さて、気を取り直して霧島の家に突入だ。
インターホンを鳴らすと何か使用人っぽい人がどこからともなく現れた。
「お名前とご用件をお伺いします」
「空凪剣。この度は貴殿の屋敷のご息女である霧島翔子殿に用があって参った」
「承っております。どうぞお入りください」
ウケ狙いで堅苦しく名乗ってみたんだが特に反応も無く通された。少し空しいと落ち込むべきか流石はプロだと感心すべきか……
「部屋までご案内します」
「助かります」
「……その前に、その懐に入れているものを預からせて頂きます」
「アンタ何者だよ!?」
懐に入れている護身用という名目の投げナイフをアッサリと見破られた。
霧島家の使用人、恐るべし。
「……どうぞ。丁寧に扱ってくださいね」
「確かにお預かりしました。では改めて部屋までご案内します」
「他の連中はもう来てますか?」
「ええ。貴方で最後だと聞いております」
「そりゃそうか。分かりました」
使用人の後に続いて大きな邸宅の中を進む。
色んな部屋があるんだな。何か鉄格子のかかった部屋があったのが少し気になったが……まぁ、気にしないでおこう。
「こちらになります」
「ありがとうございます」
「では、これで失礼させて頂きます」
案内されたのは取り立てて変哲の無い部屋。
さて、随分と待たせてしまって……と言うか先に始めてるだろうな。サッサと参加するとしようか。
いざ!
ガチャッ
バタン
……ちょっと部屋の中の光景が予想外過ぎて思わず閉じてしまった。
きっと気のせいに違いない。もう一度見てみよう。
いざ!
ガチャッ
・床を夥しい量の血液で汚す康太
・それを見て慌てふためいている工藤
・服を赤く染めて仰向けで床に倒れている雄二
・その目の前で何かを持って佇んでいる霧島
バタン
……うん、他にも色々と見えたけどこれだけで十分お腹一杯だ。
虚ろな目をして勉強していた明久や伊織、秀吉の目を塞いでいる光、工藤ほどではないが慌てていた姫路や島田や木下姉なんかが見えたけどそんなものを見なくても十分ヤバい事が伝わってくる。
……帰るか。
『ちょっと兄さん! 帰ろうとしてるんじゃないわよ!!
このヒトたちの相手を私だけに押し付けないで!!』
チッ、どうやら逃げるわけにはいかないようだ。
なぁに、一つ一つ整理していけばきっと解決するはずだ。
……そうだ。整理する為のメモ帳を家に忘れた。今から取ってきて……
『この状況で逃げようとしてないでしょうね!? サッサと入ってきなさい!!』
チッ、バレたか。仕方ないな……
落ち着いて考えれば起こっている事件は2つだけ。康太の鼻血と雄二の……服の汚れだ。
「……雄二、一つだけ質問させてくれ」
「……何だ?」
「どうして貴様の服はケチャップで汚れているんだ?」
「俺だって知りてぇよ!! 翔子! 一体何の真似だ!?」
「……テレビでやっていた。恋する乙女は男の人の服を血で染める……と」
「一体何のテレビを見たんだ」
「……だけど、私の血を使っても雄二の血を使っても痛い思いをするし、そもそも足りないと思った。だからケチャップで代用した」
「そもそも止めるという発想は無かったのか?」
「……はっ!」
「今気づいたのかよ!」
霧島って結構天然な所もあるよな。
と言うか一体全体どんなテレビを見たんだ? 昼ドラか?
「まぁ、解決だな。
で、康太は一体何してたんだ?」
鼻にティッシュを詰めた上に包帯を1本顔に巻いて押さえている康太に話しかける。
しかし康太が反応するより早く工藤が口を開いた。
「ボクがちょっとからかっただけなんだよ。だけどまさかあんな事になるなんて……」
「からかう? 内容は?」
「会話の流れで保健体育の実技の話になってね。
折角だからボクの特技のパンチラを披露してあげたんだヨ。スパッツだけど」
「……体育の実技の話を強引に保健の話にしたのか、それとも元々保健の話だったのか判断に悩むな。
どちらも勉強会中の会話としては無理があるのは間違いないだろうが」
「そこは……まぁ……テヘッ☆」
「ここまで大惨事になったのは相手が康太だったからだな。悪気はあんまり無かったんだろうが……程々にしておけよ?」
「うん。
工藤は常識人枠かと思っていたが……真面目な空気だと逆にはしゃぐ傾向があるのかもしれん。
特技がパンチラだと豪語するだけの事はあるな。
「…………工藤愛子、これで俺に勝ったと思うなよ……?」
「いや、こんな事で勝ったとか思ってないから。
ムッツリーニ君とは正々堂々保健で勝ちたいからネ!」
「…………フッ、やれるものならやってみると良い」
「言ったね? じゃあ次の期末の点数で勝負しよう!
勝った方は負けた方のいう事を何でも……」
「おい止せ工藤!」
「…………」
康太は、特に言葉は発さなかった。
その代わり……なのかは知らんが、鼻に詰めたティッシュや包帯すらも貫通して再び血が噴き出した。
「わぁああ!! またなの!?」
「意識を絶った方が早いか!? しかしコイツの場合無意識でも……」
「悩んでる場合じゃないって! 何とかしないと!」
「チィッ、賭けになるが仕方あるまい。ていっ!」
集中力全開にして首トンを決める。
……良かった。血は止まったようだ。
「ふぅ」
「ムッツリーニ君……大丈夫かなぁ……?」
「Fクラスの生徒の生命力はクマムシ並みだ。問題あるまい。
……ところで工藤、ちょっと気になった事があるんだが」
「何カナ? スリーサイズなら教えてあげるけど体重はヒミツだよ?」
「情報の価値としてはどっちが上なんだ? 体重が分かればミステリーの何かのトリックに使えるか?」
「ちょっとした冗談を物騒な方向に結びつけるのは止めて!」
「何を言う。これこそ冗談だ。
で、えっと……お前たちって何かライバルっぽい空気出してるけど、いつからそんな感じなんだ?」
「何だ、そんな事? ムッツリーニ君の事は試召戦争の時から意識してたよ」
「ああ。貴様が僕にアッサリ負けたアレか」
「アレは転校組で操作に慣れてないボク相手に大人げなかったキミが悪いよ! 点数自体は勝ってたし!」
「卑怯汚いは敗者の戯言だ。
……そうか。あんときは貴様の点数は450点くらいで、康太は550点くらいだったっけか」
「うん。キミに負けたのは……何というか理不尽さを感じただけだったけど、ムッツリーニ君には点数で負けてたからね。
凄い人だな、どんな人なんだろうっていうのはあの時から考えてたよ」
「なるほどねぇ」
その後、清涼祭や合宿で交流する機会はいくらでもあったはずだ。それで仲良くなったという訳か。
「ま、頑張れ。康太の点数アップに繋がりそうなのであれば副代表としては大歓迎だ」
「それ言ったらAクラスであるボクの点数アップにもなるけどね。
言われなくても頑張るよ。何でもいう事を聞く……なんていう賭けが無くてもネ」
「いじょ。霧島さん家の勉強会その1かしらね」
「使用人の人には固有名詞を与えようか少々迷ったようだが……結局無しになった。
キャラを増やしても使い道が限られてしまうからな」
「地味に存在感のある人だったわね」
「性別すら決まってないんだが……女性にしておこうか。その方が華があるし」
「もう出ない人の設定をそんなに詰めなくても……」
「……いつからもう出ないと錯覚していた……?」
「出す気なの!?」
「さぁな。駄作者の気まぐれ次第だ」
「……そんなヒマがあるなら私を出して欲しいわ……
それじゃ、次回もお楽しみに!」