バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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01 それぞれの反応

 人は、理解できない現実に直面した時、実に様々な反応をする。

 それはこの僕とて例外ではなかった。

 では、他の人であれば、どんな反応を取るだろうか……?

 

 

 

 

 

  ……ケース1 西村先生の場合……

 

 鉄人こと西村先生は毎朝校門の前で生徒たちを出迎えているらしい。

 『らしい』というのは、僕があまりにも早すぎるせいで会えない事が多々あるからだ。

 今日は……この時刻からちゃんと居るみたいだ。

 

「「おはようございます!!」」

「うむ、おはよう。今日もやたらと早いな。何か部活でもやったらどうだ?」

「いや~、僕が下手な団体行動取ったら迷惑をかける未来しか見えないですよ。

 雄二みたいに僕を上手く使ってくれる奴じゃないと」

「惜しい話だな。事情があるなら仕方あるまい。

 何かやる気になったらいつでも相談してくれ」

「お心遣いに感謝します」

 

 鉄人先生と適当に会話して校門をくぐる。

 ……しかし、門から数歩進んだ所で待ったがかかった。

 

「ちょっと待て。何故吉井がここに居る!?」

「え? 僕ですか? 何でって言われても……」

「いつも遅刻ギリギリなお前がこんな朝早くに居る訳が無い!

 まさか……偽物か?」

「ちょっと、何言ってるんですか。どこからどう見ても僕は僕でしょう。

 そんな事言ってると『鉄人の節穴』みたいなあだ名が付きますよ?」

 

 明久、それあだ名じゃなくてただの悪口だ。

 あだ名っぽくしたいなら『節穴の鉄人』の方が妥当だ。

 

「ううむ……分かった。お前が本物だとしよう」

「だとするも何も本物なんですけど……」

「本物の吉井。こんなに朝早く来て何を企んでる」

「そこまでおかしい事なんですか!? 僕がここに居るのは!!」

 

 ハハッ、何を今更。

 鉄人先生の言っている事は極めて真っ当だが……ここで静観していても収拾が付かなそうだ。助け船を出すとしよう。

 

「西村先生。あの明久だってたまには早く来たっていいじゃないですか。

 そうだ。せっかく時間があるから勉強を見てやるとしよう。それでいいな、明久」

「え? えっと……うん! 僕は勉強する為に早めに来たんです!」

「それはそれで怪しいんだが……分かった。

 吉井、疑って済まなかった。頑張ってくれよ」

 

 

 ケース1の結論。

 最初から最後まで疑われるが、話せば一応納得してくれる。

 

「い、今、鉄人から励まされたのかな?」

「問題児以外には極めて真っ当な先生だからな」

 

 

 

 

  ……ケース2 坂本雄二の場合……

 

「……まさか本当に勉強を見る事になるとは。ただの口実のつもりだったんだが」

「え、そうだったの!? じゃあ勉強する必要なんて……いや、あるや。ごめん、もうちょっとだけ付き合って」

「……いや、そろそろ雄二が来るからバトンタッチを……」

 

 と、雄二の話題を出したのとほぼ同時にドアが開いた。

 噂をすれば、だな。

 

「うぃ~っす」

「おう雄二。おはよう」

「おはよう雄二!」

「……えっ、誰だお前」

「いや、誰って言われても……」

「俺の知り合いにはいつも遅刻ギリギリでノーテンキな顔をしたバカは居てもこんな朝早くに教科書とノートを広げている優等生じみた真似をする奴は居ない!

 お前は何者だ! 明久のドッペルゲンガーか、クローンか? いや、双子の妹のアキヒシか!?」

 

 雄二も雄二でなかなか良い感じに取り乱しているようである。

 このまま眺めているのも面白そうだが、明久が珍しく勉強にやる気を出している最中だ。なるべく早めに正気に戻ってもらおう。

 

「雄二、偽物を疑うならまずは質問だ。僕もそれで明久が明久だと確信した」

「それもそうだな……じゃあ明久、質問だ。ローマの独裁者だったユリウスカエサルが暗殺される際、腹心であったはずの裏切り者であるブルータスに告げた言葉は?」

 

 あっ、それはあかん。

 

「えっと確か……『ブルータス、お前もか』あるいは『ブルトゥス、お前も私を裏切っていたのか』だったはず」

「やっぱり偽物じゃねぇか!!」

「スマン雄二。その質問は僕が既にやった。

 その後答えも教えてしまった」

「どんな偶然だよ。なら仕方ない。これならどうだ?

 ジュリアスシーザーが暗殺される際に言った言葉は?」

 

 ジュリアスシーザーとは……ユリウスカエサルの英語読みの事である。

 つまり、模範解答はさっきと同じだ。しかしあの明久がそんな事に気付くはずもなく……

 

「う~ん、確か……

 『ぐはっ!! この私が敗れるとは!

  だが心せよ。この世に光がある限り闇は蘇る! 何度でもな!!』

 だった気がするよ。間違いないね!」

「ホントだ。明久だ」

「だろ?」

 

 

 ケース2の結論。

 証拠さえあればちゃんと納得する。

 未来の奥さんの名前が翔子なだけの事はあるな。

 

「ようやく納得してくれたね。完璧な回答だったでしょ?」

「ああ。完璧に明久の回答だった」

 

 

 

  ……ケース3 姫路瑞希の場合……

 

「おはようございます」

 

 前にも言ったかもしれないが早いメンバーは早い順に僕、雄二、姫路で固定である。

 姫路がこの時刻に来るのはいつもの事であり、今の明久と出くわすのも必然だな。

 

「おうおはよう」

「……えっ、あれ? そこに居るのは……吉井、くん……?」

「え? うん。おはよう姫路さん」

 

 明久を見た姫路は目を見開き顔面を蒼白に染め上げる。

 そしてその場に崩れ落ち、さめざめと泣き出した。

 

「えっ、姫路さん!? どうしたの!?」

「だ、だって! 吉井くんが! 吉井くんが!」

「僕がどうしたの!?」

「ヒック、そ、空凪くん、坂本くん! ど、どうにかならないんですか!?」

「……済まない姫路、僕たちも手は尽くしたんだが……」

「俺たちの力じゃ、どうにも……」

「そんなっ!! 吉井くんはまだ17歳なんですよ!? あまりにも……あまりにも惨い……」

「えっ、僕死ぬの?」

「確かに惨い話だ。精神年齢はまだ7歳くらいだというのに」

「ちょっと剣? 僕死なないからね? あと精神年齢も……」

「ほ、ホントでずか!? よがったでずぅぅ!!!」

「わぷっ、ひ、姫路さん離して! 当たってるから!!」

 

 

 ケース3の結論。

 絶望的な未来を予測してしまうが、回避すると同時に感極まって明久に抱きつく。

 ははっ。良かったじゃないか明久。巨乳の同級生に抱き着かれて。

 ……あれ? これがバレたら結局死ぬんじゃないか?

 …………まぁ、そん時はそん時だな!

 

 

 

 

 そしてケース4……と行きたかったが、残念ながらやたらと登校が早いのはここまでだ。

 明久がやたら早く登校した事を把握できるのはそれと同じくらい早く登校した奴だけ。

 よって、他の人からは『それなりに早く投稿した明久』としか見られない。

 

「おはよう。あれ、珍しいわね。アキがウチより早いなんて」

「まあね! そんな日もあるよ」

 

「…………おはよう」

「おはようムッツリーニ!」

「…………朝の録音データに明久の声が入っている。故障か?」

「え、何か言った?」

「…………何でもない」

 

「おはよう。む? 明久がこの時間に居るのは珍しいのぅ」

「おはよう秀吉。意外と遅いんだね。秀吉はもっと早い気がしてたよ」

「うむ。ワシは部活の朝練があるからのぅ」

「あ~、なるほどね」

 

 そんな感じで朝の時間は過ぎていった。

 しかし僕たちはまだ知らなかった。異常はこれだけでは収まらなかったという事を……






「という訳で朝の風景(僕以外)だ」

「ここまで過剰反応される吉井くんって一体……」

「学校を代表するバカだ。
 本作だとバカっぽい描写が少ないせいで忘れがちだが」

「そうよねぇ……吉井くんってもっとバカなはずよね。筆者さんの実力不足のせいで比較的まともに見えるけど」

「バカを書く技術が欲しい……ってのは駄作者がたまにぼやいている事だ」


「では、次回もお楽しみに!」
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