木下姉と行動を共にして、早速問題が発生した。
「……ずいぶんとヒマそうだな」
「そりゃあねぇ。アタシは暇つぶしの道具なんて何一つ持ってきてないし、誰かさんはアタシを無視してマンガを読んでるもの」
「……お前も読んでみるか?」
「それ、全部途中からでしょ?」
「それでも暇つぶしにはなるとは思うが……言いたいことは分かるな」
どうやら僕が1人だけ楽しそうにしているのが不満らしい。
まぁ……そうだな。せっかくだから木下姉との会話を楽しんでみるとしようか。そんな機会は普段無いしな。
「ようようそこのカワイ娘ちゃん。一緒にオチャしない?」
「何でナンパ風なのよ。普通に話しなさいよ」
「ハハッ、僕のウィットの富んだジョークという奴だ。さて何話す? 年頃のJKの会話と言えば常識的に考えてやはりアレか。恋バナ」
「……どこら辺の地方の常識なのかは置いておくとしましょう。恋バナとはちょっとズレてるけど、訊きたかった事があるのを思い出したわ」
「ほぅ? 答えられる範囲で答えてやる」
「うちの愚弟と、光の事よ」
「ああ、なるほど。確かに恋バナのようなそうでないような内容だな」
確か木下姉には如月ハイランドで話したっけな。うちの妹が秀吉に恋してるって話を。
あの時の反応から察するに木下姉は全く気付いてなかったようだ。経緯を知らないのなら疑問に思うのも納得だ。
「あの光があの愚弟のどこに惹かれたのか、凄く気になるわ」
「ん~、秀吉本人にはナイショな。それで良いなら教えてやろう」
「ええ、是非とも聞かせて頂戴」
「良かろう。発端は……去年の頭から。貴様らが1年Aクラスに入った時からだ」
……そうだな、光視点で語ってもらうのが分かりやすいだろうな。
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……1年前 四月頃……
私の名前は空凪光。今日からこの文月学園の1年Aクラスだ。
この学園の名物は召喚獣を使ったクラス争奪戦。だけど、それが行えるのは2年からなので1年の教室は普通に平等な作りになっている。
私がAクラスに選ばれたのも成績とかではなく単なる運の問題……いや、設備が平等なんだから運が良いも悪いも無いけども。
ちなみに兄さんはDクラスらしい。兄弟姉妹は別クラスにするという妥当な判断によるものだろう。
「皆さん初めまして。このクラスの担任の『高橋洋子』です。
これから1年間、よろしくお願いします」
教室の適当な空いている席に座ってぼんやりしていたら担任の先生が入ってきた。
何となく真面目な先生に見える。熱血教師って程じゃないけど普通に良い感じの先生に見えた。
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「……あの、剣くん? 素朴な疑問があるんだけど」
「どうした? まだ全然本題に入ってないが」
「光と秀吉の話のはずよね? ここまで遡る意味ってあるの?」
「無論、大ありだ。あの2人の関係を語る上で欠かせない出会いがあったからな」
「出会い……?」
「ああ。続けるぞ」
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新しいクラスという事でまずは定番の自己紹介が始まった。特に捻った事はせずに端から順番に行っている。
私は最後の方ね。何を話すかじっくり考えましょうか。
ん~……兄さんが持ってたゲームを見習って趣味は音楽鑑賞でクラシックをよく聞きますとでも言っておこうかしら?
……止めときましょう。本気にされたら困るしネタだと通じてもそれはそれで面倒な事になるから。
半数以上は今日が初対面なんだし、とことん真面目にやろうかしら? でもちょっとネタにも走ってみたい気も……
「……あの、ちょっといい?」
「……あ、私? 何か?」
「そろそろ貴女の番だけど、大丈夫?」
「ん? ……あら、もう私の番か。ありがとね。えっと……」
「木下よ。木下優子」
「ありがと、木下さん。私の名前は……まぁ、すぐに分かるわ」
その後、私は至って普通に自己紹介を終えた。
なにはともあれ、これが私と、私の隣の席の女子。木下優子さんとの出会いだった。
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「出会いってアタシの事なの!?」
「ああ。単純に貴様が秀吉の姉だから……というだけでなく奴と秀吉の関係において貴様は極めて重要な役割を担っている」
「い、一体どういう事……?」
「まぁ焦るな。続いて奴と秀吉の出会いについて語っていくぞ」
「という訳で至って普通な2人の出会いだ」
「普通ね……バカテス世界では異常な光景ね」
「全くだな。まぁ、木下姉もうちの姉も常識人への擬態が上手いからな」
「擬態……う~ん……」
「……当時は割とまともだったけどこの学園で1年過ごして染まったという説が無きにしも非ず」
「……もしそれが正しいならこの学校って狂人生成装置なのでは……」
「そういう説もあるな」
「……私も染まらないうちに逃げた方が良いかしら?」
「…………え?」
「…………え?
そ、それでは次回もお楽しみに!」