「慌てないで、まだライブは続いていますもの、むしろこれからが本番」

 

 本来この密室で起きるはずのない突風が螺旋の機動で生じ、視界を遮られた緒川は咄嗟に反撃を躱そうと下がるも。

 

「どこへ?」

 

 風が止んだと同時に、ファラの姿は最初からいなかった様に消えていた。

 ともかく今の内に中継だけでも止めようとコンソールへと急ぐも。

 

「やられましたね……」

 

 してやられたと、苦虫を噛み潰す緒川。コンソールは火花と稲妻を発する程に破壊されてスクラップと化しており。

 

「藤尭さん、中継の方は?」

『まだ続いていますよ、なんとか逆探知したいところですけど、向こうも優秀なハッカーがいますね……割り出しには骨が折れそうです』

 

 にも拘わらずサイト内では中継動画はジャックされてるらしく継続されており、他の共犯者が別の場所で配信を操作しているのは明白だった。

 

「翼さん……」

 

 緒川は調整室の窓の向こう、舞台上にて目の前で起きている特異災害を前に立ち尽くしている翼の様子を見やり、彼女を案じて名を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 すっかり日が暮れて夜になり、街灯が点在して区域内を照らす山下埠頭。

 内心に動揺の震えと怒りの炎が無いと言われれば嘘になるけど、逸り昂る自分の気持ちを宥めて御す私は、司令室にいる櫻井博士たちからスマートウォッチによる通信で現況を聞きつつ、同端末のホログラムモニターに映された中継動画を拝見している。

 

「『怖いわね、この状況でも私に飛び掛かる機を窺っているなんて』」

 

 動画のマルチアングル選択と端末の映像アップコンバート機能を生かして、ノイズを用いた劇場型テロの主犯であることは間違いないマリア・カデンツァヴナ・イヴの表情が見えるアングルから、二課本部にいる司令たちに伝える形で読唇術(アテレコ)をする。

 マリアは衣装で隠れていた《天羽々斬》の待機形態(ペンダント)を露わにして、戦意の視線を突き付けてくる翼に余裕と不敵な笑みを崩さずに。

 

「『でも逸らないの、観客(オーディエンス)たちがノイズからの攻撃を防げると思って?』」

 

 今会場内にいてノイズを前に脅迫されている観客たちを引き合いに出して翼に釘を差すマリア。

 奴の言う通り、あの場にいる人たちは全員〝人質〟にされている……二課(こちら)が下手な動きを見せれば、見せしめで確実に犠牲を招いてしまうだろう。

 

「『それに、中継はまだ続いているのよ、日本政府は《シンフォギア・システム》の画用は公表しても、それを担える装者の存在は秘匿したままでしょう? Ms.風鳴翼』」

『甘く見ないでもらおうか! その程度の脅しで私が鞘走るのを躊躇うとでも!?』

 

 さらには装者(わたしたち)の弱みまで突いて挑発を投げ続ける、翼の方も毅然とした態度を崩さずにいるけど、逆を言えば現状はこれが精一杯の抵抗だ。

 今は〝動かざること山の如し〟に徹するしかない。

 

 

「博士、ノイズの解析の方は?」

『《ソロモンの杖》で召喚・使役されているのは、間違いないわね……』

 

 自分でもそうだろうと察しは付いていたが……やはりライブ会場に出現したノイズは本日移送中に奪われてしまった《ソロモンの杖》を今手にしている何者かが使役したものだとはっきりし、私は悔しさで歯噛みさせられる。

 モニターに映る博士も、先祖(フィーネ)に乗っ取られていた間の出来事とは言え、かの完全聖遺物の起動させた張本人の一人でもあるだけに、普段の陽気さは鳴りを潜めて苦々しい表情を見せていた。

 

「友里さん、響たちが現場に到着できるのは?」

『状況介入まで、あと約三十分かかるわ』

 

 当初は二課のヘリが乗降できる基地で降ろし、エージェントの車両で会場まで送る手筈だったのが例のアクシデントでヘリに乗り直して直接現場に向かう都合上、響とクリスが向こうに着くまでどうしてもそれなりに時間を要する。

 

「ごめんなさい、僕がもっと早く二課の皆さんと接触できていれば……」

 

 エルフナインは沈痛な面持ちで俯いたまま、謝意を見せてきた。

 

「そう自分を責めることはない、それを言ったら私たちも〝杖〟を悪用しようとする連中にみすみす奪われてしまった、おあいこさ」

 

 過度な罪悪感で、この子が自分自身を傷つけてしまわない様に、私はそっと髪を撫でて微笑みと――。

 

「起きてしまったことを悔やむのは後でもできる、今は自分が今できることをしよう」

「っ……はい」

 

 勧奨の言葉を贈り、大きく頷くエルフナイン。

 この子にも言った様に、感傷に浸るのは事が終わってからいくらでもできる。

 今為すべきは、この事態をどう収束させるか……その為にも光明となる情報の収集と確保と整理。

 幸いにも、このエルフナインこそ大事な〝手がかり〟を持っている大事な〝証人〟。

 先のノイズどもはそれを阻止する為に〝杖〟で召喚されたのは間違いない、早急に保護しなければならないのだが……腕の端末から二課エージェント隊員たちとの通信を繋ぎ。

 

「すみません、先の特異災害に巻き込まれた民間人が〝二人〟いるので保護を」

「二人?」

 

 疑問符を浮かべた頭を傾げるエルフナイン。

 

「もう出てきていいですよ! ノイズは退治しましたし、迎えを寄越しましたから!」

 

 私は〝二人〟と口にした理由の種明かしに、埠頭内の建物の一角の扉へ呼びかける。

 程なく、中から警備服を着た中年男性が一人、扉を開けてでてきた。

 

「いや~助かりました~このまま気づかれずに置いてかれたらどうしようかと不安で怖くて~~……」

「っ……」

 

 避難が遅れて隠れ潜んでいた民間人の存在自体は感づいていたが、この警備員と対面した私は、ポーカーフェイスを維持させながらも驚きを隠せなかった。

 制服越しでも分かるほど余り栄養が行き届いてないやせ細った体躯、実際は一七〇センチ前半ぐらいはあるだろうに猫背で私より小柄に見えてしまう頼りなさげな姿勢、手入れが不十分で無造作に伸びた癖のある髪に、無精ひげとミスマッチでともすれば軽薄な印象を持たれかねない、後頭部を掻いてバツの悪そうな笑顔を浮かべる優男な面立ち。

 制服に付いている名札には、苗字こそ〝立花〟ではなく〝守崎〟とあるが〝洸(あきら)〟と表記されている。

 間違いない、私はこの人を知っている……でもまさか、こんな時に、こんな場所で当人と会うことになるとは。

 

「あの~~なにか?」

「いえ……すみませんが守…崎さんですね、貴方のスマートフォンを貸してもらえませんか?」

 

 とは言え、やることはやっておかないと―――っと、私はスマホを渡すよう手を差し出す。

 

「え? ど、どうしてです?」

「撮ってましたよね? ノイズを掃討していた時の私を」

「やだな~~そんなパパラッチみたいな真似する暇なんて無かったですって~~冗談きついなお嬢さん~~あはは」

 

 ヘラヘラ笑って誤魔化して白を切るか……はいはい~そーですかそう来ますか、だがこっちは戦闘中でも視線とシャッター音で筒抜けだったので、私は敢えてにこやかな物腰と声色で。

 

「拒否するなら結構ですが、なら国の最重要機密漏洩と肖像権侵害で訴えますよ、賠償金どころか、裁判費用と弁護士を雇う金銭が貴方にあろうが無かろうか関係なく」

「す!すすすすみません!つい出来心で!はいどうぞすっきりさっぱりお消し下さい!」

 

 訴訟社会でもあるアメリカ暮らしで鍛えたジョークとスマイルで圧をあけると、あっさり相手は白状して取り出したスマホを操作し私の掌の上へ、まるで貢物を献上する調子で手渡してきた。

 画面を見ると、案の定ギアアーマーを纏ってノイズどもと戦闘中の自分の姿が写っている。近年のスマホはカメラの補正機能の向上が著しいのでどれもこれもバッチリ撮れていた……大方、この写真(じょうほう)をマスメディア辺りに売ってお金に変えようとしていた魂胆か。

 大事な時に守るべき家族を置いて独り逃げだし、今は〝その日暮らし〟な日々で、そこまでにどん底の絶望を何度も味わってきたと想像も理解もできるが、これでは到底〝一人娘〟には会わせられない卑屈と落ちぶれの極まり具合に、眉間に皴が寄せられて溜息を零す私は写真データを消去、後で藤尭さんにバックアップの消去も頼んでおこう。

 ホーム画面に戻ると、まだ幼い頃の〝一人娘〟と笑い合う在りし日の待受(しゃしん)が画面一杯に表示され、複雑な想いを胸の内に抱えてスマホを持ち主に返した。

 

「じゃあ~~僕はそろそろ帰らせてもらう――」

「――わけには、まだ行きませんよ」

 

 しれっと何事も無かった様に背を向けて帰ろうとする彼のやせっぱちな細腕を、即座にがっちり掴んで阻止。

 

「なんでですか!?」

「お生憎様ですが特異災害対策機動部二課まで同行させて貰います、拒否するなら公務執行妨害で身柄拘束も辞しませんので、どうか穏便にご了承を………フフフッ♪」

「は、はい……」

 

 私は再び笑顔のプレッシャーを突き付けて、相手の逃亡する意志を起こさせまいと牽制した。現在もシンフォギア関係は〝国家特別機密事項〟な以上、相応の手続きには応じて貰わなければならない。

 はあ~~……なんだか元ミッションスクールの新校舎に移ってからも引き続き私と創世たちのクラスの担任であり、日頃何かと〝立花さん!〟と叫びがちな仲根先生の気苦労に対する解像度(りかいど)が深まって、溜息が自然と零れた。

 

「すまないね、こちらも立て込んでて」

「いえ、産業革命以降の僕たち錬金術師も秘匿を徹底するのが暗黙の了解となっているので、よく分かります」

 

 二課(こちら)の立て込み事情関連でエルフナインに詫び入れる。

 現代社会では〝錬金術〟は創作ネタを除けばほぼ過去の遺物な認識になっているのを踏まえると、あちらさんの守秘義務は絶対の掟の域らしい。

 それを破ってまでこの子は私たちに接触(コンタクト)を取ってきたのだ、その覚悟に報いる為にも、まずはおおまかにでも情報交換しようと思ったのだが―――自身の背筋に、殺気の悪寒が走る。

 

『FLAME~ON~♪』

 

《即興歌唱》を奏でながら、振り向きざまに右腕のみをギアアーマーに変質させ、奇襲に対応、敵からの贈り物をその手で受け取った。

 攻撃してきたのは、橙色の鋭利なカーボンロッドだった。

 次の一手が来る―――私たちへ目掛け、膨大な火炎の奔流が迫ってきた。

 

 

 

 

 

 

「ミカの火炎放射の味はどうだ?――だゾ~~」

 

 朱音たちに不意打ちをしかけてきた者の風体は、常人なら誰もが見ても異様かつ奇抜な風体だった。

 スカーレットカラーのボリューミーな髪を、巨大なリボンで縦ロールのツインテール風に纏め、テールの先端からスラスターの火を吹かして滞空しており。

 ボーイッシュな短パンに赤いパンストとフリルの付いたミニポンチョ。

 口内の歯は全て八重歯で埋め尽くされ、肌の色はこれまた人間と思えぬ白さをした肌。

 ひと際目を引くのは、熊の如く大きく鋭い爪が生えた両手―――の片割れの掌から、火炎を放出していた。

 明らかに〝人間〟とは言えない。

 既に着弾地点の炎は、周囲の積み上がったコンテナや建物の高さを上回るまでに膨張し。

 

「〝スーパーヒーロー着地〟~~だゾ~♪」

 

 R指定な某第四の壁が見えるアメコミヒーロー映画にてこの名称で定着した三点着地でアスファルトにクレーターを作り降り立った自らを〝ミカ〟と呼称する少女は、自分が放った炎の勢いが急速に集束していくのを気づく。

 残り火を左腕で振り払って、ギアアーマーを纏い、掌のプラズマエネルギー噴射口により吸い尽くす形で炎の猛攻からエルフナインと守崎洸を守り切り、右手に握りしめていたカーボンロッドを投げ返した。

 

「ちょい!いつギア着けてたんだゾ!?」

 

 それを熊の手で軽く払いのけながらも、彼女から見れば解除していた筈のギアをいつの間にか再起動していた朱音に疑問符を投げるも。

 

「企業秘密だ」

 

 翡翠色の瞳を切れ長に引き締めた朱音は、対峙する相手の問いに答える気は無いと応じた。

 実は朱音はギアを稼働状態にしたままであり、出力を下げた上で外見をその時着ている私服に擬態させており、そんな〝仕掛け〟を知らなければ〝変身解除〟した様にしか見えないようになっていたのだ。

 例えるなら、通常の変身解除がPCで言うシャットダウンなら、こちらはスリープモードと言えよう。 

 

「仮装イベントに招待された覚えは無いんだが……人造人間(ホムンクルス)」

 

 双眸は〝ガメラ〟のものながら、口元からシニカル笑みを作り、ジョークも交えて錬金術でお馴染みの人造生命体の総称を口にする。

 

「ホムンなんとかじゃないぞ! 《オートスコアラー》だぞ!」

「なるほど、現実の錬金術ではお前たち〝四人〟のことをそう呼ぶのか」

「え? なんでミカたちが〝四人〟だと分かったんだゾ!?」

 

 自らを〝オートスコアラー〟と称した少女(ミカ)は、熊の手をパーっと広げて驚愕を表現する。

 

「錬金術師でもあったアリストテレスは、万物は――水、風、土、火――の四つの元素で成り立つと提唱した、お前が火を司るなら、残りの元素を担う仲間も含めてオートスコアラーとやらは少なくとも四人いる――と推理したが、正解だったらしいな」

 

 この疑問には朱音は〝諸学の父〟と言う異名を持つ古代ギリシャの哲学者が提唱した〝四代元素〟を引用し、鎌をかけたのだと返答する。

 

「ミカ……まさか引っかけられたゾ!?」

「That’s right(そのとおり)」

「ズルいゾズルいゾ!」

「フッ……そこは〝賢者〟と表してほしいね」

「………」

 

 地団駄を踏んで悔しがるミカと錬金術の十八番と言える単語を用いてのユーモアを現し意図的に鼻で笑う朱音の一方で、エルフナインは自分が提供しようとしていた錬金術関連含めた情報を自ら入手せしめた彼女の手際に舌を巻かされていた。

 

「それで、目的はこの子――エルフナインを連れ戻しにきたのか?」

「そうだゾ!」

 

 ミカは熊の手をエルフナインに指差した。

 

「そいつは我が社の所有物だゾ、大人しく返してくれれば、お前に手出しはしないゾ」

「そうか……」

 

 朱音は一呼吸分置いて。

 

「だが断る――ノイズを使うテロリストに、譲歩する気は無いッ!」

 

 右腕を伸ばしてエルフナインを庇い立て、毅然と凛然とした佇まいで拒否の意を示した。

 朱音(ガメラ)にとって、事情や境遇がどうあれ〝子ども〟が危害を加えられる事態は絶対に看過できず、それを齎す存在の蛮行は絶対に許さない。

 

【挿絵表示】

 

 相手がギャオスやノイズと言った〝災いの影〟を利用するなら尚更のこと。

 

「そっかだゾ……じゃあヤるしかないんだゾ……」

 

 朱音からの返答に、ミカの目つきから殺意の濃度が上昇し、前項姿勢で戦闘の意志を表明する。その様はまさに獲物へ飛び掛かろうとする猛獣そのもの。

 

「守崎さん、下手な逃亡はよして下さいね、向こうの仲間が口封じに始末するかもしれないので」

 

 対する朱音は、すっかり腰を抜かして尻餅を付き、超常的事態を前に恐怖で全身を震わせる以外に動けずにいる守崎洸に忠告し、彼は恐怖で息を乱す状態の中、どうにか頷く。

 

「エルフナインは、大丈夫?」

「はい、ノイズ以外なら自分とこの人の身を守るくらいならできます」

「頼む」

 

 エルフナインとのやり取りを経て、無行の位の体勢で相手へ戦意の眼光を放つ朱音。

《ルナアタック》で大きく傷ついた月の光が照らす夜の埠頭内にて、しばしのにらみ合い―――を経て、同時に二人はアスファルトを抉る程の脚力で疾駆。

 

「Let’s ~Dancing~go~~(さあ、踊りブチかますぞ)ッ♪」

 

《爆熱拳―――バニシングフィスト》

 

「アハハッ♪」

 

 ガメラの炎(うで)を纏った朱音が繰り出す拳と、カーボンロッドを握りしめて無邪気だがおどろおどろしく高笑うミカからの刺突が、真正面から激突、衝撃波が三六〇度四方八方へと轟き、大気を震撼させたのだった。

 

つづく。

 




まあお判りと思いますがOTONことビッキーパパを出すことは当初から決めてましたが、どの辺で出すかは案の定迷った。
でも早い内に出しておきたいし……―――あ、警備員の仕事中にビール瓶一万ダース食べてる時のソルジャーレギオン見ちゃった大迫さんオマージュも兼ねて警備員の仕事中に巻き込まれた体で出そう!と決めたらスラスラと。
GX本編見直してたけど、さすがにOTONのク〇ムーブやり過ぎじゃない?いくらGX当時のビッキー最大の障害にして彼女のダークサイドでもある(ビッキーの人間的短所はものの見事にOTON譲り)……とは言えね、いつ見ても自分だけあんだけ遠慮抜きに食った後から『持ち合わせが心もとなくてな』と娘に金をせびる姿はいつ見ても『ぶん殴ったろか( #一_一)』となります。
初見で同じ気分になった適合者は少なくない筈(コラ
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