「……ところで雄二、勉強の調子はどう?」
「どうもこうも……普通に順調だ」
「……次の戦争ではAクラスに勝てそう?」
「ん? ああ。当然だ!」
美味い物を食べている最中だからか雄二のテンションが微妙に高い気がする。
妙な事にならないか少し心配だ。
「……そこまで言うなら、勝負、してみる?」
「勝負だと?」
「……うん。こんな事もあろうかと補充試験と同じものを予め貰っておいた。
……五教科の10種類の科目と、愛子と土屋の為の保健体育の試験をそれなりの量用意してある」
「テストの点数対決って事か? 純粋な点数対決でお前に勝てる自信は流石に無ぇな」
「……じゃあ私はハンデを付ける。通常の試験時間は1時間だけど私は30分だけ。これならどう?」
「おいおい、俺も舐められたもんだな。単純計算で点数が半分になるって事だろ? だったら俺が勝つに決まってる」
「……じゃあ、やる?」
「ああ当然だ。勝負だ翔子!」
「……分かった。それじゃあ勝った方が負けた方の言う事を何でも聞く」
あっ、案の定妙な事になったらしい。
……まぁ、面白そうだから放っておこう。
「…………は? いやちょっと待ちやがれ!」
「……どうかしたの?」
「どうしたもこうしたもあるか! 何だってそんな事しなきゃならん!!」
「……雄二は自信が無いの? さっき『俺が勝つに決まってる』って言ってたのに」
「ぐ……分かった。いいだろう! 俺が勝ったら何でも言う事を聞いてもらうぜ!」
「お~、坂本くんったら大胆だネ。女の子に向かって何でも言う事を聞かせるなんて」
「……準備はいつでもできてる」
「何の準備だ!? ったく、後で吠え面かくんじゃねぇぞ!」
どうやら合意が成立したようだ。
霧島が賭けに出たのか、それとも単純に勝算があったのか……
……まあいい。このイベントは便乗するのが副代表としてのすべき事だろう。
「霧島。先ほど康太や工藤の為の問題も用意していると聞いたが……」
「……うん。せっかくだからテスト自体は皆でやろうと思う。
……私たち以外で勝負したい人が居れば自由にして良い」
「……皆で、ねぇ……
まあいいや。順位毎に賞品でも付けるか?」
「副代表、単純な順位だと明らかにAクラスが有利だ。いやまぁFクラスが劣等生なのは自業自得なんだけど……何か良い感じの無いの?」
「ではクラス毎の順位……」
「それだとわざわざ集まってる意味が無くならない? それに、土屋くんの保体の成績は愛子以上でしょ? やっぱり不平等と言うか……結果が見えててしっくり来ないんじゃない?」
「……そもそもの前提として『得意科目の点数で勝負』という事で良いんだよな? 全科目やるのはキツイし」
「……細かいルールは後で詰めるつもりだけど少なくとも私はそんな感じでイメージしてた」
「ふむ、底辺争いの連中にもモチベーションが出るようなシステムとなると……ああ、じゃあ自分より下位の人に命令できる権利で良いか。
人生変えるレベルの命令じゃなくてせいぜいラーメン奢れくらいに限定させてもらうが」
「ラーメン……カロリーたっぷりじゃないか! 是非とも良い点取らないと!!」
「吉井くん。美味しい料理を食べてる最中に言う事じゃないわ。いや、元の原因は兄さんか」
「一応吉井のモチベーションアップには繋がったみたいだな。オレもそれで良いよ。元々ご褒美が出るだけでもありがたいわけだし」
「限定された命令……か。凄い命令を出しちゃった場合にはどうするの?」
「その場のノリでセーフかアウトかを決めれば良いだろ。
逆に言えば説得さえできればどんなにアウトっぽい命令でもセーフとなるな」
「急に危険度が増したのぅ……」
「1位の人は凄いから大体オッケー、下から2番目はショボいから殆どダメみたいな判定がされるかもな」
「複雑なようなそうでないような……」
「良くも悪くも雑なルールだネ。ボクは勿論参加するよ~」
「……私はそっちの勝負には参加しない。私が命令したいのは雄二だけだから」
「俺も同じだ。そっちのルールでの処理は俺達は除外してくれ」
「りょーかい。他に参加しない奴は? ……居ないっぽいな。それじゃあ飯食ったら始めるとしようか」
という訳で昼食を終えて少し休憩したらテストに入る。
康太も復活してきた、勝負について説明したら参加するとの事だ。
「……一応、未開封のものを持ってきた。雄二にいちゃもん付けられないように」
「はっ、ははは……翔子。俺がそんなみみっちい事をする訳が無いだろう?」
「……そういう事にしておく。
それぞれに封筒には全問正解すれば500点相当の量の問題が入ってる。
……各自、自分の得意科目の封筒を持って行って欲しい」
得意科目……か。さて、どうしたものか。
少し迷っていたら霧島に1つの封筒を突き付けてきた。
「……迷っているようなら、これにして」
「物理……? なるほど。そういう事か」
霧島に突き付けられたのは物理のテストが入った封筒だった。
霧島が自分に課したハンデ、そして物理の科目……点と点が繋がってきた。
雄二……死んだな。
「おいおい、雄二との勝負じゃなかったのかよ。
まあいいだろう。全力で行く」
「……望むところ……!」
皆がそれぞれの封筒を手にする。
そして霧島がスタートの合図を……出してしまうと霧島が微妙に不利になるので使用人の人を呼んでタイムキーパーをしてもらう。
「では30分及び1時間の経過時に宣言させて頂きます。
皆さん準備は宜しいですか?
……大丈夫のようですね。では、始め!」
僕たちは一斉に封筒を開けて問題を解き始めた。
「30分です! お嬢様はペンを置いて回答用紙を伏せて下さい!」
「…………」
ここでハンデにより霧島が終了っと。
僕はどうするかな。疲弊状態であっても雀の涙ほどではあるが点数を稼げるが……
……まぁ、いいか。僕もペンを置くとしよう。
「1時間です! 皆さまペンを置いて下さい!」
おっ、ようやく終わったか。さて、採点だな。
「……皆、隣の人と答案用紙を交換。解答を配るから採点をお願い。
……あと雄二と吉井は交換しちゃダメ、お互いに手心を加えるから」
「何を言ってるんだ翔子。俺がそんなセコい事をする訳が無いだろう?」
「そっ、そそそその通りだよ! ゆゆ雄二の点数を水増しするとか、ああ有り得ないよ!!」
「……雄二は光と交換。吉井は優子と交換。異論は認めない」
「ああ良いぜ! 別にやましい事なんざ何も無いからな!」
「ま、まったくもう。霧島さんは疑り深いね!」
雄二の演技は完璧なのに明久の大根っぷりが全てを台無しにしている。
まぁ、証拠がある訳でもないし霧島さんはスルーしておくようだ。
「……剣は私と交換」
「僕をご指名か。理由は?」
「……剣が点数に細工するとは思えないし、何より早く結果が知りたい」
「ククッ、構わんぞ。採点頼んだ」
「……そっちこそ。正確な採点をお願い」
霧島から渡されたのは物理の答案用紙と同じく解答用紙だ。
さて、霧島はたった30分でどれだけ取れたのやら。
………………
……そうか。そうきたかぁ……
細かい事は置いておいて1つだけ言っておこう。
雄二……死んだな。
「模擬テスト回ね」
「原作では愚かにも雄二がアッサリと乗せられて勝負する事になってたアレだ。
その時は確か部屋割りを決める勝負だったな」
「愚か過ぎるでしょ坂本くん。学年主席に点数勝負を挑む……と言うか受けるなんて」
「ハッタリのつもりだったのかもしれんな。まさか賭け勝負が始まるだなんて思ってなかっただろう」
「う~ん……それならまぁあり得るかな?」
「という訳で、流石に不自然だと感じたので霧島がハンデを負う形となった。
それがどういう結果に繋がったかは……また次回だな」
「では次回もお楽しみに!」