バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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07 風の能力者

 Bクラス副代表、御空零。

 前回の戦争では影も形も見当たらなかった奴だが、普段の言動からして只者ではないという事は察しが付いていた。

 一応、結構な手練だろうと覚悟はしていたんだ。それこそAクラスでもおかしくないくらいの。

 だが……その想定は少々甘かったようだな。

 

 

 [フィールド:数学1A]

 

Fクラス 空凪 剣 288点

 

Bクラス 御空 零 641点

 

 

「……おい貴様、その点数は何だ? 下手すると霧島よりも点数が高いんじゃないのか?」

「さぁどうでしょうね~」

 

 言うまでもない事だが、Aクラスよりも点数の高いBクラスというのは普通は有り得ない。

 しかし、例外が3パターンほど存在する。

 

 1つ目は順当に努力を重ねて成績を上げたパターン。

 クラス分けはあくまでも前年度末の振り分け試験の成績で決定される。そこからAクラス以上に頑張れば追い抜くことは有り得る。

 尤も、御空の場合は追い抜くどころか完全にブチ抜いてるので違うだろう。Aクラスの最低平均点の目安は200点程度であり、その3倍の点数というのは成長では説明できない。

 

 2つ目は点数がやたらと偏っている場合。

 例えば康太の保健体育の点数は主要な科目の平均点の5~6倍だ。

 御空も同様にこの科目だけに特化している可能性は有り得なくは無い。考えにくいが。

 

 そして3つ目……

 

「貴様、わざと点数下げてAクラス入りを蹴ったのか。

 うちの代表と同じ手口だな」

「あ、やっぱり坂本くんも点数調整してたのね。わざわざFクラス代表を狙うだなんて奇特なヒトが居たものね」

「Bクラス副代表に狙ってなった貴様が言うことじゃないだろう」

「一緒にしないでくれる? Bクラスからトップ狙うならまだしも、Fクラスの問題児を集めてAクラスに挑もうだなんていうバカな事、私じゃ逆立ちしてもできないわ」

「それは褒めてるのか? それともバカにしてるのか?」

「半分半分って所ね」

 

 そう、最もシンプルな理由として挙げられるのは意図的に手を抜いて試験に望んだケースだ。

 こういった暴挙を行う事で僕や姫路と同じくらい、あるいはそれ以上のクラス詐欺な生徒が出てくるというわけだな。

 まったく、振り分け試験を何だと思ってるんだ。僕も一応は全力で受けたというのに。

 

「さてと、長々と本陣を空けておくのは不安なのよね。

 手早く片を着けさせてもらうわ!」

「っ!」

 

 御空の台詞と同時に、強烈なプレッシャーを感じた。

 本気を出した姉さんを目の前にした時、あるいはそれ以上の圧力。

 ただ向き合っているだけなのに、直接押されているかのような感触まで感じる。

 まるで御空を中心に風が吹き荒れているかのような……うん?

 

 

Fクラス 空凪 剣 288 → 278点

 

Bクラス 御空 零 641 → 631点

 

 

 何もしてないのに、お互いの点数が減った。

 いや、そんな訳が無い。何かがあったから点数が減った。

 そして、訳の分からない現象を起こせるものなんて1つしかない。

 

「圧力……いや、シンプルに風を操作する能力。

 それが貴様の腕輪というわけか」

「うわっ、アッサリバレた。流石は観察処分者ね。

 うちの代表なんかは全然気付かなかったのに」

「地味な能力だもんな」

 

 だが、地味なだけ厄介だ。

 軽く召喚獣を動かして検証してみるが、どうやら風は御空の召喚獣を中心に全方向に放たれているようだ。

 そして、その風にはどうやら攻撃判定も乗っているらしい。相手も腕輪のコストによりこちらのダメージと全く同じ点数が引かれているようだが……こちらの方が早く戦死するのは小学生でも分かる事だ。

 回避不可能、逃げつづけてもジリ貧である以上はサッサと仕留めるしかない。しかし完全に防御に徹している上に点数が倍以上ある奴を簡単に討ち取る事は不可能だし、無茶な突撃をして反撃されたら大ダメージを受ける。

 結論、単独での撃退はかなり厳しいと言えるな。

 

「……どうしたもんかなぁ……」

 

 減りつづけるお互いの召喚獣の点数を眺めながら、僕はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 剣が戦っている場所は今現在俺たちが使っている空き教室の目と鼻の先にある。

 教室の扉から顔を出すだけで確認できる位置であり、声も普通に聞き取れる距離だ。

 剣と御空の会話を完全に聞き取る事は難しいが、腕輪がどうこうという言葉は拾えたし、剣の点数がジワジワと削られている事も確認できた。

 

「流石にこれ以上は厳しいか……」

 

 剣の役割は2つ。

 1つ目は相手の初動の動きを潰す事。

 相手の正面突破を最小限の戦力で食い止め、相手に迂回ルートを通らせる。

 そしてその迂回ルートもそう簡単に突破できない事を理解させて戦場を正面のみに限定する。

 そして2つ目はそのままなるべく敵の戦力を削ること。

 こちらはそうややこしい話ではなく普通に戦闘で敵を削るだけだ。剣が1人だけという点を除けば普通の戦闘とは変わらない。

 

 だが、このまま眺めていたらもうしばらくしたら戦死しそうだ。

 単純にバトンタッチして撤退させても良いが、それでは芸が無い。

 あのバカみたいな点数の御空を撃破、最低でも撃退まで持っていくには……

 

「……どったの代表」

「ん? 宮霧か。お前には階段前を任せていたな。逃亡してきたならチョキでしばくぞ」

「こっちの命令を無視して深追いしそうな奴らを押さえつけるのがちょっと厳しくなってきたんで『代表から秘策を貰ってくる』っていう名目で抑えるついでにこっちに逃げてきた。

 どうする? オレをチョキでしばくか?」

「仕事はキチンと果たしてるらしいな。ならいい」

 

 一応逃げてきたという自覚はあるらしい。Fクラスらしくない正直な奴だ。

 そしてそれが問題ないという認識もある。やっぱりFクラスらしくない奴だ。

 

「で、どったの?」

「アレだ」

「……ああ、アレねぇ……ん、数学?」

「ん? ああ。数学。正確には1A」

 

 剣が現在進行形で劣勢に追い込まれている戦場の科目は数学の1Aだ。それがどうかしたのだろうか?

 

「……代表、悩んでるヒマがあったらサッサと数学得意な奴をブチ込めば良いんじゃないのか?

 何か別の戦略や戦術があるならいいけど、放置する気が無いんならサッサと動いた方がいいよな?」

「数学が得意な奴……?

 ……ああ、あいつの事か。大丈夫なのかあいつは」

「本人を差し置いてオレが言うべき事じゃないかもしれんけど……一応反省はしてるらしいぞ。恐ろしく間が悪くて謝罪ができてないだけで」

「ホントかそれ?」

「ああ。オレも被害者だから疑う気持ちも十分分かるけど、1回くらいチャンスを与えてやってくれ」

「…………分かった。そこまで言うならやってみるか」




「ふっふっふっ、私たちの最初の戦闘は私の方が圧倒的優勢みたいね!」

「波状攻撃で消耗した僕にぶつかった奴が何をホザいているのやら。
 お互いに万全の状態での一騎打ちなら8割程度の確率で僕の方が勝つぞ」

「そ、そそそそんなの、ややややってみなきゃ分からないじゃないのよ!」

「……十分に自覚があるようだな」

「う~ん……経験値が足りない。
 召喚獣の操作ってリアルな攻撃のイメージとかも必要になってくるけど、そっち方面の才能も欠けてるのよね」

「貴様は学力にガン振りしてる分戦闘能力はそれなりだからな……
 まぁ、そこらの一般人の女子並ではあるんだがな」

「『同じ点数』かつ『武闘派』の連中には一生勝てそうにないわね。別方面で勝てば良いだけの話だけど」

「貴様と同じ点数な武闘派なんて……あ、鉄人か」

「……教師陣の点数は一体なんなのかしらね。ホント」

「ホントな。
 ……しかし、風、か」

「どうかしたの?」

「どっかの神様が結構強い武器として活用してたなと」

「あ~、アレね。実際に真似して『生成、圧縮、回転、射出!』ってやって風の弾丸飛ばしてみたんだけど……」

「何か問題があったんだな」

「ええ。命中精度が恐ろしく悪い上に点数をかなり消耗しちゃうのよ。
 やっぱり召喚獣って操作し辛いわ」

「う~む、そう都合良くは行かんか。いや、Fクラスである僕にとってはそれで良いんだが」

「……では、次回もお楽しみに!」
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