「……はい。これでお願いします」
「採点します」
翌日の朝。僕は補充試験を受けていた。
補充試験はルール上、基本的にはいつでも受ける事が可能だ。
ただ、戦争中だと先生への呼び出しに強制力があるのに対して平時はそこまでの強制力は無い。
昨日の戦争でも戦争前に高橋先生を呼び出して補充試験を受けたかったんだが……先生の都合が着かなかったので開戦後になっていた。
あの時はほぼ全科目を受けないといけなかったからなぁ……
今回は普通に単科目を補充すればいいので先生にそこまでこだわる必要は無い。昨日の戦争でフィールドの承認をしていた化学の五十嵐先生を見つけたので普通に補充試験を頼んだわけだ。
「……はい、採点終了です。相変わらず君は極端ですね」
「まぁ、それが僕の取り柄なんで」
返却された回答用紙には400点と書かれている。
これで今日の分の集中モード時間終了だ。後はもうゆっくりと休もう。
「相変わらず早いなお前」
「ん? ああ、雄二居たのか。おはよう」
「おはよう。さっき来た所だ」
「そうか……お前、補充する科目はあるか?」
「いや、無い。俺は結局1回も戦わなかったからな。
それがどうかしたか?」
「試験の必要が無いならゆっくり話せると思ってな。
対Aクラス戦の作戦、聞かせてくれないか?」
「……まあいいか。穴が無いかの確認もできる。
場所を移す……までもないか。このクラスが一番安全だな」
「ああ」
このクラスの主力の1人である土屋康太は『趣味は盗聴、特技は盗撮』というとんでもない奴だ。
しかし、そういう特性があるからこそ防犯の知識もある。この教室にその類の機器を仕掛ける事はほぼ不可能だと思って良いだろう。
「というわけで、申し訳ありませんが先生はお帰り下さい」
「君達は本気でAクラスを目指しているのですね。
会話の内容は後で実際に見せてもらいましょう。頑張って下さいね」
先生も見送った所で話を再開する。
「で、どうする気だ?
正攻法で勝つのはいくら姫路や僕が万全であっても厳しい。
かと言って、絡め手も思いつかん。
僕は弱点の看破は得意なつもりだが……弱点を作るのは少々苦手だからな」
「そういやそうだったな。
じゃあ結論から言おう。何とかして代表同士の一騎打ちに持ち込む」
「学年首席との一騎打ちだと? まず勝てないと思うが」
「まぁ、そうだな。だが、ある特定の条件下なら話は別だ。
試召戦争ってのは両者の同意さえあれば何も召喚獣バトルにこだわる必要が無い事は当然知ってるな?」
「ああ」
試召戦争というのはあくまでも『点数を使った勝負』だ。召喚獣は手段の1つに過ぎない。
だから、例えば本当に純粋にテストの点数勝負にする事も可能だ。両者の同意さえあればな。
「で、その条件ってのは?」
「日本史の点数対決。内容は小学生レベル。100点の点数上限アリだ」
「…………霧島が100点プラマイ3点程度、お前が
まず勝てないから絶対勝てないにランクダウンしたぞ」
「おいっ! ゴミって何だゴミって!!」
「ゴミは言いすぎかもしれんが……だって、日本史だろ? 暗記科目だろ?
小学生レベルの算数ならケアレスミス……はほぼ有り得ないから100点で当たり前だが、小学生レベルの暗記科目なんて僕でも確実に満点を取れる自信は無いぞ。
ちょっと人名を間違えたとか、ちょっと年号を間違えたとか、それだけで満点を逃すんだぞ? 確実に満点取れるのは問題製作者かよっぽどのインテリだけだ」
「ぐっ……そう言われると確かに少し厳しいかもしれん」
「まぁ、神童とも呼ばれた雄二ならAクラス戦までに猛特訓すれば満点かそれに近い点数は取れるだろうが……それで良いのかお前は」
「何? どういう意味だ」
「目的と手段を履き違えるなというコトだ。
お前が戦争を行う目的はまだ聞いていなかったが……いや、僕が当てるよりも本人に言ってもらおう。
貴様の戦争の目的は何だ? 設備の為とかつまらん事を抜かしたらぶっ飛ばすぞ」
「本気で設備が目当てだったらどうする気だよ。いやまぁ違うんだが」
雄二は一度咳払いした後、その目的を告げた。
「俺の目的は『この世は学力が全てじゃないって事を証明する』事だ。
その為に学力で設備を得たAクラスの設備を最低辺のFクラスが奪い取る。分かりやすい目標だろ?」
「ああ。実に分かりやすい目標だ。
だが、だったら尚更お前の作戦はダメだ。勝ってどうする、
「いや、これは学力と言うよりは注意力と集中力の勝負になる。その点は問題ない」
「いや、一般的なテストって注意力と集中力はかなり重要だぞ?
暗記力や演算能力の方がメインである事は否定しないが……注意力と集中力も学力の範疇だろう」
「うぐっ」
「……お前が歴史マニアで、何か深すぎる回答を叩き出して追加点を貰って100点を越えた点数を取るとか、
試験時間を1時間じゃなくて100時間……いや、10時間くらいに設定して、点数上限も取っ払って体力勝負にするとか、そういう方向性ならまだ納得できるんだがな。
どっちも厳しいだろ?」
「……ああ」
そもそもテストで追加点を貰えるとかほぼ有り得ないし、体力勝負にした所で霧島の回答速度には簡単には追いつけないだろう。
僕が出したのはあくまでも例なのでこれ以外の方法もあると思うが……そう簡単には思いつかないな。
ちなみにだが、姫路の点数はAクラス並だが、それを有効活用しても大丈夫なのかという心配があるかもしれないが問題ない。
その彼女も結局は評価されずFクラスに落ちてきたわけだからな。点数が全てではない事をある意味一番体現している存在と言えるだろう。
「さて、どうする気だ? 代表。
貴様が運任せの計画を練るとは思えんから勝算はあったんだろうが……脆くも崩れ去ったぞ」
「……ああ。そうみたいだな。
分かった。Aクラス戦までに代案を用意する」
「期待してるぞ。代表。
……と言いたい所だが……」
「ん?」
「3対3か、あるいは5対5くらいの一騎打ちに持ち込んだ上に勝負条件の過半数をこっちが決められるのならAクラスに普通に勝てる事に気付いてしまった。
もちろん1対1でも大丈夫だ」
「何だと!? どうする気だ!?」
「貴様は人から与えられた答えで満足できるような奴じゃないだろ?
『方法がある』事までは言っておくが、それ以上は控えさせてもらおう」
「言ってくれるじゃねぇか。いいだろう。自力で辿り着いてやる」
「ああ。ただ言っておくが、僕が気付いたのはあくまでも『普通に』勝てる作戦だ。
『確実に』勝てる作戦ではない」
「そりゃそうだ。確実に勝てる勝負なんざ存在しないからな」
「分かってるじゃないか。それじゃ、期待してるぞ代表」
雄二がどういう答えに辿り着くか、見物だな。
僕と同じ答えか、それとも別の答えを見つけ出すのか……
まぁ、楽しみにしておこう。
「リメイク前だとAクラス戦ってどうしてたっけ?」
「ん~……まぁ、言っていいか。
1戦目は色々あって引き分け、2戦目は根性で勝利、3戦目は割とアッサリ敗北、4戦目はやや強引に敗北、5戦目は気付いたら勝利って感じだったな」
「5戦目……一体何があったの」
「当時はあくまでも僕視点の物語だったからな。寝てた時の勝負内容なんざ知らん!
……っていうのは当時書いた事で後悔してる場面でもある。
と言うか、Aクラス戦全体がやや強引過ぎたんでリメイクするなら真っ先に直したいと思っていた箇所のようだ」
「へ~。で、リメイクの算段は付いてるの?」
「愚問だな。色々と考えてみたら上手く行けば5勝すら割と簡単だ。
どうやって負けようかと今必死に考えている所だ!」
「……Aクラスって一体……」
「まぁ、あくまでも『勝負条件を決められるなら勝てる可能性が十分ある』という奴が5人居るだけだがな。
アニメ版じゃあるまいし、5戦全部いただくのはまず無理だろう。
その上で、どうしたもんかなぁ……」
「……まぁ、その答えは実戦で確認させてもらいましょうか。
では、次回もお楽しみに!」