手強そうだった遠子さんはアッサリと散った。
まさか明久よりも点数の低い高校生が居たとは。世界は広いな。
「お疲れ秀吉」
「うむ。伊織よ、お主の仇は取ったぞ」
「アレは果たして仇を取ったと言って良いのか? いやまぁ確かにそうなんだけど」
秀吉が相手の弱点を突いた! ……と言うのではなく勝手に選ばれた科目で勝手に自滅した感が強い。
仇……まぁ、いいか。
ところでちょっと気になった事がある。
「……貴様ら、そんなに仲が良かったか?」
「む? ……ああ、うむ。下の名前の方が呼びやすいからのぅ」
「何故か既に島田さんからは名前呼びだからな~。アレは微妙に言いにくい上の名前を覚えてないだけだと思うけど。
秀吉の方も木下だと優子さんと混同するし」
「……なるほど。実に合理的だ。
尤も、下の名前呼びだとそれはそれでまた混同が発生しそうだが」
具体的には、この交流試合の実況と。
「それはそうじゃが……それは言ってもしょうがない事じゃ」
「まぁ、そうだな」
「副代表も苗字だと妹さんと混同しそうだけど……副代表は副代表だな」
「来年になったら何て呼ぶ気だ。まぁ、好きに呼べば良い。変な呼び名じゃなけりゃ問題ない」
「ちぇっ、赤ゴリラとかダーリンとか言ってみたかったのに」
「覚えてたのかそれ」
今年度が始まった時の自己紹介で雄二から不評だった呼び名である。
好きに呼べば良いって言うから一生懸命がんばって3秒くらい考えた結果だったというのに。薄情な奴である。
『それでは3回戦を始めます! 両学園の中堅はステージに上がってください!』
おっと、休憩終わりか。
向こうの中堅は最初に遠子さん達と会った時には居なかった女子らしい。奴も文芸部の一員という訳か。
となると文系科目だと分が悪いか? まぁ、やってみれば分かるか。
「では、また行ってくるのじゃ」
「お~、頑張れ~」
『はい、揃いましたね。それでは解説の御空さん。新しい選手の解説をお願いします!』
『聖条学園2年生の琴吹ななせさんですね。彼女は先ほどの天野選手のように極端に低い点数は無いみたいです。
先ほどのように拍子抜けな戦闘で終わるという事は無いでしょう』
『なるほどなるほど。ちなみに平均で何点くらい?』
『それは教えられません。一方的に情報を公開してはフェアでなくなってしまいますから。
実際に見せた方が手っ取り早いでしょう』
『ごもっとも。それではフィールドの展開をお願いします!』
残っている科目は国語、英語、理科の3つ。
さて、何が出るやら。
「「
[フィールド:英語]
文月学園 木下秀吉 72点(
聖条学園 琴吹ななせ 231点(英語)
「ううむ……Aクラス並みの点数じゃな」
「えっ、このくらいでAクラスなの? 思ったよりも簡単だったような……」
『……とか言われちゃってますけど、どうなんでしょう?』
『う~ん……琴吹選手だったらギリギリAクラスに……いや、Bクラスかなぁ……
クラス分けは順位で決定するので一概には言えませんが、今年の目安として平均点200点超えくらいがAクラスになります』
『231点なら十分に見えますね』
『小野寺さん、考えてみて。私たちは振り分け試験の時はセンター試験と同じような日程で2日で10科目こなしたわ。
聖条学園の皆さんは2~3日かけて5科目を受けたらしいの。学校の授業の後にテスト受けてるらしいから断言はできないけど、疲労を考えたら点数が気持ち上向きになってるんじゃないかしら』
『な、なるほど。確かに』
『それに、私たちは例えば国語なら現代文と古文を選択の余地なく両方受けるけど、今回はどちらか任意で構わない。
意図的に手を抜いてない限りは得意科目を選んでるはずだから平均点はもっと下がるわ』
『それは確かに。振り分け試験に関わる五教科は本来全部2科目ずつですもんね』
『琴吹選手が選ばなかった科目もバランス良く取れるタイプの人である可能性ももちろんありますが……控えめに見積もった場合にはBクラスといった所でしょう』
「……という事らしいのじゃ」
「そ、そう。もし転校したらどうなるのかってちょっと考えてみたけどAクラスは無理なのね」
「文月式のテストは慣れもあるから何とも言えんのぅ……
よしんばAクラスに入れたとしても試召戦争による設備争奪戦もあるのじゃ。胡坐をかいていたら畳に卓袱台の教室に押し込まれる事もあり得るのじゃ。
転校はかなり慎重に検討した方が良いのぅ」
「そっか……ありがとう。えっと……木下さん……だっけ?」
「うむ……む? 一応言っておくが、ワシは男子じゃなからな?」
「冗談も上手いのね。木下さんって」
「いや、冗談ではなく……」
『すいません! そろそろ始めて下さい!』
「あ、すいません! それじゃあ始めましょうか」
「むぅ……仕方あるまい」
……そして数分後……
[フィールド:英語]
文月学園 木下秀吉 72点 → Dead
聖条学園 琴吹ななせ 231点 → 111点
こんな感じでそれなりに善戦したが、残念ながら勝ちには届かなかった。
どうやら先鋒の遠子さんが極端に運動音痴だっただけであって、それなりの運動神経があれば点数でゴリ押しできるらしい。
いよいよ僕一人になってしまったな。ここから2タテするしかないか。
「突然だが言い訳がある」
「突然ね。一体どうしたの」
「現在、筆者の手元に文学少女の原作本は存在しない。
故に、琴吹さんの口調や成績は記憶を頼りに書いた捏造だ。
琴吹さんってそもそも召喚獣出してなかったしな」
「……そう言えばそうだったわね。確かに原作……コラボ小説では召喚すらしてなかったわね」
「極端な劣等生でも優等生でも無かった気がするのでまぁBクラス並みくらいの文系かなとしておいた。
口調に関しては心葉くん以外には普通に話すだろう、と。相手が女子なら猶更」
「秀吉くんは女子じゃない……っていうツッコミは空しいだけね」
「と言う訳で違和感があったなら申し訳ないと言っておく。以上だ」
「では、明日もお楽しみに!」