ついに戦争が始まった。
相手の本陣であるBクラス教室は新校舎の3階。それに対してオレ達Fクラスは旧校舎4階の空き教室を本陣にしている。
なお、相手も別の空き教室に移動したとかは無いらしい。代表曰く、今朝の段階で申請自体されてなかったとの事だ。
あと、補足情報として旧校舎、新校舎の1階から4階の各フロアはそれぞれ廊下や渡り廊下で接続されている。
よって、敵本陣からこちらの本陣までの進行ルートは2つ。
新校舎の階段を上り、旧校舎へと突入するルート。
旧校舎へと移動した後、階段を上るルート。
ひとまずそれぞれ正面ルート、階段ルートと呼んでおく。
階段ルートはオレを含む数十名が守りを固めている。
そして正面ルートに関しては……
私、御空零はクラスメイトからの報告に頭を抱えていた。
「マジか。確かに効果的ではあったのかもしれないけど……マジか」
その報告とは、新校舎の階段を上り、旧校舎へと突入するルート……正面ルートに関する報告。
え? 何でどっかの伝令が勝手に付けた名前を私が知ってるかって? 分かりやすいから良いじゃないの。
「御空、どう突破する」
「……逆に訊くわ。代表ならどう突破する」
「……まずは状況を整理させてくれ」
「どうぞご自由に。そもそもそんな複雑じゃないけど」
「ああ、そうだな。状況自体はシンプルだ。
進行ルート上に敵が1人で陣取ってる。
そしてその1人が空凪であるという状態だ」
言葉に起こすと状況は非常にシンプル。そして非常に質が悪い。
「ついでに、立会いは高橋先生。条件さえ満たせばいつでも科目変更が可能。
単騎での防衛戦力としてはクラス最強……いえ、下手すると学年最強でしょうね」
「霧島よりもか?」
「霧島さんならむしろ楽勝よ。殆どのケースでは5人くらい同時に突撃すれば半分は突破できるもの。
問題なのは、相手が観察処分者だって事。塞げる道幅が単純に2倍……下手するとそれ以上になるでしょうね」
相手に勝負を挑まれて無視すると敵前逃亡扱いで戦死となるが、逆に言えば挑まれてなければ無視して良い。
相手が『ここに居る人全員に勝負を挑む!』とか言ってもすぐにバトンタッチしてしまえば『勝負を挑まれた状態』は解除されるので対処法さえしっかり分かって居ればやはり回避可能。
当然、相手もそれは理解してるので重ねて勝負を挑むといういたちごっこになる。
バトンタッチしてから再び挑まれるまでの間に召喚フィールドを抜けてしまえば突破完了だが……道が物理的に塞がれていてはそんな事は不可能だ。
さて、今回の話に戻ろう。
今回は塞いでいる相手は1人だけ。しかしそれは観察処分者。
実体化している召喚獣が武器を振り回している横を通るなどどう考えても危険極まりない。それでも近付こうとすると先生に止められる。
よって、通常と比べてかなり広範囲の移動が制限される訳だ。
「ごく少数なら突破させる事はできそうだが……それは敵の思うツボか」
「本陣前で1人か2人で孤立した戦力なんて格好の的でしょうね。
それで、状況が整理できた所で代表はどうするのかな?」
「……対抗手段は大きく分けて3つ。
まず、空凪が疲弊する事を待つ事。あいつの全力の活動にはどうやら制限時間があるらしいからそれを待てば突破は容易だ」
「……そうね」
「だが、却下だ。理由は2つ。
まず、そもそも奴は眼帯を外していない」
「ええ。そうね」
戦争前に情報収集をした結果、どうも空凪くんは本気を出す時だけ眼帯を外すらしい。
それが外れていないという事は本気じゃないという事で、持久戦に持ち込むことはできない。
舐められたものだと文句を言いたい所だけど、実際にそれで防げてしまっているのだから文句の言い様が無い。
「そしてもう一つ。そんな勝ち方をしても意味が無い」
「その通り。そんな方法でしか対処できないっていうのは今回の目的を考えると敗北同然。
良かったわ。代表を引っ叩く事にならなくて」
「引っ叩くつもりだったのか……」
「ええ。このハンマーで」
「殺す気か!?」
「あっはっはっ、じょーだんじょーだん」
私がシレッと取り出したのは家庭用の工具箱に入ってそうなハンマー。
この為だけに用務員さんから借りたので良い反応が見れて満足だ。
「さて、2つ目の手段は迂回する事だ。
学年最強の単騎防衛戦力が正面のルートに居る分他は手薄になるって事だ」
「単騎だからこそあんまり手薄にはなってないんだけどね」
「……と、とにかく! 真っ正面から相手してやる必要は無い。
それに、単純に戦線を広げる行為は地力の低いFクラスにとっても苦しいはずだ」
「そうね。それは私も完全に同意するわ。
それじゃあ代表、この作戦の問題点を挙げてみて?」
「……分かってるさ。そのくらいは相手も思いつくって事だ。
当然対策も練られている。具体的な内容までは分からないけどな」
「大正解。それじゃあ階段ルートからの伝令の報告を待つとしましょうか」
……そして数分後、私と代表はやっぱり頭を抱える事になったのだった。
「ようやく戦争が始まったか」
「開戦が6話目……これは果たして早いのか否か」
「大体1万字とすると原稿用紙25枚分……やっぱり分からんな」
「……本編の話に戻りましょうか。
戦争中くらいはキミ視点はなるべく撤廃して私と宮霧くんの視点にしたかったみたいね」
「ちなみに僕視点の話だと雄二に内心文句を言いながら敵を捌いている最中の描写が入る」
「あ、文句はあるのね」
「当たり前だ。1人で正面の通路を守れとかアホだろ」
「その作戦を添削せずに進めるキミにも問題があると思うけどね……」
「Bクラス相手だとそのくらいの無茶しないとやってられないんだよ! 攻めてきたお前たちが悪い!」
「こっちに飛び火した!?
で、では次回もお楽しみに!!」