Fクラス生として作戦を実行しているオレが言うことじゃないとは思うけど、ヒドい作戦だなと思う。
どんな作戦かって? ここ、階段ルートの防衛部隊の部隊長である木下秀吉の台詞を聞けば分かる。
「皆の者! 階段を上手く使うのじゃ! 仕留める事よりも登らせない事を重視するのじゃ!」
『おうよっ! 喰らえっ!!』
『な、ちょ、それ卑怯……ぐわぁああ!!!』
そこらの人形程度の体格しか持たない召喚獣にとって階段なんて壁と言っても過言ではない。
戦闘において基本的には高い方が有利ってのは一般常識だろう。階段上部で隙間なく陣取っているオレ達が極めて有利なのも当然だ。
この作戦の欠点は防衛にしか使えないという事くらいか。
階段が向こうにとっての障害物になるのは当然だが、それはこちらにとっても同じ事だ。相手を深追いした後逃げようと思っても簡単には逃げられない。
バトンタッチして召喚獣を強制削除する方法もあるけど、突出してるのは変わらないのでバトンタッチが完了する前に殺される事も考えられる。
あくまでも侵入を拒む防衛用。それでも十分過ぎるくらい強いけど。
「この後は……とりあえずここを守りながら現状維持だったっけか」
「うむ。そうじゃな。Bクラスの連中も無理にここを押し通ろうとは思わぬじゃろうから、お互いに最低限の戦力での睨み合いになるじゃろう。
そう雄二が言っておったな」
「最低限っつってもウチらの戦力は結構必要になりそうだけどな」
「そうじゃのぅ……」
Bクラスにとっては別に突破されても問題ないが、ウチらにとってこの場所は本陣の目と鼻の先だ。
こちらは絶対に突破されないような戦力が必要なのに対して相手は本当に最低限……戦闘要員+伝令の2人で事足りる。
「……面倒くさい戦いになりそうだな」
「どういう意味じゃ?」
「ほら、相手が2~3人で、こっちが10人以上。
こんなおトクっぽい攻め時に見えなくもない場面でクラスのバカどもを抑えておかないといけないっていう」
「……確かに面倒な戦いになりそうじゃな……」
睨み合いを維持するってだけの簡単な任務のはずだったんだが……はぁ……
「まさか階段を使ってくるとはねぇ……」
階段ルートに関する戦況報告に私と代表は頭を抱えていた。
「これ、ルール的にどうなんだ? アリなのか?」
「ん~、まあアリなんじゃない? 今は」
「どういう意味だ?」
「こんな単純な作戦がこれだけ猛威を振るったらすぐにルール修正が入ると思うわ。
って言うか学園長に直訴してでも変えてもらうわ。こんなのやってらんないから」
「その直訴、今やったらダメなのか?」
「流石に戦争中は厳しいんじゃない? 戦いの最中に上位クラスである私たちに有利なルール変更なんてしたらこの学校のクラス設備争奪戦の意義が失われる。
それがたとえ常識的なルールの改善だとしてもね」
「うむむ……そうか。なら仕方ない」
まあとにかく、第2の作戦である『別ルートを通る』という案は不可能……とまでは言わずともかなり効率が悪い事が判明した。
残るは3つ目の案だけだ。
「代表、それじゃあ3つ目を発表して」
「無論、正面突破だ」
「分かってるじゃないの」
そう、結局の所それしかない。
階段ルートに最低限の戦力だけ残して残り全てを正面ルートに注ぎ込む。そして道を塞いでいる空凪くんを撃破……最低でも撃退まで持っていく。
まぁ、注ぎ込むって言っても戦場はそこまで広くないから一度に戦える人数は限られてるんだけどね。
となると、必然的に点数の高い人で固めて突破を図る事となる。
「それじゃあ御空、お前に隊長を任せたい。行けるか?」
「……ダメね」
「何だと!?」
「貴方は代表でしょう。『行けるか?』なんて自信が無さそうな言い方をせずにこう命じなさい。
『隊長を任せるから突破口を開いてこい』ってね」
「……そうだった。スマン。
それじゃあ御空。お前に隊長を任せる。お前の全力をFクラスに見せつけてやれ!」
「仰せのままに。それじゃあA班とB班は私と一緒に出撃。それ以外は待機! 行くわよ!!」
教室を出て、新校舎の階段を上がる。
旧校舎への渡り廊下へと歩みを進め……そして召喚フィールドへと侵入した。
「来たか。待っていたぞ御空零。やはり貴様が来ると思っていた」
「そりゃどーも。それじゃあ、押し通らせて頂きましょうか」
「構わんぞ。やれるものならな」
「なら遠慮なく。
こうして、私の初めての召喚獣バトルが始まった。
「ようやくキミとの戦いだね」
「……そう言えば貴様が召喚したのって初めてか?
転校組だから1年の時の実習でも居なかったはずだし」
「流石に教室で動かす練習はしてたわ。
本当に初めてだといくら私の点数でも瞬殺されそうだし」
「まぁ、それもそうか。召喚獣も急所を突けば一撃死させる事も可能だしな」
「経験値不足が若干不安ではあるけど……それでもBクラス最強のはず」
「……点数でゴリ押しする貴様と、直感でゴリ押しする僕。どっちも脳筋だな」
「……否定できないわね……
そ、それじゃあ次回もお楽しみに!」