下校中に文月公園で雄二と合流。
その後、駆け足で僕の家へと避難した。
「まさか下校中に尾行される日が来るとは思ってなかったな。
僕も有名人になったものだ。フフフフフ」
「笑い事じゃ無ぇだろうが。
無駄に遠回りしたりフェイントをかけてもしっかりと着いてきやがった。一体何者だ?」
「普通に考えたらBクラスの嫌がらせ。追い回すだけでも疲労は溜まるしプレッシャーもかけられる。
極僅かではあるがBクラスの勝率が上がる行動だ」
「俺もそれくらいは考えた。しかしなぁ……」
「違和感があるんだろ? 言ってみたまえ」
「……感覚的な話だが、Bクラスらしくない」
「僕も同意見だ。Bクラスらしくない」
戦術・戦略に最適解が存在しない以上はどうしても立案者の好みが反映されるものだ。
根本が立てた作戦にしては悪意が足りない。
御空が立てた作戦にしては非効率過ぎる。
Bクラスの第三の人物を疑うべきか、あるいは他クラスの介入を疑うべきだろう。
「とはいえ、ローリスク・ローリターンの作戦だ。有効である可能性がある手を手当たり次第に行っている可能性もある。
犯人はBクラスであると仮定して動いて問題は無いだろう。敵が多数居る想定なんて面倒だからやりたくない」
「そんな理由でいいのか。いやまぁ確かにそうなんだが」
単純な話、Bクラス以外のクラスと戦闘になる可能性はあんまり考えなくて良い。
Aクラスはまだ停戦期間が終わっていない。あの時は『お互いへの宣戦布告を3ヶ月間禁止する』という事になったので攻め込まれる心配はまだしなくても良い。まだ。
Cクラスは言わずもがな。敗戦直後なので仕掛ける事は不可能。
DクラスとEクラスに関しては……よっぽど特殊な状態で宣戦布告されない限りは普通に返り討ちにできる。
よって、直接的な攻撃を仕掛けてくるのはBクラスのみ。だからBクラスだけ警戒しておけば良い。
「さて、それじゃあどうする? 外に居る奴をとっ捕まえるか?」
「いや、止めておけ。暴力行為で停学になって戦争に出られない……なんて事になったら厄介だ」
「根本ならやりかねんな。分かった。僕は大人しくしておこう。
結局放置が一番って事になるのか? かなり消極的だが、仕方ないか」
「ああ。仕掛ける側も対処する側も地味な行動になる地味な嫌がらせだ。
もうしばらくここで時間を潰してから俺も家に帰らせてもらう」
「りょーかい。んじゃ久しぶりに対戦ゲームでもやるか?
対戦方法は交互に指定、負け一回につきジュース1本奢りで」
「よし乗った。じゃあ俺から指定させてもらうぞ」
そんな感じでしばらく時間を潰した後、雄二は帰って行った。
なお、対戦では少々負け越した。少し疲れたな。
翌日。
僕はいつも通りの時間に登校し、いつもとは違う教室へと足を運んだ。
現在Fクラスが使用しているCクラス教室と、相手の本陣であるBクラス教室はどちらも新校舎の3階にあり、当然ながらかなり近い。そのまま戦争に突入すると小細工を挟む余地すら無く磨り潰されるだろう。
なので、昨日のうちに4階旧校舎の空き教室の使用を申請しておいた。これで開幕で詰む事は無くなるだろう。
「さて、まずは……ん?」
教室に入ってとりあえず電気を点けようとしたのだが……点かない。
普通に太陽は出ているので点かなくても問題ないと言えば問題ないが、ちゃんと点くに越したことは無いだろう。
スイッチの辺りを適当に分解してみるが、見ただけでは良く分からない。
この教室は結構長期間空き教室だったはずだから結構前から壊れていた可能性も十分あるが……
「……とりあえず、直せそうな人を呼んでこよう。用務員のおっちゃんとか」
……30分後……
「よし、直ったぞ」
「助かりました。ありがとうございます」
最悪使えない事も覚悟していたが、運良くアッサリと直った。
「ところで、故障の原因って分かります?」
「うん? 恐らくは経年劣化だろうね。それがどうかしたのかい?」
「……いえ、何でもないです」
この学園の管理がザルなのは今に始まった事ではない。そういう事もあるだろう。
仕事を終えた用務員のおっちゃんが教室を出るのと入れ替わりで雄二がやってきた。もうしばらくしたら姫路も来るかな。
「何かあったのか?」
「電気が点かなかったんで超特急で修理してもらってた」
「よく超特急で直ったな。部品の発注とかするとなると数日かかりそうなもんだが。
たまたま予備の部品があったのか?」
「いや、Cクラス教室からパーツをいくつかぶっこ抜いた」
「そ、そうか……その発想は無かった」
戦争中は勿論の事、戦後の補充期間もこの空き教室を使ってしまえばしばらくC教室には戻らない。
その間に必要な部品を手配してもらって、間に合わないようであればまたこの教室からぶっこ抜けば良いだろう。
その辺の事情は用務員のおっちゃんも把握しているのですぐに手配をかけてくれているはずだな。
「なにはともあれ、急いで解決しなきゃならない問題は無さそうだ。
雄二、他に何かやっておくか?」
「そうだな、バリケード……は、もうちょい人が揃ってからにするか。寝てていいぞ」
「りょーかい」
試召戦争において完全な密室を作る事はルール違反だが、教室の2つある出入り口の内の片方を机などで塞ぐ事は普通に認められている。
相手の移動を阻害できるが逆に味方の移動も阻害される。簡単に解除できるような簡素なものだと相手に普通に退かされる。使いどころが地味に難しい代物だ。
まぁ、バリケード作るにしても単純な力仕事になるんで人が揃ってきてからでもいい。たった2人だけでやるのもアホらしい……
ガラガラッ
「おはようございます。今日はこっちの教室でしたよね?」
「ああ。合ってるぞ姫路。お休み」
「え、ちょっ」
当然、3人だけでやるのもアホらしい。サッサと寝るとしよう。
「と言う訳で戦争前夜と戦争前の朝の風景だ」
「のどかな光景ね。嵐の前の静けさかしら」
「そんな不吉なもんでもないと思うがな……
ああそうそう、本話では原作との明確な違いが見受けられるな。本陣となる教室について」
「ああ、アレね。原作では2回目のAクラス戦の前に遠い教室が欲しいからってわざわざEクラスに喧嘩売って教室を交換してたけど、本作では事前申請すれば普通に教室が移動できるっていう」
「そもそも原作が微妙におかしいんだよな……あのルールでBクラスとAクラスが戦ったら近すぎてクソつまらない試召戦争になるぞ」
「クソつまらないは言いすぎだと思うけど……ただの正面衝突になるわね。
設備争奪戦としては正しいのかもしれないけど、ゲームとしては微妙ね」
「まぁ、何はともあれ、次回から開戦となるだろう。御空、覚悟はできているな?」
「トーゼン。キミに今期初の補習室送りをプレゼントしてあげるわ!」
「……戦争絡み以外の補習室も入れて良いなら清涼祭編で既に経験してるんだが」
「え? …………あっ」
「…………。
それじゃ、今回はお開きとしようか」
「じっ、次回もお楽しみにっ!」
「な、泣いてなんてないんだからね!!」
「あ~、はいはい」