バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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12 飛躍

 Fクラス代表、坂本雄二の戦死から時は少々遡る。

 

 

 

「マジでこれをやるんだよな……いや、分かりきった事なんだが」

「分かりきった事ならいちいち愚痴らないの。

 それじゃ、私は先に行くんで代表は適切なタイミングを見極めて来てね」

「……分かってる。やってやるさ」

 

 頑丈なロープの片側を教室内の適当な場所に固定。反対側は窓から垂らして地面まで辿り着くように。

 これで3階にあるこの教室からグラウンドまでの通路は完成だ。Fクラスから学んだ事だよ。

 

「じゃ、またね」

「ああ!」

 

 一足先に私が降りる。代表は後だ。

 試召戦争の最中は代表の居場所は常に公開されている。とは言っても常に放送とかで居場所が流れるんじゃなくて確認しようと思えば確認できるという物だ。

 今、代表が教室から動いている事がバレると策がバレる。だからギリギリまで教室に留まってもらわないと。

 

「……よっと、ふぅ、無事に降りられた。Fクラスの人達は正気じゃないわね……」

 

 これでほぼ誰からも気付かれずに教室からの脱出が完了。2階や1階に居た人には降りてる最中に目撃されたかもしれないけど、それがFクラスに伝わる事は無いでしょう。

 

「さて、次は……」

 

 目標としては旧校舎の屋上まで移動する事。

 最初に立てた案Aとして普通に旧校舎の階段を使うというものがあったけど……階段戦法でこちらの侵攻を防いでいる部隊が撤退したという報告も無ければ侵攻してきたという報告も無い。今現在も塞がれていると見て間違い無いでしょうね。

 という訳で案B。『直接よじ登る』を採用します。

 

「天気予報通りに晴れで良かったわ。大声で屋上に呼び掛けたら気付かれちゃうもんね。鏡でキラキラ~っと」

 

 開戦時から旧校舎屋上に潜ませておいた人達に合図を送る。

 すると、屋上からまたロープが延びてきた。校舎の窓側ではなく壁側へと垂らしたので教室内から見つかる心配は無い。

 

「よっし。しっかりと結びつけて……OK!」

 

 ジェスチャーでOKサインを2回ほど繰り替えしてから少しして、ロープが強く引っ張られるのを感じた。

 このロープが繋がる先は、頑張って屋上に設置した滑車。そしてロープの反対側には私の体重よりやや重たいくらいの砂袋が結ばれている。

 砂袋を屋上から下ろす事で私が引っ張り上げられる……という寸法だ。

 

「うん、いい感じいい感じ。勢いが付きすぎないように注意しないと」

 

 そんな感じで何とか屋上まで到達。ふぅ、疲れた……

 

「こういう事をするのはFクラスだけだと思ったんだが……今年はBクラスも大概のようだな」

「あ、大島先生お疲れさまです。すいませんね。長時間待機させてしまって」

 

 先生までこんな方法で屋上に上がってもらう事は不可能だ。体力的に無理とかいう話ではなく、先生はFクラスを避ける必要が皆無だから普通に階段を上るという話だ。

 しかしそれをやってしまうとFクラスに気付かれてしまう恐れがある。だから無理言って最初から居てもらった。

 

「怪我には十分気をつけろよ」

「はいっ! 勿論です」

 

 これでしばらく私がやるべき事は無い。代表が来るまでのんびりしましょうか。

 

 

 

 

 

 

 現時点で俺がやるべき事は2つ。

 1つ目は島田を危険ラインまで追いやる事で吉井をBクラス前までおびき出す事。

 別に島田ではなく姫路を狙っても吉井は呼べるだろうが、単純に島田の方が点数が低い上に他の科目も低い。もうしばらくしたらFクラスの本陣に特攻するのだからその本陣に送り返すのは当然弱い方が良いに決まってる。

 そして2つ目は吉井が来た事を確認したら御空が通った道を同じように通って屋上まで辿り着く事。

 ロープ使っているとはいえ3階から降りるとか正気じゃない。しかし御空にだけやらせて俺がやらないという訳にもいかない。ハラ括ってやってやろう。

 

「さぁどうしたの? Bクラスっていうのはこんなもんなの!?」

『くっ、強い! これがあの時誤情報に踊らされてアッサリ捕まった島田の実力か!』

「確かにそうだけど! 余計な事思い出すんじゃないわよ!!」

 

 島田を削りたいんだが、難航しているようだな。

 こういう時、物語の主人公であればカッコよく参戦してカッコよく蹴散らすんだろうが、あいにくと俺は文系だ。数学の成績はうちのクラスのトップ10にも入れない実力しかない。

 それに、俺がノコノコ出ていって姫路の攻撃でも喰らったら1発でアウトだ。やはり論外だな。

 

 結局の所、島田を危険域まで追い込むには誰かを特攻させるというのが模範回答だ。

 少しずつ削る事も不可能ではないが、それだと時間がかかりすぎる。

 部下を、クラスの仲間を頼らなければならない状態、そして下さなければならないのは特攻の命令。クラス代表としての俺の日頃の行いが試される場面だ。

 1人……いや、2人居た方が確実か。

 そう考えた俺は手の空いていてなおかつ数学がそれなりに高い2名に声を掛けた。

 

「お前たち、戦死を覚悟で島田に特攻してきてくれ。できるか?」

『なんだと? 代表、何を寝ボケた事を言ってやがる!』

「無茶を言ってるのは分かってる。だがBクラスが勝つ為には……」

『そうじゃ無いっスよ。そんな事言われたらウチの副代表の姐さんならこう返されますよ』

『『できるか?』なんて曖昧な言い方をするな。代表は代表らしく堂々と命令しろ! って』

「おいおい……俺もお前らも御空じゃないんだぞ? 俺なんかの命令を、しかも特攻命令を素直に受け入れるってのか?」

『当然っしょ。代表は姐さんの後を追って身体張って大将を倒しに行くんでしょ?

 オレたちが怖気づいてどーすんのって話っしょ』

『そーそー、そのとーり!』

「……そうか」

 

 御空があんなロープを使った理由がようやく分かった気がする。

 自分自身が率先して危険な目に遭うんだ。信用されないはずがない。そういう事だろ。

 

「……分かった。それじゃあお前たち、死ぬ気で島田を殺してこい!」

「「了解っ!!」」

 

 これで何とかなるはずだ。もう少し様子を見てから御空の後を追うとしよう。




「以上、私たちの裏視点その1でした!」

「無茶するなお前ら……」

「空凪くん、それ完全なブーメラン」

「いやいや、僕自身は3階から降りた事は本作中では無いぞ」

「えっ、そ、そうだっけ?」

「合宿の時に雄二たちが降りていたが、その時僕は補習室で補充試験受けてたんで居なかった。
 よって、貴様の方が僕よりも無謀だと言えるな」

「うぐぅっ!! その評価は極めて遺憾だよ!! 撤回を要求するよ!!!」

「……降りるだけならまだしも登るのはFクラスでもそうそうやらんぞ。屋上に滑車なんてどうやって設置したんだ?」

「そこは……ほら、頑張った!」

「……そっか」


「では、次回もお楽しみに!」
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