「という訳で、聖条学園文芸部部長の天野遠子は、きみに決闘を申し込むわ!」
明久と下校していたら突然見知らぬ女子にリボンと一緒にそんな言葉を投げつけられた。
色々とツッコミたい事は……それはもう色々とあるんだが……
「ククッ、決闘ねぇ……まぁ良いだろう。勝負を挑みたいというのであれば、大歓迎だ」
凄く爽やかな笑みを浮かべてながらそんな台詞を吐いた僕の前に人影が飛び出してきた。
「ごめんなさいっ! 私が余計な事を言ったばかりに!!」
姫路は僕が戦闘態勢に入ったのを察したのだろう。凄い勢いで謝りに来た。
「瑞希ちゃん、謝る必要なんて無いわ!
もう一度言わせてもらうわよ。空凪くん、きみに決闘を申し込むわ!!」
そして元凶はビシッと人差し指をこちらに突き付けている。
空気は……読めていないらしい。
ひとまず話が通じそうな奴に話しかけるとしよう。
「おい姫路、貴様は僕の事を女子供でも容赦なくぶん殴る鬼畜か何かだと思ってないか?」
「えっ、そそそんな事は無いですよ?」
「まぁ事実だが」
「認めるんですか!?」
「当然だ。必要があるなら何だってするさ。
今必要かどうかは……情報次第だな。だからそんなに慌てて謝る必要は無いぞ」
「情報次第では殴るんですね……分かりました。空凪くんを信じます」
信じる、ねぇ……後悔しないといいな。
「さてと、天野遠子だったか? ああ、僕も名乗っておこう。空凪剣だ。ここの学園の2年生で由緒正しき帰宅部所属だ。
それで、決闘だったか?」
「ええそうよ。私が勝ったら吉井くんと別れてもらうわ」
そもそも付き合っていない……とか返しても話がこじれそうだ。肯定だけはせずにスルーしておこう。
「なるほど。では僕が勝ったら貴様は何をしてくれるんだ?」
「ここに居る心葉くんに2人の愛を称える極甘の詩を書いてもらうわ」
「ちょっ、遠子先輩!?」
シ……死? ああいや、詩か。あんまり馴染みが無い言葉だからちょっと出てこなかった。
心葉くんとやらは納得していないようだが……まぁ、それもスルーしておこう。
「……なるほど」
「納得できたかしら?」
「ああ。断る」
「えっ、そ、そんな! 何故?」
「遠子先輩。詩を求めて決闘なんてするのは遠子先輩くらいです」
全くもってその通りである。明久とはそもそも付き合っていないが、仮に付き合っていたとしてもそんな物を貰って喜ぶのはよっぽどの文学好きかバカップルだけである。
「なら仕方ないわね。心葉くんの詩にプラスしてこの世に1つしか無い豪華賞品を進呈するわ」
「詩は止めないんですか遠子先輩?」
「勿論よ心葉くん!」
「いや、僕も詩なんて要らないんだが……」
「とにかく! これで受けてくれるでしょう?」
「ふむ」
曖昧な言い方しかされていない豪華賞品とやらは恐らくは残念な代物なんだろうな。世界に1つしかない上に庶民に手が届く代物となると……手作りの何かって所だろう。
おそらくは不要な代物だ。それを目当てに受ける道理など無い。
だが……
「いいだろう。受けてやろうじゃないか」
この決闘とやらが単純に『面白そうだ』。
それだけで十分だろう。
「ちょっと待って! 男子と女子とでハンデも付けずに決闘っていうのはどうかと思うよ!」
「……心葉くん、だったか? 世の中には男子よりも強い女子も居るんだぞ?」
「そうかもしれないけど、遠子先輩はそういう類の女子じゃないよ」
「なるほど。確かに」
筋肉や姿勢を見ればその人が鍛えているかくらいは何となく分かる。
目の前の女子は鍛えている雰囲気は全く無い。実は武道の達人が気配を隠しているという可能性がゼロではないが……そんなバケモノにはそもそも勝ち目が無いから考える必要は無い。
「そう。だから殴り合いみたいな決闘はダメだと思う。だからと言って水鉄砲の打ち合いでもするわけにもいかないし、やっぱり決闘なんて……」
どうやら心葉くんは決闘を撤回させる方向に持って行きたいらしい。部長への気遣いなのか保身の為なのかは不明だが。
そして、そんな気遣いかもしれない行動を無にしたのは部長であった。
「分かったわ。それなら召喚獣を使いましょう!」
「ほぅ?」「えっ?」
試召戦争……と言うよりは清涼祭での召喚大会の方が近いか。アレの真似事をやろうという事か。
なるほど確かに。それなら男女の差は無くなる。男女の差はな。
しかしながら、重大な問題がある。
「あの、遠子さん。世間では『文月学園=召喚獣』みたいな感じで有名なのかもしれませんけど、そんなに便利なものじゃないんです。
召喚獣を呼び出しは教師の立ち合いが無いと不可能ですし、他校生ともなると文月式の試験を受けて頂かないと……」
たった今姫路が代弁してくれたように、そもそも召喚なんてできないという問題が二重に発生している。発想は面白いと思うが、残念ながら不可能だな。
「フフン、そこは問題ないわ。他校との交流試合って形に持って行けば大丈夫よ」
「無茶言うな。あんたただの文芸部部長だろ? そんなコネあるのか?」
「ええ。そういう方面に顔が利く人に心当たりがあるわ」
「マジか。なら良かろう。セッティングは丸投げさせて貰うぞ」
「任せなさい! 楽しみだわ。瑞希ちゃんから召喚獣の話を聞いてからずっと試してみたいと思ってたのよ」
「……目的は決闘じゃなくてそっちなんじゃないのか?」
そして数日後、遠子さんの宣言通りに交流試合が行われる事となった。
ハッタリじゃなくて本当にコネがあったのか。文月学園に干渉できるレベルのコネが。
……ここまでお膳立てされたからには全力で行かせてもらうとしようか。
「という訳で極めて自然な流れで召喚獣バトルとなる」
「自然……まぁそういう事にしておきましょう」
「遠子さんが持つコネについては原作を読んでみると良い。確かにあの人ならこのくらい朝飯前だ」
「ご都合主義とかじゃなくて本当にできちゃうっていうね」
「色々と特殊な戦いになるんで次回は説明回とかになるな。バトるのはまだ先だ」
「では明日もお楽しみに!」