バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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14 戦後交渉

「雄二、確かに戦争が終わったら起こしてくれとは言ったが負けたら起こせとは言ってないぞ」

「うぐぅ……スマン」

 

 僕が寝ている間にBクラスの連中がFクラスみたいな奇想天外な強襲を仕掛けてきて負けてしまったらしい。

 ……という旨の説明をBクラス代表コンビから受けた後の僕の台詞であった。

 

「まあいいさ。雄二は隅っこで体育座りでもしててくれ。戦後交渉は僕が引き受けよう」

「何故に体育座り……」

「何か文句でも?」

「……いや、無い。負け犬は大人しく隅っこに引っ込むさ」

 

 半分冗談だったしそこまでは言ってないんだが……まぁ、強襲された時に雄二が努めて落ち着いて対処できていれば勝ってた可能性も普通にあるわけだし、ここは思いっきり反省してもらうとしよう。

 

「それじゃあBクラスのお二方。戦後対談と行こう。場所は移すか?」

「別にこの部屋でもいいけど……随分と堂々としてるわね。負けたクセに」

「Fクラスがクラスとして負けたのであって僕個人が負けたわけではない。

 それに、下手に出たらそれこそ足元を見られる」

「良い度胸ね。いや、良い意味で。

 でも、交渉の余地なんてあると思ってるの? わざわざ私たちがFクラスを見逃してあげる理由なんて無いけど」

「何を言っている。大有りだ」

 

 御空、気付いていないのか。それとも気付かないフリをしているのか。

 十中八九後者だろうな。僕から言い出させる事で『譲歩してあげた』という体に落とし込むつもりだろう。

 

「へぇ、それじゃあ聞かせてもらおうかしら。その『理由』を」

「今回の戦争の戦後処理を通常通りに行うと僕達はCランクの教室からDランクに格下げ。ついでに3ヶ月間の戦争禁止。

 それに対してBクラスはBランクのまま。ここまでは良いな?」

 

 御空と根本が大きく頷くのを確認してから話を進める。

 

「これを行うとお互いのクラスが損しかしない。分かってるだろう?」

「……Fクラスの損はよく分かるわ。教室がランクダウンする上に戦争を吹っかける事ができなくなるんだもの。

 じゃあ、Bクラスの損っていうのは?」

「貴様が言った通りだ。『教室がランクダウンする上に戦争を吹っかける事ができなくなる』」

「……? それはFクラスの話でしょう」

「惚けるのは止せ。Fクラスがそれだけの損を被る。それはつまりFクラスの、そして僕の恨みを買うという事だ」

「あっ、そう来るの……それはちょっと予想外だったわ。てっきり得が無いっていう方向で来るかと思ってたのに」

「ああ。それも正しいな。より正確に言うのであれば『得が無いのに恨みを買う』というのがBクラスの損だ」

 

 上位のクラスに喧嘩を吹っかけて恨みを買う覚悟で設備を奪い取るというのなら理解できる。

 しかし今回のように得る物が何もないのに恨みを買うというのは明確な損と言えるだろう。

 

「ん~、言い分は理解した。でも、何も得る物が無いのにハイサヨナラってわけにも行かないでしょう」

「……そもそも貴様たちは何故戦争を仕掛けてきたんだ?

 ああいや、答える必要は無い。僕が答えてやろう。答えは『雪辱を晴らす為』だろう?」

「そこまで読まれてるの……やっぱり只者じゃないわね」

「こんなの明久でもなきゃ分かる事だろ。

 戦争をわざわざ1日遅らせたのは相手に最低限の準備期間を与えるため。

 Fクラスっぽい無謀な作戦を取ったのは相手をリスペクトしつつも相手の土俵で倒す為。

 雄二の止めに様々なリスクを冒してまで代表の根本が出張ってきたのは代表自身で雪辱を晴らす為。

 ……こうして目的が達成された訳だ。得る物が無かった等とは言わせないぞ」

 

 Bクラスの連中、そして代表の根本。

 彼ら彼女らが身に着けた自信は今後の戦いで強力な武器となるだろう。わざわざ下位クラスに戦争を吹っかける理由としては十分過ぎる代物だ。

 

「……ふぅ。確かにキミの言う通り。重要なものを得られた。

 だ・け・ど、それは私たちが自分で得たものであって、キミ達のクラスがわざわざくれたものじゃないよね?」

「得る物があったならそれで十分だろうに。この欲張りめ」

「そーよ。私は欲張りなの。設備がランクダウンした場合の損が大きいのはまだキミの方だと思ってるわ。

 さて、何を差し出してくれる?」

「…………チッ、やはり完全に無しというのは無理か。

 じゃ、まずは貴様のクラスに対する許可無き宣戦布告の禁止。期間は今日から3ヶ月」

「当然の事ね。キミの要求を飲まなかった場合の唯一と言って良いBクラスのメリットだもの。

 でも、それだけ?」

「じゃ、クラスとして貸し一つ。これでどうだ?」

「曖昧ねぇ……高く付くかもしれないわよ?」

「構わんさ。高すぎると判断したら突っぱねるだけだ」

「それ、今言って良い事……? まあいいか。

 キミなら約束を違える事はそうそう無いでしょう。取引成立ね」

 

 よし、これで教室と宣戦布告の権利は守られたようだ。

 ちなみに、宣戦布告の権利はもうしばらくしたら夏休みに入る事もあってそこまでそこまで重要ではない。取られないに越したことは無いが。

 重要なのは教室の方。Fクラスの連中はバカだから負けた恨みは確実に代表に向く。そしてそれは指揮が通りにくくなる事を意味する。

 ただでさえFクラスでAクラスに挑むとかいうハンデマッチをやる予定なんだ。不利になる要素は細かいものであっても命取りになる。

 

「合意が得られたようで何よりだ。じゃ、今日は解散って事で」

「ええ。また今度会いましょう」

「……ああ、ちょい待ち。別件で訊きたい事があった」

「ん? 何?」

「……昨日、下校中に何者かに尾行された」

「……えっと、キミが?」

「ああ。その様子だとBクラスではなさそうだな」

「少なくとも私は指示してないわ。代表は……」

 

 視線を投げかけられた根本は首を横に振った。

 

「……だそうよ」

「……そうか。分かった」

「何かされたの?」

「いや、何も。ただ見守られていただけだ」

「……不気味な話ね」

「ああ。全くだな」

 

 後で調査……できる類のものなのかこれ?

 まあいい。チャンスがあれば調べられるだけ調べるとしよう。

 

 

 こうして、Bクラスとの2度目の戦争は終わりを迎えた。




「これにて戦争終了! いやー長かったわね」

「1つの戦争としては確かに結構長かったな。ふぅ、疲れた」

「私もメチャクチャ疲れたわよ……壁上りなんてもう2度とやりたくないわ」

「そりゃそうだろうな。好き好んでやるような代物じゃないからこそ奇策足り得る」

「ごもっとも。Fクラスは次はどんな奇策を立てるのかしらね」

「さぁ? 作戦立てるのは雄二の仕事だからな」


「それでは、次回もお楽しみに!」
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