バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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2人の演者

 路地裏を出て安全な場所で解散した所で剣くんの回想は終わった。

 

「とまぁ、こういう事があった訳だ。

 光はその後自分の勘違いに身悶えして夜まで唸っていたな」

「丁度アンタとアタシが初めて会った頃の話だったのね。確かにそんな事があった気がするわ。

 でも、それが恋愛のきっかけ? 少し地味な気がするけど?

 不良に襲われてるのをヒーローが救ったって話なら漫画や小説でたまに見るベタな展開だけど、今回の話は助ける側と助けられる側が逆だったじゃない」

「そうでもないさ。貴様の言うそのベタな展開ってのはヒーローの強さに恋をするという訳では……いやまぁ多少はあるかもしれないが、そもそも助けてくれたという行動に対してときめくものだ。

 あいつは無駄に頭が良いからな。結果はともかく行動自体は評価していたよ。

 それに加えて双子の真相が判明した時の精神的ショック、恥ずかしさによる心拍数の増加。ついでに全力ダッシュで家に帰ってたからさらにドキドキしている。

 吊り橋効果と理屈は一緒だな。恋愛を意識し始めるには十分過ぎるくらいだ」

「やたらと科学的な恋愛考察ね……夢の無い話だわ」

 

 吊り橋効果っていうのは恐怖心によるドキドキを恋心と錯覚するという話だ。

 光は恐怖なんて一切感じてなかっただろうけど……それ以外でのドキドキでもちゃんと効果はあるみたいね。

 

「切っ掛けさえあれば自然と恋心は募っていくものだ。

 まぁ、相手があからさまにヤバい奴であれば冷めるかもしれんが……秀吉は少なくとも悪人ではないだろう?」

「…………そうね」

「間があったな。まあいい」

 

 秀吉に対してアタシが持つ印象としてマイナスの印象が無いわけでは無い。と言うかむしろ結構ある。

 ただ、秀吉自身が悪意を持って何かやらかしてくれたというケースは記憶に残ってる中では無い。悪人ではないのは確かだ。

 

「そういう訳で、今の状態になっているわけだ」

「なるほど……あれ? でもちょっと待って」

「ん?」

「光が秀吉を意識し始めたのって1年前よね?」

「正確には1年と1ヵ月くらい前だな」

「13ヵ月近くあったのに、光は一体全体何をしてたの?

 秀吉にアプローチしてたなら流石にアタシも気付いてたと思うんだけど」

「ククッ、良い質問だな。

 簡潔に言うとだ、光は自身の恋心を認めていない」

「……えっ?」

「ツンデレを訳分からん方向に拗らせているらしくてな。『秀吉なんて別に好きじゃない!』って感じの発言をしている。

 だから光から恋愛的なアプローチをする事は一切無い」

「ツンデレ……いやそれってツンデレではないんじゃないの?」

「ツンツン? まぁ呼び方などどうでもいい。

 そんな感じな上に無駄に有能なせいで態度も完璧に隠蔽している。

 一方秀吉の方は特に恋愛的な意識はしていないようだ。これでは進展のしようが無いな」

「……どっちもどっち……いや、やっぱり光が悪いか」

「8:2くらいだな。秀吉が光に告白でもしてくれれば一発解決なんだが……」

「無茶な事言うわね。しょっちゅう女子に間違えられるようなあいつに恋愛に期待するのは厳しいわよ?」

「だよなぁ……如月ハイランドの時に強引にキスでもさせて意識させようと企んでいたんだが……秀吉に拒否されたしな」

「そんな事企んでたの!? そっか、あのイベントの黒幕ってアンタだもんね」

「一度演技に入ったら完全に入り込むはずの秀吉が劇を中断して拒否するくらいだからうちの姉は大事にはされてるんだよ。

 その気持ちが恋愛方向に向かってくれれば解決だが……」

「……そんなの光本人が頑張らないとどうにもならないんじゃないの?」

「そういう事だな。結婚式体験の時は恋人の演技をする建前を用意してやれたが、普段の生活ではそうはいかん」

「え? 建前があれば良いって事?」

「ああ。『理由があって仕方なく恋人っぽくなる』という事であれば受け入れてくれるようだ」

「だったらそのまま偽の恋人になるようにお願いすれば良いじゃない」

「……ん? どういう意味だ?」

「そのままの意味よ。建前は……そうね、『光に告白してくる男子が鬱陶しいから秀吉と付き合ったフリをする』とか」

「…………その場合は光が自分の都合で秀吉に迷惑をかける事になる。残念ながらそのまま使うのは却下だ」

「う~ん、じゃあ立場を逆にして『秀吉の告白除けの為に』だったら?」

「丁度それを言おうと思っていた所だ。問題点を挙げるならそのまま秀吉に言って手伝ってもらうと秀吉が負い目を感じるという事だが……」

「秀吉には『光の告白除け』って説明しておけば良いわね。これならお互いに助け合う形になる」

「それも言おうと思っていた事だ。こんな方法があったとは、盲点だったな。

 ところで、そこまで言うからには協力する気があると解釈して良いか?」

「……乗りかかった船だからね。秀吉を上手く言いくるめるくらいならできるわ」

「助かる。こっちは光に伝えておく。勘のいいあいつなら気付くかもしれんが……ま、騙されたフリくらいはしてくれるだろ」

「ホント何がしたいのよ光は……」

「…………さぁな」

 

 こうして、光の恋路を応援する良く分からない同盟が結ばれた。

 にしてもあの光が恋愛ねぇ……人の心って分からないものね。

 

「……ところで、貴様は人の恋路を応援しているヒマはあるのか?」

「どういう意味かしら?」

「今回の手伝いの礼だ。貴様自身に誰か気になる奴が居るなら遠慮なく言うと良い。

 僕のできる範囲で力になってやろう」

「お生憎様、アタシはアンタの手なんて借りなくても大丈夫よ。

 もう既に付き合ってる人が居るし」

「…………はぇ?」

「アンタでもそんな声出すのね。ちょっと気分が良いわ」

「え、ちょ、ま、えっ? マジ? それはイマジナリーフレンドもといエア彼氏とかではなく?」

「ちゃんと現実に居るわよ。そんなものに頼るほど人生に悲観してないわ」

「そ、そうか……そうだったか……ちなみに、誰なのか聞いても良いか?」

「う~ん……教える気は無いわ。それより、そっちはどうなの?」

「残念ながらと言うべきか、そんな奴は居ないな。

 恋愛の前に僕に着いてこれる奴がそうそう居ない。

 奇抜な発想で有名な雄二ですらたまに僕の事を狂人を見るような目で見つめてくるからな」

 

 ……剣くんが受けなのかしら? いや、坂本くんが受けというのもそれはそれでアリ……

 いやいや、分かってるわよ。あくまでも例として述べただけであって、男子ですらそんな有様なんだから女子には皆無って言いたいのよね。

 

「とりあえず、それは『狂人を見るような目』じゃなくて『狂人を見る目そのもの』でしょうね」

「そ、そんなバカな」

「冗談よね? 素で言ってるわけじゃないわよね?」

「…………さて、そろそろ行くとしよう」

「え? どこに?」

「そろそろ10時だ。弥生書店に行くぞ」

「……すっかり忘れてたわ。そうね行きましょうか」

 

 また売り切れになっても困る。早めに行きましょう。

 

 

 

 

 

 目的の本を買い終えて剣くんと別れたアタシは特に寄り道する事なく帰宅した。

 

「ただいま~」

「おかえりなのじゃ。遅かったのぅ」

「ん~、そうね。ちょっと剣くんと会ってさ。

 あ、そうそう。秀吉、あんたに頼み事があるのよ」

「何じゃ?」

「何て言えば良いかしらね……簡潔に言うと、光と付き合って欲しいんだって」

「…………買い物の荷物持ちでもすれば良いのじゃろうか?」

 

 どこかで聞いたような反応ね。Fクラスに入ってるとそういう所も似てくるのかしら?

 

「そうじゃなくて、男女の恋愛的な意味での付き合いよ。と言っても、フリだけど」

「うむ、フリ……? 話が見えてこないのじゃが」

「簡潔に言うと、光の告白除け。彼氏が居るってなれば面倒な告白も減るでしょうから」

「確かにそうじゃな。ワシが彼氏として見られるか少々不安ではあるのじゃが……」

「あんたが女として見られたら光の趣味がソッチだっていう噂が広まって告白は減るから問題ないわ」

「そ、そうかのぅ……?」

「そうよ。あんたも男子から告白されて鬱陶しいでしょ? あんただけならまだしもアタシまで巻き込まれるのはごめんだって話よ」

 

 秀吉に直接話す勇気が無いからってアタシ経由で何とかしようとするアホは全員滅べば良いと思う。

 って言うか秀吉はダメでアタシは話せるってどういう事よ。アタシの方が価値が軽いっていう事よね?

 それに、そんな根性じゃどうせフラれる……と言うか秀吉は男だから何かもう色々と論外だ。

 

「まぁ、光が協力して欲しいという事であれば別に構わぬのじゃが……」

「じゃあ頼んだわよ。ああそうそう、光の為っていう体で接するとあの子負い目を感じちゃうだろうから、あくまでも秀吉の都合で振り回してるっていう体で接しなさい」

「また奇妙な注文をするのぅ……確かに妙な勘違いをしている男子を相手にせずに済むなら有難い話なのじゃが」

 

 自然とモテ自慢をする愚弟の腕の関節を90°ほど逆に捻じ曲げてやりたい衝動に駆られたけど我慢する。

 姉がモテ具合で弟に嫉妬するなんて悲しくなるだけだ。

 

「細かい話は光と相談してちょうだい。それじゃ」

「どこに行くのじゃ?」

「読書よ」

 

 それだけ告げて自分の部屋に引きこもる。

 ようやく本が読めるわ。前回がかなり気になる所で終わったからすっごく気になってたのよ。

 伝説の木の下に呼び出しても来てくれないシンジに業を煮やしたユウイチが伝説の木を植樹しまくることで学校の敷地全体を伝説の木の下扱いにして逃げ場を封じる作戦……一体どうなるのかしら。

 高鳴る胸の鼓動を抑えつつ。私はそっとページを開いた。






「以上! 閑話終了!!」

「くそっ、何故僕は偽装恋人とかいうシンプル極まりない作戦を思いつかなかったんだ……」

「筆者さんの心の叫びでもあるわねそれ……」

「正真正銘、本話を執筆途中に思いついた策だ。
 そもそも、秀吉×光というカップリングが単なる思い付きでしかない。リメイク版執筆前に光抹消計画を本気で検討したくらいにはこだわりが無い設定だ」

「抹消って……字面が凄いわね……」

「あくまでも主役は僕であり、ついでに雄二や貴様が居る。
 光も筆者の中では比較的脇役だ」

「主人公の双子の妹っていう凄く存在感のある立ち位置のはずなのに……」

「脇役だから、設定の詰めが甘い。フワッとした設定で突き進もうとしたが故に起こった悲劇だな」

「一体何のためのリメイクなんだって話よね……」

「改善はされてるけどな。前と比較して」



「それでは、また次回お会いしましょう!
 ……さて、次はどれだけかかるかな~」
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