「防衛側プラス戦場を1点に絞る作戦。結構くるものがあるわね」
「姫路と島田が居るからこその戦略だな。Eクラス相手ならこんな事には成らなかっただろうな。
坂本め……あいつらずっと攻めてばっかりだったはずなのに何で防衛側用の策もあるんだよ」
「攻撃側の策として使えないか考えてたんでしょうね。問題になるのは『防衛側じゃない』って1点のみだし」
何はともあれ、私たちBクラスは窮地に陥りつつあるようだ。
このままだと確実に負ける……というのは言いすぎだけど、何らかの手を打つべき場面だ。
「さて代表、貴方ならどう対処する?」
「対処するなら……まずは姫路と島田を何とか退かせないか考える。
……そして諦める」
「そのココロは?」
「あのレベルの点数の持ち主が2人も居る時点で即死クラスのダメージやそれに近いダメージを叩き出すのはほぼ不可能。
ある程度細かく削っていくとしても危険域に達した瞬間に今度は吉井が出てくる。止めを刺し切るのはまず不可能だ」
「正解」
非常に厄介な事に、吉井くんの姿を一切見ていない。
実は遅刻しているだけという可能性もゼロではないけど……本陣で温存されてるって考えた方が妥当でしょうね。
観察処分者である吉井くんであれば姫路さんと島田さんを安全に撤退させた上で戦場を保たせるくらいはできるでしょう。
「まるで詰将棋だな。総合戦力ではこちらの方が完全に勝っているはずなのに、気がつくと追い込まれている」
「大量の持ち駒があっても使いこなせなければ価値は無い。総合戦力云々を抜きにしても大事な事ね」
「まったくだな」
「それで、どうする?」
「どうするもなにも、どうもしないさ。今はまだな」
「ふ~ん……まあいいか」
さっき代表は詰将棋に例えたけど、この場面でそれを当てはめるのは言い得て妙だ。
詰将棋は先に駒を動かせる方が勝つ。その事をFクラスの皆さんにも教えて差し上げましょう。
そして、時は進む。
互いに予定通りの時間が流れ、数十分ほど経過した。
『伝令! もう間もなくBクラスを教室へと追い込めそうです!』
「ご苦労。また前線に戻ってくれ」
『了解です!』
俺の不安とは裏腹に何とか押し込めているようだ。
とは言っても、御空が撤退してから50分ほど経過している。あと10分ほどで補充試験が終わると考えて良いだろう。
だが幸いな事に明久を温存できている。姫路と島田と協力できれば御空を討つ事は可能……
『伝令っ! 島田さんの点数が危険域に達しました!!』
「チィッ、無理だったか。明久! 島田のフォローに行ってくれ! ダッシュで!!」
「了解っ!」
島田は脱落か。補充試験をやっている間に大勢は決するだろう。
まぁ仕方ない。姫路と明久と、その他数名で何とかしてもらおうか。
相手を教室に閉じこめてしまえれば後はどうとでもなる。
例えば……屋上から降下し、窓から侵入して根本を討ち取る、とかな。
以前Dクラス相手に勝った時の密約、Bクラスの室外機を壊してくれというのは一応まだ有効。断られたとしても俺たちが壊すのを黙認するくらいはしてくれる。
もし完全にダメだったとしても窓に張り付いて召喚すれば教室内に召喚獣を呼び出す事は可能なはずだ。奇襲攻撃で相手の戦力を大幅に削る事が可能になる。
何? 生徒だけならともかく立会い教師までもが窓から侵入なんてできるのか、だと?
殆どの先生はまず無理だが、数名だけ例外が居る。
例えば、鉄人こと西村先生……間違えた。西村先生こと鉄人。
他にも体育教師こと大島先生。とりあえずこの2人は確定。他の体育教師も何とかなると思われる。
……さて、そろそろ康太を所定の位置に移動させるか。
康太は言うまでもなく保健体育のスペシャリスト。この作戦にはうってつけだからな。
「よし、康太……」
そう、俺が康太へと呼びかけたその時だった。
外から、こんな声が聞こえたのは。
「Bクラス御空零が……」
教室の外……窓の外から、聞こえてきたのは。
「Fクラス代表に召喚勝負を挑みます!!
[フィールド:保健体育]
Bクラス 御空 零 412点
クーラーなんて贅沢なものが付いてないこの教室の、開け放たれた窓から、そいつは現れた。
「んなっ!?!?」
どうやってここに来た!?
補充試験を受けているはずじゃなかったのか!?
いや、それよりその点数は何だ!?
そんな疑問がめまぐるしく脳裏を駆けめぐり、我に返った時には3秒が経過し……
「…………Fクラス土屋康太が受ける。
Fクラス 土屋康太 564点
……丁度呼びつけていた康太のおかげで何とか強制召喚は回避できた。
「康太、頼んだ! お前ら一旦外に出るぞ! 急げ!!」
急襲される本陣は本陣足り得ない。また敵が湧き出てくる可能性も考えたら廊下の方が安全だ。
そう考えて俺は一目散に出口へと駆け出した。
安全だと思っていた場所が急襲されたら、即座に逃げ出す。それは優秀な指揮官としてのスキルでしょうね。
本陣まで侵攻された場合に備えて2箇所ある出入口のうち片方を潰しておく。それも真っ当な選択でしょう。
だけど……それが仇となる!
坂本くんが扉を開け放った瞬間、窓際に居るこちらの方まで声が響いた。
「テメェに勝負を挑む!
真っ直ぐに坂本くんを指差し、最小限の言葉で戦闘の意を示した代表が、そこに居た。
「なんっ!?」
坂本くんの召喚獣は今度こそ強制召喚され……
……そして、一瞬で散った。
[フィールド:現代国語]
Fクラス 坂本雄二 265点 → Dead
Bクラス 根本恭二 402点
「以上、Fクラス戦しゅーりょー!」
「詰将棋……確かに詰将棋っぽいな。お前が特攻してる所なんか特に」
「結構ドキドキだったわ。坂本くんが逃げ出す保証も無かったし。
土屋くんの点数を見た時は割とビビってたし」
「あれ? 知らなかったんだっけか?」
「ええ。本作の中で私が土屋くんの点数を直接見た事は実は無いのよ。
と言うか、Aクラスの人以外は直接見た事は無いんじゃない?」
「1年次の事を考えればそうとは言いきれんが……まぁ、今年に入ってからならそうなるか」
「一応、保体が得意とは聞いてたけど……まさかここまでとは思ってなかったわ。
もっとちゃんとAクラスの人から訊き出すんだった……」
「本編の貴様はAクラス戦で康太が出ていた事すら知らないはずだし、仕方ないんじゃないか?」
「そうねぇ。結果的には上手く行ったけど、結構危なかったわ」
「雄二も落ち着いて対処できてれば普通に勝ててたかもな」
「では、次回もお楽しみに!」